第四話 はい、終わりました
あれからさらに二年が経過し、俺の実年齢は15になった。
そう、学園に入学する年になったのである。
本当は前世の分を足し合わせると40を超えているのは内緒である。
まあ、そんなことはどうでもよく、ベッドでゴロゴロしてたい俺は毎日学園に隕石が降ってくることを祈っていたのだが、願い虚しく無事入学することになった。
てか、こう言う時の願いが叶わないのってあるあるだよね。クソが。
そんな訳で現在俺は学園の入学式を受けている真っ最中。
「入学生諸君、おめでとう。君たちの入学を我々は歓迎する」
ありきたりな文言でペラペラ喋る禿頭の校長の話に思はずあくびをかきそうになるがそこは流石に超えてはいけない一線であるためなんとか我慢。
が、周りの生徒を見てみると一切容赦なしにあくびをしていた。これには流石に笑ってしまいそうになった。
こういうのってアレか?
身分の高い貴族が校長の身分を見下してあくびするみたいな身分至上主義社会ってやつか?
だとすると・・・・・・貴族ってコエー。
てか、周りに生徒が皆んなキラキラしてるんだけど。なんか、陽キャ多くない?
全員貴族様だから陽キャなのが前提なのは分かるけど、いくらなんでも皆んなキラキラしすぎじゃない?
いや、ほら、もう溢れるオーラが違うもん。
私名家のものですー、みたいな雰囲気がバリバリ出てきちゃてるもん。
一方の俺は隠のオーラを待とうガチ隠キャ。と言うよりももっと厄介な人と喋ることがあんまり好きじゃないタイプなのだ。
世の中にはコミュ障や隠キャといっても様々なタイプがいる。
で、俺はそのさまざまな種類のある中で最もめんどくさいタイプである『人と話すのが好きじゃない&人と話すスキルがない&生粋の隠キャ』なのである。
そんなことを自分で決めつけるのはどうなのか、なんて思っていた時期もあったけど年を重ねるごとに自分の性格というのは嫌でもわかってくる。
まあ、そんな訳で性格的な面から俺はめっぽう陽キャに弱いのである。
そんなことを考えつつ魔力操作なりなんなりして時間を潰しているといつの間にか校長の長い話が終わっていた。
そろそろ学園内紹介かな?
でも、まだまだ別教師とかの話とかありそうだし時間を潰す必要があるかも。
てな訳でもう暫く魔力コネコネしていることにした。
◆◇◆◇
「疲れた……」
ようやく入学式が終了し、長ったらしい教師陣どもの話から解放された。
エパンジェは解放された喜びと共に愚痴も一緒に乾いた口の中で噛み締める。
まるであの頃のブラック企業に勤めていたかのような感覚を感じる。
そんな彼女の後方から突然足音が迫り、足音の主は彼女の後ろに追いついた。
「師匠!ついに師匠も入学されたんですね!」
「・・・・・・ㇶッ!?」
肩を吊り上げ驚くエパンジェ。
足音の正体はブレストだった。
今年同時に15歳になったと言うわけで二人は同学年である。
「出来れば後ろから話しかけるのは辞めて欲しいんだけど・・・・・・」
「すいません。師匠と同じ学園だからつい嬉しくて」
「次からしないなら別にいいけど」
少し、表情が引き攣る。
「そういえば、師匠はどちらへ?」
「寮に行こうと・・・・・・」
「あー、なるほど。この学園はかなり広いので案内しましょうか?私は入学前に一通り見て回っていますので」
実はエパンジェはかなりの方向音痴だったりする。
ダンジョンでは探索用の魔道具を使用することで何とかしている。
が、日常生活下では魔道具など使えないため、かなりの頻度で迷子になる。
そんなことを知っての提案だ。
「うん。同行してもらえると助かる」
「了解しました」
そのまま二人は歩き出した。
「・・・・・・私が師匠と出会ってから2年が立ちましたね」
「うん」
しみじみとした表情で語り始めるブレスト。
エパンジェは話題を振るのが苦手なため、会話をする時は決まってブレストからである。
「最初は驚きましたよ。まさかあの特S級である伝導卿がこんな可愛らしい女の子だったとは」
「……」
本人には自覚はないが、実は彼女は整った方の顔立ちだったりする。
「あ、そうそう。師匠は女子なので関連があるのですが・・・・・・女子寮の噂って知っていますか?」
「噂?」
「この学園の女子寮には少し怖い噂があるんですよ」
ブレストは少し眉を顰めて説明した。
「寮に入るときにめっちゃ怖い上級生に囲まれて色々されるらしいですよ」
「は?」
怪奇現象系の噂を話されると思っていたため、予想外のものに驚いてしまう。
「マジで?めっちゃ怖」
「随分と怖い話ですよね」
黙り込む両者。
少し、フラグのようなものを感じたのか両者の間に微妙な空気を感じる。
「まあ、よほどにことがない限りそんな目に遭うこともないでしょうし、師匠の実力があれば返り討ちに出来てしまいますしね」
「返り討ちするかどうこうは置いておいてそんなのに巻き込まれるなんて確率低すぎだしなー」
「「は、はは」」
二人はそのまま女子寮を目指した。
◇◆◇◆
まず、一言。
女子寮でっけええええ!
これ一つでどっかの大学と同じくらいのサイズあるんじゃね?
つっても国中のお嬢様を集めているわけだから当たり前か。いや、だとしてもでっけえな。
そんな感想を抱きつつ中へ入ってみると、やっぱりデカかった。てか、シャングリラ付いてんだけど!貴族学校すげええ!
ドキドキと興奮で高鳴る心臓を押さえつけつつ中を歩いていく。
が、突然すれ違った通行人と肩がぶつかった。
「あ、申し訳ありませ──」
「お前、ちょっとついてこい」
ドスの効いた声。
ぶつかった人の顔を見てみると、めっちゃ怖そうな上級生だった。
あ、やべ、これもしかしてヤバいやつ?