Ⅴ 東京のモンスター
現在、東京に向けて歩いている最中だ。
「霞ちゃん。噂で聞いたんだけど、東京には強いモンスターが居るって本当?」
「それは知らないけど、居ても倒すだけだよ」
「ちょっと心配だなぁ…」
そう、雷雨が言っている噂は私も聞いたことがある。なんでも、兵器として開発されていたモンスター軍団が野生化しているとか。にしても、そんな噂どこから来るん?
「私は心配されるほど弱くないよ」
「それはわかってるけどさぁ…。部隊のみんなも怖がってるんだよ」
「それは士気に関わるし、ちょっと問題だな」
後ろを振り返ってみれば、不安な顔をしているメンバーが多い。部隊の人数は少し増えて50人程いるが、ほとんどが実勢経験ナシなため、無理もない。私は足を止め、
「みんな。モンスターに怖がっている場合か?その程度じゃこれからついてこれないぞ。気合い入れて自分が倒すくらいの気概で行け。いいな?」
と、私は少し厳しめに喝を入れた。すると”不安”の色は消え、”倒す”という気概に溢れている。
「ありがとう。これで士気も戻ったみたい」
「当たり前だよ。人の上に立つなら、このくらいはできて当たり前」
「やっぱり霞ちゃんはすごいね」
「そう?雷雨に言われると少し照れるなぁ」
◎●◎●◎●◎●◎●◎
「ついたー。東京だぁ」
「といっても、まだまだ端っこだけどね」
現在、私達は奥多摩町に到着していた。
「よーし、ここ拠点にするぞー。全員、5人ずつに分かれて、食料確保と人助け。モンスターはしっかり倒してくること。いい?」
「はい!」
「私と雷雨は近くのモンスター全部倒してくるから、後はみんなよろしくね?」
「お任せください!」
「もちろんですっ!」
部隊のみんなを軽くグループ分けして周囲に散らせた。”23区には近づくな”と念を押して言ってある。
なぜなら…。
「さーて、そのモンスター軍団とやらを倒しに行きますかー」
「本当に2人で行くの…?」
「部隊のみんなを死なせるわけには行かないでしょ。この辺には強いモンスター居ないから大丈夫だよ。ねえねえ、最近下級モンスターなら気配でわかるようになったんだぁ。すごいでしょー」
「はいはいすごいすごい」
「あー、絶対思ってないでしょ。まぁいいや。それじゃ、雷雨よろしく」
「了解」
そして私達は、雷雨の能力で23区内まで一直線で向かうのだった。
◎●◎●◎●◎●◎●◎
「ついたー」
「ちょっと疲れたぁ。霞ちゃん重いー」
「ごめんごめん」
23区の中心、千代田区についた私達。道中、下級というか、手下?のようなモンスターは居たがそ、ボス的モンスターは居なかったのでここまで来たのだ。
「あれ?中心に来たら一発で見つかったね。あいつボスじゃない?」
私達の目の前にいるのは背中に甲羅を付けた、亀?のようなモンスターだった。体長は推定10m程。よく見ると顔が、1980年代に発売された国民的ゲームのボスキャラと似ているような気がする。
「よーし、ちゃっちゃと倒しますかー。雷雨はテキトーに援護よろしく」
「おっけー」
「じゃあ、行きますかっ!」
「煌めけ!わが太陽!溢れ出ろ!ソレイユ!」
その言葉と同時に剣が出現し、
「リエ・ソレイユ!」
私はその言葉と同時にモンスターに襲いかかろうとする。しかし、モンスターが広範囲に炎を吐いていて近づきにくい。
「わーお、炎出てくるとか本当にあれじゃん!」
私は、炎を避けつつ作戦を考える。思いついた!
「雷雨っ!なんでもいいから土煙の出るものを目に当ててっ!」
「おっけぇー!」
早速、雷雨が瓦礫のような物をモンスターにぶつけてくれる。ほんと、できる子だなぁ。
私はその隙を突いて、モンスターに一閃を落とした。
顔が割れて行くボスモンスター。みるみるしぼんで10cm以下になってしまった。少し可愛い。
「ちょっとかわいくない?」
「わかるかも」
でもしっかり、倒しておいた。
◎●◎●◎●◎●◎●◎
ボスを倒した後は、手下のような中ボス的存在を2人で手分けして倒した。この数週間で雷雨もかなり成長した。
「だいぶ強くなったね」
「まだまだ霞ちゃんには勝てないけどね」
「そりゃ、そう簡単に負けるわけにも行かないからねー」
「いつかは肩を並べられるようになりたいなぁ」
「そしたら楽できそうだから早く強くなってね?」
「そう言われるとなんか嫌になってきた」
そんな漫才を広げながら、仲間の元へと戻るのだった。
《九十九 霙》:18歳。知識はあるが、少し常識が抜けている女の子。能力は”重力操作”【能力ランク:A】