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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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106、世界と決意と終わりの始まり

「どうしてそんなに急ぐわけ!」

「これを見てください」

「これって……何?」

「ちゃ、ちゃんと読んでくださいよ、キキル」


 間髪入れずに返ってくる言葉に、さすがのチカも呆れる。

 言われてキキルは内容をちゃんと確認すると、そこに書かれている内容というのは、世界のことについてだった。

 世界の外側について……

 今まで、チカもキキルも魔物という存在がいることで、世界の外側というものに対してそこまでの意識を向けたことがなかったが、逆にどうして意識を向けなかったのかと後悔してしまった。

 迷宮があり、この世界が滅びるということがどういうことなのか……


「どっちにしても、滅びるって……何よこれ」

「はい、あたしたちは何もわかっていませんでしたね」


 書かれていた内容は、この世界の周りには結界というものがあるというもので、迷宮によってその結界を作っていたということ……

 そして、結界の外にある世界というのは魔法によって全てが滅んでしまったものであることだ。

 魔法戦争というものによって、魔力の暴走が外で起こったということはわかるものの、それを九人の大魔法使いが迷宮を各場所に置いて結界をしていたことだ。

 最初に言われていたのは、人造物が封印が解かれて世界が滅ぶというものではあったが……

 どちらにしても、世界が滅ぶのは時間の問題だったというものだったということだろうか?


「どちらにしても、みんなと合流する必要があります」

「そうみたいね」


 今は考えても仕方ない。

 チカとキキルは速くみんなと合流するべく研究所の外へと向かう。

 ようやく外、二人は安堵したタイミングで転移が発動した。


 何度目かの転移によって、さすがに慣れてきたとはいえ、視界が急に変わるのには驚く。

 転移した先というのは、いつもの場所。

 そう、クロがいる迷宮の中だ。


「クロ……」

「よう、自分の魔法と、この世界の真実にようやく気付いたか?」


 向けられた視線の先にいるのは、チカとカイだ。

 世界の真実というのは、結界と世界の終わりの意味についてだろう。

 だけど、チカはカイの魔法というものがわからないため、意味がわからなかった。


「どちらにせよ。もう残りの迷宮は三つ。我のものを含めてな……であれば、この大魔法使い様も動かなければいかない。ようやく、人造物がいる場所までいけるだろうからな」

「何を言って……」

「わからないのか?どうして我が、試練をお前に与えなかったのか?短剣を持っていないのか」

「じゃあ僕は最初からそのために!」

「ああ、我と同じ魔法を使える素質がないと、魔法を教えても意味がないからな。それに、使えなければ封印された人造物の元へ行くことはできないことくらいはわかっているだろう?」


 クロはそう言葉にすると、黒い短剣をカイの前に投げる。


「さあ、ここにいる全員を転移させるんだ」

「急にそんなことを言っても、はいそうですかって、納得するかよ」

「納得しなくてもいい。でも、そうなれば時間はない。何も抵抗なく世界は終わるだけだからな」


 戸惑うのも無理はない。

 急な話過ぎるからだ。

 何を言っているのかと思うだろうが、時間がないのはチカたちはわかっている。


「ああ、なるほどなあ。では、一分やる。話し合え」


 すぐに状況を察したのかクロはそれだけを言って、少し待ってくれる。


「みなさん。すみませんがこれを全員ですぐに読んでください」


 チカはキキルから紙を奪い取るとみんなに読めるように見せる。

 書かれた内容にすぐに目を落とした全員はそれぞれの反応をする。


「俺たちには最初から未来がなかってことかよ」

「これを言っていたのか」

「何ですかこれは……」

「お姉様。これは本当のことです?」

「はい。先ほどのクロの話から、確実ではないかと思っています」

「では、どうなさるのです?」


 最後に言ったスイだけは、チカが思っている反応とは違っていた。


「えっと、どうするとはどういうこと?」

「この紙に書かれているのは絶望です。急なことです。でも、スイたちのここまでは急なことばかりです。それはお姉様もわかっているです?」

「そうですね」

「スイは、今までもここからも全てお姉様についていこうと思っているです」

「スイ……」

「それは、スイがお姉様を大好きだからです。だから何があってもお姉様の考えについていくです。それだけは変わらないです。でも、お姉様にはそんなことはわかっていると思うです。だから言うです。お姉様、スイの命も何もかもスイにお任せするです」


 スイの言葉というのは、チカに全てを任せるというかなり重いものだ。

 でも、だからこそチカはすぐにわかってしまう。

 言いたいことというのはチカにレイの責任が全ては自分にないということ、でも……もし、全部の責任が自分のものだというのであれば、スイのことも責任をとれということなのだろう。

 スイは優しいから、自分が重い存在であるといえば、周りからチカがおかしなことを言っていないとは思わないということなのだろう。

 チカはクロを見て言う。


「みなさん、あたしに最後まで着いてきてくれますか?」


 チカの言葉で、全員は返事をすることもなく、チカの隣に並ぶ。

 全員の心は決まったようだ。

 最初の迷宮であるここから、全ての物語が始まったのだから……

 もう止まることはない。


「行くぞ」


 カイは地面に刺さった短剣を手に取ると、転移を発動した。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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