108、竜との戦い
姉であるアイにカイはすぐにやりたいことを説明する。
「何かやるみたいですね」
「ほんと、楽しみ」
二人が何かやるのを見て、チカとキキルはそう口にする。
転移魔法。
チカとキキルも厄介だということはわかっていたものの、予想通りかなり強い。
あれをなんとかするというのであれば二人も協力しないといけない。
「くそ、俺の盾が意味ねえじゃないかよ」
「それはスイも同じです」
マモルとスイは、普通の魔法であれば戦いに支障はないものの、相手が自分たちを利用する。
そんな戦い方には慣れていない。
だからこそ、お互いに無駄に魔力を消費することなく、距離をとっている。
竜が使う魔法は、今のところ二つだった。
転移魔法と回復魔法の応用である、全てを破壊する魔法。
空間を操る魔法であるが、他の魔法とは全く違うところがある。
それは、魔法が当たっている場所しか魔法が作用しないというものだ。
どういう意味か?
それは他の属性魔法では、魔法を使った後も水が残ったり、火が残ったりするためだ。
だが、空間を操る魔法は違う。
その場で魔法が、終了する。
よって当たることがなければ害にはならないが、防ぐことは難しいため、避ける必要があった。
「きます!」
竜は転移魔法の玉でチカたちを牽制しながら、その玉へ向けて魔法を放つ。
すぐにチカは全身から嫌な汗が出るのを感じながらも、玉へ向けて突っ込む。
「消えて!」
転移魔法から出てきた魔法に両手をクロスして構えると当たる。
破壊魔法とはいえ、チカの特別な力によって消えてしまう。
竜がやろうとしていたことがわかっているからこそ、チカは竜を睨みつける。
「ガアアアアアア!」
だが、それを気にくわないとばかりに竜は咆哮をあげる。
破壊魔法を転移魔法にぶつけることによって、全方位を攻撃しようとしたことはわかっていた。
なんとか魔法を消すことはできたが、だからこそわかる。
あれを何度もされるとまずい。
「チカ!」
「大丈夫です!でも……」
「わかってるわよ。援護するから」
チカの言葉でキキルが前に出る。
破壊魔法はさすがのキキルでも斬れない。
とはいえ破壊魔法は壊すことができる魔法にはなるが、それしかできない。
「”翔”」
剣を魔力で飛ばすこの技のいいところは、どこからでも遠距離魔法のようなものを使えるからだ。
魔法とは違って、移動しながら使えるこの技は、転移魔法を避けながら竜へ向けて攻撃ができるため、破壊魔法に当てることができる。
「ギャアアアアア!」
竜は攻撃がうまくいかないことに怒り狂っているようで、咆哮すると次は今度は何かを作り出す。
「壁がきます!」
「おっけー」
チカの言葉でキキルはそう返事したものの、厳しい。
そもそもの話、チカは魔力を見ることはできないし、カイの魔法も実際のところは見えていない。
でも、どこにあるのかということは、魔力がないからこそなんとなくわかる。
だけど、キキルたちは違う。
魔法があり、なんとなくわかる程度でチカのように完全に把握するのは難しいが、ここにはスイがいる。
「任せてくださいです」
スイはそう言葉にすると、水を操ると周りに水蒸気を発動させる。
これによって竜からの目くらましになるのと同時に、竜が作りだした壁がどこにあるのかがわかる。
「やるじゃん」
「お姉様、どうです?」
「ありがとう、スイ」
「任せてくださいです」
「いや、うちの労いは無視?まあいいけど……」
姉であるチカの言葉にだけ嬉しそうにするスイにキキルは呆れて声をかける。
いつものこととはいえ、こういうときに何をすべきかを完璧に理解しているスイはさすがというべきだろう。
「これで避けられる」
壁は転移魔法によって入れ替えられ、さらには新しく展開される。
元々壁は複数展開することはできるが、これは防御で使うものであり、人の中に作り出すことはまずできない。
それは、壁というのは空間を固定する必要がるからだ。
人のように動くことで常に変わり続けるものに関しては、特に戦闘中であれば作りだすことは無理だろう。
よって、竜は作りだした壁を転移魔法を駆使してチカたちを挟み込むことで、押しつぶそうとしている。
これは、複数の魔法を同時に扱える人造物だからこそできることであった。
動いてさえいれば当たることはない。
だからこそ、竜は狙う相手を変えた。
「ガギャアアアアア!」
すぐに狙いに気付いたチカは転移魔法にその身を入れようとするが、それよりも先にカイの声が響く。
「いけるな、姉さん」
「カイこそ」
「「探知、転移魔法」」
そんな言葉とともに、カイとアイの二人が作りだした魔法が発動する。
二人がそれぞれに特化したからこそできる魔法。
その魔法は竜の転移魔法を完全に封じたのだった。
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