笑顔で帰ろう
高「・・・・分身が消えた」
ア「・・・・・・」
A「えっ!?、何の話!?」
高雅は校舎の裏側の方を見つめながらそう呟いた。
今、高雅はAと合流し、セバスチャン以外のメンバーが全員揃っていた。
高「こっちの話だ。お前は関係ない」
A「ちょ・・・仲間はずれは良くないぜ。ほら、話したら気が楽になるかもしれねえぞ」
高「俺じゃない。アリアの方が問題だ」
A「いいから話して見ようぜ。話せば楽になる。あれなら・・・俺の胸を貸すからさ」
高「はっきり言ってキモイぞ」
A「んだとぉ!!。主人公だから、かっちょえーよ!!」
高「何がかっちょえーだ。喋り方がダサすぎる。主人公だとしても、今のはダサい」
A「るっせーーー!!。脇役が出しゃばるな!!」
高「一偏、嬲り殺してやる!!」
高雅とAは些細な事で喧嘩を始め出した。
この二人、完全に子供である。
ア「・・・・ごめん。席外していいかな?」
そんな様子を横目で見ながら、アリアは口を開けた。
高雅は動きを止め、アリアの方に振り向いた。
しかし、すでにAの顔面はボコボコに腫れ上がって、首根っこを掴み、止めをさす寸前だった。
あと少し遅ければ、Aはどうなっていたのやら。
高「・・・・ああ。落ち着いたら戻ってこいよ」
ア「ありがとう・・・」
アリアは一人立ち上がり、高雅達の視野から消えて行った。
高雅はAを投げ捨てて、腰を下ろした。
タ「一体、どうしたのだ?」
気になったタイトが答えを求めて高雅に聞いて来た。
高雅はタイトと目を合わさず、遠くを見ながら答えた。
高「信頼していた奴に裏切られたのさ」
タ「あの老人のことだな」
高「そ。俺達が戻ってきたときに、あいつの邪のオーラが見えてな。とは言っても、ほんのちょっとしか出てなかったんだ。それで、奴の思考を読み取っているとフィーラを狙っているってことが分かったんだ」
タ「しかし、それは何かの間違いとは言い切れぬのか?」
高「最初はそう思っていたさ。だが、俺の分身を殺したんだ。そして、偽物だがフィーラを攫った。もう言い逃れは出来ない」
タ「・・・そうか」
タイトは深く追求せず、倒れているAを拾いに行った。
安「う・・・・う~ん・・・」
高「ん?、起きたか」
目が覚めた安理明は少しだけ開いた瞳で周りを見回した。
安「あれ・・・私・・・?」
高「助けてやったんだけど。あの天魔獣とか言う奴から」
安「嘘っ!?。私、敵なのにどうして!?」
高「例え偽物であっても、やっぱり近くにいる奴を失うのは何か嫌だからな」
安「・・・そう・・・せっかくだけど、私、もう消えるね」
高「なっ!?。助けてやったのに、どうしてだよ!?」
安「もう、殆ど力が残ってないんだ。多分、天魔獣に吸い尽されたかも。だから、もうここにいることは出来ない」
安理明は悲しそうに俯き、自分を見つめだした。
その手は既に薄く透き通っていた。
高「お・・おい!!」
安「ゴメンね。でも・・・楽しかったよ。一時の夢だったけど」
高「何だよ!?。だったら、俺は何の為にお前を救ったんだよ!?」
安「ほんとゴメンね。でも、その優しさは本物の私に上げて」
それだけを言い残すと、安理明は笑いながら儚く消えていった。
高雅はそれを受け入れるのに少し時間が掛かった。
安理明が消えても、ずっとその場所を見つめ、漠然としていた。
フ「ん・・・・んん・・・」
高雅を現実に戻したのはフィーラの声だった。
高「!!、フィーラ!!」
フ「んん・・・・コウガ様?」
高「大丈夫か!?。お前は消えないよな!?」
高雅はフィーラまで消えてしまうのではないかと心配し、フィーラの肩を強く掴んで揺すっていた。
寝起きのフィーラにとって、それは辛い仕打ちだった。
フ「こ・・・コウガ様・・・苦しい・・です・・」
高「あっ、わりぃ」
落ち着きを取り戻した高雅はフィーラの肩を放し、ゆっくりと寝かせてあげた。
フ「ふぅ・・・・って、え!!??」
ホッと息を突いた瞬間、フィーラは勢いよく起き上がり、目を丸くして高雅を見た。
一度見ては目を擦り、そしてもう一度確認するかのように高雅を見た。
フ「・・・コウガ・・・・様・・?」
高「ああ。そうだけど?」
フ「・・・生きてたです・・・コウガ様、ほんとに生きてたです・・・・」
高「死ぬわけねえだろ。セバスチャンの話を聞いてなかったのkおわっ!?」
フィーラは高雅の話を聞かず、真っ先に抱きついて来た。
高「お・・おい。どうした?」
フ「・・・ぐす・・あえて良かったです・・・ひっく・・・」
高「あ・・・」
高雅はフィーラに置かれた境地を忘れていた。
ずっと一人だったフィーラが仲間を手に入れ、それを失うことは精神的に辛いことを。
さらに、フィーラはまだ幼すぎる。
例え少しの間だとしても、フィーラに取ってかなり辛いものだ。
高「悪かったな。ほんと」
高雅は優しく髪を撫で、フィーラを落ち着かせてあげようとした。
案の定、フィーラは泣きやみだした。
フ「うう・・・ぐす・・・ほんと・・心配したです・・・」
高「悪かったな。心配させて」
フ「ぐす・・・・?、アリア様はどこです?」
高「ああ、ちょっと一人になりたい状態になってな」
フ「・・・・そんなことないです」
高「え!?」
何も分からないはずのフィーラが分かっているような口ぶりをきいて来た。
フィーラは高雅の胸から顔だけを上げて少し怒ったような顔だった。
フ「コウガ様は鈍感です。だから、アリア様の所に行って、後ろから抱きつくです」
高「はぁ!?。何で!?」
フ「コウガ様が鈍感だからです。だから、傍に居てあげるです。アリア様は寂しがり屋です」
高「あいつがぁ!?。とても、そうには見えんぞ」
フ「いいから、行ってあげるです。ボクは大丈夫です」
高「おいおいおい、せめて誰か見張りぐらいは・・・」
レ「それは、我が引き受けよう」
高「レオ!?。お前、大丈夫か!?」
レ「心配いらん。しかし、心配はアリア殿ではないか?」
高「だから、何でお前も知ってんだよ?」
レ「少し前から話を聞いていた。それで大体は把握できた」
高「把握できる場所とかあったか?」
フ「口答えはいいです。早く、行ってあげるです!!」
フィーラは急かす様に高雅を押し、高雅は意味も分からず立ち上がり、取りあえずアリアが立ち去った場所へ行こうとした。
途中、振り返って何かを訴えかける目をやるが、フィーラとレオは笑って手を振るだけだった。
高(一体、何だ?)
訳も分からず、取りあえずアリアを探して見ることにした。
高雅が見えなくなるまで見送っていたフィーラは少し悲しそうな顔になった。
レ「どうしてだ?」
レオは『どうした?』ではなく『どうしてだ?』と聞いた。
それは間違った聞き方だが、フィーラに取っては間違いではなかった。
フ「それは・・・」
レ「コウガ殿の事が好きなのだろう?」
フ「う・・・それはそうです・・・だけど・・・」
フィーラは俯きながら涙を零し始めた。
さっきとは違う、また別の涙だ。
フ「コウガ様はアリア様の事を思っているです」
レ「何故、そう言える?」
フ「だって・・・コウガ様はアリア様の所に向かったです」
レ「だが、コウガ殿は鈍感ではないか?。別に、そう言う意味でアリア殿の所に向かったのではないだろう」
フ「コウガ様は・・・鈍感じゃないです」
レ「何っ!?」
意外な言葉に、レオは驚きを隠しせなかった。
フ「コウガ様は優し過ぎるです。もし、自分の本当の気持ちを伝えてしまったら、関係が壊れると恐れているです」
レ「だから、鈍感の振りを?」
フィーラはレオの問いにゆっくりとコクリと頷いた。
レ「・・・・それで」
フ「えっ!?」
レ「諦めるのか?。フィーラ殿はこれで満足か?」
フ「・・・・そんな訳・・・無いです」
レ「では、今からどうするか?」
フ「・・・ボクは・・・」
涙を拭い、その目は決意の目に変わっていた。
フ「もう一度、思いを伝えたいです」
レ「では、行こうではないか」
レオは立ち上がり、フィーラの手を引っ張って立ち上がらせた。
フ「え・・・ま・・・待ってです・・」
レ「時は一刻を争うぞ。さぁ、急ぐぞ」
レオは待ってもくれず、フィーラを連れて高雅の後を追い始めた。
ブラブラ探し続けること3分。
高「あっ、いた」
アリアはいつも昼食を食べる時の木陰の下に座っていた。
意外と呆気なく見つかった為、高雅は少し拍子抜けだと思った。
ア「!?、コウガ?」
まだ距離はあったが、アリアは高雅に気付いた。
高雅は軽く手を上げて、アリアに近づいた。
アリアは不思議そうな顔で高雅を見ていた。
高「ん?、俺の顔に何か付いてんのか?」
ア「い・・いや。どうして来たんだろうって」
高「ああ、フィーラが行ってやれって言ってたから」
ア「そ」
それだけを聞いて、アリアは高雅から目を逸らした。
高雅も木に凭れかかりながら座った。
高「それで、落ち着いたか?」
ア「・・・うん。大分」
高「そっか・・・辛いだろうけど、この現実を受け止めないといけねえからな。決して、現実逃避はするなよ」
ア「善処するよ。皆の様態はどう?」
高「フィーラは目を覚ました。安理明も覚ましたが、アルテマに力を吸われ過ぎて消えてしまった」
ア「そっか・・・」
アリアはまた遠くを見だした。
高雅はそんな姿を横目で見ながら口を開けた。
高「俺は失う気持ちは分かるが、裏切られる気持ちは分からない。頼りにならなくて悪いな」
ア「・・・・そんなことないよ」
高「えっ!?」
アリアは立ち上がり、高雅の目の前まで歩き始めた。
ア「だって、わざわざ心配で来てくれたんでしょ?」
高「まぁ・・・そうだな」
少し肯定するのに恥ずかしかったが、目を逸らしながら肯定した。
アリアはそんな姿を見て微笑んだ。
ア「ありがとう、コウガ。私は大丈夫だよ。もう、元気だから」
高「・・・どっからどう見ても、そうは見えない」
ア「?、どうして?」
高「手が震えてるし、涙目じゃねえか。やっぱり、辛いんだろ?」
ア「だ・・大丈夫だって。これはその・・・手は少し寒くて震えてて、目にはゴミが入ったんだよ」
あからさまにベタないい訳は高雅に通用するはずがなかった。
高雅は黙って立ち上がり、アリアの近づいた。
ア「な・・・何?・・・え?」
高雅は何も言わずにアリアの頭を撫でだした。
ア「あ・・・」
高「強がるな。そして、泣け。その涙は後に支障を及ぼす。今、はっきりと決別しろ」
ア「コウガ・・・」
高「お前がどんな答えを出そうが、別にどうこう言わねえ。人の答えに偉そうに告げ口する事もしねえ。だから、まずは泣け。泣いてスッキリした後、ちゃんとした答えを出せ」
ア「コウガ・・・・・コウガぁ!!」
アリアは高雅の胸に飛び込み、泣き始めた。
高雅はアリアの頭を優しく撫でながらあやした。
高「よしよし、今は周りに人がいな・・・・いと思ったら何かいる」
ア「えっ!?」
高雅は周りを見渡しながら確認するが、誰もいない。
しかし、高雅に取って分からない訳ではない。
高「10や20じゃねえな・・・100以上はいる」
ア「まさか・・・・敵!?」
さっきまで泣いていたのが嘘の様にアリアは緊張した顔つきになる。
高「だが、それら全て殺気が無い。だとすると・・・あいつらか」
すると、遠くに人影が見えてきた。
その影は大量で、次第にこっちに向かって来ていた。
すると、一足先に気付いたアリアは高雅から離れ、そっちの方へ向かった。
最も、実際は高雅は最初から何かは気付いていたが。
ア「リュウコ達だ!!」
アリアは嬉しそうに手を振って走り近づいて行った。
高雅は走りはしないがアリアの後を歩いた。
龍「あ・・・アリア・・・でも・・どっち?」
ア「あははは、私はいつもコウガと一緒にいる方だよ」
龍「じゃあ・・・高雅君は?」
高「俺はここだけど」
後から高雅が追いついて来た。
龍「あの・・・さっきはありがとう・・・」
高「さっき?。さっきって、いつだ?」
龍「私を・・・怪物から・・助けてくれた・・・」
高「?、そんなこと、した覚えはないぞ」
龍「でも・・・フードをかぶって・・・蒼い剣を持って・・・声だって・・」
ア「でも、私達はずっとここにいたよ」
高「ああ。ずっとここにいた。それ、ほんとに俺か?」
龍「間違いないよ・・・絶対・・・」
ア「う~ん・・・私達の熱烈なファンが真似をして・・・」
高「まず、あり得ない。声も一緒の時点であり得ない」
ア「だったら、誰かがホープミラーを」
フ「それも無いです」
第三者の声が聞こえ、振り返ればレオに乗ったフィーラの姿があった。
つまり、一般人から見れば・・・
他「ぎゃあああああああああ、ライオンがいるうううううううううう!!??」
他「く・・喰われるううううううううう」
ワーキャーワーキャー騒ぎまくる訳で。
高雅はウザく感じてきてしまい、消し去ろうと決行した。
高「じゃあな、龍子。記憶は残しておくから明日話してくれ」
龍「え・・・?」
高雅はアリアの空間、破壊、波動、再生の力で皆をそれぞれの家に送り、尚且つ知り合い以外の記憶を消し、破壊した校舎などを再生し、元通りに戻した。
高「これでよしっと。で、なんでホープミラーは違うって言いきれるんだ?」
フ「ホープミラーは誰かを写している間は他のを写せないです。最も、一偏に移せばいいですが、同じ人が二人も出てくることは無いです」
高「つまり、既に安理明が出来ていたのに、また別のアリアは存在しないと」
フ「百点です」
ア「そっか・・・じゃあ、一体何だろう?」
高「だが、俺と全く同じだろ?。どんな仕掛けだか」
レ「分からない事を気にしても仕様がない。一先ず、家に帰って体を休めぬか?」
高「まぁ、それが妥当な答えだな。よし、帰るか」
高雅達は帰路に立ち、帰り始めた。
辺りはすっかり夕暮れに染まり、帰る時間にはベストだった。
帰路の途中。
ア「・・・・ねぇ、コウガ」
突然、アリアが立ち止り、高雅の名を呼んだ。
それにつられて、高雅達も立ち止った。
高「ん、どうした?」
アリアは高雅と目を合わした。
アリアの目は迷いが無く、決断を下した目だった。
ア「私・・・セバスチャンが襲って来たら・・・・戦う」
高「・・・覚悟はあるだろうな?」
高雅の問いに、アリアは力強く頷いた。
高「そっか。お前がそう決めたなら、俺はサポートしてやるよ」
フ「ボクも手伝うです」
レ「我も、家族として助けようぞ」
ア「ありがとう、皆」
高「よーーーし、家まで競争だ!!」
ア「へっ!?」
高雅の急な展開にアリアは意味が分からず、ついて行けなかった。
フ「だったら、ビリは罰ゲームです」
レ「そうか。なら、全力で行くぞ」
高「レッツ、Bダッシュ!!」
しかし、三人はアリアの事も気にせず、走り出した。
ア「ちょ・・・待ってよ!!・・・ふふふ」
フ「はははは」
レ「ふっ」
高「たははははは」
四人は笑いながら走っていった。
様々な出来事があったが、最後は皆笑顔で終えた。
高「あっ!!。アリア、速度の力とか使うな!!」
ア「別に使っちゃいけないなんて言ってないよ」
終わりよければ全てよし。
そんな言葉も満更ではないと四人は思っていた。
☆おまけ☆
フ「思い、伝えそびれちゃったです」
フィーラは一人、リビングでソファーに座っていた。
フ「コウガ様、告白したのです?・・・」
高「何の話だ?」
フ「ひゃわっ!?。びっくりしたです」
突然、後ろから声を掛けられ、フィーラは身が跳ねるように驚いた。
思いのほか驚いたので、高雅も少し罪悪感を感じた。
高「わ・・悪かったよ」
フ「べ・・・別にいいです・・・」
ふと思えば二人っきりの状態。
こんな絶好のチャンスを逃す訳にはいかない。
フ「・・・・コウガ様!!」
高「な・・何んだ!?」
突然の大きな声に高雅は驚き、少しびっくりしていた。
フ「ボクは・・・その・・・」
後少し。
後一言。
フ「・・・好きです!!。愛してます!!///」
顔を真っ赤にしながら思いっきり叫ぶように告白した。
高「・・・ああ。俺もだよ」
フ「・・ふぇえええ!?」
高「実は、アリアよりフィーラの方が好きなんだ。だから・・・」
高雅はフィーラの肩を持ち、ゆっくりと押し倒し始めた。
フ「え・・コウガ様?・・・あ・・そんな・・・」
そして、二人は甘い世界に・・・
ア「フィーラちゃん?。風邪引くよ?」
アリアはソファー幸せそうに寝ているフィーラの顔を指で突っついていた。
高「やめてやれ。疲れてんだろ。そのまま寝かせてやれ」
ア「・・・それもそうだね」
高「じゃ、俺も寝る。お休み」
ア「お休み」
レ「よい夢を」
高雅はフィーラに毛布を被せ、自分の部屋へ向かった。
はい、当然?の夢落ちでしたwwwww。




