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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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102/122

101、内部と隠された扉

 暗闇に目が慣れているからこそ、ある程度室内の様子はわかった。

 散乱しているものを確認すると、確かに何かを研究していたということがわかる。

 そして、書かれているものの多くは人と魔物を組み合わせて、新しい存在を作り上げるというものだ。

 違う存在もの同士を混ぜる。

 そんなことは正気ではない。

 だが、この施設では当たり前に行っていたらしいが、少しおかしいことにチカは気づく。


「キキル」

「何?」

「おかしいと思いませんか?」

「どういうこと?」

「どうして魔物がいる世界で、魔物を使ってさらに強い存在を作ろうと考えたと思いますか?」

「確かに……」


 この場所を見れば、新しい存在を作ろうとしている。

 それはチカたちにわかった。

 だとしても、そんな存在をわざわざ作ろうとしているのは何故なのだろうか?

 考えられるとすれば、人造物を倒す目的で作られたのかもしれないが、人造物という、大魔法使いが作った魔物がそもそも危険だというのに、同じように作れば、化け物となってしまう可能性が高いというのにだ…


「わからないか?」

「どういう意味ですか?」

「これだ」


 彼女が一つの書類をチカに渡す。

 チカは内容に目を通すと、すぐに息をのんだ。


「こ、これは……まさか、こんなことが……」

「何?どういう意味?」

「キキル。ここで魔物と人が混ぜられた人たちは、戦争に使われる予定だったみたいです」

「戦争?それって」

「はい。人同士が争うという、あれですね」

「はあ?絶対に、そんなことをやってる暇なんか、ないでしょ!」


 キキルは聞いた内容に怒りをにじませる。

 確かに、キキルが言っていることは正しい。

 この世界は魔物という共通の敵という存在がいる。

 普通の人であれば、魔物を倒すために強い存在が必要だと考えるのだろうが、ここにいた人たちの考えは違っていたのだ。

 魔物ではなく、人と争うために新しい存在を作りあげようとしていた。


「どうして、それが必要だったわけ?」

「わかりません、ここには書いてありません」

「決まってんだろ、欲望のためだ」

「それは……」

「そんなことはないってか?あるから、自分という存在がいるんだろ、違うのか?」


 彼女が言う言葉に、誰も違うとは言えなかった。

 わかっているからだ、そういう欲望というものがあるということを……


「では、その欲望の施設を壊す必要があるということですね」

「そうだ」


 チカの言葉に彼女は頷く。

 人の欲望によって生み出された存在である彼女が壊すというのなら手伝うのが当たり前だ。


「でも、どうやって壊すわけ?これだけ大きい施設なら簡単にはいかないでしょ」

「最深部に行く。そこなら、何かあるはずだ」


 キキルの疑問に帰ってきた言葉というのは明確な回答ではない。

 彼女自身、この場所のことは覚えていても、施設の中の記憶となれば、嫌な思い出しかない。

 思い出すというのも、それのせいで少し違和感を感じてしまうくらいだ。


「行ってみればわかるってことね」


 キキルはなんとなく納得すると、進んでいくと彼女も続く。

 チカは殿(しんがり)につくと、三人は奥へと入っていく。


 進んで行く道というのは、一本の廊下だ。

 その途中では扉がない部屋がいくつかあり、中を見ると、その多くが同じような部屋になっている。


「ここではないな」

「同じような作りばかりね」

「外から来るものにわからないようにするためではないですか?」

「どういう意味だ?」

「同じ部屋にすることで、どこに重要なものを隠しているのかをわからないという意味です」

「だから、同じ作りだということか」

「そうやって見ると、確かに同じか」


 チカの言葉でキキルたちは再度部屋を見ると納得する。

 それだけ言っていることが正しいと思ったのだろう。

 チカのこういう知識は全て貴族だからこそ手に入ったものだ。

 部屋が同じだというのも、屋敷の部屋と同じ意味だ。

 屋敷では、同じ部屋の間取りにすることによって掃除などをしやすくするから、それを応用したものだということはすぐにわかる。

 ここで作業をしていた人だけがわかるようになっていればいいと考えているのだろう。


「最深部まではどれくらいかかるわけ?」

「わからない。あのときは必死だったからな。距離は覚えてない」


 それなりに進んできたというのに、まだつかなくて思わずキキルが彼女に聞くが彼女には本当にわからない。

 必死に逃げてきたこともあって、最深部までの距離はわからない。

 だが、そんなことをしている間に一番奥が見えてくる。


「ねえ、同じにしか見えないんだけど」

「どういうことだ?」


 前を歩いていた二人は最深部にも部屋があるのが見えたものの、そこは先ほどまでの部屋と同じようだ。

 それを見てチカはすぐに状況を理解する。

 これは、同じように何かで隠されているということですね。

 この施設に入るときにあったように、魔力を使った仕掛けではないことはわかっている。

 魔力を使った仕掛けであれば、チカはどこにあるかくらいわかる。

 それがわからないということは、隠すために使っているのは、魔力などに頼らない方法なのだろう。


「探す必要がありますね」

「え?かなり時間がかかるんじゃない?」

「いいえ、そこまでではありません」

「どういうこと?」

「ここの入口を覚えていますか?」

「あー、岩に擬態してたやつか」

「はい。それと同じであれば……」

「何かでうまく隠してるってことか」

「なるほどね、さすがはチカ」


 キキルと彼女は内容に納得すると、部屋に入っていく。

 先ほどの内容から二人とも、なんとなく隠せるであろうものがある部屋を探している。

 最低でも人が通れるくらいの幅と高さがあるものとなれば、部屋は絞れる。


「ここじゃない?」

「いや、ここだろ」


 早速二人はそう言って、部屋の中を物色する。

 それぞれあったのは、大き目の何かが書かれた紙。

 二つ目は大き目の本棚だ。

 二人ともは、それぞれ見つけたそれらしい場所のものをのけるが、後ろには何もない。


「ないじゃん」

「違う場所か」


 二人はさらに違う場所を探し始める。

 だけど、チカは考えた。

 こういう場所だ。

 自分が隠すのであればどうするのか……


「チカ、どこ行く気?」

「戻ろうかと思いまして」

「どこに?」

「最初の部屋まで……」


 チカはそう口にすると、二人はかなり驚いた表情を見せる。

 二人がなんとなく言いたいことは理解しているつもりだった。

 でも、チカにはどこか確信めいたものがあった。


 チカの言葉に疑問ながらも二人は着いてくる。

 それは、チカの発言というものが的を得ていることが多いからだろう。

 そうしているうちに三人は来た道を戻った。

 最初の部屋。

 隠すようなものは何もないと思っていたが、あることに気付く。

 重い扉というのは当たり前だが閉めるのが大変なため開けっ放しになっているが、それは片方だけだ。

 この重い扉というのは片開きだったはずだからだ。

 でも、見えている扉というのは両開きだ。

 小さいほうの扉というのは動いていないとなれば、開け方は逆。


「ここですね」


 チカはそう言葉にしながら、扉の中にある扉を開けたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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