鏡
やっと残暑もなくなりつつある10月半ば。
いつもの様に学校に早く来ては寝る高雅だったが、今日は少し違った。
高「はぁ~・・・」
高雅がため息を吐きつつ、ダルそうに机に突っ伏していた。
決して眠ろうという感じはなかった。
龍「・・・どうしたの?・・」
高「何でもねえよ」
龍「でも・・・4回目・・・」
龍子が4回というのはため息の回数である。
高「何だよ。このデジャブは?」
ア「気にしない、気にしない♪」
高「誰のせいでため息を吐いていると思ってるんだ?」
ア「フィーラちゃん」
高「お前もだ!!」
龍「きゃっ!?」
突然の怒鳴り声に龍子は跳ねるように驚いた。
高「ああ、わりぃ」
龍「何か・・・あったの?・・・」
高「まぁ・・・朝に・・・ちょっとな」
ア「あれは、フィーラちゃんが抜け駆けするかr「うるさい。どっちにしろテメーらがわりぃんだ」
突然ですが、何の話か良く分からないと思いますので、ここで、朝に戻ってみましょう。
高「・・・んぁ・・・」
カーテンの隙間から入ってきた日差しによって、高雅は普段より早く起きた。
取りあえず、目覚まし時計のスイッチを切ろうと闇雲に手探りをし始めた。
パシッ
高「・・・んぁ?」
目覚ましにしては生温かい感触。
と、言うか、向こうから掴まれた感触があった。
意味が分からず、首を動かして見るとそこには高雅の手を握ったフィーラがいた。
フ「ん~~~・・・」
そのまま、フィーラがゆっくりと顔を近づけてきた。
高「って!?、ちょっと待てぇ!!!」
フ「みゅみゅ!?」
一気に覚醒した高雅はフィーラの頭を鷲掴みした。
高「何してるんだ、おい?」
フ「ただのおはようのキスです」
高「あのな~・・・」
ア「あーーーーーーー!!」
さらにアリアが部屋に入り、参戦した。
入るとすぐさま高雅とフィーラの握っている手を引き離した。
ア「何してるの!?」
フ「鈍感なコウガ様への最大の手段です」
ア「だからって・・きき・・・キスは・・・まだ、早いよ///」
フ「そんなのずるいです。アリア様だってキスはしたです。ボクもしていいです」
ア「あ・・あれは戦いだからしょうがないの」
フ「へ~、アリア様はコウガ様の唇を仕方なく奪ったのです?。最低です」
ア「なっ!?・・・・そういう意味じゃないよ」
フ「今のセリフからしてどう言い訳するつもりです」
ア「それは・・・」
フィーラが勝ち誇った顔でアリアを見下していた。
最も、身長的に見上げているが、威勢では完全にフィーラが上だった。
高「・・・あのな・・・」
フ「あみゅ?。続きをしt「お前は寝てろ!!」〈ボゴッ〉うぐ・・・」
高雅の腹パンチによってフィーラは二度寝を始めた。
もちろん、気絶する程度の威力にしているが。
高「ったく、朝から疲れさせるなよ」
ア「あ・・・おはよう、コウガ」
高雅は背伸びをしながら起き上がり、軽い説教を始め出した。
高「まず、バカな争いは止めろ。巻き込まれる身にもなってみろ。こんな日が毎日続いていたら身が持たん」
ア「私は何もしてないよ」
高「じゃあ、何で俺の部屋に来たんだ?」
ア「え・・あ・・・えっと・・・」
高「はぁ~、完全に図星じゃねえか」
ア「ゴメン・・・」
高「頼むから、めんどくさい事だけは止めろよ」
ア「は~い・・・」
アリアは仕方なさそうに返事をし、反省の色を見せていなかった。
高「・・・何か信用なんねーな」
ア「・・・じゃあ、一日一回キスしたr〈ドガッ!!〉」
こんなやり取りがあった早朝だった。
高「全く、清々(すがすが)しい朝を無駄にしやがって。テメーら、昨日からキャラ崩壊が激しいんだよ」
ア(そんなつもりはないし、清々しくなかったような・・・)
高「っさい!!。てか、いつの間に意思会話にしてんだよ!?」
ア(だって、もうすぐHRが始まる時間だよ。人も集まってるし)
高「作者め、勝手に時間を飛ばしやがって・・・」
今、高雅は周りからかなり痛い目で見られていた。
作者によってwwww
先「はーい、席に着いて。総務、号令」
先生が入って来た事によって視線は高雅から先生の方に変わり、いつも通りの朝のHRが始まった。
先「えー、今日はなんと、私達のクラスに新しい友達がやってきます」
B「新しい友達って。俺ら高校生だぜ、そんな言い方、なめ過ぎだろ」
先「あなた達なんて、まだまだ子供よ。そう言うことは、私みたいにもっと大人になってから言うものよ」
全「うぜえええええええええ」
先「先生に対する暴言は定額です」
全「漢字ちげえええええええええ」
先「あっ、先生、ついやっちゃった☆」
片そう言いながら目を瞑りながら舌を出し、優しく自分の頭を小突く素振りをした。
全「大人じゃねえええええええええ」
ア(先生も壊れてるね)
高(近頃はキャラ崩壊が流行ってんのか?。てか、“も”ってことは自分も認めてんだな)
ア(え・・あ・・・違っ・・・そうじゃなくて・・・)
高(もういい。いい訳は見苦しい)
ア(だから、違うのに~)
アリアの言葉に耳を傾けなくなった高雅は腕を枕にして眠り始めた。
先「それでは、入ってもらいましょう。どうぞ」
先生がそう促すとドアに人影が映りだした。
そして、ゆっくりとドアが開き、その人が明らかになった。
ア(なっ!?)
龍「え!?」
夢「あれ、見たことあるような・・・」
購買部達「あれは!?」
見た瞬間、一部の人だけが反応した。
その姿は蒼いロングヘアーで顔立ちも整っている絶世の美女。
そして・・・
安「初めまして、崎村 安理明です。よろしくお願いします」
アリアと瓜二つだった。
A「崎村ああああああああああ。テメー、使いを学校に入学させるなどと、どんなラブコメな展開出してんだよ!?」
立ち上がると同時にAがすぐさま高雅に怒鳴り始めた。
先「は~い、A君。厨二病見たいなこと言わない。使いとか意味が分からないから」
先生が普通の人らしいツッコミを入れたが、Aには聞こえてなかった。
高「んぁ、俺の安眠を妨害するとはいい度胸じゃねえか。表でろ。秒殺してやる」
高雅は体を起こすとAを睨みつけ、一瞬で戦闘態勢に入っていた。
ちなみに、そのとき安理明は目に入っていなかった。
A「上等だ。今まで登場していなかった分、修行をしていたのさ。テメーと殺り合えるようにな」
高「口だけ達者な野郎がいくら強くなろうが俺に勝てる訳ねえよ。片手で十分だ」
A「てんめええええええええ」
虚仮にされて簡単に挑発に乗ってしまったAは高雅に殴りかかった。
高雅は宣言通り片手でAのパンチを流すと、Aはバランスを崩し、呆気なく倒れた。
そして、背中に一発重いパンチを与えると、Aは呆気なく気絶し終了。
三行で終わってしまう程の呆気ない試合は幕を閉じた。
先「こら、崎村君。転校生の前で喧嘩をしない」
高「あいつから吹っ掛けてきたんだ。正当防衛・・・」
先生の方を見ると、自然に隣にいる人も目に入ってしまった。
そのお陰で、高雅の言葉が途中で途絶えた。
高「なっ!?、アリア!?」
安「えっ!?、どちら様!?」
高「どちら様っt(コウガ、私はちゃんといるよ)あれ!?」
腕にちゃんとブレスレットが巻かれているのを確認すると、再び安理明の方を見た。
その行動をいくらか繰り返し、やっと結論に至った。
高「え・・あ・・・そっくりさん!?」
安「?、??、???」
高「うわ、ここまで同じとは」
先「あなた達、知り合いですか?。苗字も同じだし、親戚か何か?」
高「はぁ!?、苗字って。お前、崎村なのか!?」
安「あ・・うん。私は崎村安理明って言います。よろしくね」
高「アリアって・・・マジかよ」
目の前にアリアがいる。
しかし、それは安理明であってアリアではない。
高「ややこしいな~」
安「あの~、どこかでお会いしましたっけ?」
高「あっ、いや。こっちの話だ。わりぃ」
安「そうですか。ところで、あなたのお名前は?」
高「崎村高雅だ。ま、適当によろしく」
安「はい。よろしくお願いします」
一通り挨拶を済ませた安理明は空いてあった席に着き、HRは終了した。
授業中(数学)
先「はい、この問題を証明できる人は・・・」
高「Zzz・・・」
先生の視線は高雅一直線であった。
コツッ
高「んあ?」
頭に感じた軽い衝撃によって、高雅は目を覚ました。
それは先生による拳骨でもチョーク投げでもなかった。
先「あら、起きていたのね。だったらこの問題を証明しなさい」
高雅は頭をボリボリ掻きながら黒板へ歩き、チョークを取ると説明しながら物凄い速さで問題を解いた。
高「これは数学的帰納法を使って、まずn=1の時に当てはまるかを証明して、次にn=kが当てはまると仮定して――(略)――で、証明終わり」
先「せ・・・正解です」
掛かった時間、僅か30秒。
高雅は同じようにボリボリ頭を掻きながら戻ると、すぐに机に突っ伏した。
先「じゃあ、次はこの式を微分しなさい。では・・・崎村さん」
安「はい」
はっきりとした返事をして出てきた安理明はチョークを握った瞬間、止まることなく描き続け、僅か5秒で問題を蹴散らした。
安「以上です」
先「正解です」
生徒達「おお~~~~~~」
高(おお~~って、微分とか簡単だろ)
ア(転校生の実力を確かめてるからじゃない?)
高(それでも、微分如きで声を上げるか、普通?)
ア(まぁ、人の見方に寄るって事だよ)
キーンコーンカーンコーン・・・
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、いつも通り号令を掛けた瞬間、彼らが動き出した。
A「さあ、始まるざますよ!!」
B「行くでガンス」
C「フガ~」
D「まともに始めなさいよ!!!!」
E(・・・あれ、俺って何言えばいいんだ?)
A~Dまではノリ乗りの勢いで購買部へ走ったが、Eだけが困ったような顔をしながら走っていった。
高「さて、俺もいつもの場所に行くか」
高雅も弁当片手に教室を出た。
もちろん、着いた場所は人気のない木陰。
理由は昔のように人が嫌いなわけではない。
ただのお気に入りの場所なだけである。
いつものようにアリアは実体化していた。
高「・・・うん、今日は中々の出来だな」
ア「なに自画自賛してるんだか」
高「っせい。久々平和が続いて嬉しいんだ」
ア「・・・そう言えばそうだね。最近、地獄の使いもかなり減ったし」
高「・・・なぁ、ふと思ったんだが」
ア「何?」
高「俺の人生見直しはほぼ完了したんじゃねえか?」
ア「まぁ、最近の高雅はかなり優しくなってるし。人生見直しは完了だね」
高「じゃあさ、俺と一緒にいる理由は・・・実際、ないのか?」
ア「まぁ・・・そう言うことになるね。でも・・・」
アリアは恥ずかしそうに俯き、高雅はその意味が分からなかった。
ア「だって・・・その・・・」
高「何だよ。はっきり言えよ」
ア「一度しか言わないって言ったでしょ。だから・・・もう言わない」
高「何だ。俺の事が好きだからか」
ア「!!~~~~~~~っっっ!!??///」
アリアは目を見開いて真っ赤になり、あたふたと慌てだした。
その思いがけない行動に高雅も慌てた。
高「お・・おい!!、仲間として好きなことがそんなに恥ずかしいのか!?」
ア「・・・・・・・」
アリアは一瞬で顔が冷め、ガッカリした顔になった。
ア「はぁ~、期待した私がバカだったよ・・・」
高「?」
アリアは呆れてため息を吐き、高雅は意味が分からず?マークを飛ばしていた。
その姿を見て、アリアはさらにため息を吐いた。
そんな時だった。
?「あら、高雅君?」
高・ア「!?」
いきなり声を掛けられ、軽く殺気を飛ばしながら振り向いた。
そこには、今日来たばかりの転校生こと、安理明だった。
安「どうも。適当に学校探検していたら高雅君を見つけたから挨拶に来たけど・・・・お取り込み中だった?」
そう言って横目でアリアの方を見た。
高「いや、別にそんなことはないが・・・・お前ら、ほんと似てるな」
高雅は二人を見比べるが、身長、髪の長さ、顔立ちも全て瓜二つだった。
安「そうだね。随分似てるね。朝のHRに戸惑っていたのってその所為?。でも、これ見たら納得かな?」
ア「えっと・・・私を見て、何も思わないの?」
安「え!?、どうして?。郊外の彼女を連れて来てもばれなかったらOKじゃない?」
ア「そうとは限らないけど・・・」
高「あんまり二人でやり取り行わないでくれ。頭痛くなる」
安「あははは、ゴメンね。それじゃ、私は学校探検の続きするから、またね」
安理明はかわいらしく手を振ってこの場を離れた。
ア「ほんと、私に似てるね」
高「だな。見た目も声色も・・・人間じゃねえ所も」
ア「え!?」
さらっと、とんでもない事を言った高雅は平然とし、弁当を持って立ち上がった。
ア「今・・・何って?」
高「気付かねえのか?。あいつは突然現れたんだ」
ア「そ・・そうだけど。それは私達が気付いてなかったからじゃ・・・」
高「いんや、突然だ。本当に突然に現れたんだ」
ア「それって・・・・」
高雅は何も言わず、歩きはじめた。
高雅に取って、それは愚問で答える必要がないと思っているから。
それだけでアリアは察して、ブレスレットに変化し、高雅の腕に巻き付いた。
高「さ~て、何にもなければいいのだが・・・」
高雅は、ただ短い平和が続くように思いつつ、教室へ戻った。