XVII 天使の能力者達
どうやらもう1試合あるようだ。
「これにて開幕戦は終了です。もう1試合ありますので、お楽しみいただけると幸いです」
観客はなにが始まるのか気になっているご様子。うー、私の出番、よーやくやー。
「準備が整ったようです。では、登場してもらいましょう!我が”プロスペリテ”の現トップ!七緒 霞!!」
うぉぉおおおーー!!
「うぇーい。みんなやっほー」
観客も喜んでいてくれているようで何より。
「続いて、対戦相手の選手に登場してもらいましょう!八鏡 雨!」
初めて見る人物に、どうやら観客は困惑しているご様子。
「うぉい、盛り上がり少ねぇなあ」
なんだ?目立ちたがりか?でも、私より目立つのは許さんぞ。
「では、八鏡 雨について簡単に紹介させていただきます。この子は、天使と契約しており、実力は霞と同等もしくはそれ以上あるといえるでしょう」
その雷雨の言葉に困惑する観客。せめて、それ以上とか言わんといて??
「それでは、戦っていただきましょう!始め!」
私のモヤモヤした思いとは裏腹に下される宣言。まぁ、行きますかっ!
「やっと戦えるなぁ!雨っ!」
「ボコボコにしてやんよ!えーと、誰だっけ?」
「霞だよ!さっき言ってただろ!?名前くらい覚えといてくれ」
「自分より弱いやつに興味ない」
なんだこいつムカつくなぁ…。相当自信があるんだろう。
「初手から飛ばすよ!リエ・ソレイユ!」
私はミカエルの能力を発現させる。
「輝け!私の宇宙!暴れろ!ピアチェーレ!」
その言葉と同時に、雨の腰には杖が差さる。なるほど、天使と契約してるやつが居なかったから知らなかったけど、杖も出るんだな。雨も同じく驚いている様子。にしても、杖で突っ込んでくるとは、舐められてるねぇ!!
けたたましい金属音と金切り音が周囲に鳴り響く。
「杖って木製が普通じゃないの?」
「お前の刀が”ぼんくら”ってことじゃないの?」
言うねぇ…!これは本気で怒っちゃうかもね。
「フィシ・ソレイユ!」
私は更に能力を使って、身体能力を高める。
「ん?」
「まだまだこんなもんじゃねーぞ!」
わたしは更に馬力を上げ、ついには雨をふっとばす!
「痛たっ…。私が飛ばされるとはねー」
「その杖は魔法使えんだろ?使えよ」
「ふーん、その挑発乗ってあげるよ。アロン・ピアチェーレ!」
その言葉と同時に、なにかとてつもないオーラを纏う雨。魔法を使えない私でもわかる。あれは魔力だ。
「アリエテ!」
杖からは水が出ている。これは溜め攻撃か?いいだろう、受けてやる。
「そうこなくっちゃ!私の全身全霊、受けられるものなら受けてみな!!」
そう言って杖の先からは、巨大な水の玉が放たれる。大きさはざっと直径500mほどだろうか。でかすぎんだろ。
「こんなのじゃ私は倒せねーぞ!フィシ・ソレイユ!」
私は能力を使って、水の玉をたたっ斬る。斬った先になんと、雨は火球を準備していた。
「じゃあこれもいけるよね!!ジェメリ!」
今度は豪速の火球が飛んでくる。この感じ、手加減してるな。
「舐めたことしてくれるなぁ!そっちがその気なら、本気にさせてやる!」
私は一度能力を解除し、精神を集中させる。
(ここだっ!!)
「リエ・ソレイユ!」
私は高速で雨に迫り、斬撃を喰らわせる、はずだった…。
「はぁ、?まじかよ…」
「ん?その程度、避けられるに決まってんだろ」
なんと、皮一枚斬っただけで、避けられてしまったのだ。こりゃ、今回は私の負けだな。
「うん?もう力も残ってないか。やっぱり私が一番強いんだな」
なんか鼻につくなー、一発は入れてやりてぇ。
「さて、とどめだ」
私にトドメを差そうと近づいてきた雨。私は、
「フィシ・ソレイユ!」
ズシャッ・・・
どうやら当たったようだ。
「やっぱ痛いなぁ。でも、命に届く重さじゃないな」
「うーん、それ私の全力なんだけど」
「まぁでも、良いライバルが見つかったから、気絶にしといてやる」
ドンッ・・・
「勝者、八鏡 雨!!」
会場から歓声は上がらない。当然だろう。最強だと思っていたトップが負けたんだからな…。
《万伊里 雹》:17歳。かなりお調子者だが、実力は本物。能力は”超加速”【能力ランク:A】