XXI 同盟成立!!
交渉に難航する霞達。
「なぁ、晴。これ、どうにかなるのか?」
「悪い、俺にはどうもできなかった…」
現在、私達は蹲ってロボットの修理をしている凪をぼーっと眺めることしかできていない。
「うん。諦めるか」
「て、おい、それでいいのか?」
「だってー、話聞いてくれないんじゃ、どうにもならないでしょ。霙連れて来るしかないよー」
「それもそうなのかもな…」
私達は帰る支度を始めた。その時、遠くから声が聞こえた。
「ちょっとお待ちくださーい!」
ズザザザザーー・・・・
こけた。見事にコケた。
「大丈夫?怪我はない?」
私は苦笑をこらえながら手を差し出す。顔を見れば、20代くらいだろうか。淑女って感じはしないが、いい人そうではある。
「はい。すみません、ありがとうございます。私、”パーチェ”の幹部やってます。”弐谷 大旱”と申します。女の人と間違われますが、男です」
「私、何も言ってないけど…」
「すいません!よく間違えられるもので…」
「まぁ心のなかで思ってたんだけど。それより、あなたの当主様話聞いてくれないんだけどさぁ」
「おーい、凪ー?この人たちはお客様だぞー?」
「うるさい!!そいつらは絶対許さない!!」
「えぇ…。すいません。何が合ったかご説明いただいても?」
やっと話の分かりそうなやつが来たな。私は、さっきの話を説明する。
「それはすいませんでした!うちの者がとんだご迷惑を!」
「いや、それは気にしてないんだけどさ。こっちも壊しちゃったのは悪いと思ってるし。今回来たのは、同盟の話をしにきたんだ」
「同盟?それはどういった目的で…?」
「私達、日本を元に戻したいわけ。力で侵略するのは好きじゃないの。平和が1番じゃん?で、噂に聞いたの。”東北には頭のキレるやつがいる”ってね」
「なるほど、それでわざわざ来ていただいたんですね。立ち話もなんですし、こちらへ」
と言うと、いきなり地下への階段が出現した。まさかの地下帝国で、全員びっくりである。
「ほら、凪。行くよ」
「直ったー!!」
どうやら、ロボットの修理も終わったようだ。安心安心?なのかは置いておく。
「やだ!そいつらなんか入れないで!!」
「凪、あんまりひどいと今日のおやつ抜きね」
「やーだー!!大旱のイージーワールー!!」
「すいません…。頭はいいんですが、中身は小学生のままでして…」
この様子だと、小学生以下だが…?そんな凪を横目に、私達は階段を下る。凪はずっとこちらを睨んでいる。
「ここは全部、凪が作ったんです」
「うぉー、すっげー」
「これはすごいな」
「こいつ、こんなの作れるんだな」
私達が呆気にとられていると、
「会議室はこちらです」
「べーッッッ」
凪は舌を出して、目を引っ張っている。なるほど。餓鬼だな。
「先ほどの同盟の件は、どのようなご条件で?見たところ、温厚な方に見えましたのでここまでお連れしましたが、内容によっては」
と、真剣な顔で言う。間違いない。ここの実権はこいつが持ってるな。
「別に同盟といっても、私達は物品など、何も要求しません。私達が望むのは、”侵攻してこないこと”それだけです。反対に、もじ援軍が必要とあらば、私達は動きましょう。見たところ、地下の守りは侵入されてしまえば、全て”無に帰す”といえてしまうくらいザルです。正直なことを言ってしまえば、この程度の技術、うちの部隊なら容易く突破できるでしょう。でも、今回はそれをしなかった。なぜなら対話を望んでいるから。脅しに聞こえるかもしれませんが、平和に行きましょう。あなた達にデメリットはないはずです」
「やだ!!絶対やだ!!」
うまくまとまりそうな感じだったのに、凪が茶々を入れてきやがる。
「悪かったって、凪。私達も悪気があったわけじゃない。だが、お前がもし知らないロボットに襲われたら反撃するだろ?それと一緒だよ」
そう言うと、凪は黙ってしまった。あちゃー、子供相手に言い過ぎたかな。
「そのとおりです…。ほら、凪、謝りなさい。ほんとは分かってんだろ?お前、俺より頭いいんだから」
「んぅぅぅ…ごめんなさい」
「あぁ、こっちも悪かったよ。お互い仲良くしてこうぜ。飴舐める?」
「飴!!舐める!!」
チュパチュパチュパチュパ・・・
意外とチョロかった。
「さて、話を戻しますね。決定権がどっちにあるかは知りませんが、決めるなら決めてもらいたい」
「…わかりました。では、その話で、成立ということで」
「おおっ!話わかるねー。じゃ、パーティだぁあ!!」
無事に同盟も成立し、一安心なのであった。
《弐谷 大旱》:21歳。中性的な声・体格・ビジュアルを持ち合わせた男。能力は”水魔法”【能力ランク:C】