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XVIII 強くなるために

開幕戦が終わって翌日。

「んぅ…?ここって…」

「あ、やっと起きた」

「あれ?私気絶してた?」

「うん。試合が終わった後にね。雨ちゃんが運んでくれたんだよ」

「そうなのか。悪いな。雨」

「別に、ライバルに死んでもらったら困るからな。霞」


おー、名前を覚えてくれたようで何より。でも、民衆の前で負けちゃったから、信用落ちちゃったかなぁ。


「次は負けねぇかんな」

「いくらでもこい」

「雷雨、試合終わった後のみんなの様子はどうだった?」

「みんな困惑してたね。霞ちゃんが勝つって信じてたからね」

「試合終わってからどのくらい経った?」

「5分くらいだよ。観客は、まだ残ってるはずだよ」

「よし、行くか」


「おーい、みんな聞いてくれー」


その私の声に、観客の殆どがこちらを振り向く。


「負けてんじゃねーか!」

「こんなので守るとか言い張ってたのかー?!」

「霞様、動いて大丈夫ー?」


と、まぁ様々な声が飛んでくるわけだが、ほとんどがヤジだな。わかってたことではある。


「悪いな、私は負けた。でも、これでわかっただろ?私だって、全員に勝てるわけじゃない。もちろん、やれることはやるし、必要なことはなんだってやる。でも、それでも足りないんだ。だから、自分で自分を守れるようになって欲しい。そのために、ランク戦をはじめ、部隊を作ったんだ。私だけで足りるなら、最初からそうしているさ」


そう言うと、観客全員が黙ってしまった。


「それと、もう一つ。こいつ、八鏡 雨は今日から、十隊の隊長だ。私より強いんだ。みんなも文句はないだろ?なぁ、雨」

「私は戦えれば何でもいい」

「と、いうことだ。あとはみんなに任せるさ」


私はそう言って、ポリーナを後にした。



◎●◎●◎●◎●◎●◎



「霞ちゃん、あの話最初から考えてたの?」

「んー、まぁ大体は?別に最初から負ける気があったわけじゃないから、もちろん勝ったときはどうするかの方が考えてたけどね」

(自分より実力の高いやつを従えているとなれば、中々文句は言えないだろうからな)

「にしても、雨ちゃん強かったね」

「うん、私より、10倍くらい強いかも。前橋で戦ってたら余裕で負けてたね。霙に感謝」

「そんなに違うの?私にはそうは見えなかったけど。ちょっと霞ちゃんが押されてるくらい」

「いや、あいつは本気の10%も出してないだろ。魔力の量で、力量差がわかりやすかったしな」

「魔力とか、何にも見えなかったよ?私」

「そう?めっちゃ雨の周りで揺れてたけどなぁ」


近くでひそひそ声がする。


「あんなのについていって大丈夫なのか…?」

「でも、助けてくれたのには変わらないだろ」

「ここまで復興したのも、あの人のおかげなんだから」

「でも、一番強いって言ってたやつが負けたんだぞ…?」


まぁこうなるよな。人間、失った信用を取り戻すのは難しい。でも、やれるだけのことはやったからあとはほとぼりが冷めるのを待つだけだな。


「ちょっと言ってくる」

「やめとけやめとけ」


私は雷雨が飛び出しそうになるのを慌てて止める。


「なんで止めるの?」

「いいんだよ。あれはわかってたことだ。そのうち収まる」

「うぅん…」


話を聞いてくれたようで何より。うん?なんか聞いたことのある声が遠くから聞こえる。


「お前らは対して強くもないくせにそんなこと言ってんのか?」


「そんな程度の奴らが言えることなのか?」


言いまわっているのは、雨だった。民衆は全員黙ってしまっている。そりゃ、今1番この国で強いやつに逆らえるやつなんていないわな。


「今までの恩をなにも返さずに、よくそんなことが言えたな」


民衆全員にクリティカルヒット!やっぱり、というか雨はものすごく怒っている。


「はいはい、そのへんで。私のためにありがとね。雨」

「お前のためじゃない。不義理なこいつらが許せなかったんだ。霞」


やっぱこいつ、さっきから思ってたけどツンデレだな。


「別に私はみんなの言う事を否定しない。全部事実だからね。でも、この先本当に生きていくのに何が必要かは、自分で考えないとだめだよ」


私はフォロー(?)を入れて、その場を立ち去るのだった。

《八鏡 雨》:17歳。ツンデレ。霞より強い。【能力ランク:X】

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