104、カイの魔法
完全に奥へと進んでいたころ、地上でも異変というものが起きていた。
「何か、お姉ちゃんたちの元へ来ていますね」
「ああ、警戒してくれ」
「わかってるです」
「少し前に出る」
最初に気付いたアイの言葉で全員が戦闘態勢になる。
どれだけカイが周りの探知がかなり精度よくできるようになったとしても、姉であるアイのほうが得意なことのため、こういうときは一番速く気づくことができた。
相手も気づかれていることがわかっていたのだろう、ゆっくりと四人に近づいてきた。
「気づかれてたのは、仕方ないとしても、計画通りにはいきませんね」
一人の女性がフードを被った多数の人を連れてきた。
人数は最低でも十はいるだろう。
隠れている場合もあるため、見えているだけで全てではないだろう。
「警戒をそこまでしなくていいじゃない?どうせ、この場所を知ったからにはこちらは殺すしかないんだから……いけ!」
女は命令すると、周りのフードを被ったものたちはスイたちへ向かっていくが、先行した数人はすぐにずっこける。
ズザーっと音がして、倒れたところをスイが作りだした水の分身が水の玉で撃ち抜く。
「ナイス、スイちゃん」
「いえ、カイのお姉さんが隙を作りだしたからです」
突っ込んできたものたちが倒れたのは、アイの魔法によるものだ。
アイが使える魔法は、カイのように新しい何かではないかわりに、これまでの魔法をより洗練させたものだ。
回復、壁のような箱を作り出すもの、そして周囲を探るもの。
この三つのみを練習したおかげで、特に後者二つに関しては、かなりの熟練度に達していた。
「だったら、魔法だ」
下手に動くのは危険。
そう判断した女がフードたちへと命令する。
先ほどの攻撃で数人減ったとはいえ、予想通り隠れていたやつらが出てきたこともあり、見えている人数は変わらない。
その全員が今度は魔法を放つ。
改造された人によるものなので、相手も詠唱などは全くしない。
何種類もの魔法が飛んでくる。
「任せろ!」
盾を構えてマモルが前に出て攻撃を防ごうとするのだが、それよりも早くに一人の魔法がマモルの前に発動する。
「な、なんだ?」
「触れるなよ」
そう言葉にしたのはカイだった。
黒い穴のような魔法は向かってきた全ての魔法を吸い込むと、今度はフードのものたちの上に黒い穴ができあがる。
「まじかよ」
マモルは驚いたように口にするが、仕方ないことだ。
これはまさしく転移魔法だったからだ。
カイがあの場所。
アンノたちの家で独学で見つけた魔法だった。
そもそも魔法を使う上で大事なことというのは、確かにあった。
一つはどんなものを扱うのかということで、例えばこれは属性にあたるような水、火、土などだ。
ここを明確にする必要があり、逆にいえば、これが明確でない魔法というのがカイやアイが使える魔法になっている。
では、魔法は他にも必要になっているものが座標だった。
魔法というのは、使う魔法が、どこでどのように発動するのかを考えないといけないもので、カイたちの魔法で重要なのはどこに発動するかだった。
そして、どこに発動するのか?
完璧に座標をコントロールできるようになったとき、自分自身の魔法がどういうものなのか理解した。
どうしてカイの魔法が属性がないのか……
そもそも回復と壁や周りを探査する魔法など、いろいろなものがあるが、カイは魔法を今更ながらにちゃんと考えたときに引っかかったのは、クロの存在だ。
何故あいつと髪の色が一緒なのかだ。
そして、一緒であれば同じ属性の魔法を使えるなどということをスイたちに聞いたことで、一つの魔法を思いつく。
それが、転移であった。
そして、転移の魔法を使う上で重要になってくるのが、空間だった。
空間を把握するというのが、転移を使う上で重要だった。
カイたちの魔法というのは、属性がないということに気付いた。
「ようやく僕の魔法がわかったということだ」
そして、全ての魔法が出した持ち主へと帰っていく。
「あは、あははは……これは夢か?」
一瞬でここにいたフードを被った者たちというのを殲滅したのだから、女がそうなるのも無理はなかった。
とはいえ……
「はあ。はあ……」
かなりの集中が必要だというのと、魔力も持っていかれることから、使える魔法とは言い切れないことだけがこの魔法の欠点ではあったが……
「どうだ?」
「すごいじゃん。こっちのさあ、手駒を全部消しちゃうんだからさあ!」
女はそう言うと、何かを口に含んだ。
「だから、こんなものを使うはめになるんじゃん」
そして何かをかみしめた。
「がああああああ……」
苦しむ声の後に女はその姿を変える。
まるで人でありながら人ではない何か……
それは、あの人造人を思わせるものだった。
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