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第十六話 神変卿

※ショタ注意警報

 学園に入学してから半年が経ち、このごろは秋の訪れを感じる。

 日本に居た頃は、飯が美味くなる季節だったのだが、この世界でも飯は上手くなる。


 鮮度マシマシの小麦が出回り、ふっくらな白パンが食べれる様になる季節である。


 まあ、そんな事はどうでも良くて……いや、どうでも良くないな。

 そう、秋と言えば勿論、行事の季節だ。


 という訳で我が校でも行事を実施するらしく、皆がソワソワしている。

 で、実際にどんな行事が行われるのか気になったんでブレストに訊いてみた。


 すると、返ってきた答えは……職業体験との事。

 おい!マジか!?

 思はずそんな言葉が飛び出る程驚いた。

 

 それ、行事って言えるん!?

 とは最初は思った。

 だって、地味だもん。


 でも、深く聞いてみると、確かに納得できる理由があった。

 曰く貴族としての才覚があろとも、実際の事務が出来るとは限らない。ならばその準備をしようではないか、という事で発足した行事らしい。

 で、ここからが重要なのだが、この行事でかなり大きな評価が付くとのこと。何故ならば生徒の社会性を極めて正確に図る事が出来るからだ。

 まあ、つまりは自分が優秀であることを示せる大きなチャンスでもあるという事。


 だから、皆この行事に命を懸けるらしい。

 でも、ぶっちゃけ俺は冒険者としてやっていった方が楽なため、この行事に力を入れる必要はなさそうだ。

 てか、普通にめんどいから適当にやってこうと思う。


 そんな訳で、近々職業体験に行くようなのだが、それに際して面談を行うらしい。

 その面談で生徒から様々な言葉を聞き、体験先を決めるっぽい。


 で、当然ながら俺にもその面談が有るらしく、丁度今面談を受けようとしている所だ。


「ハイル・ドゥ・エパンジェ君。入りなさい」


 面談室の前でぼっ立ちしてたら、名前を呼ばれた。

 

「は、はい」


 扉を開き、面談室の中に入る。


 すると、面談室の中央にてソファーに若い男性が座っていた。

 目を吸い込まれる程の黒髪が特徴的。

 そして、なかなかに端正に整った容姿。

 前世ブスの俺からすると嫉妬してしまいそうになる。

 ファッキン、イケメン&リア充!


「君、そこのソファーに座りなさい」


 心の中でイケメンに中指を立てていたら、その男の人に席をすすめられた。


「あ、はい。ありがとうございます」


 なんや貴様!ぶっ殺すぞ!

 なんて唐突な展開を起こそうとは思えないため、素直にソファーに座る。


「僕の名前はグレイア・ミナビリス。以後お見知りおきを」


「よろしくおねがいします」


「さて、本題に入りましょうか……」


 すると、大きく深呼吸した。 


「てか、敬語めんどくさいな。ここからは適当に喋るよ」


 目の前にいた男が変形した。

 ぐにゃり、と変形し真の姿を現す。


「ちーす。どーもー、神変卿でーす。君と同じ特S級冒険者」


 空気が変わった。

 

 現れたその男は、いや、ショタか?

 まあ、どっちでもいいや。

 そんな訳でいつの間にか目の前の男は縮んでいた。

 元の背丈は170くらいあったが、今では俺と同じくらいの150サイズ。


 黒髪なのは変わらずなのだが、その額に生える角が彼が人間ではない事を表している。

 恐らく、変魔族なのだろう。魔力波長から、彼の種族が変魔族である事が伺える。さらに、変魔族特有の歪んだ角。間違いなくそれだろう。


「てか、伝導卿が思ったよりも可愛らしい女の子でびっくりしたよ」


 ジロジロとこちらを眺めてくる。


 口調は軽くチャラい。


 しかし、纏う雰囲気は鬼神のソレ。


 恐らく特S級冒険者であることは本当なのだろう。


 魂からの輝きを感じさせる覇気(オーラ)

 奇跡を彷彿とさせる調和のとれた魔力波長は彼の別格さを印象付けている。

 流石は先輩特S級冒険者だ。


「そりゃどうも……」


「ま、そんな事はどうでもいいけどね」


「どうでもいいんだ」


「あ、気に入らなかった?じゃあ、また今度僕んちにおいでよ。気持ちよくさせてあげるよ?」


 唐突の気持ちよくしてあげるよの言葉。

 流石に引くわー。

 今の、俺が男じゃなかったら完全にセクハラで草。


「てか、君、僕好みの顔してるからヤッてみたいかも」


 貴様!

 ショタの顔して、発現の内容はヤバすぎなんだけど。

 こりゃ、無視した方が良いかな?


「……」


「無視?黙ってても分かんないよ?」


 そう言って、顔を近づけてきた。


 耳元まで口を近づけ……そして、耳を噛んだ。


「ッ!?」


「びっくりしちゃった?」


「殺す……」


「エパンジェちゃん怖いねー」


 まるで、赤子に喋りかけるように話してくる。

 中々にムカつく奴だ。

 今すぐにでもそのムカつく顔を殴ってしまいたい。

 が、しかし、それをすると今以上にめんどくさいことになりそうなんで控えておく。


「まー、これ以上は止めておこう。さて、本題にはいろう」


 先ほどの事が無かったかのように話し始める。

 まあ、ぶっちゃけなかったことにしてくれた方がこっちにとっても都合が良いから別にいいけど。


「君、伝導卿にしか頼めない依頼だ」


「なぜ?」


「今、各国の関係が悪化しているのは知っているだろう?」


 あー、そういやブレストがなんか言ってたような。


「まあ、うん」


「で、他の特S級冒険者は出払ってるって訳なんだよね」


「それで?」


「そんな訳で、この依頼を頼めるのが君しか居ないんだ」


「分かったと思う」


 俺はミナビリスの眼を見返した。


「じゃあ、受けてくれると?」


「まあ、依頼内容による」


「ありがとう。やっぱり、君は可愛いね」


「死ね」


 すると、ミナビリスは依頼の内容を話し始めた。


 曰く、彼の同胞である変魔族の孤児達を拾った。

 しかし、その孤児達は変魔族特有の病を患っているとの事。

 それは世間では魔暴走と呼ばれる病らしい。

 魔力を排出する、言わばポンプの様な役割を果たす生体器官が欠損しているせいで、魔力が体内に蓄積し、やがて破裂するという病。


 変魔族は、その病を患う者が大変多いため、その様な名称で呼ばれている。

 

 で、その孤児たちも同じようにその致死の病を患っており、孤児院でただ死ぬのを待っている。


 神変卿の得意とするところは魂への干渉。

 故に、魔力を暴走させるという病を治療することが出来ないらしい。

 だから、魔力操作が得意な俺に依頼した。

 そして、依頼の内容は孤児たちの病の治療。


 以上がミナビリスの依頼だった。


「めんどいけど、断ったらどうせ実力行使でしょ?」


「その通りだ。良く分かってるね」


「だから、分かったよ。その依頼を受けよう」


 本当は、寮でずっとゴロゴロしていたい。

 けれどそもそも職業体験なるクソ行事がある訳で、それならばここで彼の依頼を断るよりもここで、彼の依頼を受けたほうが効率はいい。


 それに、どうせ断ったら暴れるだろうし。

 てか、それが特S級冒険者だから。


「ありがとう。感謝するよ。報酬は前払いで金貨1000枚。成功払いで金貨4000枚」


 そして、頭を下げた。

 流石に絶対成功するとは言えない、けれど、子供の命が関わっているのならば、やれるだけやろう。

 俺もそこまで冷酷じゃない。

 ゴロゴロするのも別にいいけど、そうしていて誰かが死ぬ、となると胸糞悪いのだ。


「あと、場所はカスティーリャ共和国東部の孤児院ね」


「うん。地図を用意しといてくれ」


 その後、幾らか話した後に面談は終わった。

 ちなみに、最終的に俺の職業体験先は、孤児院って事にするとミナビリスは言っていた。

 

 どうやら、この学園の教師に面識が有るらしく、賄賂を渡して職業体験先をいじるとの事。


 そうして、俺は子供たちと戯れることとなったのである。

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