第一話 はい、完全に転生です
目が覚めると、全く知らん場所にいた。
てか、天蓋ベッドが目の前にあるんだけど、これって貴族の娘とかが寝るやつだよね。
確か俺は冴えないただのサラリーマンだったハズ。
そんな社会的称号から考えると、誘拐って線はおかしい。
仮に本当に誘拐だとしてもこういうのってパイプ椅子に手足を縛られてるもんじゃない?
そして、周りを見渡してみると一人メイドが突っ立てた。
ジーと見ていると、目が合った。
「起きられましたか。エパンジェ様」
ニコリ、と華やかな笑顔を浮かべた。
サラサラの金髪が美しい女性だな、と考える。
が、しかし俺にとっては全く見覚えのない女性だ。
それに俺は万年DTなんだぞ?こんな女性と知り合いな訳がない。
そんな訳で、問うてみる。
「あの、貴女は誰でしょうか?」
出来るだけ丁寧な物腰で訊いた。
すると返ってきた答えは意外な物だった。
「お嬢様は寝ぼけていらっしゃるのでしょうか?一応、答えておきますが。私はエパンジェ様の専属メイドのアルテです」
あー、うん、何を言ってんだコイツ。
俺が何時から専属メイドを雇った?
そんな趣味は俺にはないし、雇う金もない。
それに、”お嬢様”ってワードが何なのか分からない。
まさかだが俺の事を言っているのか?
「お嬢様、って誰だ?」
「ん?貴女様のことですよ。鏡でも見ますか?」
そう言われ、渡された鏡で自分の姿を見ると……
「は?」
そこに居たのは、全身純白の、髪からまつ毛まで真っ白な幼女だった。
鮮やかな碧眼を持つ端麗な顔のその幼女は、今までイメージとして持っていた醜い容姿の自分とはかけ離れたものだ。
あまりもの非現実に、脳がフリーズした。
暫く俯いて考えてみる。
するとようやく事態が飲み込めてきた。
容姿が変わっていて、全く知らないベッドに寝ていた。
これを転生と言わずして何になるだろうか?
そう考えながら幼女特有のぷにぷにとした指を握ったり開いたりしてみる。
また、声も上げたりしてみるが、甲高い声が耳骨を通して甲高い声が脳に響いた。
「うん、こりゃ転生だな」
「宗教の話でしょうか?」
はて、と首を傾げるアルテ。
その様子を傍目に俺は今後どうするか考え始めていた。
◇◇◇◇
あれから数日が経ったが俺は元気だ。
あの後、色々生活してみたのだが分かったことが幾つかある。
まず俺は男爵家の令嬢だ、という事が分かった。
元々一般平民だったためお嬢様の生活と言うのは馴染みのない物だった。
まあ、馴染みないとかいう次元じゃないけどね。
毎朝化粧とか服選びすんのは苦痛でしかなかったりする。初日は本当に苦戦した。今はある程度は理解してきたけど、それでも苦戦する。
あー、ないわー。
あと、この世界には魔法なるものが有る事にも気付いた。
貴族の令嬢っつう訳で教育を受けさせられるのだが、その際に”魔学”という物があって、その授業が魔法を扱ったモノだった。
その授業を初めて受けたときは、衝撃だった。
髭を蓄えたおっさんがいきなり両手を突き出して詠唱を始めたときは『中二病乙』なんて考えていたが、その後に炎が現れて高速で射出される様を見て腰を抜かしたのはいい思い出だ。
まあ、まだこの世界で10日しか生きてないから思い出も糞も無いけど。
そんな訳で、この世界はバチクソにファンタジーな世界だった。
当然ながら魔物も居るわけで、冒険者なる職業もあるようだ。
冒険者なる職業がある事に気付いた俺は、甲斐性もなくワクワクしてしまった。
なので、屋敷を抜け出して冒険者組合のギルドまで行ってみた。
ギルド嬢に冒険者登録がしたいと言ってみると、怪訝な顔をされたが普通に登録してもらえた。
この中世ヨーロッパっぽい世界では、基本的に自己責任という考え方があるらしく、それは幼女でも適用されるらしい。
そして、俺は無事冒険者デビュー出来たって訳だ。
流石に冒険者になって直ぐに魔獣を討伐なんて怖くてできなかったんで、暫くは薬草クエストをして経験を積むことにした。
貴族令嬢つっても、基本的に授業の時間以外は基本的に暇だ。
俺の専属メイドであるアルテに苦労を掛けることになってしまうが、まあ、そこは若気の至りって訳でスマネ。
そんな感じで心の中で謝罪をしながら冒険者を続ける事一年。
俺はようやく魔法を自在に扱える様になってきた。
最初は、魔力の何たるに付いて意味不明もいい所の状態だったのだが時間をかけてくにつれ段々と理解してきた。
そして、いつの間にか魔学の師匠であるおっさんを対戦で打ち負かせる様になってきた位で魔物に挑んでみることにした。
初めて挑んだときはビビりまくってたけど、何回か討伐してるうちに全く怖くなくなった。最近はフシュ―フシュ―鼻息がうっさい猪の魔物が可愛く見えてくる事だってある。
そんな訳で冒険者登録してから5年が経過し、13歳になったときぐらいには冒険者の最高ランクである特S級になっていた。
ギルド嬢曰く、この世界には特S級は6人しか居ないとのこと。
また、それぞれの特S級冒険者には二つ名が与えられるとも。
俺は二つ名なんてこっ恥ずかしくて断ったけど、どうやら絶対に付けなきゃいけないらしい。
俺は渋々、周りから呼ばれていた二つ名である”伝導者”の名を取り、”伝導卿”と名乗る事にした。
あと、趣味で始めた冒険者なのだが特S級になったことで格段に知名度が付いてしまった。
特S級冒険者はその力から、国家としての切り札にもなり得る。
なので、会いたいと言えば一国の国王に面談を申し込むこともできたりする。
そんな特S級冒険者になったのだが……趣味で始めたってのもあるが、元々生粋の陰キャである俺は、いろいろめんどくさかったんで正体を隠すことにした。
当然、現世の両親にも黙っている。
また、冒険者登録をした時から仮面を被って正体を隠していた。
だって、貴族の娘なんて思われたらいろいろ都合が悪いからね。
故に俺が特S級冒険者であることを知っている人物はギルドの中枢を除いてこの世には一人も居なかったりする。
お読みいただきありがとうございました。
本日より第二章が連載して参ります。
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