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緑の復讐編 その7、反撃の予兆

伐採しゅぎょう開始から30分。

高雅は時々、闇に呑まれながらも闇を着実に自分のものにしていた。

途中、アリアが意思会話をして何かを伝えようとしたが、高雅は聞く耳を持たず、さらに気が散るため自ら会話を断ちきっている。

高「おらおら、どしたどした?」

タ「闇に呑まれておるぞ!!」

高「あっ!!」

高雅はタイトの言葉で気づき、一先ず植物から距離を置き、呼吸を整えて自分を落ち着かせる。

高「ふぅー、難しいな」

タ「常に敵と己を意識するのだ」

高「分かった。じゃあ、また行ってくる」

高雅は落ち着きを取り戻し、再び植物の所へ向かった。

その光景をみてタイトは内心驚いていた。

タ(本人は苦戦しているようだが、成長が早いな。あの闇の量だと1日で10秒扱えるようになれば十分だが、既に2分以上は扱える状態だ。あ奴は天性の才能を持っておるな)

そうこう思っている内に高雅は既に半分も刈り終わっていた。

高「はあぁ!!」

高雅は隙が無く、かつ攻撃的に力強く植物をぎッてゆく。

高「そらそら!!。俺はまだまだへばってねえぞ!!」

こんな言葉を発していても、まだ自分の意識を保持っている。

タイトはそれを見切ってまだ何も言わない。

タ「後ろから来ておるぞ!!」

高「おっと・・・あぶねえ」

タ「意識が己に集中し過ぎておる。もっと周りに注意を払え」

タイトはただ高雅の欠点を探し、それを注意するだけだった。

高雅はそれについて少し不満に思っているが、何も文句を言わず、ただ従っている。

第一、逆らう理由などないと高雅は理解している。

高「おら!!、裂空○!!」

余裕ができたのか、適当にゲームの技を真似している。

ちなみに、今の技は空中で縦に回転しながら敵を斬る技です。

高「そのまま魔人○!!」

次に、遠くの植物へ衝撃波を出す。

えっ!?、何で力もないのに衝撃波が出せるって?。

そりゃー、この小説が何でもありだからですよww。

高「よっしゃーーー、終わったーーーーー」

高雅は興奮しながらも気を少し落ち着けるため、取りあえず叫んだ。

闇を扱うと意識が刈り取られてしまうので、常に意識を保持っておかなければならない。

それに逆らったとしても、たまに暴言が出たり興奮したりするのは抑えきれないらしい。

タ「まあ、短い時間に関わらずここまで成長するのは良きことだ」

高「サンキュー。と言っても、お前はただ喋っただけだろ」

タ「拙者が常に意識を注意させなければ、お主は今頃、何をしていた?」

高「そうでした。わざわざ、ありがとうございました」

タ「よろしい」

高雅は礼をすると同時に刀を差し出し、タイトへ刀を返した。

タイトは刀を受け取り、腰のさやに挿す。

高「さーって、そろそろアリアの話を聞いてやるか」

高雅は断ち切っていたアリアとの意思会話を接続した。

高(もしもーし、聞こえますかー?)

ア(コウガ!?、酷いよ。勝手に会話を断ちきるなんて)

高(お前の声が修行の邪魔になったんだから仕方ないだろ。それで、重要なことって何だ?)

ア(それよ、それ!!。コウガ、私の力が使えなくなっているってどういうことか分かる?)

高(何だよ、今さらそんな質問かよ。別に、毒のせいで使えなくなっているだけだろ)

ア(あっ、質問が悪かった。じゃあ、私の力が無くなったらどうなる?)

高(どうなるって・・・あっ!!)

そう聞かれた高雅に、あることが思い当った。

高雅はそれが本当か聞いてみる。

高(まさか・・・家の結界とレオの空間が!?)

ア(そう。きっと消えてる・・・)

高(あほか!!。何でそんな大切なことをさっさと言わねえんだよ!?)

ア(何でも言おうとしたよ!!。ただ、コウガが聞かなかっただけでしょ!?)

高雅はもっと反論して責任をアリアに押しつけようとしたが、今はそれどころじゃない事に気づき、話を流す。

高(とにかく、今からそっちに戻る。それからすぐに家に行くぞ)

高雅は意思会話を断ち、タイトを無視してすぐに戻った。

タイトは慌てた様子の高雅を謎に思いながらも、すぐに後を追った。










高雅達は皆がいる木陰へ戻った。

だが、戻った時、何故か一人だけ苦しんでいた。

それを疑問に持って、高雅はアリアに聞いてみた。

高「なあ、何でAは苦しんでいるんだ」

ア「あー、さっき起きて、フィーラちゃんを見たら襲いかかろうとして、それで返り討ちにあった訳」

高「なーるーほー。つまり、地獄の夢幻ツアーに言っている訳か」

ア「そういうこと」

A「やめろ!!、爪を剥がさないでくれ・・ぎゃあああああああああああ・・・うわああ、腕が千切れる・・・ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

一体どんな幻覚を見ているのかは想像していてください。

そんな状態のAを横目に見ながらも、すぐに本題を切り出す。

高「取りあえず、さっさと俺の家に戻ろう」

ア「でも、力は使えないよ。どうやって戻るの?」

高「子供の移動時の友、自転車が駐輪場にある。それが一番早く行く方法だ」

ア「自転車は一人乗りだよね?。一人で行くつもり?」

高「まさか。お前も連れてく。一応、俺の使いだからな」

ア「へっ!?・・・ちょ!?」

高雅はアリアが慌てるのをお構いなしに、抱え始めた。

もちろん、お姫様抱っこである。

アリアは恥ずかしがり、顔を真っ赤にして黙り込む。

だが、高雅は少し苦しそうな顔をする。

高「・・アッチ。こりゃ、火傷はするな」

それでも、高雅はアリアを落とさないようにしっかり抱え直す。

高「タイト、蓮田とログナとフィーラを頼む」

タ「承知」

フ「待つのです」

フィーラが今にも駆けて行きそうな高雅を呼び止めた。

高「何だよ?。早くしろ」

フ「ボクも行くのです」

高「おいおい、チャリで三人乗りはきついぞ」

フ「大丈夫です。ボクにはオプションで空を飛ぶ能力が付いているのです」

高「どんだけ便利なオプションだよ!?」

フ「気にしたら負けです」

高「最近、この小説せかいでそれがモットーになってきたな」

ア「取りあえず、早く行こうよ」

高「ああ、そうだな。それよりフィーラ、あいつの夢幻をいてやれ」

高雅は首を軽く振って、それがAの事だと分からせた。

フ「みゅー、仕様がないです」

フィーラは惜しみながらもAの夢幻を解いてやった。

高「後はいいな?。よし、少し遅れたが駐輪場へ行くぞ」

高雅はやり残すことはないと判断し、フィーラと共に駐輪場へ向かった。






駐輪場へ着くと、高雅はフィーラにアリアを支えさせて、慣れた手付きでロックを素早く解除する。

準備が終わった高雅はアリアを抱えてサドルに乗せる。

そして、自分もハンドルを握って自転車にまたがる。

高「アリア、飛ばすからちゃんと掴まれよ」

ア「う・・・うん」

アリアは戸惑いながらも、高雅の背中の服を握る。

高「おい、飛ばすんだからそれじゃ落ちるぞ。ただでさえ体が言うことを聞かねえ状態なのによ」

ア「じゃ・・・じゃあ・・・」

アリアは躊躇しながらも高雅の体に手を回した。

アリアの上半身の殆どは高雅に密着していたが、高雅はもうアリアの熱に慣れたのか何とも思ってない。

今のアリアは別の意味で体が熱くなっていた。

高「そんじゃ、行くぞ。フィーラ、ちゃんとついて来れるか?」

フ「ボクの飛行速度は最大で60キロです。自転車ぐらい余裕です」

高「まあ、普通の人間が漕ぐチャリならな」

フ「どういうことです?」

高「こういうことだ!!」

高雅はペダルに足を置き、足を回し始めた。


ギュルルルルル・・・・


ア「へっ!?・・・きゃあああああああああああああああ」

足の回転、タイヤと地面との摩擦、ともに半端なく、時速100キロは優に超えていた。

アリアは少し予想していたがその予想を遥かに上回り、危険を察して瞬時に高雅にしがみ付いた。

そして、その場所には風が通った後のようにフィーラの髪が軽くなびいていた。

フ「ま・・待ってくださいですーーー」

フィーラも慌てて後を追おうとしたが追いつく訳がなかった。









爽快にかっ飛ばそうと思っていた高雅だったが、それは空想に終わった。

校舎を思いっきり出たのは良かったが、少し進んだ先で町が虫に侵略されていた。

高「何なんだよ、ここ・・・」

高雅は自転車に跨っている状態で立ち、目の前の場景を見た。

それは、現実を受け入れることが難しく、もはや現実逃避をしても恥ずかしくない。

ビルには、まだ残暑で生き残ったのか無数のアブラ蝉がミンミン鳴いており、異常成長した植物がビルを圧し折ったりしていた。

他にも切り上げると日が暮れてしまう程、町は悲惨な場景だった。

そして、地面はもっと酷いありさまだった。

フ「あみゅみゅみゅ~、気分が悪くなるです・・・うう」

遅れて来たフィーラが手で口を隠しながら目線から外す。

地面には襲われたであろう人間が血を撒き散らしながら死んでいた。

中には腕や首、足がもげていた。

ア「ここまで・・・・一体、誰が何のために!?」

高「また、俺ら関係だろうな」

高雅は自分の存在の所為だと思い、責任を感じ始める。

フィーラもその言葉に反応し、気分の悪さよりも責任が込み上げてくる。

フ「ボクの所為かもしれないです。ボクを捕まえる為に町を破壊しつくし、探し出そうとしているかもしれないです」

ア「ねえ、やめようよ。分からなくて責任を感じても意味が無いよ」

アリアは二人が思い込みの責任に呑まれるのを防ぐため、話を止めようとした。

高雅とフィーラも少し思いこみ過ぎたとバカらしくなったのか、すぐに開き直った。

高「そうだな。少し考え過ぎたかな?」

フ「ボクも不確かなことを考えていたのです」

ア「それじゃ、この虫を切り抜けて、早く家に向かおう」

高「だな。っしゃー、一気に行くぞ!!」

高雅は再びペダルを踏む力を入れ始めた。

だが、その力はある声によって消された。

?「虫ども!!、命令変更だ!!」

その瞬間、虫達の行動が止まり、一斉にある一点へ振り返る。

それに釣られて、高雅達も声がする方へ向いた。

向いた先のビルの屋上に髪色が灰色の使いがいた。

フ「あいつは・・・エガルです!!」

フィーラが指を指しながら高雅達に教える。

すると、エガルは新たな命令を下した。

エ「あの三人を殺せ。ただし、楽園の者の心臓は喰うな」

それを聞いた虫達は瞬時に高雅達を狙いに定め、一斉に襲って来た。

高「フィーラ、掴まれ!!」

フ「はいです・・・あう!?」

高雅はフィーラに手を伸ばし、フィーラもそれに答え、手を取る。

すると、高雅はフィーラを片手で引っ張り上げて抱え、自転車を漕ぎ始めた。

目の前の虫の軍隊の隙間を綺麗に抜けて行く。

高「よし、このままなら逃げきれる!!」

高雅がそう思い込んだのは最大の間違いだった。

高「!?・・・やっべ!!」

突然、目の前の道路が盛り上がり、高さ1メートルの段差が出来上がった。

高雅はすぐにブレーキレバーを引くが、片手だけの為、トップスピードの自転車は止まることができなかった。


ガシャンッ!!


高「うわあああああああああああ」

ア「きゃあああああああああああ」

フ「あうううううううううううう」

自転車は隆起した地面にぶつかり、三人は自転車からそれぞれ別の場所に投げ出された。

数メートル飛ばされて、三人は地面に落ちた。

高「いってって・・・!?、何だあれは!?」

高雅は隆起した地面の方を見た。

そこには、巨大な植物がうねうねと動いており、茎から枝分かれしたツタが地面に沿って走っていた。

そして、ツタは障害物にぶつかると、その障害物に絡み付き、圧迫して真っ二つにしていた。

高雅の方にも一本のツタが向かっていた。

高「捕まってたまるかよ!!」

高雅は地面に落ちた時に怪我はなかった為、難無く避けれた。

避けた高雅はすぐに周りを確認する。

高「あいつらは大丈夫か!?」

高雅はアリアとフィーラの無事を確認しようとしていた。

すると、近くに倒れているアリアを見つけた。

高雅はツタを避けながらすぐに駆け寄る。

高「アリア!!、大丈夫か!?」

高雅はアリアの背中に手を回し、上半身だけ起こしてあげた。

もはや、熱さなど気にしていなかった。

ア「う・・・うん、軽く擦っただけ」

アリアも自分の状態を伝え、高雅を安心させる。

高「後はフィーラか・・・」

高雅は再び周りを見渡す。

だが、フィーラを見つけるよりも先にツタが迫って来ていた為、アリアを抱えて避ける。

すると、後ろにあった車がツタに絡まれ、スクラップ音を出しながら車は真っ二つにされた。

その光景は高雅をかした。

高雅はフィーラがツタに捕まっていないことを祈り、あたりを探す。

高「ん・・・あれってまさか・・・」

高雅は少し離れた先にこちらに向かってくる影を見つけた。

それは、長いパイプのようなものがニョロニョロと動いていた。

その先には何か咥えているようにも見えた。

高「あれは・・・蛇!?」

蛇と言っても、やっぱり普通ではない。

全長は軽く30メートルは超えている恐ろしいものだ。

ア「コウガ!!、あの蛇、フィーラちゃんを!!」

高「うわっ、最悪だ」

蛇はフィーラを咥えていた。

フ「あ・・・・う・・・」

フィーラは意識があるものの、ぐったりと衰弱し、血が指先や足の先からポタポタと落ちて、顔色が青褪あおざめていた。

すると、アリアの体に異変が走る。

ア「う・・・また・・体が熱く・・・」

高「なっ!?」

高雅は驚いたがすぐに理解した。

あの蛇がフィーラを毒におかし、力を封印しているのだと。

ア「はっ!?・・・コウガ・・・後ろ」

高「!?・・・おわっ!?」

ア「きゃあ!?」

高雅はアリアの声に反応して振り向いたが、手遅れだった。

高雅とアリアはツタに巻きつかれてしまった。

エ「どうやら、終わったようだな」

エガルが勝ち誇った顔をして近づいてきた。

高雅はそれを睨むことしかできなかった。

エ「さらばだ、虹の者よ」

別れの言葉を告げたエガルは指パッチンをすると、高雅とアリアに巻きついていたツタの圧迫が強くなってきた。

ア「ううううう・・・」

高「ぐぐぐぐぐ・・・うああああああああああ」

高雅は力を入れるがツタの圧迫を押し返すことができない。

徐々に圧迫感が強くなり、痛みが比例するように増加する。

高「ちくしょー、死んでたまるかあああああああああ」

高雅は最後の最後まで力を振り絞っていた。

エ「ふん、無駄なことを」

エガルは見苦しいのか高雅とアリアから目を放した。

その時だった。


ブチッ!!


高雅達の方から聞こえた音は人を千切るには、あまりにも情けないものだった。

エガルはそれを不審に思い、振り返ると・・・

エ「な・・・何!?」

ツタから解放された高雅・アリアと一匹の王獣がいた。

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