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第七話 ヤクザ降臨

 学園に入学してから数日が経過した。

 俺は、カーストの中の下くらいのポジションに落ち着いている。

 ぶっちゃけ、行こうと思えば上にも行けるのだが、まあ、そういうの好きじゃないから実力は誤魔化している。


 あと、あれからヴィシーが俺に話しかけてくることは無かった。

 話しかけてきたらうざいなー、って思ってけど賢い人間で良かった。

 もしも話しかけてきたら実力行使しようと思ってたからね。

 あまり目立ちたくないんで、普通に嬉しい。


 そんな訳で、現在俺は中の下らしくぼっちで飯を食っている。


 メニューはなんかの野菜となんかの肉。

 なんかこの肉、モチャモチャしてる……この食感は魔蟲っぽいな。

 他の生徒も気付いてるのかな?これが虫の肉って事に。


 そう思い周りを見渡してみると、普通に食ってた。

 あのー、この世界でも虫って忌避されるもの何だけど……


「おお、この肉美味いな」


 子爵家の生徒が美味しそうに食べているのを傍目に、なぜか笑いそうになってしまう。


 まあ、確かに美味しいけど。

 でもさあ、この肉って虫なんだよ?

 なんか嫌じゃない?

 俺はダンジョンで食い慣れてるから良いけど。

 流石に指摘することは出来ないけど。


 そんな事を考えていると、ブレストが隣の席に座ってきた。


「今日のメニュー、虫ですよね」


「うん。他の貴族家の令嬢とかが気付いてないのがなんか面白い」


「そうですね。まあ、私は食べ慣れているんで気にはなりませんが」


 冒険者をやっていると、たまに遭難することがある。

 そういう時は、そこら辺に居る魔獣や魔蟲を狩って食べるのだ。

 美味しいのとクソ不味いのが居るが、今俺たちが食べているのはとても美味しいヤツである。


 食通曰く、珍味らしい。

 知る人ぞ知る高級食材とのこと。

 

「これは……確か生魔蟲(エウ・ロア)の肉ですよね。その黒い身から、”ダンジョンの黒曜石”なんて呼ばれていたと思います」


「そうだね。駆け出し冒険者の時はこいつの身で稼いだ記憶がある」


「私も、この虫にはお世話になりました」


 そう言いながら、ぷにぷにとスプーンの先で肉をつつく。


「所で話が変わりますが、この学園の上級生に私の姉が居るんですよ」


「ああ、あれか。プルシュナだっけ?」


「そうですね。あの人なんですけど、大変優秀なんですよ。幼いころから彼女にだけは剣術でも魔術でも勝てませんでした」


「流石は生徒会長なだけはあるね」


「ええ、それだけならば本当に優秀な人です。とても賢く、この国の誇る人間です。ところが、少し彼女には問題があって……大変支配欲が強いんですよ」


「あー、確かに。支配欲強そうなことしてるな」


 こんなカーストを作った人だ。

 支配欲が強いなんて言われると、しっくりくるな。


「私が小さいころから、彼女には少し困らされていてね。その、こう、怖いんです。何かあるたびに喧嘩を吹っかけてきて、毎度毎度ボコボコにして来るんです。いや、本当に怖い人です」


「マジか」


 珍しいな、ブレストがそんな事を言うなんて。

 ブレストは、数年間一緒に居たのでわかるが、鋼の精神を持つ人物だ。

 だから、彼にそれだけの事を言わせるのは相当だぞ?


「──ちょっと、隣いい?」


 ブレストと話していると、突然横から話しかけられた。

 

 向いてみると、そこには金髪、釣り眉の如何にも気が強そうな女子生徒が居た。


 誰なのか、とブレストにアイコンタクトで訊いてみる。

 すると、手信号でプルシュナであると答えた。


 おいおい、マジかよ。

 絶対めんどくさいヤツじゃん。


「あ、はい。どうぞ」


 どうせ、文句を言っても無視されるだけだろう。

 俺は男爵家なのだ。王族である彼女に何を言っても無駄だ。


 それに、目を付けられたくない。

 

「あなたも遂に入学したのね。歓迎するわ」


 カウンター席にて、王族に挟まれる俺。

 目立つのは嫌なんだけど。

 ほら、周りの生徒の眼が痛い……


「そりゃどうも。まあ、歓迎されたくもないけど」


 そんな俺を無視して話を始める王族の二人。

 あのー、俺、帰ってもいいかな?

 再びアイコンタクトでブレストに問う。

 が、帰ってきた返答は『怖いんで一緒にいて下さい』だった。


「言うようになったわね。いつから口答えしてもいいって言ったかしら?」


「さあ」


「偉くなったわね。前の貴方だったらここで折れて居た筈」


 プルシュナは魔力を放出して、威圧した。

 ほう、ありゃ凄い魔力だな。

 素面の俺よりも多くね?


 食堂にて一部気絶する生徒も出てきた。

 流石に不味いと思って、教師が注意してきた。


「おい!食堂で魔力開放するな!」


「少し、やり過ぎましたね。では、私はここいらで」


 そして、ブレストを一瞥した後に席を立ちあがりその場を後にした。


「めっちゃ怖……ヤクザじゃん」


「ヤクザが何なのかは知りませんが、同意です。私が小さいころからああいう感じなんですよ」


 はあ、とため息をつき、再び食事に手を付け始める。

 暫くどうでも良い雑談をしていると、次の授業が迫っていた。


「では、私は次の授業がありますので」


「あー、うん。じゃあね」


「ああ、そうだ。注意してください。師匠は次の授業は剣術でしたよね?姉さんも剣術の授業を受けて居た筈。剣術は学年混合だから、彼女と同じですよ」


「マジか。気を付ける」


 俺はそのままブレストと別れ、次の授業へ向かった。

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