旧校舎の秘密? 後編
?「あみゅみゅ~、眩しいのです~」
高「・・・誰だ、こいつ?」
照らし出されたのは、香凛よリは背が高いが小さい分類に入るだろう少女が手で目を隠していた姿だった。
しかも、髪色がピンク色と派手である。
高「てめー、一体何者だ!?」
?「それはこっちのセリフです。君こそ一体何者です!?」
高「俺は崎村高雅だ。名乗ってやったからテメーも名乗れよ」
?「人間に教える名など無いのです」
そう言いながら顔を高雅からプイッと逸らす。
高「ガキが調子に乗るんじゃねえぞ!!」
高雅が怒鳴りつけると、その少女はすぐに涙目になりながら高雅に何か訴えかけて来た。
だが、高雅にそのような手は通用しない。
高「取りあえず、次の質問には絶対答えろ」
?「内容次第です」
少女はたった1秒前まで涙目だったが、涙は微塵も残っていなかった。
つまり、嘘泣きだった。
そんなこと高雅は気付いており、あえて何も動作を変えなかった。
そして、高雅が切り出した質問は・・・
高「テメーは天国と地獄どっちだ?。そして、狙いは俺の命か?」
いつもの質問だ。
もし、地獄ならば容赦なく倒すつもりだろうが、天国なら話は変わる。しかし、自分の命を狙うなら高雅は天国でも容赦はしない。
これは、自分の心の中で決めた決まり事だ。
だが、高雅は予想をしない答えが返ってきた。
?「ボクはどっちも違うです。ボクは楽園の方です」
高「・・・はぁ!?」
高雅は聞いたことのない答えを聞いてしまった。
高「おい、エデンって何だよ!?」
?「楽園は楽園です。ただそれだけです」
高「俺が聞いてるのはそういうことじゃなくて―――」
次の言葉を言おうとした瞬間に頭からある声が聞こえた。
ア(コウガ、今何処!?)
高(ん、どうした、急に?)
ア(今、入口前でタイトが地獄の使いと戦ってる。すぐに入口に来て)
アリアは用件を伝え、会話を切断しようとしたが高雅がそれをさせなかった。
高(おい、その前に聞きたいことがある)
ア(何?)
高(あのな、エデンって知ってるか?)
ア(!?、コウガ、それ何処で聞いた!?)
高(へ!?、いや、ここにそのエデンから来た奴が居るんだけど)
ア(・・・まさか)
アリアは何かに気付いたが、高雅は全く理解できていない。
高(何、何だよ!?)
ア(コウガ、絶対に楽園の使いから離れないで)
高(おい、最初に言ったこととどっちが優先だ!?)
ア(楽園の使いの護衛よ。多分、そこに敵が向かってる)
高(マジかよ・・・ん、何か重要なことを聞いてないような・・・)
高雅は最初に言った答えが返ってきてないということに気づき、それを問おうとした。
しかし、それは叶わなかった。
イ「見つけたぜ、楽園の使い」
高・凛・?「!?」
三人はすぐに声がする方に振り向いた。
そこにはインジが悠々と立っていた。
?「あぅ・・・どうして、ボクの夢幻の中でも見つけられるのですか!?」
イ「けっ、夢幻なんざ子供騙しなことは通用しねえよ。さっさとその夢幻をよこしな」
インジがエデンの使いへ近づいて来る。
高雅はすぐにその間に立ち塞がった。
イ「何だ、テメーは?」
高「人に名前を聞くときは、自分から名乗るのが先だろ」
イ「偉そうな口を利くとは。死にてえようだな」
その瞬間、インジは隠していた殺気を現した。
それは高雅が今までに感じたことのない殺気だ。
戦いの知らない凛ですら、殺気に怯え、腰を落とした。
高(こいつ・・・強い)
イ「あばよ」
高「!?」
高雅が気付いた時には既に目の前にインジがいた。
そして、インジは高雅の頭を片手で掴む。
凛と楽園の使いはその状態をただ唖然と見ていた。
イ「・・・?」
しかし、インジは怪訝そうな顔をしていた。
その隙を高雅は逃す訳がない。
高(今だ!!)
ドガッ!!
イ「ぐはっ!!」
インジのみぞに拳が放たれた。
その強さは半端なく、インジを血を吐きつつ、数メートル吹っ飛ばした。
だが、インジは倒れることなく着地する。
イ(こいつ・・・何だ!?)
インジは見たこともないような目で高雅を見る。
イ「・・・!?」
すると、インジは別の何かに集中し始めた。
高「・・・?、どうしたんだ?」
間もなく、インジは高雅に物憂げに言う。
イ「集合命令が出されやがった。今日は引いてやるよ」
そう言ってインジは扉から出て行き、身を引いた。
高雅は身を引いた後も気を引き締めながら警戒していた。
数秒後、本当に身を引いたことを知った高雅は警戒を解いた。
高「・・・ふぅ、やばかった」
いくら高雅でも、アリアなしのまま続いていたならば、確実に死んでいただろう。
ただ自分の幸運に感謝を隠せないでいた。
すると、タイミング良く扉を強く開けてある使いが入って来た。
ア「コウガ、大丈夫!?」
高「遅い、罰金!!」
・・・気付いた人は気付かなかったふりをしてください。
ア「罰金って・・・私、お金持ってないよ」
高「知るか。気持ちの問題だ」
ア「そんな問題じゃないと思う・・・それより」
アリアは話を180度回転させた。
ア「楽園の使いはどうなったの!?。いきなり会話が途絶えちゃったし」
高「ああ、敵が来たんだ。だけど、何もせずに帰って行った」
ア「そう・・・よかった」
高「それより、エデンの使いは一体何なんだよ?」
ア「あ、そうだったね。じゃあ、説明するよ」
?「ボクがするのです」
突然、楽園の使いが口を開いた。
アリアは少し驚き、楽園の使いの方を見た。
高雅も楽園の使いの方へ振り返った。
?「楽園とは、天国と地獄の双方を監視するために作られた世界です」
高「・・・アダムとエバは関係ないんだな」
?「楽園には力の根源があり、それが具現化した者が楽園の使いです」
高「・・・力の根源って、静寂とかの事か?」
?「そうです。最近はその力を狙って楽園へ足を踏み入れる輩が増えたのです。その手の者から逃げる為にボクはここに隠れていたのです」
高「こんなボロッちい建物なんて隠れられないだろ」
?「ボクは夢幻の源です。強力な夢幻を見せ、簡単にはここ辿りつける訳ないのです」
高「俺と凛とアリアはここに辿り着いているけど」
?「そこの使いの時にはもう力は使ってないです。だけど、あなたは違うのです。何故かボクの夢幻に掛からなかったのです」
高「だったら、凛もじゃねえか」
?「彼女は最初は掛かっていたです。でも途中から掛からなくなったです」
高「その途中って何時からだよ?」
?「君と抱き合った時からです」
その言葉を聞いたアリアは負のオーラに包まれた。
ア「コウガ、抱き合ったってどういうことなの?」
高「何でそんなに怒ってんだ?。大体、抱き合ったって言っても凛が勝手に突っ込んで来ただけだ」
ア「じーっ」
高「何だよ?。その疑いの目は?」
ア「・・・ふんっだ」
アリアは愛想尽かしたのか、プイッと外方を向いた。
高「何だよあいつ・・・それより、えーと・・・」
高雅は話を戻すため、楽園の使いの名前を呼ぼうとしたがまだ名乗られてないため言いだせなかった。
それに感ずいた楽園の使いが教える。
フ「ボクはフィーラです」
最初は教えなかったがすんなりと教えてくれた。
きっと、敵じゃないことが分かって安心したからだろうと高雅は思っていた。
高「そっか。じゃあフィーラ、旧校舎に入って来た皆はどうした?」
フ「それだったら、ボクの夢幻で気絶してるです」
高「やっぱりか・・・」
高雅は手を額に当て、やれやれというジェスチャーをした。
高「わざわざ、皆を起こすのは面倒くせーな」
凛「それでしたら、私に任せてください」
そう言って、凛は携帯を取り出す。
高「何をする気だ?」
凛「学校の前には何名か使用人を待機させていますわ。その人達に気絶した人を家に運ばせますわ」
高「それぞれの家の場所は分かるのか?」
凛「姫花家の力を舐めないでくださる。使用人には、この町の人々・住所は全て把握させていますわ」
高「そりゃ・・・すげえな」
高雅は正直に驚いた。
凛が携帯に一言二言喋ると忍者のように使用人が整列した状態で登場した。
その速さを凛は当たり前のように見ていたが、高雅とアリアとフィーラは驚いた。
凛「この建物内で気絶している者をそれぞれの家に送りなさい」
使「畏まりました。しかし、入口で怪我をされている方がおられましたがいかがなさいますか?」
入口というキーワードでアリアが感ずき、話に割り込む。。
ア「あっ、きっとタイトだよ。インジにやられたんだ」
高「インジ?。茶髪野郎の名前か?」
ア「うん。確か、消失の力を使うらしいよ」
高「ふ~ん。取りあえず、凛、そいつはこっちで何とかするから他を頼む」
凛「分かりましたわ。では、その者以外を家に送りなさい」
すると、高雅が横から使用人に付け加えをした。
高「それと、凛も一緒によろしく頼む」
凛「えっ!?、何故ですの!?」
高「いいから、後はこっちの問題だから。お前に人の倫理を外れてほしくないんだ」
凛「・・・わかりましたわ」
高「んじゃ、俺らはタイトのとこへ行くか」
そう言って高雅とアリアが教室を出ようとした時・・・
凛「高雅さん」
凛が高雅が見えなくなる前に呼びとめた。
高「ん、どうした?」
凛「いや・・・あの・・・今日は色々ありましたが楽しかったですわ」
高「ビビって喚いていたのに楽しかったとか、実はMだったのか?」
凛「そういう訳じゃありませんわ!!」
凛は大声で全力で否定した。
高「ははは、冗談だって。じゃあな」
高雅は軽く手を上げ、別れの挨拶をした。
凛「では、今度会う時は学校で。それまで御機嫌よう」
凛もスカートを持つような素振りをして会釈をした。
別れた後、高雅は入口へダッシュで向かった。
何故か後ろからフィーラもついて来ていた。
高「・・・やっぱりな」
ア「ひどい・・・」
高「凛を先に帰らせて正解だったな」
入口前の光景はあまりにも残酷だった。
あたりには血が飛び散り、タイトの体の部位や内臓がそこらじゅうに転がっている。
ア「どうして分かったの?」
高「グラサンで分かりづらかったが、使用人の顔が青褪めていたんだ。だから、結構グロイかもって思った訳。こんな光景を凛には見せたくなかったからな」
ア「優しいね」
高「さっきも言った通り、あいつには人の倫理を外れてほしくないだけだ」
そう言いながら、タイトの体の部位や内臓を一か所に集める。
高「多分、宝石を壊されないように必死に抵抗したんだな」
ア「早く再生させようよ」
アリアは契約の力を発動し、すぐに再生の力を使用する。
失ったタイトの命が徐々に再生していった。
数十秒でタイトは復活した。
タ「忝い」
高「どういたしまして。もうお前の契約者は帰ってるからお前も帰りな」
タ「そうさせてもらう」
タイトは自分の足を活性化して大きく飛躍してこの地を離れた。
すると、高雅はひっそりとどこかへ行こうとするフィーラを見て呼び止める。
高「おい、もう一つ質問いいか?」
フ「何です?」
高「お前の力は夢幻だけか?」
フ「そうですけど・・・それが、何です?」
高「いや、何でもない。後、お前はこれからどうするのか?」
フ「質問は一つだけです。ボクはボクで何とかするです」
そう言ってフィーラは再び歩み始め、どこかへ消えた。
高「・・・俺達も帰るか」
ア「そうだね・・・それと、コウガ」
高「何だよ?」
ア「どうしてリンちゃんと名前で呼び合ってるのかな?」
高「それがどうかしたのか?」
ア「も~~、ほんと女心が分かってないんだから」
高「知らねーよ。さっさと、帰るぞ」
高雅はあまり深入りせず、話を切り上げる。
アリアはそれに対してさらに不機嫌になる。
しかし、高雅にそれは伝わらず、それよりもあることが矛盾していることを考えていた。
高(あいつの夢幻が効かなかったなら、あの時の物音は何だったんだ?。それに、勢いよく扉が開かれたのも夢幻じゃないとすると・・・こりゃ、本当に幽霊だったりして・・・)
高雅はそんな適当な解釈をして、悩むのを止めた。
そして、新学期が始まる頃、新しい異変が訪れようとしていた。
番外編として、他のグループを描写しようと思います。
そして、それが終われば新章を書きます。