表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第二話 ボコボ古龍です

「あー、このレーション糞不味いな」


 ぽりぽりと戦闘糧食に附随しているパサパサのパンを齧る。


 ダンジョンの最奥地の一歩前の階層にて、俺は飯を食っている。

 時折襲い掛かってくる疑龍に対して、空中に浮かしている刀剣を射出して両断。

 真っ二つに割れた断面が、糸を引きながら分かれる。


 かつての俺だったらゲロを吐いていた光景だっただろう。

 まあ、これでも冒険者歴6年だ。流石にこん位じゃなんも感じない。

 

 俺の食欲を減退させたいならクソキモイ虫を一万匹用意するんだな。

 そんなことを考えながら脚をぷらぷらと揺らしながら飯を食らう。


 この体に転生してからかれこれ7年ほどが経過しただろうか。

 最初のころはイチモツが付いていなくて本当に困惑したが、今では逆に付いていない事の方が自然になった。


 まあ、流石に精神まで女になったって訳じゃない。

 今でも女の方が好きだ。


 よく、TSモノとかだと精神が体に引っ張られると言うが……そんなことは無かった。


 あと、自慰もしてみたのだが、男のころとそんなに変わらなかった。 

 多少快楽が増したってだけでぶっちゃけ言うと十数倍なんて程でもない。

 強いて言えば、女特有の嬌声は、自然と出た。

 だからアレはきっと快楽から来るもんじゃなくて反射的に来るもんだと思う。

 すまないね、諸君のロマンをぶっ壊してしまってしまって。

 

 飯を食らいながらいろいろ考えていたその時。

 唐突にダンジョン全体が揺れた。


「なんだ?」


 この振動はこのダンジョンのボスが放ったものだろう。

 誰かが戦っているのだろうか?


 基本的にダンジョンボスが討伐されれば二度とそのボスは湧かない。


 なので、このままダンジョンボスが誰かに討伐されてしまえば今回私が目当てにしていたこのダンジョンボスのドロップアイテムが二度と手に入らなくなってしまう。


「──行くか」


 パサパサのパンを口に詰め込んで、掛けていた岩から飛び降りる。

 そして、地面を蹴り、迷宮内を走る。


 日々ダンジョンボスからドロップする魔道具によって肉体改造しているため、新幹線より速く走れたりする。


 グチャリ


 そんな訳で、俺は走るだけで魔物をひき殺せる。

 普段は往復して落とした素材を回収するけど、今回はそうは言ってはいられない。

 

 全力で最終層を目指さなければならないのだ。

 確か、このダンジョンのボスが落とす素材は土系統魔法の魔道具だった気がする。

 土系統魔法で戦う私にとっては絶対に欲しい品だ。


 やがて、速度は音速を超え、ソニックムーヴが発生した。

 轟音が閉塞環境であるダンジョンに響いた。


 ──その音を聞いた他の冒険者は未知の音に戦慄し、後に”龍の咆哮”なんて名前が付けられたりした。


◇◇◇◇


 ダンジョンの最奥地。

 宝石の様に輝く魔石が露出した広大な広場にて、少年はダンジョンボスと戦っていた。

 

 少年の名はブレスト。

 男爵であるエパンジェの父を支配する王家の第三王子その人である。

 

 彼は、王室内では天才と呼ばれていた。

 5歳になり魔術を自由自在に操り、魔導の師匠を打ち負かした。

 そして剣技では他者の追随を許さない圧倒的な才により同世代には彼に勝る者は居ないと言われていた。


 そんな彼だが、現在はS級冒険者である。

 また、他の冒険者からは”10年後には特S級になる男”なんて呼ばれている。

 通常ならばS級になってから特S級になるには50年はかかると言われているが、それをたったの10年でなると言わせる彼の才能が伺える。


「──ハアハア」


 王室から言いつけられて安全のためにパーティーを組まされたのだが、他のパーティーメンバーは既に気絶していた。


 ブレストと戦っているモンスターは古龍である。

 古龍とはこの世界で最も強いと言われる生物種である龍の上位種のことだ。


 その古龍と戦闘していたブレストは、苦戦していた。

 と言うよりも、敗北の一歩手前だった。


「これが、古龍か。確かに強い……!」


 彼の持つ剣は根元から折れてしまっている。

 また、魔力もほとんど枯渇寸前。


 身体強化もロクに出来ない状態だ。

 普通ならば撤退を決意する場面。


 が、ブレストは不敵に笑っている。


「フフフ、だが、これじゃ終われないな!」


 そう言うと、莫大な闘気が彼の体から解放された。


「グロロロ……」


 その様子を見て、古龍は目を細めて警戒した。


「これは、王家に代々伝わる奥義……」


 彼の莫大な魔力は、大気を震わし、紅に染める。


 折れた筈の剣身を魔力によって再び実体を得る。


「絶技──断絶斬(グラヴ・エル)!」


 莫大な魔力を使い、斬撃を飛ばす。

 斬撃は古龍の身を切り刻み、大きなダメージを与える。

 

「これだけでは終わらない!」


 地面を蹴り、宙に飛び出す。

 そして、左手にも剣を出現させ、古龍の尾へ跳びかかる。


 古龍の脊椎ラインへ剣を差し込み、二つの剣を駆使し、回転しながら尾から胴へ、胴から頭へ斬りあがった。


「グギャアアア!」


 分厚い古龍の鱗を切り伏せる。


 ストン、と地面へ着地し、再び両者は睨み合う。


 古龍の方は、今の攻撃を食らってなお生きている。

 並みの魔物ならばそのまま脳髄をぶちまけながらぶっ倒れている所だ。

 流石は古龍と言うべきか。

 

 鱗が固いだけでなく身まで硬かった。

 本当にダメージを与えるのが困難だ。

 あの首を切断するなど不可能に近しい。


「グハア!」


 その時、ブレストが血を吐いた。

 力を得るには当然ながら代償が伴う。

 彼の今の莫大な魔力は代償の伴う力だったのだ。


「ああ、流石に限界か……」

 

 古龍は疲労に膝をつくブレストを見て、邪悪に嗤った。

 そして、ブレスを溜めた。


 古龍の持つ人間とは比較にならない、大地の持つ魔力量に匹敵する魔力が収縮し、青白い球体が古龍の口の中に現れる。


 破壊をもたらす光が辺り一帯を包んだ。


(──ああ、死んだな)


 景色がスローになる。

 そして、走馬灯が頭に流れた。

 

 そして、青白い球体が収縮を止め、膨張を始めたその時──


 ボガアアアン!!!


 轟音が辺り一帯に鳴り響き、古龍が殴り飛ばされた。

 

「は?」


 一瞬、理解が出来なかった。

 圧倒的な質量を持つ古龍が殴り飛ばされる?


 一体全体何の冗談だろうか?


 ダンジョンの壁に激突し、ピクピクと尾を痙攣させている。

 砂煙が晴れ、古龍を殴り飛ばした正体に目を凝らしてみる。


 と、そこには小柄な仮面を被った少女が居た。

 

「セーフ!」


 そう言いながら少女は再び古龍へ跳びかかり殴った。

 すると、古龍が爆音を立てながら地面へめり込んだ。


 古龍も抵抗はした。

 が、しかし圧倒的な力の前に抵抗虚しく一方的に殴られ続けた。


 ブレストがあれだけ固いと思った鱗や、身があっけなく剥離していく。

 

 その様を見て、思った。

 

「──化物だ」


 やがて古龍は全く動かなくなった。

 討伐された古龍は光の粒子となり、一つの魔道具を残して姿を消した。


 そして、あとに残った少女は魔道具をつまみ上げ、カバンに入れる。

 

 その様を見ながらブレストは、これが夢なのではないかと疑った。

 が、頬をつねってみると確かに痛みがある。


 確かな現実を感じつつも、非現実にボーっとするブレスト。


 そんな彼を見て、急に彼女はペコペコと一礼した。

 その後彼女は走り出し古龍同様、姿を消した。


 静寂が訪れるダンジョン最下層。

 その広場の中心にてブレストは呟いた。


「──弟子入りするか」

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ