恐怖
タイムリミットまで、後15分を切ったところ。
高雅達は左目を集中的に攻撃するが、アルテマもそれに感ずき、易々と目を攻撃させないようにしていた。
高「さすがに気付き始めたか。バカじゃねえな」
レ「天魔獣は凶悪と語られている。あいつは我武者羅に強大な力を使わず、考えて戦っているのだ」
一旦距離を置いて休憩してるとレオが寄って来て、高雅の隣に立った。
高「ふ~ん、そっか」
高雅はレオのズタボロの手を治しながら相槌をうった。
手を治すと、レオは再びアルテマの所へ跳んだ。
高雅も少し間を空けてから跳んだ。
高「ちょっと、攻撃方法を変えてみるか。アリア、方向の力を頼む」
ア「うん、分かった」
高雅は顔の方へは行かず、体の鎖に向かって進み始めた。
高「そらっ!!」
ガシャ!!
体に巻かれた鎖を剣の腹で打った。
すると、鎖が連動して締め付けが強まりだした。
ア『ガアアア・・・・』
効いているのかいないのか、アルテマは低く呻き声を上げていた。
しかし、一瞬だけ集中が途切れたことは間違いない。
高「もらったぁ!!」
高雅の狙いは、はなから隙を作ることだった。
狙い通りか、アルテマは鎖で守ろうとせず、完全にフリーだった。
高雅はここぞとばかりに最大の活性で左目を突いた。
グチュ・・・
そして、遂に左目に傷を負わせた。
剣先がちょっとだけ刺さったのだ。
ア『グアアアアアアアアアアアア・・・・・・グオオオオオアアアアアアアアア』
瞼がないのか、アルテマは刺されたにもかかわらず、目を閉じなかった。
意表を突かれたアルテマは苦しみ、顔を振って高雅を落とそうとする。
しかし、高雅は突き刺したまま離れようとしなかった。
高「アリア、このチャンスを大事にして、限界まで溜めろよ!!」
ア「うん!!・・・あっ、コウガ!!、後ろ!!」
高雅の後ろから鎖が迫って来ていた。
しかし、高雅は後ろを向かず、アリアに集中しろと促せる。
レ「そうはさせんぞ!!」
レオが手刀で鎖を斬り、高雅を狙って来た鎖は砂煙を上げながら地面に重く圧し掛かった。
しかし、鎖は一本だけではなく、何本も何本も高雅に向かって襲い掛かる。
レ「くっ、しまった!!」
流石のレオも大量の鎖を全て斬り落とす事は出来ず、数本斬りそびれてしまった。
ア「あっ!!」
高「だから、集中しろ!!」
アリアが不意にこぼれた声でも高雅は厳しく指摘する。
ア「・・・・うん」
アリアは高雅を信じ、意識し始めた。
鎖はもう高雅に直撃寸前だった。
A「そこで、俺登場!!」
タ「ここは任せろ!!」
呼んでもないが、Aが駆けつけ、寸前の所で鎖を斬った。
A「ふっふっふ、感謝しろよ。この主人公様に助けられt「アリア、まだか?」無視すか?」
ア「あとちょっと。もう少し耐えて」
高雅は落とされないように踏ん張り続ける。
アルテマも負けずと顔を振り、剣を抜こうとする。
それでも、蟻みたいに小さな剣を抜くことは出来なかった。
ア「よし、完了だよ」
高「ご苦労!!」
アリアの終了の言葉を聞いて、高雅はすぐさまアルテマから離れた。
レオとフィーラも高雅の行動に察し、アルテマから距離を取った。
ただ、一人除いて。
高「よし、やれ!!」
ア「はぁ!!」
アリアの気合いの入った声と共に・・・
チュドオオン!!!
アルテマの左目が大爆発を起こした。
これから分かるように、アリアは爆破の力をアルテマの目の奥に溜めていたのだ。
そして、その威力は半端なく、鉄壁の目も粉々に吹き飛び、血を流していた。
ア『キシャアアアアアアアアアアアアアア』
怒りと絶望と混乱が入り混じった声を上げ、多大なるダメージを浴びさせた。
高「しゃっ」
高雅は腕をグッと引いてガッツポーズをし、喜びを噛み締めた。
ア「やった。これなら・・・」
レ「いや、まだだ」
高「どうやら、天魔獣さんは目ん玉一個だけじゃ死なないらしい」
目は完全に消え、血だらけの空白が残っているだけだった。
高「しかし、これで目が見えなくなっただろう。戦況は有利になったな」
フ「だと・・・いいです」
ただ、フィーラだけがこの状況を喜んでいなかった。
まるで、意味がなかったと思えるほどに。
ア『ガアアアアアア・・・・・』
すると、アルテマは腕に力を入れ始め、手錠を引き千切ろうとしだした。
レ「!?、いかん!!。手錠が解かれるとまずい!!」
高「何が・・・っておい!?」
レオはすぐさまアルテマに攻撃を仕掛けに行った。
高「分かんねえが、俺らも行くぞ」
ア「うん」
フ「了解です」
何が起こるかは全く知らない高雅は取りあえず、レオの援護でもすればいいと思っていた。
A「待てええええい。謝りもしないのか、貴様!!」
途中、真っ黒焦げのAが割り込んできて高雅とフィーラの前に立った。
高「ん、お前が避難しないのが悪いんだろ」
A「お前の考えなど分かるか!!」
高「でもよ、お前以外はしっかりと理解したぜ」
フ「コウガ様が離れたら、離れた方がいいと簡単に予測できるです」
A「いやいやいや。普通、予想出来ねえだろ!?」
高「ったく、情けねえ頭だな。もっと考えてから行動しr〈ビュン〉ッ!?」
突然、感じた風。
それは、頬を通り抜ける一瞬の風だった。
風が過ぎ去っていった方を見ると、気絶したレオが校舎にめり込んでいた。
高「レオ!?」
A「な・・何だ!?」
Aは何が起きたか分からず、あちらこちらに首を回し、オドオドしていた。
フ「コウガ様!!、アルテマの手錠が壊されてるです!!」
高雅は振り向くと同時にアルテマの腕を見た。
腕は解放され、手錠は地面に転がっていた。
ゾクリ!!
高・ア・フ・A「ッ!?」
ただそれだけなのに、とてつもない恐怖を感じた。
動くことすら許されない程の恐怖。
心が弱いものなら、今にも泣いてしまうだろう。
アルテマは自由になった手で顔の包帯を外し始めた。
包帯は簡単に引き千切られ、アルテマの顔が露わになった。
全体が火傷のように皮膚が軽く垂れ、右目は充血し、肌色は黒く焦げているようだった。
ただそれだけなのだが。
パキキ・・・
アルテマの周りの空間に罅が入り始めた。
高「・・・なんなんだよ・・・こいつ」
さっきまで完全に勝っていた高雅達だが、手錠が外れるだけで戦況がひっくり返された。
ア「これ・・・現実なの・・・?」
フ「怖いです・・・怖すぎです・・・」
タ「震えが止まぬ・・・」
A「あっはははははははははは、こここここここ怖くなんてなななななないいいんんだだだだだだ」
高雅達は体が震え、Aは声も震えていた。
高「とにかく、やらなきゃやられるんだ。嫌でも体を動かせ。恐怖に呑まれるな!!」
そう言うものの、この中で体を動かせるのは高雅しかいなかった。
高雅は震える体を無理やり動かし、一人でアルテマのもとへ向かった。
高「ったく、こっちが攻撃したのに、何で戦況がひっくり返るかなぁ」
平常心を保つように平然としているが、内心は逃げだしたいくらい恐がっていた。
それでも、やらなきゃやられる。
ただ、それだけを頼りに高雅は動いていた。
高「行くぜ、顔面黒こげ野郎!!」
恐怖を殺し、今一度、アルテマに攻撃を仕掛けはじめた。
変わって一般人達。
謎の怪物をみて混乱し、ただ只管逃げていた。
アルテマを見て最初は感動しているバカな生徒もいたが、今では見ることすら怯え、必死に逃げていた。
その中には龍子やA以外の購買部組、凛もいた。
龍「はぁ・・・・はぁ・・・・」
凛「はぁ・・・はぁ・・・あれは一体、何ですの!?」
B「ぜぇ・・・こっちが聞きてえよ」
C「最初はFFXの○ニマみたいだと思ったけど」
D「今じゃ、恐くて直視すら出来ねえよ」
E「ガクガクブルブル」
夢「一体・・・高雅は何をしてんの!?」
振り返って確認がしたいが、振り返ればアルテマが目に入る。
それは、死ぬほど嫌なことだった。
龍「はぁ・・・高雅君なら・・・大丈夫」
凛「そうですわ。彼ならこの状況を打破してくれますわ」
夢「だと、いいけど・・・ん?」
突然、逃げている皆の足が止まりだした。
凛「どうしましたの?」
意味が分からず、取りあえず、前の方を見てみると・・・
B「あれって・・・鷲!?」
C「待て待て待て。鷲はあんなに大きくないぞ!?」
鷲が一匹翼を広げて威嚇していた。
そして、その傍らに蒼い髪の色をした女性が立っていた。
?「逃げちゃダメよ。あなた達はみ~んな死んじゃうのよ」
不気味な含み笑いをしながら、えんぎでもない事を言った。
他「ふぜけるな!!。こんな所に居たくはねえんだよ!!」
勇敢にも、巨大な鷲の脇を通ろうと走り出した一人の青年は・・・
?「あら、悪い子はお仕置きよ。やりなさい、バオ」
バ「キエエエエエエエエエ」
バオという鷲は羽ばたき、空高く舞い上がった。
そして・・・
バグッ!!
龍「!?」
一瞬にして、その青年を喰った。
跳び上がったかと思えば、いつの間にか青年を丸呑みにしていた。
それは、皆の恐怖をより一層強くさせた。
龍「私達・・・どうなるの・・?」
凛「い・・・生きて帰ることができますの?」
購買部組「ガクガクブルブル」
無力な一般人達は迫りくる死に怯えだしていた。
高「おらっ!!」
高雅は力強くアルテマの頭を斬ろうとするが、異常に硬く、傷すらついていなかった。
目を狙ってみたのだが、左目より硬く、同じ作戦は通用しなかった。
高「くそっ!!。斬れねえ」
ア「硬過ぎる」
何度も何度も斬ったが、アルテマは表情すら変えず、何もしてこなかった。
その姿は高雅を見下していた。
高「何もしてこねえとか、舐めやがって」
ア「何だろう?。何もしてないのが凄く恐い」
高「何もせずに恐怖を与えさせるとか、こいつ、マジで強いな」
すると、ジッとしているのに飽きたのか、アルテマが動き出し、背伸びするように腕を伸ばし始めた。
そして、手のひらを高雅に向けると・・・
ピシュン!!
高「うおっ!?」
レーザーを出して来た。
レーザーは太く、後ろにあった山が綺麗に貫かれていた。
高「あっぶねえ・・・」
ア「コウガ!!、後ろ!!」
高雅はレーザーを避けて一安心した一瞬の隙を見せてしまった。
その隙をアルテマは見逃すほど優しくなかった。
ゴキャッ!!
高「がっ!?」
アルテマのマッハパンチが高雅を吹き飛ばし、地面に叩き落とした。
フ「コウガ様!?」
恐怖で身動きが取れないフィーラは必死に叫ぶしかできなかった。
高「が・・・げほっげほっ・・・」
体に受けた衝撃は消失の力である程度減らしたが、完全には減らすことができなかった。
高「つぅ・・・骨が何本かいったな」
ア「コウガ、大丈夫?」
高「まだ動ける。大事にはいったってない」
呑気に自分の状態を説明している時だった。
ア「あっ!!、周りの空間が!!」
高「なっ!?」
既に高雅の周りの空間に大量の罅が入っていた。
高「やべぇ!!。空間ごと消される!!」
今すぐに速度の力でこの場から離れようとするが、こんな時に限って足にダメージがあり、上手く動かせなかった。
高「くそっ!!」
もはや打つ手なしと諦め、目を強く閉じた。
完全に死を覚悟した証拠だ。
バリーン・・・
そして、高雅を取り囲む周りの空間が割れた。