マインドクラッシュ
余裕を見せる高雅だが、相手も同じように余裕を見せていた。
マ「人間風情が私に勝てるとでも思ってるの?」
高「まぁ、これがあれば可能だな」
そう言って持っている銃を見せつけるようにくるくる回す。
マ「そんな玩具で私に勝てるの?。頭悪いね、お兄ちゃん」
高「じゃあ、やってみるか?」
マ「こんなに余裕なんて・・・調子に乗るな!!」
どんなにプレッシャーを与えようとしても、高雅は平常な顔をして上から目線を変えようとしなかった。
その為、マイゴは怒りを覚え、両手でナイフを投げた。
間を空けないように両手を交互に使ってナイフを投げ続ける。
高「丁度いい。銃に慣れたかったしな」
高雅は銃を構え、飛んでくるナイフを狙い定めた。
ズガン!!・・・ズガン!!・・・
一発で数個のナイフを弾き飛ばし、飛んでくるナイフは僅か2発で消した。
マイゴは目を丸くして驚き、つい投げる手を止めてしまった。
マ「・・・その銃、何なの?」
高「これか?。これはひーじーちゃ特製のエアーガン」
マ「え・・・エアーガン!?」
高「ほら、空気を使ってビービー弾を飛ばすやつだよ」
マ「そのぐらいは知っているの!!。問題はその威力!!」
高「だから、ひーじーちゃ特製なんだよ。一体、昔にどんな技術があったかは知らねえが、ひーじーちゃが誰かを守るために作ったらしい。結局、平和に過ごしてこの銃で誰かを守ることはなかったが」
高雅はこの銃の詳細は詳しくは知らないのは本当である。
高雅自体、まだ幼かった時に見せてもらったものだからだ。
ちなみに、高雅の曾お爺さんはあの事故ではなく、寿命で幸せに死んでいた。
高「こうも受け継ぐなんて思ってもいなかったなぁ」
マ「こら、質問に答えろ!!。その威力は一体、何なの?」
高「詳しくは知らねえが、ゼロ距離で打てば風穴開くだろうな。中で空気を圧縮してそれを放つ、本当にエアーガンだな」
マ「そう・・・でも、その銃が一体どんなものかは知らないけど、夢幻には通用しなさそうね」
高「夢幻?、んなもん、俺に効かねえよ」
マ「ぷっはははは・・・バーカバーカ。お兄ちゃんの勝手で夢幻が避けれる訳ないじゃん」
すると、マイゴはもう一度ナイフを投げた。
狙いは高雅の腹だ。
マ(夢幻で私の動きが見えてないはず。避けれる訳ない)
マイゴは高雅に夢幻が掛かっている事を前提にして投げていた。
つまり、普通なら見えないと言う事だ。
マ(さあ、突然来る痛みに狂っちゃえ)
ナイフは正確に高雅の腹目掛けて飛んで行った。
高雅は銃を構えず、ただマイゴの方を見ていた。
高「・・・・バーカ」
高雅は不敵に笑い・・・
パシッ
飛んで来るナイフを二本の指で挟み止めた。
マ「えっ!?」
高「残念でした。俺には力自体が通用しねーよ。諦めろ、ガキ」
マ「ど・・・どういうこと!?」
高「答える義務はない」
高雅はナイフを投げ返した。
ナイフはマイゴの心臓めがけて飛んで行ったが、マイゴは動くことなく、ナイフを地面に落下させた。
その不可解な現状を見て、高雅は敵の力を把握した。
高「ほー、方向の力を使うのか。だから、ガキでもあんなに的確に投げれるのか」
高雅は小馬鹿した態度を一度たりとも変えていない。
マイゴは恐怖を知らない高雅を見て、己のプライドが崩れていった。
マ「・・・ふざけないで。私の前で・・・」
その瞬間、マイゴにピンクとオレンジがグラデーションした気が包み込んだ。
マ「平然とするなああああああああああああ」
マイゴを包んでいた気は爆発するように膨張し、辺り一帯を呑みこんだ。
マ「さぁ!!。この莫大な力の前で平然と出来るの!?」
高「・・・・・・・」
高雅は何も答えず、ただ黙って聞いていた。
マ「あっははははは。そっか、この力じゃ答えられないよね?」
マイゴは嬉しそうに、勝ち誇ったように笑った。
マ「さぁ、まずは腕をもぎ取ってからゆっくりと苦しみながら殺してあげる♪」
マイゴは両手にナイフを取り、二本同時に投げた。
的は高雅の両肩だった。
マ「避けれるものなら避けてみてよ!!」
高「分かった」
マ「!?」
高雅は平然とした表情を変えず、体を横にして飛んでくるナイフの間を通り抜けた。
マ「そんな・・・どうして!?」
高「ん~、今ので大体データが取れたな」
高雅はゆっくりとマイゴに近づき始めた。
高「まず、お前の力は夢幻、方向、それに創造だ。さっき夢幻って言ってたし、オレンジは方向のシンボルカラーだし、ナイフはバンバン創ってたし。あと、今のは夢幻と方向の融合力、迷力の力だな。力を使うこと全てに対し、別の力を使ってしまうっていう奴だな。簡単に言えば、神経を滅茶苦茶にしてしまったってこと。ざっとそんなもんだろ?」
説明し終わると同時に、マイゴとの距離はもう数メートルしかなかった。
高「残念ながら、相手が悪かったな。俺に力は通用しない。つまり、迷力の力は意味無し」
高雅はマイゴの額に銃を突きつけた。
マイゴは自分の最大技が通用しない所為か戦意喪失していた。
マ「あ・・ああ・・・」
この時、マイゴは初めて恐怖を知った。
敵の強大さを知り、自分では勝つことが不可能と知った恐怖を初めて味わったのだ。
高「・・・そうだ」
マ「!?」
高「おい、蒼い髪の女性を見なかったか?。答えたら、頭を撃ち抜かないでやろう」
マ「え・・・」
高「ほら、速く答えろよ。頭に風穴開けるぞ」
マ「わ・・分かった。分かったから撃たないで!!」
高「俺は気が短いんだ。5秒以内に答えろ」
マ「分かった分かった!!。あっち、あっちの開けた場所にいるから!!」
マイゴは指を指しながら必死に答えた。
それほど、恐怖している事を示している。
高「よくできました」
ズガン!!
高雅は引き金を引いた。
狙った場所は頭ではなく、マイゴのポケットだった。
ポケットだけをかするように撃ったのだ。
そして、一つの宝石が粉々に飛び散った。
高「痛みなく死ねたんだ。幸せと思え」
高雅は銃を仕舞い、レオの下へ駆け寄った。
高「生きてるか?」
レ「い・・・・生きて・・・おる・・」
高「タフだな」
レ「ふっ・・そうだな」
高「何もしなくても、まだ生きられるか?」
レ「ああ・・・・・傷は深かろうと・・・・・・・・天獣はそう簡単に死なん」
高「そっか。けど、こんな時にあいつがひょっこり現れたらいいんだがな」
ロ「それって俺っちの事?」
高「そうだよ、この神出鬼没野郎!!」
高雅は振り向きと同時に銃を撃った。
ログナの腹に綺麗なトンネルが出来上がった。
ロ「ぐはぁあぁぁあああぁあ・・・何しやがる!?」
ログナは一瞬で風穴を再生させて埋めた。
それと同時に、高雅の不可解な動きを問い詰めた。
高「なんとなくだ。気にすんな」
ロ「俺っちの扱いが酷くないか?」
レ「そ・・・それよりも・・・ログナ殿。我の傷を再生させてくれぬか?」
ロ「おっと、はいはい。そりゃ~~」
ログナが華麗に手を振るうとレオの傷が完全に再生した。
レ「恩に切る」
ロ「どいたまして」
高「そんじゃ、次行くぞ」
ロ「次ってどこだよ」
高「あっちだ」
高雅はマイゴが指した方向へ歩き始めた。
レオとログナもそれに続いた。
進むこと3分。
ロ「まだかよ、コウガっち?」
既にログナはダルそうに腰を曲げて手を宙ぶらりんにしていた。
高「まだ、3分しか経ってねえだろ」
ロ「ダリーんだよ。おーい、アリアっち~」
ログナは口周りを手で包んでから適当に名前を呼んでみた。
?「いやああああああああああああ」
高「!?」
応答したのは断末魔だった。
それと同時に石が飛んで来た。
ロ「あうっ!?」
石は綺麗にログナの額に当たり、ログナは打ち所が悪く、意識を失った。
高「おいおい、軟いな~」
高雅はログナの頬を指で突っつき、しまいには軽く蹴ったりした。
それでも、ログナは起き上がらなかった。
レ「コウガ殿、今の声は」
高「分かってる」
高雅とレオはログナをほっとき、駆け足で声がした方へ行った。
生い茂る木々を抜けた先には、少し開いた空間があり、そこに彼女はいた。
全身血まみれで、目が光を失って虚ろうな状態、さらに体を震わせていた。
高「アリ・・・・ア・・?」
高雅は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ誰か判断が出来なかった。
目の前の現実が本当か疑うくらいだった。
ア「・・・・誰・・?」
そして、アリアからの信じられない一言。
決して見えてない訳ではない。
アリアは本気で聞いているのだ。
高「誰って・・・俺だよ、俺」
ア「誰!?、『オレ』なんて知らないよ!!。知らないからどっか行ってよ!!」
アリアは近くに落ちている石をとにかく投げつけてきた。
高雅とレオはそれを簡単に避ける。
高「おい、アリア!!。止めろ!!」
ア「・・・嫌だよ・・・もう・・・痛いの・・・」
アリアは石を投げるのを止めると、今度は両手で顔を隠して泣き始めた。
ア「許して・・・痛いの嫌・・・何でもするから・・・ねぇ」
泣くほど恐ろしい目にあったのが一目瞭然だった。
高雅はそんなアリアの姿を見て、胸が痛みだした。
高「何だよ・・・この気持ち・・・」
自分に訴えかけるが答えなど帰って来なかった。
レ「コウガ殿、アリア殿の精神は崩壊寸前だ」
高「て、言うか、崩壊してねえか?」
レ「取りあえず、アリア殿を止めるしかないぞ」
高「おい、キレ―にスルーするな」
レオは聞く耳を持たず、アリアの後ろに回り込み始めた。
アリアは冷静さを失っているのか、レオから目を離さないように必死に目で追っていた。
今、アリアの視界から完全に高雅が消えていた。
高「はぁ~、レオが作った隙だ。大事に使うか」
高雅はアリアが完全に視界から消えたと見て、一気に踏み込んで距離を無くした。
アリアは殺気で振り返ったが、既に時は遅く、高雅が目の前にいた。
高「わりぃ・・・アリア・・・」
ボゴッ!!
丁度振り返った瞬間を狙って、高雅の拳はアリアの腹を正確に突いた。
アリアは呻き声を上げることなく、高雅の胸の中で眠った。
高雅は心に引っ掛かる謎の感覚に襲われ始めた。
高「何だよ・・・アリアを殴っただけで・・・こんな苦しい感覚になるとか・・・」
喧嘩した時には全くなかったこの感覚は高雅の知識では理解することは出来なかった。
レ「コウガ殿!!」
ふと聞こえたレオの方を見ると、背中にログナを乗せてやって来ていた。
高「気が利くな」
レ「仲間を思えば当然だ」
高雅はアリアを地面に優しく寝かせ、気絶中のログナに駆け寄った。
高「おい、起きろ。仕事だぞ」
ロ「ん・・・・くぁ・・・」
ログナは目だけを起こして、辺りをキョロキョロ見まわした。
そして、高雅に目が止まると不可解な質問をしてきた。
ロ「・・・・誰ですか?」
高「・・・はぁ!?」
ロ「成程、『はぁ』さんですか」
高「いや、全然違うし。その前に、お前どうした!?。変な悪戯なら速攻で止めねえとぶん殴るぞ」
ロ「殴るって、あなたは不良ですか!?」
レ「何か、ログナ殿の様子がおかしくないか?」
ログナの表情を見ると、とてもふざけて聞いているようには思えなかった。
そして、ある結論を導き出した。
高「・・・まさか、記憶喪失?」
レ「あの時の石でか!?」
ロ「あの~、何を言っているのでしょうか?」
異常に変わった性格と最初の質問からして、満更でもなくなってきていた。
高「なぁ、自分の名前は分かるか?」
ロ「私の名前ですか?・・・あれ・・・えっと、分かりません」
高「決定だな」
レ「まさか、石一つで記憶を飛ばすとは・・・」
高雅とレオは呆れて困り、当の本人は?マークが浮かんでいた。
ロ「何だかわかりませんが・・・逃げるが一番!!!」
高「なっ!?・・・おい・・・」
高雅が止めようとした時にはログナは既に飛んで逃げて行った。
レ「どうする、コウガ殿?」
高「仕方ねえ、アリアは家で治療して安静にさせておくか。落ち着けば勝手に再生を使うだろうし」
レ「そうか」
高雅はアリアを負ぶり、レオは人間の状態に戻って森を出始めた。
アリアは気絶しているにも関わらず、ずっと震えていた。