第五話 残念、いいものなんてないよ(迫真)
俺は上級生に連れられるがままに数畳くらいの部屋に連れ込まれた。
お菓子とか色々置いてあって、中々に豪勢な部屋だった。おそらく、彼女の部屋なのだろう。
そしてなんか、上級生の隣に一人俺と同じような見た目をしている奴がいるが、彼女も仲間なのだろうか。
なんか、強引に連れ込まれたけど抵抗するのもめんどくさいから、抵抗はしない。抵抗するならば何をしたかったのか知ってからだ。
ほら、人を見かけで判断するな、とよく言うがそう言うこと。
もしかしたら彼女が俺にいい事をしてくれたりするかもしれない。
顔が怖いってだけかも知んない。
人を見かけで判断するなって言うしね。
そんな事を考えていると、上級生が口を開いた。
「よぉ、新入生」
品のない声だった。
つっても、俺も品は無いけど。
「あなたは・・・・・・?」
「アタシは、ヴィシー。通りすがりの優しい上級生さ。新入生に色々教えているんだ」
そう言うと、唇を舐めた。
「そ、そうでしたか」
「ああ、そう心配がることはない。確かに、こんなナリの奴に突然連れ込まれて何されるか分からないだろうが・・・・・・」
そう言うと、鋭い犬歯を見せながらニコリと笑った。
目は笑っておらず、全く安心できない。
「さてさて、一つ新入生の君にいい事を教えてやろう。そういや、お前の名前は?」
「エ、エパンジェです・・・・・・」
「そうか。エパンジェ、耳をかっぽじって聞け。この寮には三つの身分がある。奴隷と一般人と貴族だ」
そう言うと、爪をカリカリと打ちつけて音を鳴らした。
不快な音に思わず眉を顰めてしまう。
「奴隷は、通称、生きる価値のないゴミ。搾取対象だ。奴等には金も地位も力も何もない。だから、差別の対象でもある」
「そ、そんなのが・・・・・・?」
「ああ、そうだ。この寮には確かにそういうカーストがある。気をつけろ。そして、次は一般人。通称、凡人。ここは、搾取の対象にはなり得ないのだが、それでも奴等に力は無い。所詮、親の地位だけの連中さ」
「搾取・・・・・・」
「この寮では搾取、と呼ばれるものがあるのだが例えば──こうしても自由だッ!」
ドガッ!
さっきまで、ヴィシーの隣に立っていた上級生を蹴り付けた。
すると、その上級生は蹲り、されるがままに蹴られ続けた。
抵抗はしない。
彼らにはどうやら抵抗する力がない様だ。
魔封の首輪を嵌め込まれている。
「こういう事も許されてしまう。まあ、やり過ぎて殺しちまったら、問題になるから程々にしなきゃならない。しかし、気にならないか?どうしてこんな事が出来てしまうのか」
「は、はい」
「それはだな・・・・・・貴族になるんだよ。あのお方に役立つことを示し、あのお方のお力を分けてもらうのさ」
「あのお方?」
「この学園を締める存在。生徒会長のプルシュナ様だ」
「プルシュナ様?」
「この王国を統べる王家の血を引き継ぐ、第三王女にして、学園で最も高い地位である生徒会長の座に座る皇帝様さ」
「そ、そんな存在が」
「そんなプルシュナ様にアタシ達は力を示し、金を献上し、役立つ事を示す。そして、彼女の傘下に入れてもらう。すると、この寮の中では貴族になる事が出来る」
「と言うと、ヴィシーさんは貴族なのですか?」
「ああ、そうだ。凄いだろ?この話はここまでなのだが、お前もプルシュナ様に役立つ事を示すんだな」
「情報をありがとうございます──」
いやー、中々にいい情報を貰った。
つまりはそう言うことか?
アレなんだな?
アレしていいんだな?
「少し、いい話があります」
「あ?なんだ?まさか、もうプルシュナ様に献上するものがあるってのか?」
「は、はい」
「おいおい、マジかよ。おい、奴隷。お前は出ていけ」
そう言うと、さっきまで突っ立ていた上級生が部屋から出ていった。
「で?献上するってのは?」
「少し、顔を近づけて下さい」
「ああ、分かった」
そして、顔を近づけてきた。
ヴィシーの鼻息が感じる距離、俺は彼女の耳元で囁いた。
「残念、いい話なんて無いよ」
「貴様ッ!」
次の瞬間、ヴィシーはバックステップで距離を取る。
が、俺も一歩踏み込み懐に入り込む。そして、首を締め上げた。
「グゥ・・・・・・」
苦しそうにもがいた。
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