XLIX これからの未来(霙視点)
霞が倒れ、各地でドタバタ。
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視点交代:九十九 霙視点
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急に電話がかかって来た。
「雲、どうしたの?今、私たち忙しいんだけど…」
「大変です!霞様!って、その声は霙さん?というか、何が合ったんですか?」
聞き返されたので、私は今起きていることを伝える。
「実は、雨が死んだの…。雷雨ちゃんも大怪我で助かるか…。リーダーも、雨が死んだのは自分のせいだって、責めてて…」
一瞬の沈黙が飛ぶ。
「そんな…嘘です、よね…」
「残念ながら事実だよ。それで?連絡してきたってことは、何かあるんでしょ?」
「…そうなんです!実は、四国の魔物にとても勝てそうもなくて…」
応援要請ってわけか…。リーダーが倒れた今、指揮命令系統は混乱しているだろう。ここは、晴になんとかしてもらうしか…。でもそうすると、今度は本国が、
「霙、どうするんだ?」
晴が聞いてきた。さっきの会話はスピーカーにしていたからここにいる全員が聞いていた。
「霙、お前が指揮を取るんじゃないのか?」
いかにも当然という顔で言い放ってくる。私が…?
「何を”私が…?”みたいな顔してるんだ?今、全体の指揮を取れるのは霙しかいないだろ。なぁ?みんな」
全員が頷く。
「霞の帰って来る場所を守らなきゃな」
リーダーの帰って来る場所…。
「そうだね。泣き言を言ってる場合じゃない。ここからは、私の指示に従って動いてもらう。みんな、いい?」
「おう」「もちろんです」「はいっ!」「当たり前です」「指示に従います」
みんな、力強く返事してくれた。
「それじゃあ四国には、一隊に行ってもらう。三隊、四隊はリーダーと、雷雨ちゃんの警護。反逆組織は潰しきれてないからね。七隊と八隊は私に着いてきてもらう。いいね?」
「「「はい!!!」」」
私は方針を決め、会議室から出る。これからやることは山積みだ。急がなくてはならない。
私はプロスペリテの通信本部へ向かう、そこで緊急無線と称して関東中に張り巡らせた無線で、放送をかける。
「現在、私達は危機に襲われています。戦闘部隊が勇敢にも立ち向かい、危機を撃退してくれました。ですが、被害もあります。十隊隊長、八鏡 雨がなくなったことをここに報告します。彼女は1週間後、国葬として弔おうと思っております。ご参列ください。そして現在、トップの七緒 霞は戦闘の影響で指揮を取ることが出来ません。よって、代理として、”九十九 霙”が立つことをここに宣言します」
民衆の反応がどのようなものかはわからない。しかし私はやらねばならない。リーダーの帰って来る場所を守るために。
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数時間後…
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同盟国には使者を送った。そのうち雨の訃報は届くだろう。ふと、私に2つの連絡が届いた。1つはリーダーが目を覚ましたということ。もう1つは、晴からのさらなる援軍要請だった。これには私も驚かざるを得なかった。しかし、トップとして、優先順位というものがある。私は急いで隊長たちに指示を飛ばす。
「四国からさらなる援軍要請が来た。三隊、四隊、八隊に行ってほしい。それで、みんなも知ってると思うけど、国の2大巨頭を失った民衆は酷く混乱している。それを治める人員がほしい。だからこれ以上の援軍は望めないって、晴に伝えて。それから…撤退の選択肢も」
撤退の選択肢は、取りたくはないだろう。民衆の支持を失うかもしれない。
「「「了解」」」
そして私は、急いでリーダーの元へと向かった。
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「リーダー!?」
部屋に入った私が見たものは、気力もなく、ベットに座っているリーダーの姿だった。リーダーがポツリとこぼす。
「私…この先、どうやって生きればいいんだろうね。霙」
「…そんなこと言わないで!!あなたはまだやることが残ってるでしょ!!七緒 霞!!!」
リーダーは一瞬、ハッと顔を上げ、
「一人にして」
と、私達に背を向けてベットに横たわってしまった。
私達は部屋を出るしかなかった。
「心配するな。霞は必ず戻って来る。これまでもそうだっただろ」
と、一緒に居た霰に言われてしまった。そんなにも私の顔が落ち込んでいるように見えたのだろうか。切り替えなければ。
「そうだね。リーダーを信じよう」
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リーダーが部屋から出てこなくなって数日が経った。幸い混乱は治まり、晴達も無事に帰ってきた。明日は雨の葬儀の日。隊長たちだけは、事前にお別れは済ませてある。明日の場を仕切るのは隊長たちの仕事だからだ。今日は、全員が涙に濡れた。
リーダーは、この日も結局部屋から出てくることはなかった。