無双と夢想編 その8、信頼
全速力で逃げて数分、アリア達は何故か学校に居た。
既に下校時間は過ぎ、先生も少ない時間帯の為、簡単に侵入できた。
適当にアリアが逃げた所、学校についたらしい。
取りあえず、適当に中に入り、廊下でアリアは一息ついた。
ア「取りあえず、安心かな?」
エ「彼らはかなり夢中になっていたみたいだし、後をついて来れないだろう」
ア「そうだね・・・?、コウガ?」
ふと、高雅に目を向けると、ふらふらとその場に滞空できていなかった。
さらに、同じような状態にフィーラもなっていた。
ア「どうしたの?」
高「いや・・・ぜぇ・・・早く動くのがこんなに・・疲れるとは・・・」
フ「はぁ・・はぁ・・・ボク・・・もう動けないです・・・ひぃ・・」
フィーラはポトリと重力に従って落下した。
エ「分かったかい。速く動くことは辛いことが」
高「てめぇ・・・何で・・・ぜぇ・・疲れて・・・ねえんだ・・・よ・・?」
エ「僕は慣れてるからね。一日中あの速さで動いても息切れしないさ」
高「マジかよ・・・」
高雅は力尽きて行き、次第に高度が下がっていた。
アリアは心配そうに両手で支えてあげた。
ア「大丈夫?」
高「もう無理、限界だ。意識が飛びそうだ」
高雅の光が段々弱くなりつつあった。
それを見たエクスが突然、焦りだした。
エ「まずい。負担が大き過ぎる。このままでは、消えてしまうぞ」
ア「そんなっ!?。やだよ!!。もう、コウガが消えるなんてやだよ!!」
エ「落ち着くのだ、アリア君。こうなったらアリア君と一体化するしかない」
ア「そ・・それでコウガが助かるの!?」
エ「ああ。コウガ君の魂を君の体の中で休ませてやるのだ。ゆっくりと体の押し込むだけでいい」
ア「分かった。やってみる」
アリアは今にも消えそうな高雅の魂を自分の胸にゆっくりと押し込んだ。
すると、魂は体をすり抜け、次第にアリアの体の中へ入っていった。
間もなく高雅の魂はアリアの体の中へ収まった。
ア「ふぅ・・・これで、いいの?」
エ「ああ。きっと、大丈夫のはずだ。話しかけてみれば分かるよ。頭の中で喋ればコウガ君に聞こえるから」
ア「うん」
アリアは高雅の無事を確認する為、頭の中で高雅を呼び掛けた。
ア(コウガ・・・コウガ!!・・・)
高「ん、生きてますよ。お陰さまで」
少し元気がないが、いつもの声を聞き、一気に安堵に包まれる。
その所為で少し涙を零しかけたが、それは堪えた。
ア(よかった・・・)
高「心配かけて悪い。それより、何でフィーラは平気なんだ?」
フィーラも高雅と同じようにかなり疲労しているにも関わらず、床に転がっているだけで光が消えそうなわけではなかった。
それを聞いたら、アリアも不思議に感じ、疑問に思った。
エ「彼女はボクと同じ楽園の者だ。そう簡単に消えはしない」
高「ふ~ん。てか、俺の声が聞こえてるのか?」
エ「魂同士の会話ぐらい、僕にとっては簡単だ」
高「そうかい」
ア「それより、これからの事を考えないと」
そう言いながらフィーラの魂を両手に抱え込み、エクスに顔を向ける。
ア「・・・・あっ」
高「おっ」
エ「・・・?」
すると、エクスの後ろに一匹の獣が目に映った。
それは、良く知っている天獣の姿だ。
レ「やはり、あの力はアリア殿の力だったか」
高・ア「レオ(君)」
紛れもないレオだった。
レオはアリアを確認すると近づき、いつもの一言を放った。
レ「君付けをするな!!。それより、コウガ殿が見当たらないが」
ア「コウガはちょっといないの。でも、魂は私の体の中にあるから」
レ「?、意味が分からないが。それに、その抱えている光は何だ?」
ア「えっと・・・これはフィーラちゃんだけど」
レ「何だと!?。どういうことだ!?」
ア「取りあえず、一から話すから聞いて。まず、そこに浮いている光がエクスで―――」
そう言って説明しようとした瞬間、レオの顔色が一気に変わった。
レ「・・・アリア殿・・・今、何と言ったか?」
ア「え?・・・ここに浮いているのがエクs「その名を口にするな!!」!?」
レ「アリア殿、冗談にも程があるぞ!!。その名は我ら天獣を破滅に導いた者の名前だぞ!!!」
ア「嘘ッ!?」
エ「・・・・・・」
アリアは予想もしない言葉に驚き、口を開けたまま動けなかった。
エクスもレオが現れてからずっと黙り込んでいた。
高「おい、エクス。今のは本当か?」
エ「僕じゃない!!。本当だ!!。信じてくれ!!」
高「信用は出来ねえが、疑いも出来ねえよ」
エ「くっ・・・」
高雅達の話はレオに聞こえる訳が無く、アリアは自然と高雅達に耳を傾けていた。
その所為であってか、レオに不審な目で見られた。
レ「どうした、アリア殿?」
ア「え・・あっ、レオ君には聞こえないのか」
レ「どういう事だ?。それと、君付k「こう言う事だ、天獣王」ッ!?」
突然聞こえた別の声にレオは瞬時に反応し、身構えた。
その様子を見たアリアがレオを鎮める。
ア「大丈夫。味方だから」
レ「味方だと?。冗談も程々にしてくれぬか、アリア殿」
しかし、レオは全く警戒を解いていなかった。
突然現れた光を一点集中で睨みつけていた。
レ「その声、忘れもしない。虚無の力の具現、楽園の王、エクス。そして、我の仲間を奪った男」
エ「話を聞いてくれないか?。僕は本当にやっていないんだ」
レ「我はこの目で、しかと見たのだ。言い逃れは出来んぞ」
ア「待って、レオ君。故郷を奪ったのはアルテマのはずじゃ!?」
レ「確かにそうだ。しかし、奴もまた、ともに破壊に加担したものだ」
ア「どういうこと?」
レ「奴は仲間を生贄にしてアルテマを召還したのだ。そして、我が故郷を崩壊させた。許すことはできぬ」
ア「エクスは二重人格者だから、そっちの方も聞いてみないと」
レ「二重人格者だと?」
ア「そうだよ。夜になると現れるもう一人のエクスだよ。もうすぐ日が暮れるから、聞いてみようよ」
レ「・・・・アリア殿がそこまで言うのならば」
レオは肩の力を抜き、警戒を解いた。
そして、窓の外を見て空を見る。
もう空にはいくつか星が輝いており、太陽は既に9割が山に隠れており、日が沈むのも時間の問題だった。
それでも、その僅かな時間がレオにはとても長く感じた。
一分も経たない内に太陽は完全に沈み、夜が訪れた。
レオが窓の外からエクスに目を向けると、すぐさまさっきの続きを再開した。
レ「もう一度聞こう。貴様は本当に天獣を滅ぼしていないのか?」
エ「ああ、天獣?。そういや、ずっと前に滅んだな」
レ「我の質問に答えろ!!」
急変した態度に関わらず、レオは驚きもしなかった。
むしろ、その態度に対して怒りを宿していた。
エ「知らねーよ。大体、いちいち天獣滅ぼしたって、何のメリットもねえのにやってられるかよ」
レ「貴様ッ!!」
レオは耐えきれずエクスに飛び掛かる。
だが、エクスは簡単に避け、アリアの後ろに隠れた。
レ「今すぐ、貴様を噛み殺す!!」
ア「待って、レオ君。このエクスはこんな性格だけど、本当はいい人だから嘘なんて吐かないはずだよ」
レ「いい人だと?。我が故郷を滅ぼしておいて、いい人の訳がない!!」
ア「だから待ってよ!!。もっと話し合ってよ!!。エクスもちゃんとレオ君と話して」
エ「へいへい、分かった分かった」
レ「くっ・・・アリア殿のお陰で命拾いしたな」
そんな言葉を吐き捨て、レオとエクスが再び向かい合った。
ア「ほらほら、そんなに怖い顔しないで」
アリアがレオの頭を撫でるも、レオは全く表情を変えなかった。
エ「・・・知らねえよ」
レ「何?」
先に口を開けたのはエクスの方だった。
エ「だから、知らねえよ。天獣が滅んだのは俺じゃねえよ」
レ「惚けるな!!。我は見たんだぞ!!。貴様が我が故郷を虚無の力で滅ぼしたのを!!」
エ「あのな、俺はそんなメリットの無い事をしないっての」
レ「言い逃れはさせんぞ。我の目は力を見ることができる。あの時、貴様の手には莫大の虚無の力が込められていた。それが何よりの証拠だ!!」
エ「でもな~、そんな一族を滅ぼしたことなんて一度も無いって」
レ「口からは何でも言える。だが、我はしかと見たのだ」
お互いに譲らない話し合い。
これでは永遠に続いてしいそうだった。
ア「ねえ、レオ君」
そんな時、アリアが割り込んだ。
レ「何だ、アリア殿。それと、さっきから君d「それはいいから聞いて」よくないっ!!」
ア「いいから聞いて!!。私は・・・いや、私とコウガはエクスが嘘を吐いてるなんて思ってないよ」
レ「?、何故コウガ殿が出てきたのだ?」
ア「最初に言ったでしょ。コウガの魂は私の中にいるって。だから、二人で色々話していたの」
レ「・・・その結果、我を裏切るのか」
ア「ううん、そうじゃないよ。二人とも信じてるんだよ」
レ「どういう事だ?」
ア「レオ君が私達の仲間であるのと同様にエクスだってもう仲間なんだよ。だから、二人を疑うなんて出来ないよ」
レ「だが、奴は全く信憑性のない話しかしてないではないか」
ア「信憑性がどうとかって問題じゃないよ。問題は、仲間を信じるか信じないか。私とコウガは二人を信じてる。だから、どっちかが嘘を吐いてるなんて思ってない」
レ「しかs「じゃあ、レオ君は私とコウガを信じないの?」それは・・・」
ア「それに、この言葉は殆どコウガに言われた事だよ。コウガの言葉はどんなに信憑性が無くったって信じてたでしょ?」
レ「・・・確かに」
レオはふと思い返してみる。
1ヶ月前に未来の高雅から言われたことも全く信憑性が無かった。
それなのに、その言葉を信じ、レオはどこかに行っていた。
そのお陰で、セバスチャンの手下と戦わずに済み、無事にアリア達と合流できたのだ。
ア「だから、ね?」
レ「・・・分かった。信じよう」
ア「ありがとう」
レ「だが、我は完全に諦めた訳ではないぞ。決定的な証拠が見つかれば、すぐに殺す」
ア「うん、その時は止めないよ。最も、そんなことが起きるなんて思わないけど」
アリアはにっこりと笑い、レオの頭を撫でてやった。
エ「・・・全く、お人よしにも限度があるぜ」
レ「貴様ッ!!」
ア「ストップ。戦う暇があるなら今後の事を考えようよ」
エ「それは聞いてたぜ。あいつの体を取りに行くんだろ」
レ「あいつ?」
レオは話を知らないので全く理解できてないが、アリアは十分理解していた。
ア「うん、コウガの体を取りに行かないと」
レ「コウガ殿の体?。なあ、アリア殿。意味が分からないのだが」
ア「う~ん、後で話すね」
レ「分かった」
レオは頷き、二人の会話に耳を傾けた。
最も、理解できるとは自分でも思っていなかったが。
エ「あいつの体は宮殿の中庭の茂みの中にある。多分、セバスが窓から捨てたんだろうな」
ア「え!?、分かるの?」
エ「そういうのは探知可能だからな、俺。最も、昼間の俺では無理だがな」
ア「そっか。今のエクスは力が凄いんだったね」
エ「まあな。んで、どうするんだ?」
ア「空間の力で行きたいけど、真の契約が出来ないと使えないし。何より、私の力でこの辺りからは行けないし」
エ「なぁ、あの漫才コンビ共が来た道からいけばいいんじゃねえか?」
ア「漫才?・・・ああ、マックとあの女の事ね。成程ね、確かにその方法があるね。でも、場所が・・・」
エ「そんぐらい、分かる分かる。ほら、ここから西に一万歩、速度の力で4秒弱の所だ」
ア「ほんと凄いね、その探知能力」
エ「まあな」
二人の会話が終わったところで、アリアはレオに向き合った。
レオは全く持って分からない顔をしていた。
レ「アリア殿、先ほどの話を詳しく教えてくれぬか?」
ア「はいはい。でも、それは移動しながらね」
レ「そうか。速度の力で行くのか?」
ア「いや、そんなに遠くないから、レオ君に乗っていくよ。その時に話すから」
レ「分かった。というかいい加減にくn「もう、しつこいよ!!」」
アリアはレオの言葉を無理やり終わらせ、レオの背中に乗った。
そして、一行は天竺というなの天国へ繋がる場所を目指して西へ進んだ。
高「どこぞの西遊記だ、おい」