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決心

アリアを高雅の部屋のベットに寝かせ、他の三人はリビングで会議していた。

レ「で、どうするのだ?」

フ「何の話です?」

高「アリアの精神状態だ。あいつ、敵にボコボコにされて精神が狂ってしまったんだ」

フ「そんなことがあったのです?」

レ「ああ。それも、かなり危険な状態だ」

高「それを回復させるために、こうやって考えてんだろ」

フ「ボクは呼ばれただけで知らなかったです」

レ「それで、何かいい案はないのか?」

レオが強引に話しを戻すとフィーラが少し睨まれた。

レオは一瞬だけ身震いを覚えた。

高「う~ん・・・精神の回復ね~・・・」

高雅は何故か家にあった、精神についての本を適当にペラペラとめくるとあるページで動きが止まった。

高「ドックセラピー・・・」

フ「ドックセラピーです・・・」

そう呟きながら、ある一点を見つめた。

レ「な・・・何故、我を見るのだ?」

高・フ「ドックセラピー(です)・・・」

レ「し・・しかし、我h「ドックセラピー・・・」だg「ドックセラピーです・・・」しかs『ドックセラピー(です)・・・』・・・」

交互に言いあい、トドメは二人合わせての一言。

もはや、レオに発言権限はなかった。

レ「・・・で、どうすればいいのだ?」

高「おお~、やってくれるか?」

レ「半ば強引だっただろう・・・」

フ「何か言ったです?」

レ「何でもないぞ。で、どうすればよいのだ?」

高「う~ん・・・犬みたいにしろ」

レ「分からぬ!!」

あまりにも抽象的すぎる説明にレオは身を乗り出して来た。

レ「コウガ殿達が強引に任せるから聞いたものの、そんな考えなしで我に押し付けたのか!?」

高「だってさ、犬って何するか分かんねえし、取りあえず、犬っぽくやってみるしかないな」

フ「大丈夫です。王ならこれくらい簡単です」

レ「王と関係はない!!」

高「じゃ、行ってみよ~」

高雅はレオの首根っこを掴むと、自分の部屋へと向かった。

途中、レオがジタバタ暴れたり納得のいく理由を求め叫んだりとせわしかった。

そんなことがありながらも結局高雅の部屋の前に連れて行かれた。

高「はい。んじゃ、ここで待ってるから行って来い」

レ「ちょ・・・コウガ殿!!」

高雅はレオが何を言おうとドアを開け、レオを投げ入れた。

高「さて、どうなるやら・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


高「・・・静かだな」

フ「静かです」

数分経っても物音ひとつ鳴らず、何が起きているのか全く分からなかった。

高「成功・・・なのか?」

フ「分からないです」

耳を澄ますも全く音は聞こえず、さらに数分が経った。

音のない部屋の中は時が進行していないとも思い始めていた。

フ「ふぁ・・・・ふぁあ・・・・」

すると、フィーラが口を開けたり閉めたりしだした。

フ「ふぁあああ・・・・っくしゅん!!」

そして、思いっきり息を吸い込むと勢いよく、くしゃみをした。

その瞬間・・・


ドガン・・ガシャン・・・ズガガガガガ・・・チュドーン・・・



止まっていた部屋の時が一気に進みだした。

高・フ「!?」

訳の分らぬ戦闘音。

何故、こうなったのか見当もつかなかった。

そして、ドアがゆっくりと開き、中からレオが倒れるように出てきた。

高「れ・・レオ!?」

レオの意識は完全に途絶えていた。

高雅は取りあえず、レオを持ってリビングに戻って行った。

レオをソファーに寝かせると、高雅はあることを決意した。

高「今度は俺が行く。レオの敵討かたきうちだ」

フ「敵討って・・・そんな大掛かりな事です?」

高「当たり前だろ。アリアの精神が不安定なのは危険だ。早く治してやらねえと」

フ「みゅ~・・・何だか、アリア様の事が好きみたいな言い方です」

高「なっ!?・・そ・・・そんな意味はねえよ!!///」

フ「顔が赤いです」

高「レオを運んで熱くなったんだ」

高雅は適当な嘘を吐きながらも、フィーラに取ってそれは見え見えだった。

高「とにかく、行ってくる」

高雅は逃げるようにリビングを出て行き、自分の部屋へ向かった。

フ「コウガ様、ボクの事は・・・思っているのです?///」

一人、呟きながらソファーに体を沈めた。

近くにあったクッションを抱きかかえると、それに火照ほてった顔を沈めた。




高雅は勢いよく向かったのはいいが、ドアの前で立ち尽くしていた。

高(さすがに、さっきので空気が悪くなったよな?。あまり、刺激しないようにしねえとな)

一度、中での行動を確認しつつ、意を決してドアを叩いた。

ア「ひっ!?」

高「アリア、おれ・・・高雅だ。安心しろ。入っていいか?」

ア「こ・・・コウガ?・・・うん・・いいよ」

アリアはかなり声が震えていた。

多分、高雅がどんなに落ち着かせようとしても落ち着かないだろう。

高雅はなるべくゆっくりドアを開け、部屋の中に入った。

アリアはベッドの柵に体を寄せて座っていた。

高「よっ。大丈夫か?」

平凡な挨拶をかわそうとしても、アリアは震えながら首を縦に振るだけだった。

高「大丈夫じゃねえだろ」

高雅はゆっくり近づいて、ベッドに腰を下ろした。

それだけでも、アリアは身を引いていた。

高「大丈夫だって。俺を信じろ」

そう言うも、全然安心しきれてないアリアは高雅の差し出した手を見ながら、さらに身を強張らせた。

高雅はそんな姿に呆れてため息が出た。

高「あのな、もし、俺が敵なら、お前はもうとっくにやられているっての」

ア「・・・・そう・・だよね・・」

微かに唇を動かし、まるで独り言のように答えた。

しかし、高雅の耳にはしっかりと聞こえていた。

高「なっ?。だから、安心しろって」

ア「・・・うん」

高(やっと、壁が薄くなったな)

高雅は溜息と一緒に疲れをドッと出した。

ア「・・・ねえ、コウガ」

壁が薄くなった途端、アリアから話しを掛けてくれた。

もう、壁はなくなったのかもしれない。

そう思いながらも、アリアの言葉に耳を傾けた。

ア「どうして、私を助けたの?。もう、関係なんてないのに・・・」

高「あ~・・・セバスチャンがど~っしても助けてくれって言うからさ、助けた訳」

ア「そうなんだ・・・」

真っ赤な嘘だと言うのは言うまでもない。

高雅の心の中で本音を言うことを抑えているのだ。

『アリアが心配で助けに来た』と、言うことを。

ア「それじゃ、私は行くね」

高「・・・は!?」

いきなり意味が分からない事を言われて、素っ頓狂な声を上げてしまった。

ア「だって、もう関係ないんだから。ここにいる理由もない。だから、もう行くね」

アリアは布団をけ、立ち上がろうとした。

傷は落ち着いて自分で再生したのか完治していた。

しかし、今はそんなことを思っている場合じゃなかった。

高「おい、待て!!」

まだ近くにいるのについ大きな声で止めてしまった。

ア「何?。大きな声出して?」

高「いや・・・あれだ。まだ、誤解を解いてない」

ア「誤解?」

高「そうだ。あれは不純な気持ちで抱きついた訳じゃねえ。ただ・・・誓いたかったんだ」

ア「誓い?」

高「あいつは俺と同じ一人だったんだ。それで、俺達は手を差し伸べた。そうだろ?」

ア「それは、そうだけど・・・」

高「だけどな、一度手に入れたものをまた失うのは尋常じゃない程辛いんだ。あんな子供がそれを負うのは・・・もう、見たくないんだ」

ア「もう?。もう、てどういうこと?」

高雅は俯き、アリアの問いに答えようとしなかった。

一時の沈黙の後、高雅から口を開いた。

高「俺は・・・・捨て子だった」

ア「え!?」

信じられない、衝撃の言葉が帰って来た。

アリアは驚愕したを戻すことができなかった。

高「物心がついて来たきたところで、本当の親は俺を捨てたんだ。多分、子育てに疲れたんだろ」

高雅は捨てられた事に対して憎悪を感じていなかった。

むしろ、自分の方に責任があると思っていた。

高「だから、決めたんだ。フィーラを一人にさせないと」

ア「そっか・・・フィーラちゃんは幸せ者だね」

高「何でだ?。俺達に合うまで一人だったのにか?」

ア「違うよ。そうやってコウガに思われている事だよ」

高「・・・フィーラだけじゃねえ」

高雅は俯いた顔を上げ、アリアと目を合わせた。

高雅の眼差しは決意をした迷いのない目になっていた。

高「レオだってそうだ。あいつも一人だったんだ。それに・・・お前もだ、アリア」

ア「へっ!?・・・うわぁ!?」

高雅はアリアを強く抱きしめた。

アリアは突然の事に顔を赤く染め、仰天していた。

高「お前を一人にさせたくない。もう、孤独を見るのは懲り懲りなんだ」

ア「コウガ・・・」

アリアは高雅の背中に手を回し、優しく抱きしめた。

ア「ゴメンね」

高「・・・謝る必要なんてねえよ」

ア「ううん。コウガがそんなに思ってくれていたなんて、ちっとも気付かなかった。だから、気付けなくてゴメンね」

高「別にいい、そんなことは。ただ・・・」

高雅はより一層強く抱きしめた。

高「お前が一人にならなかったらな」

思いを込め、さらに強く抱きしめる。

アリアは苦しみを感じながらも、その思いの強さをただ受け止めていた。

ア「・・・ねえ、コウガ」

アリアは首だけを上げて高雅の顔を見た。

高雅も首を下ろしてアリアを見る。

高「何だ?」

ア「そのね・・・私・・・///」

アリアも高雅の思いの強さに促され、自分の心で決心をしていた。

自分の思いを伝えようと。

ア「私・・・コウガの事が・・・」

心で決めていても、いざ口に出そうとすると上手く出せない。

目をしどろもどろに動いて、特に何か探している訳じゃないが探してしまう。

高「何だよ?。はっきり言え」

ア「じゃあ・・・言うよ。一回しか言わないからね///」

アリアは目を閉じ、一度だけ大きく深呼吸して目を開けた。

そして、自分の気持ちを告げた。



ア「コウガの事が好き!!///」



高「・・・なななっ!?」

アリアは恥ずかしくなったのか、それとも故意なのか、顔を高雅の胸に沈めた。

高雅は思考が追いつかず、停止状態に陥った。

フ「ちょっと待ったです!!」

そんな停止状態を回復させたのは思いっきり扉を開けた音だった。

高「フィーラ!?」

ア「ふぃ・・フィーラちゃん!?」

フィーラはそそくさに高雅とアリアの間に押し入り、二人の間を遮るように立った。

そして、すぐに高雅の方へ体を向けた。

フ「さっきまでの話しは全部聞いたです。コウガ様がボクに告白をした訳じゃない事もです」

高「・・・で・・で、何だよ?」

フ「ボクは・・・その・・・」

フィーラは服の裾を握ると、身をよじりながら俯いていた。

そして、顔を上げ、高雅の目を見て言った。



フ「ボクは・・・コウガ様が大好きです!!///」



高「・・・ななななななっ!?」

ア「ええええええええ!?」

高雅は再び思考停止状態に陥ってしまった。

アリアに至っては驚いて大声を上げていた。

フ「ボクは本気です。アリア様よりも好きです!!。コウガ様の為なら何でもするです!!///」

ア「そ・・それだったら、私だってコウガの為なら何でもするよ!!///」

フアリアとフィーラはどちらが上なのか言い争いを始め、高雅に取っては全く思考が動いてなかった。

ア「―――もう、これじゃ埒が明かない。ここはコウガに決めてもらおうよ」

フ「分かったです。恨みっこなしです」

ア「と、言う事でコウガ!!」

突然の指名に、高雅はハッと我に返った。

アリアとフィーラは横に並び、高雅に聞いた。

ア・フ「コウガ(様)はどっちが好きなの(です)?///」

高「え・・・あ・・え・・・と・・・」

高雅は我に返ったものの、思考が完全に遅れていた。

そして、やっとの事で思考が追いついて来た。

高「お・・お前ら大袈裟おおげさだろ。ただ仲間として好きなことにそこまで競うか?」

ア・フ「・・・・・・・・・」

しかし、思考は間違えた道を歩んでいた。

高「・・・あれ、何でそんなに失望した目で見てるんだ?。俺、何か間違えたか?」

ア「大間違いよ!!。バカーーーーーー!!」

フ「コウガ様の優柔不断ーーーーーー!!」

高「ちょ・・・・!?」

全く持って理解できていない高雅は二人のダブルパンチを綺麗に避けた。

高「何!?。一体何!?」

ア「・・・こうなったら、コウガに振り向いてもらうしかない」

フ「そうです。ボクに魅入らせてあげるです」

ア「私は負けないよ」

フ「ボクだって譲らないです」

二人、火花を散らし合うも高雅は全く意味が分かったなかった。

レ「そこまでだ」

不思議なタイミングでレオが部屋に入って来た。

高「レオ?。いつの間に起きたんだ?」

レ「ちょっと前だ。それよりも、ここからは場所を変えて女同士で話しあったらどうだ?」

フ「みゅ~・・・分かったです」

ア「じゃあ、そうするね」

レオの提案に簡単に乗ってくれたアリアとフィーラは高雅の部屋を出てどこかへ行った。

レ「・・・ふぅ、落ち着いたな」

高「何か分からねえがサンキュな」

レ「何がサンキュだ。こうなったのも全てコウガ殿の所為だぞ」

高「お・・俺が悪いのかよ!?」

レ「全く・・・コウガ殿、我から一つ言いたい事がある」

高「何だよ?」

レ「決して、中途半端な気持ちで決めるな」

高「何がだよ!?」

レ「ふっ、鈍感だな」

鼻で笑うレオに高雅は理解できず、腹が立ち始めた。

高「何だよ。皆して意味分からねえ」

レ「なら、素直になるのだ。そうすれば分かるだろう」

高「素直ね~・・・ダメだ。分からねえ」

レ「焦る必要はない。時間はあるのだ。ゆっくり考えて決めればよい」

高「だーかーらー、何を決めるんだよ?」

レ「ここまで来ると重症だな」

高「んだと!!・・・ん?」

レオを殴ろうと左腕を振り上げる時、手の甲にあるものが目に入った。

高「これ・・・契約の印?。いつの間に?」

実は、アリアは高雅に抱きつかれた時、こっそりと契約を交わしていたのだ。

レ「再契約したのだな。それなら、アリア殿はもう心配ないな」

高「ふと思ったら、アリアの精神は元に戻ったのか?」

レ「元に戻るところか、さらに良くなっておるだろう」

高「何で?」

レ「それは、コウガ殿がよく知っておる。それでは、我はリビングに戻るぞ」

レオは言いたい事を言うだけ言って高雅の部屋を出て言った。

一人残った高雅は窓の外から遠くを眺めた。

高「全く分からねえが、一件落着か?」

丸く収まったかはさておき、当初の目的であるアリアの精神は回復したに違いない。

しかし、アリア達の言動に意味が分かっていない高雅だった。

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