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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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112/122

111、選ぶ道

 死闘の果てに倒れたチカには、全員が駆け寄り、すぐに回復の魔法がかけられる。

 そして、人造物である竜の横にはクロがいて、どういうわけか竜は消えない。


「おい、我が作ったというのに、ざまぁないな」

「くかかか、死にゆく我にそんなことを言えるのか?」

「お互い様だろ、それはな」

「かか、違いない」


 突然クロと竜が会話しているのを聞いてチカ以外は全員驚く。

 人ではないものが言葉を理解して発するということが、あり得ないと考えていたからだ。

 だけど、チカはなんとなくわかっていた。


「手加減、ありがとうございました」

「かか、なんのことかわからんな、クロ」

「ああ、全くだ」


 二人して惚けているものの、チカは戦っているときに気づいていた。

 あれだけ転移魔法を本気で使うのであれば、そもそも最初の時点でチカたちのように、魔法が使えないものたちに関しては見える中で一番高い位置へと飛ばしてしまえばいいからだ。

 どれだけ受け身がうまくとれようとも、死んでしまうような高さであれば関係ないのだから……

 そして、高いの最中だっておかしい。

 破壊があればその逆である回復魔法を使えるはずなのに、全くといっていいほど使うことはなかった。


「最初から、負けるつもりでしたか?」

「かか、そんなことはない。我程度の竜を倒せるくらいにならなくては、意味がないからな」

「ま、そういうことだ。どっちにしろお前たちは勝った。それだけだ」


 クロも、最初からこんなものだと口にする。

 でも、だからこそチカは疑問に思っていたことを聞く。


「あなたは、作られた存在ではないのでは?」

「かか、それも気づいたか」

「はい。人造物だというのに、破壊魔法は後ろにいたカイやアイを狙いませんでした。だから、そうではと……」


 チカからすれば、絶対に最初から転移魔法と破壊魔法の合わせ技によって、後ろに控えていたカイたちを倒したはずだからだ。

 そうすれば、チカたちも動揺しただろうし、もっといえば転移魔法を防ぐこともできなかった。 

 完全に試練として考えた動きをしていた。

 それも、戦いを楽しんでいた他の人造物とは違い、こちらに気遣う姿はまさしく試しているもののそれだった。


「かか、面白い。最初から目をつけていただけはあるなあ」

「我がえらんだのは、正解だっただろ?」

「違いない」


 クロと竜は楽しそうにそんな会話を繰り広げている。

 チカはそれを見ながら、いつの間にか疲れで眠っていた。


「お姉様はどうです、カイ」

「大丈夫だ。どういう原理かはわからないけどな、傷は治ってる」

「それならよかったです」


 カイとアイの二人で同じ回復魔法を使うことで、回復力が増した結果ではなく。

 チカ自身が取り込んでいた魔力が、体を勝手に回復させていた。

 だからこそ、誰もが思った。

 チカとは何ものなのだろうかと……

 特にキキルとスイは戸惑っていた。

(強くなったはずのうちが何も助けることができなかった。チカはどれだけ強くなるの?)

(お姉様。お姉様の隣にいるために努力したつもりです。でも足りないとは、お姉様にスイは追いつけるです?)


 それは単純な強さではなく、意志の強さにだ。

 今までもチカを見ていれば、どれだけの修羅場というものがあったのかはわからないが、その中でも全ての敵を倒してきたことと考えると、ただ力や能力が強かっただけでは考えられない。

 そんなチカたちに向けて、クロは向き直ると話し出す。


「世界の終わりを知った今、残された選択というのは二つあることを、お前たちは知っているか?」

「残された選択ですか?」

「ああ、一つは我らを使った新しい世界の構築だ」

「我たちを使った?」

「そうだ。この世界にしてしまったのは我ら大魔法使いたちだ。魔力戦争をおかしたせいでこうなってしまったのだからな。我らが責任をとるのは当たり前だ」

「では、もう一つは?」

「簡単だ。このまま世界に飲み込まれるというものだ」

「そうですか……」


 世界が終わる。

 最初から、そんな話を聞いてチカたちは冒険者として、この世界を回り始めた。

 ここからどうなるのか、それは誰もわからない。

 でも、チカの考えは、スイに言われてから決まっていた。


「クロ」

「なんだ?」

「あたしは、誰にどんなことを言われたとしても、その二つだけがこの世界を救うことだとは思いません」

「何を言って……」

「いえ、何も言いません。あたしはもう決めたことですから」


 チカの答えは決まっていた。

 全てを救うというものだ。

 それがどれだけの我儘だとしても、やると決めたからにはやり遂げないわけにはいかない。


 体が弱くて最初はダメだと言われたときにも、そうだったように……

 やらないで後悔はしたくない。

 やって失敗しても、転んでも、どうなったとしても……

 それが自分で選んだ道で隣に仲間がいてくれるのであれば、逃げることだけはしないはずだから……


「そうか、だったら次へと送ってやる」


 チカの言葉を聞いたクロは笑うと、転移魔法を発動させる。

 残るは火と風の大魔法使いたちだけだ。

 二つの迷宮ではあるが、なんとなく予感がする。


「あいつの言っていた未来には一つもなっていないが、それもまたいい。予想外なことが起きないと、大魔法使いとしてもつまらないからな」

「かか、違いない」

「じゃ、我らの仕事をするか」

「かか、いいな」


 竜とクロはそう言葉にすると、迷宮から飛び出たのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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