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第十一話 カシラ!やっちまってください!グサアッ!

「一体全体、この学園で何が起こっているのだ」


 整った顔立ちのその少年は、呆然とした表情を浮かべていた。

 ──ブレストである。


「どうやら、この学園の結界が破られたようです」


 ブレストのその言葉に騎士が答えた。

 彼はこの国の第三王子であるため、当然独自の戦力を持っている。

 しかし、彼自身が強すぎるため、その戦力を使う事はないが。


 だが、事件等の捜索をする際には専属の騎士たちを使う。


「あの学園長が貼った結界だぞ?元S級冒険者の実力を持つあの学園長が、それも結界術に精通したあの人が貼った結界を破るなんて可能なのか?」


「そ、それが現実として破られており……」


「だが、そんな事が可能な人間が居るか?」


「帝国の工作員によるものの可能性があります」


「しかし、だとしても……何の目的で女子寮に立てこもっているのだ?」


 現在、この学園に侵入した連中は女子寮に立てこもっている。

 王国の騎士団はこの侵入者に対して何を望むのか交渉はしているが、彼らは何も望まないとのこと。


 ブレストには、彼らの目的を理解しかねていた。


「プルシュナを狙ったものだとしても……何故、彼女を?」


「それは……現在捜査中です」


「狙いが王族ならば、俺でもいいんじゃないか?だとすると、奴等の狙いは王族ではなく、プルシュナ自身?だが、仮にそうだとしてもどの様な目的で?」


 ブレストは考え込んだ。


「……分からない。そもそも帝国の工作員である事すら確定したものではない」


 この事件の事態が、謎に塗れたものだ。

 分からない事が多すぎる。


「心配だ。師匠は大丈夫だとしても、プルシュナは……」


「彼女が無事であることは祈るしか……」


 騎士が申し訳なさそうな顔をした。


「プルシュナ……無事で居て欲しいものだ」


 昔は仲が良かった。

 

 だが、いつから彼女はあの様な性格になったのだろうか。


 確か、彼女が変わったのは俺が9歳の誕生日を迎えた日辺りだったような。


 彼女は何を考えているのだろうか。


「もう少し、話しておけば良かったな」


 少し、後悔の気持ちが湧いてきた。


◇◆◇◆

───女子寮内部(エパンジェ目線)───

 

 プルシュナ様が危ない。

 そんな事が避難室にて叫ばれた。


 叫んだ主を見ると、ヴィシーだった。

 曰く、女子寮の地下からプルシュナの魔力を感じるとのこと。

 恐らく、この学園に侵入した主と戦っているだろうとも言っていた。

 

「私は行く!」

「止めとけ!死ぬぞ!」


 ヴィシーは今すぐにでも行ってしまいそうだった。

 それを止めようとする他の女子生徒。


 いやはや、なんでこんなことになった?

 疲れたんでベッドの上で寝ていたら突然教師が扉を突き破ってきたときは心臓が飛び出るかと思ったね。


 教師曰く、この女子寮にて誰かが立てこもっていると。

 はあ?そんなテンプレラノベみたいな事があるかい!?と思ったけど、どうやら本当の事だったらしい。

 ないわー。


 俺は、平穏な日々が欲しいだけなのだ。

 そして、冒険者が出来ればそれでいいのだ。

 だからこんな立てこもり事件に巻き込まれるなんて、マジで迷惑千万である。


 故に、さらなるハプニングに自ら巻き込まれようとするヴィシーは理解できない。

 

 いや、確かに地下で戦っている感じはする。

 だけどさ、そこに自分も参加しようなんて嫌じゃない?

 ヴィシーがそうじゃないとしても、俺は行きたくない。

 

 平凡な一般生徒らしく俺は避難室で引きこもれればそれでいい。

 

 教師曰く、絶対に破られない結界をこの避難室に張ったらしい。

 だから俺はこの安全な避難室でぬくぬくしていたい。

 だけど……なんか絶対に破られないってわりにちょっとその結界は脆くないか?

 相手はこの学園のガチガチ結界を破った奴やで?

 

 そんな事を考えつつボーっとしていると、その嫌な予感が的中した。

 

「お前ら、手を上げろ!!!」


 侵入者の一味が結界を破って避難室に侵入してきた。

 おい!やっぱ破られてるやんけ!


 その後、教師は侵入者に対して勇敢に挑んだけど、返り討ちにされた。


「この中から五人連れて行く!」


 すると、侵入者の一味は適当な生徒を指さし始めた。


 神様……どうか、俺だけは巻きこまないで下さい。お願いします。

 いや、マジで。


 が、しかしそんな祈りは通ずることなく俺は選ばれてしまった。

 はあ、邪神が……


「いや、待て!アタシも連れて行け!」


 心の中で邪神に対してありったけの罵詈雑言を投げかけていると、ヴィシーが突然立ち上がった。


「……いい覚悟だな。良いだろう。お前も連れて行く」


「私も!」

「自分も!」


 ヴィシーに続き、他のプルシュナの手によりカーストの最上位に付かされていた生徒たちも次々に連れて行ってもらう事を希望した。


「ほう、随分な物好きだな。連れて帰る生徒は多ければ多いほどいいな……いいだろう、お前らも連れて行く。だが、少しでも怪しい動きをすれば直ぐに殺すぞ?」


「ああ、それでもいい」


 最終的に8人の生徒が連れていかれることになった。

 内4人がプルシュナを救出したい生徒である。

 

 まあ、彼女たちがカースト最上位であるのは、プルシュナが居るからな。

 圧倒的な権力を持つプルシュナの直下の人間であるから、今の立場に居れるのだ。

 だから、彼女たちはプルシュナを失うと大変不味いのだろう。


 恐らく、侵入者たちにプルシュナと同じ場所に連れて行ってもらい、暴れる予定なのであろう。そして、救出する算段なのだろう。

 

 だとしても、こんな学園に侵入してきて立てこもるような連中の呼び出しに自ら答えるなんて正気を疑うけどね。 


「じゃあ、ついて来い」


 そして、俺たちはその侵者入一味に付いていった。


 暫く、侵入者と一緒に女子寮の中を歩いていった。


 少しどころではない、気まずい雰囲気が流れる。


「まさか、お前も選ばれるとはな……」


 そんな気まずい雰囲気の中、ヴィシーが俺の隣で小声で話しかけてきた。


「いや、本当に迷惑なんだけど……」


「そうか。それは不幸だったな」


「……」


 黙り込む。

 これ以上何を話せばいいのか互いに分からないから。

 そう、互いに奇妙な関係だから互いにどの様な話題を振ればいいのか分からないのだ。

 

「おい、着いたぞ」


 暫く歩いていると、女子寮の地下に付いた。

 

 重そうな扉を開け、地下室へ入っていく。

 

 すると、地下室の中心には魔法陣が刻まれていた。


 そしてその魔法陣の中心には椅子に縛り付けられ、気を失ったプルシュナが居た。 

 彼女は右腕を失っており、血が断面から滴っている。ヴィシーたちはその光景に絶句した。


「今から、お前らの魔力を抽出する。そこの8つの隅へ立て」


 一味がそう言った次の瞬間、ヴィシーたちが動いた。

 魔力を練っており、交戦するつもりのようだ。


「──お前ら!プルシュナ様をこんな姿にしやがって!絶対に許さない!」


 激高するヴィシー。


「チッ!めんどくせえな!」


 それに対して、彼らは剣を取り出し構えた。


 そして、対峙し、睨み合う。


 地下室にて静寂が訪れた。

 

 10秒、いや、数秒が経過したその時、ヴィシーの体がブレた。


 否、魔力により強化することで高速で動いたのだ。


「速いッ!?」


 驚愕する一味。


 まあ、当然この学園の中でも屈指の実力を持つ彼女たちだ。

 そこいらの生徒とは一線を画す強さを持っている。

 

「お前ら、行け!」


 一味たちも動き出し、戦いが始まった。


 俺にとってはどちらが勝っても良い。


 だが、人の闘いを見るのも案外楽しい物で、いつの間にか心の中で両者を応援していた。


 いけ!そこだ!


 そうだ、そこは蹴り上げろ!


 いやいや、違う!そこはサマーソルトじゃない!確かにカッコいいけど!


 回転切りするな!切り上げろ!


 あああ、そうだ!金玉を狙え!


 うううー、もどかしい……俺も少しだけ戦いたいかも……


 そんな感じで観戦していると、戦いの決着がついた。


 どうやら、ヴィシーたちが勝利したらしい。


「アタシたちの勝ちだ!プルシュナ様を解放しろ!」


「うう……クソが……」


 血を流しながら、ヴィシーたちはプルシュナへ近づいて行った。


 あれ?これ、このままハッピーエンドになっちゃうんじゃね?

 でもこんなあっさりハッピーエンドになっちゃうもんなの?

 いや、まだ何かがあるのではないか?

 

 すると、案の上このままハッピーエンドになる訳もなく、地下室の奥から膨大な魔力が伝わってきた。


「なんだッ!?」


 コツコツ、と足音が近づいてくる。


 足音の主が暗がりの中から現れてきた。


 それは、銀髪の男で、印象的なガスマスクを被っていた。


「ほう、あいつらを倒すか。中々にやるな」


 ゾワリ、と背筋を撫でる悪寒がする。


(カシラ)!あいつらをやっちまってください!」


 その銀髪男に対して、駆け寄る一味。

 

 が、次の瞬間紅く地面が染まった。

 駆け寄った一味の首を一振りで落としたのだ。


「お前らに最早利用価値などない」


 冷酷に、ただそう言い放った。


「お前……仲間を……」


 一味の主と思われる人間が、その部下を殺すという異常な状況を前に、ヴィシーは困惑した。


「やれやれ、いい加減、君たちには大人しくしてもらおうか」


 そして、めんどくさそうにため息をついた。

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