第十三章
それから数時間後……。
田中は、エンジンを切ると、夜勤で疲れ果てた体を引きずり出すようにして駐車場から五〇八号室へと向かった。今回の夜勤もまた、日中と同じような作業だが、夜間帯はコンベアーの速度も遅く、休憩時間も多めにある。だから本当は楽なはずだが、仕事が終わるとぐったりとするのは何故だろう? やはり夜に働く事自体に無理があるのかも知れない、と思いながらエレベーターに乗り、自宅の前に着くと、ドアを開けた。
「ただいま」
いつもなら、すぐに沙羅が奥の部屋から飛んできて、陽一、おかえり! と嬉しそうに抱き着いてくるのだが、今日はリビングのドアも閉まったままだ。気のせいか、ザワザワと大勢の人がいるような感じがした。
どうしたんだろう?
そう思いながら、ゆっくりとリビングのドアを開ける。
ドアを開けて驚いた。
セーラー服やブレザーを着た女子高生たち、ビキニ、ショーツだけの女、メイド服の女たちか、話に花を咲かせているのだ。その様子はまさに女の園、まるで女子高のように見えた。
みな、話に夢中で、田中に気が付いていないようだ。
なんだ? いったい何が起きたんだ?
よく見ると、沙羅もメイド服を着た女と夢中で話をしている。
「い、一体何が起きたんだ?」
そう言ったまま、言葉が出てこない。普段は沙羅との二人きりのしずかな田中の家が、まるで女子高の教室のように騒がしくなっていた。
「あ! あんた、あれだな、田中陽一だろ?」
ややハスキーボイスの声がした。
その声に振り向くと、黒ビキニの女が立っていた。きわどい水着の食い込みに思わず凝視してしまう。
「どこを見てるんだよ? このスケベ」
黒ビキニは笑った。
「え? まさか、絵里?」
驚きのあまり、かすれた声でそう尋ねた。
「そうだよ、あんた、陽一さんだろう?」
「ああ、お前、絵里? ドールの絵里?」
信じられない思いで尋ねた。
「そう決まっているだろう? さっきからどこ見てるんだよ? 私の胸とケツばっかり見て。いやらしいな」
そう言ってニヤリと笑う。
「い、いや、そういうわけじゃないけれど、どうしてこんな事に?」
思わず尋ねた。
「知らないよ。朝、気がついたらみんな起きてた。私も人間になっていたんだよ。あんた、私を買ってきてからビキニを着せて何度もヤッたじゃない。この童貞君が」
絵里はそう言うとカラカラと笑った。
「ど、童貞じゃないよ」
思わず嘘をついた。恥ずかしさに顔が赤くなるのを感じた。
「嘘つけよ」
絵里はそう言うと、田中の腕を取った。
「こっち来いよ」
そう言いながら、田中の腕を組んだ。
「お姉さんがいい事を教えてやるよ」
そう言って、絵里は妖艶なウインクをした。さっきまでの乱暴な男言葉とのギャップに急にドキッとしたのだ。
気がつけば、下半身が痛いほどに興奮していた。夜勤明けという事もあってなおさらムラムラしてくる。
「どんな事を?」
言ってしまって自分でも野暮だと感じた。
「決まっているだろ、セックスだよ」
そう言いながら、バスルームに来た。
「ここで?」
田中は尋ねた。
「仕方がないじゃないか。他の女に見つかったら面倒な事になるよ」
絵里はまたニヤリと笑った。さっさと済ますよ、と付け加えた。
バスルームに入る。
「ほう、なかなかいい感じじゃないか」
ソバージュの髪が揺れ、その頬が凹み、物体に熱さが襲ってくるのを感じた。
「ああ」
思わず声が出る。絵里は答えず、刺激し続ける。
「絵里、ヤバいよ」
そう言って一度、外に出した。
今度は絵里の内に入った。
「え? いきなり?」
それは思っていたより熱かった。
田中は感動する思いだった。
これで童貞喪失できたのだろうか?
いや、ドールだからまだだろうか?
強烈な肉の悦びの坂を一気に駆け上がり、果てた。
「やっぱり童貞君だ。乱暴だね」
絵里はあきれた顔をして言った。
「ちゃんと女の子にも奉仕しないと、嫌われるぞ」
そう言ってシャワーを浴びはじめた。
浴びたあと、呆れた顔をして絵里は体をバスタオルで拭いている。
「ほら、あんたもシャワー浴びたら?」
「ああ、そうする」
田中はそう答えた。
そう言いながら、絵里はビキニを干していた。
「あんたの童貞を奪ったのは私だからね」
そう言って悪戯っぽく笑った。