Ⅹ 激戦の結果
現在、敵と戦っている最中の霞。
「煌めけ!我が太陽!溢れ出ろ!ソレイユ!」
と、いつもの詠唱で私の腰に剣が差さる。相手が、まっすぐ突っ込んでくるのでそれを颯爽とかわし、
「リエ・ソレイユ!」
と、私も攻撃を加えようとするも簡単に避けられてしまう。そのまま獲物同士の切り合いへと突入し、両者から少なからず血しぶきが舞う。
「んー、君強いね。名前は?」
「”樫木 涼”。君の主となる人物の名前だよ!」
と言いながら、樫木は火球を飛ばしてくる。やけに正確で避けづらいな。常時能力を発動していないと、避けきれない。追跡能力まで付いてやがる。流石に厄介だね。威力自体は大したことはないようだ。しかし、火球が当たって服が燃える。
「もー何してくれてんの」
「アハハッ!その姿興奮するねぇ。顔のいい奴、Sランクとかイキってたやつ。ぜーんぶ俺の奴隷だ!奴らは虐げられるべきなんだ!」
と、笑いながら言う。めっちゃムカつくな。
でも、こいつはカスだと確信した。更生の余地はないな。
「ほらほらぁ!早く避けないとぉ、服なくなっちゃうよぉ?」
奴は戯言を言いながらも火球を放ってくる。しかし、実力は本物だ。火球をうまく操って、火炎放射器のように扱っている。随分魔法の扱いに長けているようだ。結局避けきれず、服が半分以上燃えた。
「そろそろ降伏したらどうだい?今なら奴隷より少し高い地位に置いてやるぞ?」
「そんな話乗るわけないでしょ」
「残念。もう少しいじめたら乗ってくれるかな。君、タイプなんだよね」
「そんなキモいお誘いはお断りだね!」
再び切り合いへとなだれ込む。が、しかし困ったことに私が押されている。
「おらぁっ!吹っ飛べ!」
隙を突かれて、建物の壁まで蹴り飛ばされてしまった。
「頼むから死なないでくれよ?」
そこには、彼の気持ち悪い笑みと一緒に、攻撃が眼前まで迫っていた。
「ちぇっ、痛いなぁ」
そう。なんとか避けたが、私は左肩をざっくり切られてしまった。戦闘不能とまでは行かないが、かなり動きは鈍るだろう。
「どう?お話聞く気になったぁ?」
「ふん。聞くわけ無いだろ。こんなにいたぶられたのは始めてだね」
「そっか。じゃあもう、退屈だから殺しちゃうね」
そう言って、奴はすごいスピードで私に近づいてくる。奴が油断する瞬間。これを待ってた!
「唸れ!ソレイユ!」
私がそう唱えると、ソレイユの色が変化する。赤色のソレイユが青色に変わる。
「フィシ・ソレイユ!」
その言葉と同時に私は攻撃を放つ。”フィシ・ソレイユ”この能力はさらなる身体能力強化と超威力の近接攻撃が放てるようになる。ただし、射程はごくわずか。かなりのスピードのため、避けられる相手は基本的に存在しない。だが、体力の消費が激しく、リエ・ソレイユを常時発動していた私は、肩の状態を考えても、後1回が限界だろう。
「中々良い攻撃だったよ。でも、少し足りないかなぁ」
「ありゃりゃ、受け切られちゃったか」
どうやら、致命傷とまでは至らなかったらしい。気づけば、ソレイユの色も戻ってしまっている。私の体力はほとんど残っていない。でも、奴もボロボロだ。
「最後の決戦と行こうか!でも、もうあの攻撃は喰らいたくないね」
と、奴は再び火球を放ってくる。流石に彼の動きも鈍い。精度は落ちているが、能力を使っていないと簡単に被弾してしまう。
(こりゃリエ・ソレイユだと倒しきれなさそうだなぁ。もう一回フィシ・ソレイユを当てるしかないかぁ…。どうしよ)
近づく手段もない。援軍も期待できない。それに、奴はフィシ・ソレイユを一撃耐えている。
私は悩む。ふと、私の視界に何かが飛び込む。
(これだ…!)
「リエ・ソレイユ!」
私は最後の力を振り絞り、体を加速させる。
「アヒャヒャッ!無駄無駄ぁ!!」
火球が私を追いかけてくるが、私には追いつけない。私は半分崩れたビルを目指し、駆け上がる。
(頼むから、もう少し持って…!)
なんとか登りきり、私はそこから奴を目掛けて飛ぶ!
(着地なんて気にしない。どうせ負けたら、私は死ぬ)
「フィシ・ソレイユ!」
ソレイユも私に呼応するかのように、より強く色が変わる。
「なっ、何ぃ!?」
どうやら、これは想定外みたいだ。まぁ普通、あんな高さから人間が頭から飛び込んでくるとは思わないもんね。
奴がうろたえている間に、私は攻撃を放つ。
ドガーーーン・・・
私が地面に衝突した音が辺りに鳴り響く。横を見れば、奴の体は2つに裂けていた。
「勝ったぁ…。あぁ、百白を連れて帰らないと…」
私は百白を担いて、群馬に向かうのだった。
(結局脳筋解決方法だったな…。あー、頭が痛い…)
◎●◎●◎●◎●◎●◎
「ただいまぁ…」
弱々しい声で私が言う。
「どうしたの!?その大怪我!?」
雷雨は心底驚いているようだ。そりゃそうか。血だらけの私が気を失ってる百白を担いでるんだもんね。驚かないほうがおかしいくらいだ。周りの人達も、驚きのあまり声も出ないみたい。
「あっ…、雷雨。埼玉のあいつは倒してきたから、後はよろしく…」
そうして私は倒れてしまった。
《樫木 涼》:カス。今後出てきません。(おそらく)
先日はどうもすいませんでした!が、しかしⅩ話突破しました!いつかキャラクターのまとめ編を投稿する予定です。