XXVIII 重複契約
重複契約の話し合いをする霞と雨
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視点変更:霞視点
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「雨、言いたいことはわかるな?」
「…本当にいいのか?」
「あぁ、私は構わない。雨のほうが強いしな」
「私も霞のことは信頼している。そのうち霞のほうが強くなる」
「そうだといいなぁ」
別に雨のことを信用していなかったわけじゃないが、こんなに早く話がまとまるとは。てっきりもう少し渋るものかと。
「話はまとまったけど、こっちじゃ重複契約、できなくね?」
「そうだな」
・・・
「どーすんねん!!ミカエル、私達を早くそっちに呼んで!?」
「ガブリエル!!今日だけは許すから早くしてくれ!?」
そうこうしていたら、あの感覚。薄れゆく意識の前で、横を見てみれば頭を抑えている雨が居た。あっちも同じ感じだろう。
「ミカエル、私をこっちに呼んでいいの?」
「ガブリエル、あっち行かなくていいのか?」
「「えっ?」」
「だいじょーぶ。2人共同じとこ居るから問題ないよ。霞ちゃん。雨ちゃん。」
「ということです」
イマイチ状況が飲み込めない私達。
「1つ聞くね。どうして世界が共有されてるわけ?」
「そりゃあ、天使の力で?」
あ、これ聞くだけ無駄だ。隣で雨も呆れた表情をしている。
「話はまとまったんだよね?じゃあさっさとやろうか。あまり時間はないよね」
ミカエルの一言で本来の目的を思い出す。あまりに状況が意味わからなさすぎて忘れていた。
「じゃあそれぞれ、私は雨ちゃんと。霞ちゃんはガブリエルと」
「代償は何でもいいの?」
「特に指定はないね。今代償になっているもの以外なら、なんでもいいよ」
「ガブリエル、代償は何がいいの?」
「私の代償は人間に宿る”概念”をもらっているんです。つまりは目に見えないものですね。例えるなら、運勢とかやる気とか。雨ちゃんからは、”感情”をもらっています。本当はあんなにツンデレじゃなくて、よく笑う子なんですよ」
「ガブリエル!余計なことを言うな!!」
「ふーん、あの雨がねぇ」
「ニヤニヤするなぁ!」
おっと、話がそれたな。
「じゃあ私は、やる気だな。元からないから対して変わんない」
「わかりました。…本当に少ないですね。一応足りてますが」
私の首には謎の紋様のようなものが出来、そして消えた。
「今、首に何かあったでしょう?それが重複契約の証です。能力を使うと出現しますが、特に気にしなくて大丈夫です」
「わかった」
どうやら、あちらも終わったようだ。
「じゃあ、またねー」
ミカエル、鬼…。私はまた、気を失った。
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「おおー。なんか急に何でもできる気がする」
「そんなことはないけど、同感だ」
本当に今なら何でもできそうだ。体の隅から隅まで力が満ちているように感じる。
「あれ?怪我直ってる」
「ガブリエルの能力に”治癒能力”があったからかもな。私にはくれなかったが」
「試しに少し使ってみますか」
そう言って私は腕を少し切る。戦闘に支障のない程度に。
「おおぉぉおぉ!直った!!」
「自分専用の治癒能力、いわば”再生能力”と言ったところか」
「重複契約すげー」
「じゃ、行きますか」
「そうだな」
私達はリベンジするために歩き出した。
《七緒 霞》:17歳。新しい能力を習得した。”再生能力”。【能力ランク:X】
※言ってませんでしたが、能力ランクというのは、個人の総合能力ランクのことです。同じ能力を有していても、能力ランクが異なる場合があります。
今回の霞の再生能力は強くないですが、天使の能力を保有しているので、能力ランク:X となっています。