無双と夢想編 その7、しぶとい主人公
ア「え・・・・あぁ・・・」
セ「終わりましたね」
セバスチャンはアリアを解放し、玉座に着いた。
アリアは脱力してしまい、その場に座り込んだ。
マ「あ~あ、虚しい終わり方だなぁ~」
マックが高雅の頭を蹴り飛ばして、テレビの前に座った。
その頭はアリアの前で止まり、アリアは自然と目が行ってしまった。
ア「嘘・・・ねぇ、嘘だよね、コウガ?。また創造の分身だよね?」
そして、その頭に問いかけてみる。
震えながら、それでも平然にと意識を掛けながら。
オ「どこにそんな余裕があったって言うのよ?。現実を見なさい」
セ「残念ですが、本物のコウガ様の頭でございます」
ア「嘘よ。いつものようにひょっこり現れるはずよ」
セ「諦めが悪いですね」
オ「精一杯の現実逃避でしょう」
アリアは高雅の頭を抱え、ショックで涙も出なかった。
と言うより、現実を受け入れきれてなかった。
セ「取りあえず、このまま三日間放置しましょう。最も、勝手に死ぬと思いますが」
セバスチャンはアリアの足下の空間を歪め、アリアをどこかに落とした。
その時、光のエクスも追いかけるように空間へ入った。
セ「さて、後は勝手に追いかけるように自殺でもするでしょう。後は女王の心臓を取り、セイクリッドへ行きましょうか」
そう言って古文書を取り出し、ページを捲っていく。
セ「・・・おや?」
オ「?、どうしました?」
セ「いえ、私の古文書ではないのです」
オ「なら、もう一つの方では?」
セ「それが見当たりませんのです」
オ「・・・・まさか、あの女!!。捕まってる時に!!」
セ「・・・これはまずいですね」
余裕を見せているセバスチャンが焦り始めた。
最も、焦っても顔色一つ変えてないが。
マ「自殺と一緒に燃やされる。そう言うオチですね」
そこに、縁起でもない事を言うマック。
オ「分かってるなら早く行くわよ!!。セバス様、空間を開いてください」
セ「すみません。どうやら、追いかけられないように破壊や静寂など、様々な力で妨害がされてます」
オ「も~、あの女、次に会ったら殺してやる!!」
マ「会えるか分からないがな」
セ「取りあえず、現世に行き、コウガ様の家に向かうのです」
オリアとマックは返事もせずに、すぐに宮殿を出た。
しかし、エクスだけは動かなかった。
セ「あなたも行くのですよ、エクス」
エ「・・・・・・」
エクスも同様に返事をせず、人形のように無表情で宮殿を出た。
セ「さて、こちらもこちらで心臓を抜きますか」
そして、セバスチャンはフィーラの心臓を抜きに掛かった。
アリアは茫然とソファーに座っていた。
誰もいない静寂に包まれたリビングで一人寂しく。
もう、目には光が灯って無い。
虚空を見て、まるで死んでいるかのような状態だった。
ア「・・・・いいや・・もう・・・・」
すると、アリアは立ち上がり、キッチンへ向かう。
そこにあった包丁を手にして反射して映った自分を見る。
見れば見るほど空しい瞳が自分を睨みつけているだけだ。
ア「私・・・生きる事・・・やめよう・・・」
そう言って自分の首に包丁の先を突き付ける。
少しだけ首に刺さり、血が包丁を辿って滴り落ちていった。
ア「フィーラちゃんはもう殺されるし、レオ君もいない。大好きだったセバスチャンはもういないし・・・」
そして、最後の言葉を言おうとした瞬間、頬に温度差を感じた。
紛れもない、涙だ。
だが、今のアリアはそんなことは分からない。
ただ・・・
ア「なにより・・・・コウガがいないよ・・・ぐす・・」
ただ、好きだった人の心残りだけがアリアを支配していた。
ア「コウガ・・・私も・・・逝くね・・」
そして、包丁に力を込め、首に刺していく。
エ「やめろ、アリア君!!」
ア「・・・エクス・・・」
エクスに言われ、アリアは目だけをエクスに向けた。
ア「ごめんね・・・私、もう無理・・・辛いよ・・・」
泣きながら言い、エクスは何も言う事が出来なくなってしまった。
ア「エクス・・・じゃあね・・・」
エ「あ・・・あr「アリア!!!!」」
ア「ッ!?」
突然聞こえた怒鳴り声。
アリアは驚き、ついつい手を止めた。
しかし、アリアが驚いたのは怒鳴り声ではなく、その声色だった。
ア「・・・・こ・・・・が・・・?」
アリアが見た先には、エクスの他にもう一つ光が漂っていた。
そして、その光には覚えのある感覚があった。
高「おいおい、なに勝手に人の調理道具で死のうとしてんだゴラ!!」
ア「え・・・あ・・これは・・・」
高「包丁は料理に使うもので自殺に使うものじゃねえ!!。そんなんも分からねえのか!?」
ア「えと・・・その・・・・」
高「謝罪しろ」
ア「・・・・ごめんなさい・・・」
アリアは圧倒され、頭を下げた。
しかし、すぐに頭を上げ、目を丸くして驚いた。
ア「・・・って、コウガ!?」
高「俺以外に誰の声だ?」
ア「コウガ・・・ほんとにコウガだ・・・」
高「んまぁ、体は無いけど、エクスに魂だけ抜かせてもらったんだ。体は再生すれば何とかなるみたいだから。それにしても、魂を実体化するのって難しいなぁ」
そう笑いながらサラッと言う。
その態度にアリアは自然と怒りに芽生え始めていた。
ア「・・バカ・・・」
高「ゑ?」
ア「バカ!!。どれだけ私が苦しかったと思ってるの!?」
高「ちょ!?、悪かったって。あの状況で暴走してしまったのは謝るから」
ア「いいや、それだけじゃ許さない!!。そんなもので許される訳がないよ!!」
高「マジで悪かったって。本当に反省してるからさ、許してくれよ?」
ア「ダーメ!!」
高「え~・・・」
いつの間にか立場逆転しており、その光景を呆れながらエクスは眺めていた。
しかし、呆れながらも、どこか驚いていたりしていた。
エ(コウガ君は凄いな。あの死人の様なアリア君をすぐに戻すとは)
高「悪かったって。今度、一つだけ言うこと聞いてやるから」
ア「それって本当?」
高「俺の出来る範囲なら何でも」
ア「・・・じゃあ、許す」
高「ふぅ」
エ「終わったようだな」
やっと落ち着いた二人のやり取りの間に入り、本題に切り替えるエクス。
エ「まずは、アリア君。もう一人紹介しよう」
ア「もう一人?」
すると、壁をすり抜けてまた光が現れた。
今度は少しピンク色に光を放っていた。
フ「アリア様、ボクです」
ア「その声・・・フィーラちゃん?」
フ「はいです。さっきのやり取りは聞いてましたです」
ア「え・・・あ・あ・・」
高「・・・・・」
アリアはしどろもどろに動き、高雅は黙り込んでいた。
エ「ゴホン。それで、これからどうするのだい?」
高「まぁ、俺の体を取りに行って、あいつの古文書でも奪うか」
ア「あ゛っ!!」
突然、アリアが何かを思い出したかの様に庭に飛び出した。
高雅達もその後を追うと、黒焦げに焦げた跡があった。
ア「あちゃ~、もう燃えちゃった」
高「何、焼いたんだ?」
ア「私ね、セバスチャンに捕まっている時に古文書を掏ったの。それを焼いちゃって・・・」
高「中は見たのか?」
ア「・・・・・全然」
高「おい」
高雅が呆れてため息を零す。
再生しようにも、既に灰は風で飛んで行き、再生不可能となっていた。
エ「しかし、意外と良いかもしれない。古文書が無ければセイクリッドの行き方が分からないはずだ」
エクスがアリアをフォローするが、高雅が一瞬で崩した。
高「内容が頭の中に入っていたら無意味だろ」
エ「それもそうだ」
ア「ごめんなさい」
アリアはもう謝るしかないと思い、頭を下げた。
高「過ぎた事はしょうがねえよ。これからを考えようぜ」
しかし、高雅はさっきとは全く別で怒らなかった。
高「取りあえず、俺の体を取りに行かねえとな。真の契約が出来なきゃ、きっとセバスチャンには勝てない」
エ「確かに、難しいだろう。しかし、体を取りに行くには、また向こうに行かなくては」
ア「けど・・・私、ここに来るときに静寂や破壊やらで来れないようにしてるから」
高「ふ~ん」
アリアが申し訳なさそうに言ったが、特に問題があるような言い方ではなかった。
そんな態度にアリアは不思議そうな顔をしていた。
高「で?」
ア「・・・え」
高「他には無いのか?」
ア「え・・あ・・・うん」
高「じゃあ、問題無いな」
エ「何か秘策でもあるのか?」
高「秘策までいかないが方法はある。その為に、まずはあいつを探そう」
ア「あいつって?」
高「お前も良く知ってる奴だ。とにかく、探せば何とかな・・・・」
高雅の言葉が中途半端に終わり、無言になる。
アリアがどうしたか聞こうとした瞬間、高雅の口が開いた。
高「避けろ!!」
ア「え!?」
それは、さっきの話とは全く別の言葉だった。
お陰で反応が遅れ、アリアは空からの奇襲を受けてしまった。
ア「あぐっ」
高「アリア!?」
高雅が心配そうに近づき、アリアの傷を見る。
ギリギリで反応出来たのか、傷は浅かった。
オ「ちょっと、死んでないじゃない!!」
マ「いやぁ~、それ程でも~」
オ「褒めてる訳ないでしょ!!!!」
空で漫才をしているのは、セバスチャンに従うあの二人だった。
そのわきにはエクスの姿もあった。
オ「ところであんた達、セバス様の古文書はどこにあるの?」
高「んなもん、焼いてアリアが喰った」
ア「ちょ・・喰ってはないよ!!」
オ「ふ~ん・・・・ってええ!?」
マ「反応おせぇ~」
オ「うるさい!!。あんたは黙って!!」
オリアはマックの頭を一発殴り、黙らせた。
すると、マックはエクスに縋り寄って来た。
マ「お~いおいおい、エクスぅ~、オリアが虐めるよ~」
エ「・・・・・・・」
嘘泣きをしながらエクスに抱きつくが、全くの無反応だった。
むしろ、反応したのはオリアの方だった。
オ「あんた・・・うざい!!」
何故か自然と矛先がマックの方に向いていた。
そして、敵同士のドンパチが始まった。
その光景を哀れな人を見る目で高雅は見ていた。
最も、目なんて付いてないが。
高「あいつら、漫才しに来ただけか?」
フ「それより、どうして現世にいるです?。アリア様が来れないようにしたって・・・」
高「どうせ、アリアの力がいき通って無い所から来たんだろ。わざわざご苦労な事だ」
エ「それよりも、これはチャンスだ。今の内に逃げよう」
高「だな。アリア、行けるか?」
ア「うん。擦っただけだから」
アリアは速度の力を溜め、この場から離れる準備をした。
フ「でも、ボクらはどうするです?。アリア様について行けるですか?」
高「それがな、意外とついて行けるんだよ、これが」
エ「コウガ君は知らないと思うが、意外ときついんだ。まぁ、やってみれば分かる」
ア「それより、どこに逃げよっか?」
高「そんなもん、後ででいい。とにかく逃げろ」
ア「分かった。ちゃんと、ついて来てよ」
そう言って、アリアは地面を蹴り、この場から一瞬でいなくなった。
そんなことに気付かず、オリアとマックは殺し合いをしていた。
気付いたのは、数十分後であった。