Ⅷ 学園時代のランクS
雲の元へ向かう霞。
「おーい、雲ー」
「えっ?霞様?」
「そうだよー。みーんな大好き霞様だお」
「そうですか。して、なんのご要件でしょうか」
「ちょっとくらい付き合ってくれてもいいのに…。そうそう、栃木今どうなの?」
「宇都宮より南東以外は、全て制圧しました。生き残りの人々は、保護して一時的に群馬へ。ざっと1万人ほどでしょうか」
「君、ちょっと有能すぎるね。まさか指揮も取れたとは」
(私の右腕、雷雨と交換かな…。いや、流石にないな)
町に出ている雷雨:「へくちっ。誰か噂してる?」
「いいえ、仲間が優秀だったんです。私なんかについてくるにはもったいない人ばかりですよ」
「そんなことないぞ。お前は人を引き付ける魅力があるんだ」
「そうだといいんですけど…」
「まぁ、自信持ってくれ。引き続き頼むな。困ったら私達呼べよー」
「はいっ!」
◎●◎●◎●◎●◎●◎
私が群馬へ帰ってくると、
「あ、霞ちゃんいたいたー」
「どしたの?雷雨。隣の子は…」
「紹介するね。私の新しい友達、四奏 霰ちゃん」
「初めまして、四奏 霰と申します」
昔の大人気ギャグ漫画に名前似てるな…。って、そんなことはどうでも良くて、
「君、強いね。学園あったときは評価”S”って言われてたんじゃない?」
「なんでそれを…」
「んー?雰囲気でわかるよ。私と手合わせしない?」
「ちょちょちょ、いきなり何いってんの霞ちゃん!霰ちゃんも別に受けなくて、」
「私で良ければ」
「おっ、ノリいいねー。私、そーゆー子好きー」
隣では雷雨が「はぁ…」と呆れている。場所を移動し、
「どっからでもかかってきていいよ。私は能力使わないから」
「え?まぁ怪我しても知りませんけどね!!」
と、霰は勢いよく私に襲いかかってくる。能力を使ってるのかは知らないが、まっすぐ突っ込んできているように見える。
「そんなんじゃ、私には効かないぞー」
と、私が言葉を放つ瞬間。霰は私の真後ろに居た。
「この程度ですか…」
霰は失望したかのように私に攻撃を振るってくる。私はそれを受け止める。
「はっ!?なんで…。ちゃんと操作したはず…」
「あー、あなたの能力は”意識操作”かぁ。どうりで動きが見えないわけだ。でも、効果時間も短いし、攻撃するときは発動できないみたいだね。その程度じゃ私には効かないよ」
「そんなこと…ないっ!!」
また霰は、大ぶりで私に攻撃を加えようとする。でも、やっぱり気づいたら背後を取られている。
「今度こそっ!」
ガキーン・・・
私に攻撃が命中する。そのまま私は遠くまで吹き飛ぶ。
「やっぱり、当たるじゃない。さっきのはまぐれね」
「うーん、良い攻撃だねぇ。でも、まだまだかな」
「なっ、なんで…。確かに斧で吹き飛ばしたはず…」
そう、私はわざと攻撃を食らった。斧があたった場所が痛ーい…。でも、この程度じゃ倒れられないよねっ!
「意外と強かったから、私も能力を見せてあげるよ」
「煌めけ!わが太陽!溢れ出せ!ソレイユ!」
いつもの詠唱と共に、私の腰には剣が差さる。
「リエ・ソレイユ!」
そして、私は霰を一発で気絶させるのだった。
「ちょちょ、大丈夫!?これ、生きてる!?」
「大丈夫、峰打ちで気を失ってるだけ。さぁ、運ぼ」
「峰打ちをお腹に当てて気絶ってどんな威力してんの…」
「本気でやったら殺しちゃうよ?」
「笑えない冗談はやめて」
◎●◎●◎●◎●◎●◎
「ん…?ここは?」
「よかったぁ、目が覚めたぁ」
「はっ!あの人は!?ッ!痛たッ…」
「あーあー、あんまり暴れないで霰ちゃん。霞ちゃんならそこにいるよ」
「よっ!」
「さっきは油断してただけです。勘違いしないでください」
「そうやって自分に自信があるのは大いに結構。でも、今の時代それじゃ生きていけないぞ」
「そんなことありません。私は学園で、トップクラスの能力と実力を持っていました。あなたごときに負けるはずは…」
「その”ごとき”に負けたのは自覚を持ったほうがいいよ。じゃないと、敵の実力を見誤って死んじゃうよ」
「そんなはず…」
「今、こうしてあなたがベットで、私が立ってるのが何よりの証拠じゃない?」
「・・・」
「別に私のこと嫌いでもなんでもいいけどさ。その慢心は捨てたほうがいいね。雷雨の友達なんでしょ?それなら、すぐには死んでほしくはないよ」
私はそう言い残して部屋を出た。
〜部屋の中〜
「霰ちゃん。霞ちゃんの言ってることは正しいと思う。でも、今回は霞ちゃんがやりすぎだし、あんまり気にしなくても大丈夫だよ。霰ちゃんが強いのは、私がよく知ってるし。」
「いいや、私もわかってたの。霞さん?だっけ。あの人が言ってたこと。私は事実モンスターにも勝てないし。学園でランクSだったのは嘘じゃない。でも、モンスターに出会ったとき、怖くて逃げてきちゃったの。不思議だよね。絶対にみんなより強いって確信があったのに、逃げちゃった。人と戦うのも今回が始めて。煽られて、ヤケになっちゃって」
「あれは天災の1種だよ。しょうがない」
「でも、あの人がいい人じゃなかったら、私は死んでた」
「霰ちゃん…」
「私、謝りに行かないと…!」
扉を開きかけて、
「おっと、それは必要ないよ」
「霞さん…?」
「霞ちゃん?どっから聞いてたの」
「んー、全部」
「盗み聞きは良くないよ」
「ごめんごめん」
「あの…。今回は本当にごめんなさい!」
「ううん。わかってくれたようでなにより。これから長い付き合いになるだろうからよろしくね。霰」
「はいっ!よろしくお願いします!霞さん!」
「もう…。いきなり戦い始めないでよね。ほんとに心配したんだから」
「はい…」「ごめんなさい…」
「ちなみに雷雨ちゃん、どっちを心配してたの…?」
「霰ちゃんに決まってるでしょ!私は霞ちゃんのことよーく知ってるから。負けるのは霰ちゃんなのわかってたんだから!」
「ごめん…」
と、少し怒っているようだ。
「霞ちゃんも!年下相手にガチにならないの!」
「以後気をつけます…」
そうして、二人とも雷雨からの説教を受けることになったのだった。
《四奏 霰》:13歳。元学園最強のランクSを冠していた。少し生意気。【能力ランク:A】