103、キキルの剣
「最初の威勢はどうしましたか?」
「避けてるだけじゃ、攻撃は当たらない」
「そうだぞ!」
二人の男による攻撃は、まさにラッシュだった。
魔法の剣によって、最大限に高められた攻撃力は、確実にキキルを追い詰めているように男には見えていただろう。
まあ、キキルが反撃をしていないからだ。
それでも、攻撃を全て避けられていることから、男たちは余裕というわけではなかった。
(なぜ避けられる)
(どうして)
((こちらには一番強かった剣の使い手も取りこんでいるのに))
男たちの剣は速く、たしかに凄まじい威力だ。
でも、剣としては未熟だった。
どれだけ剣の使い手を取り込んで剣の使い方を体と頭で理解したとしても、使うのはこの男だ。
剣を振っている、確かに剣筋は普通よりはいいものではあるものの、普通よりいいという程度だ。
キキルが知っている剣の使い手であるラスであれば、剣を回避することは難しいだろう。
そもそも、見えないくらいの勢いで斬られるだろうとキキルは考える。
(戦闘中に他のことを考えられるくらいは余裕な相手ってことに気付いてないよね、こいつ……)
「もう、いいよ」
「なに?」
「”斬”」
「うお……」
「なんだ今のは」
「ふーん、まがいなりにも魔法の剣なんだ」
「最強」
「なので!」
「ふーん……」
これまでの剣技は体も含めて魔法で強化を一時的に施すことによって使う技だったのに対し、魔法の剣というものは一時的に体の全ての魔力を剣に宿すことで一時的に最強の魔力を持った剣を作り出すというものだ。
一時的に最強の剣となるものの、これまでとは違って完全に剣に魔力を流した結果、体に魔力が流れることはなく、剣を振っている間だけにはなるが体には何も魔力がない状態になる。
言ってしまえば無防備になる。
でも、だからこそ最強の剣となっているのだ。
キキルが使うのは、その剣を真似たものだ。
さらにいえば、ラスの剣技と合わせることで、さらに強力なものになっている。
魔法の剣技とラスは言っていた技、一つがこの斬ではあるが、相手の魔法の剣は以外とちゃんとしているらしく、一つ目の剣では斬ることができなかった。
「今さっきので終わりか?」
「今度はこっちの番だ!」
男は剣をさらに速く振る。
キキルはさっと一瞬で距離をとると息を整える。
「はあ……は!」
そして一瞬で距離を詰めると剣を振る。
「”絶”」
今度は居合のような形からの一撃だった。
本当に最速の一撃だということが、チカからでもわかった。
見えてはいたが、見えているからこそ、避けられるかわからないものだ。
「ああ、はあ?」
「何が?」
「切れてる?」
「すごいなあ、これは」
男たちは切られた体を見ながらそう口にする。
「ふう……真似するなら、剣もちゃんとしないとね」
「その通りだな」
「真似ができるものとできないもの」
「それがあることをわかっていた」
「最強になれると思っていたが」
「やはり上には上がいるか」
男たちは清々しい顔をして倒れた。
それを確認したキキルは二人に話しかける。
「どう、うちの剣?」
「さすがはキキルです。すごい剣でした」
「ふふ、任せてよ」
「自分もかなり驚いた……」
二人の言葉に満足そうにキキルは頷くと、剣を鞘に収めた。
これで、もう少しここの中を探索することができるだろう。
そうして、歩き回った結果、いくつかの疑問があった。
「おかしいな」
「はい。それは思いました」
「ねえ、最近までやってたわりにはおかしいよね」
言いたくはないが、三人が気づいた嫌な予感というのは、人だ。
ここに来たのは、一つが施設を壊すという目的であったが、その中で気になっていたのは、それの元となった人がいるのではないかというものだ。
レイがここで人造人という化け物になってしまったことを考えると、他にもここには人がいるのではないのかと考えていた。
というのに、人がいる気配はない。
もっと言えば、人がいたという感じがない。
「もう一つ何かあるな」
「そうみたいですね」
「どれだけ隠されてるのよ」
とはいえ、この部屋に何かがあることは三人でもわかった。
「(真ん中……)」
「わかるのか?」
「(なんとなく)」
彼女の中にいた、もう一人の自分が何かがある場所というのを教えてくれた。
真ん中にある椅子を片方動かそうとするが、重すぎて動くことはない。
拘束に使われている鎖のようなものを引っ張っても同じだ。
四苦八苦している彼女に気付いたチカが寄ってくる。
「どうしましたか?」
「いや……」
「あたしも一緒に動かしてみていいですか?」
やりたいことにチカはすぐに気づくと、そう提案する。
「ああ、お願いする」
「わかりました」
チカと彼女は二人で同時に椅子を鎖を引っ張りながら動かす。
それによって予想通りといっていいのか、椅子お互いに離れるようにして動く、そして離れていった椅子の間から階段がゆっくりと地面から出てきた。
「これが本当の最後だろうな」
「みたいですね」
「まだあったんだ」
今度こそ最後……
三人はそうそれぞれ口にすると中へと入っていくのだった。
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