旧校舎の秘密? 中編
高雅と凛はとにかく歩いて目的地に向かっている。
高雅の足について行けない凛の為に所々で休憩を挟みながら進んでいた。
しかし、高雅は不自然なことに気付いた。
高「・・・妙だな・・・」
凛「ぜぇ・・・はぁ・・・な・・何がですの?」
高「こんなに歩いて仕掛け一つに遭ってない」
そう、高雅達は未だにAが仕掛けたと思われる仕掛けに遭遇していない。
凛「まさか、道を間違えてしまいましたか?」
高「だが、ちゃんと案内板通りに従って進んでいるぞ。それで無いのは不自然だろ」
凛「・・・では、一体・・・」
高雅はあたりを照らし始める。
ここは窓がある廊下ではない。
あるのは闇へと続く道のみ。
高「・・・まあ、歩いていたら何か見つけるだろうよ」
凛「そうですわね・・・」
その時・・・
ガタン!!
高・凛「!?」
突然、すぐそこの教室から物音が聞こえた。
高「やっと仕掛けに遭ったか?」
そう言いながら高雅は扉に手を掛ける。
凛が震えながらそれを見守る。
高「・・・あれ、開かねえぞ」
高雅が力を入れるものの、扉はビクとも動かなかった。
高「う~ん・・・驚いて慌てさせるためで、中に入る必要がねえのかな?」
高雅は諦め、扉から手を放した。
その時・・・
ガララッ!!
高「な!?」
凛「ひっ!?」
突然、扉が勢いよく開いた。
凛は驚き、腰を抜かし座り込んだ。
高雅は開いた教室に顔だけを入れ、あたりを確認する。
しかし、怪しい物は何一つ見つからなかった。
高「・・・結構手が込んでるんだな。あいつにしてはやるな」
適当に評価を付けつつ、中に何もないことを確認して扉を閉めた。
高「ここは何もないみたいだ。さっさと次に行こうぜ」
そう言って腰が抜けた凛に手を差し伸べる。
凛「わ・・わかりましたわ・・・」
震えながら差し伸べられた手を取り、懸命に立ち上がる。
それを見た高雅が嘲笑いながらこう言った。
高「ビビりだな~、お前」
凛「な・・・何ですって!!」
その言葉に火が点いた凛は高雅の襟元を掴み、振り回す。
凛「私は別に怖がってなんかいません。ただそうした方が味が出ていいと思っているだけですわ!!」
ブンブンと音を立てながら振り回される高雅は喋りにくい状況にも関わらず冷静に言った。
高「じゃあ、味を出さなくていいからもう驚くなよ?」
凛「えっ・・・」
高雅は凛の手を除け、ダメ押しをするかのように問う。
高「怖くないんだろ?」
凛「わ・・・分かりましたわ。もう驚いたりしませんわ」
そう言って凛は一人進み始めた。
高雅は強がっている凛の姿を見て笑い耐えながらもついて行った。
変わって入口前。
ア「そろそろ5分経ったから行こっか?」
アリアがタイトに優しく問う。
しかし、タイトは目を瞑ったまま無反応だった。
ア「タイト?」
アリアは顔を覗きこむがタイトは目を瞑ったままだ。
ア「もしかして、立ったまま寝ちゃった?」
そう言って手を振って反応を確かめるがタイトは無反応だ。
だが、タイトは突然口を開いた。
タ「・・・来る!!」
ア「わっ!?」
目を開くと同時に言葉を短く発し、それに驚いたアリアは尻もちを着いた。
ア「いたたたた・・・」
アリアはお尻を擦りながら立ち上がる。
タイトは腰に挿してある鞘から日本刀を取り出す。
ア「タイト?」
タ「気をつけろ。誰かが狙っておる」
ア「え!?」
タイトの言葉により、アリアは懐中電灯で周りを注意深く見渡す。
すると、暗闇からギラリと反射光が見えた。
ア「そこ!!」
アリアが指を指してタイトに教える。
その時、光った場所から鎖で繋がれた鎌が飛んで来た。
アリアとタイトはそれぞれ別の場所へ回避する。
?「ばれちゃったか。暗殺には自信あったんだけどな~」
敵が頭を掻きながら暗闇から出て来た。
髪色は茶色の男だ。
タ「お主・・・消失の力を使うか?」
それを見たタイトが敵の力を判断する。
イ「そうだぜ。俺の名はインジ。名乗ってやったんだからそっちも名乗れよ」
タ「拙者はタイト。力は活性を使う」
イ「髪色みればわかるっちゅうの。で、そっちの蒼髪は?」
ア「私はアリア。得意な力は静寂」
イ「ふ~ん。お前があのアリアか。地獄じゃ知らないものはいないと言う」
ア「あなた、地獄の使いね。目的は私を殺すこと?」
イ「ハッ、んなつまらねえことじゃねえよ。もっとでかい獲物を殺すんだよ」
ア「まるで、私が弱いみたいに言ってるわね」
イ「事実じゃねえか。取りあえず、お前らに用はない。そこを退け」
ア「何ですって!!」
アリアは怒りだし、ずいずいとインジに近づく。
しかし、途中でタイトがそれを止める。
タ「アリア、お主は我が主と自分の主を呼んでくるのだ」
ア「な・・・何でよ!?」
タ「はっきり言おう。我々だけでは奴には勝てぬ」
ア「え!?」
イ「ひゅー、分かってんじゃねえか」
ア「そんなの、やってみなくちゃ分からないよ。こんなふざけた奴に負けるなんて。大体、契約者もいないし」
タ「いいから我々の主を呼んでくるのだ」
タイトが強く言う。
それに少し押されてしまうアリア。
タイトの言葉が本当だと悟り、自分の行動を決意をする。
ア「・・・気を付けて」
そう言い残し、アリアは旧校舎に入る。
タ「拙者が相手になろう」
イ「お前ごときで相手になれると思ってるのか?。まあいい。狩りの肩慣らしと行こうじゃねえか」
インジは鎖を引っ張り、地面に刺さってある鎌を抜く。
イ「ヒャッホー。それじゃ、始めようぜ」
タイトとインジの戦いが始まった。
外で何が起きているかも知らずに、高雅と凛は旧校舎をさ迷っていた。
すると、凛が止まり高雅に聞いてきた。
凛「・・・待ってください」
高「どうした?。また疲れたか?」
凛「違いますわ・・・ここ、さっきも通りませんでしたか?」
高「はぁ!?。何言ってんだよ?」
凛「ですから、同じ所を行き来してませんか?。この教室、さっきも見ましたもの」
高「あほ。全然見てねえよ。さっさと行くぞ」
高雅は凛の物言いに呆れ、再び歩み始める。
凛「あっ、待ってください」
それに続くように凛が追いかけようとしたが・・・
ガシッ
凛「え!?」
突然、足が掴まれる感触に襲われる。
後ろには人がいなかったはずだったと思い、恐る恐るゆっくり振り返ると・・・
首のない体が凛の足を掴んでいた。
凛「きゃあああああああああああああああああ」
本日二度目の絶叫。
高「~~~~っ!!。どうしたんだよ!?」
鼓膜が破れそうになりつつも凛に駆け寄る。
高「どうし・・・うおっ!?」
高雅が聞こうとした瞬間に凛が思いっきり抱きついて来た。
高「ちょ・・・何事!?」
凛「いいいいい・・いい・・今・・・首のない人が・・・」
高「首のない人?」
高雅はあたりを見回してみる。
しかし、そのような人物は見つかることはなかった。
高「いねーぞ」
凛「た・・・確かにいましたわ!!。この目で見ましたもの」
高「取りあえず、落ち着け。そして離れろ」
凛「へ!?」
凛は恐る恐る自分の状態を確認する。
結果:高雅に抱かれている。
凛「・・・・・・・///」
凛は黙り込み、顔を真っ赤にしていく。
高「もしもーし、起きてますかー?」
凛「はっ!!」
腑抜けた高雅の声で我を取り戻す。
凛「ご・・・ごめんなさい!!」
すぐにバッと離れる・・・事が出来なかった。
恐怖のあまり、何かに触れていないと壊れてしまう状態に陥ってしまっていた。
凛「・・・・・・・・」
高「・・・ビビり」
凛「!!」
凛はその言葉に反応し、手を握り締め怒りを込み上げるが、声に出すことはなかった。
いや、むしろそれを認めようとしていた。
凛「・・・ごめんなさい。私は嘘を吐いてしまいましたわ」
高「気にしちゃいねえ。誰だって強がる時はある」
そう言って高雅は凛の頭を撫でる。
すると凛は安心したように高雅に体重を掛ける。
凛「・・・・もう少し、このままでいさせてくれませんか?」
高「・・・悪いけど、無理」
凛「・・・・・・」
それを聞いた凛はゆっくりと仕方なく離れていく。
高雅から完全に離れ切る寸前に・・・
パシッ
凛「え!?」
高雅が凛の手を掴んだ。
高「これじゃ、ダメか?」
そういう高雅に凛は安心しながら首を縦に振ろうとしたが己のプライドが込み上げて来た。
凛「し・・仕方ありませんわね。高雅さんがそうしたいのであれば別に構いませんわ」
高雅はそんな上からの態度よりも別の事に驚いた。
高「ん・・・今、高雅って言ったのか?」
凛「い・・・いけませんか?///」
凛が顔を赤くしながら目を逸らしつつ問う。
高「うーーーん・・・まっ、別にいいけど」
凛「でしたら、高雅さんも私のことを凛と呼びなさい」
高「何で命令系?」
凛「いいですから、凛と呼びなさい」
ズイッと近づいて指を指す。
高雅はそれに押され気味になりつつあった。
高「わ・・・わーったよ」
凛「ふふふ。では、行きますわよ、高雅さん」
高「さっきまで怯えていたのは何処に言ってたのやら」
凛「何か言いましたか?」
高「べっつに~」
適当に相槌を打って歩き始めた。
もちろん、手は繋がった状態で。
高雅はいつの間にか、凛のペースに合わせていた。
遂に2-Aの教室の目の前に到着した高雅と凛。
あの後、仕掛けに遭うことはなかった。
高「これでやっと終わるな」
凛「・・・・・少し、残念ですわ」
高「んあ、何か言ったか?」
凛「べ・・・別に何も言っていませんわ///」
高「そうか。んじゃ、開けるぞ」
高雅は扉に手を掛け、開ける。
しかし、その教室には皆はいなかった。
高「あれ、先に言った奴らは何処に行ったんだ?」
凛「妙ですわね。まさか、最後に何か企んでいますの?」
高「わっかんねえな。だが、可能性はあるな」
その時・・・
ガタン!!
高・凛「!?」
一つだけ机が大きく揺れた。
高雅と凛は恐る恐る近づく。
高「誰だ!?」
そして、懐中電灯をそこに照らした。