――と誕生日
遅れてすみません。最近忙しくなって、さらにパソコンを独占されて・・・
ペースダウンは絶対かもしれません。
高雅は只今勉強中。
しかし、全然集中できてなかった。
高「はぁー、一体どうしたことやら」
もちろん悩んでいることはアリアのことである。
話しかけようとするがそんな空気ではないと高雅は判断し、そのままの状態でほたっていた。
二人の仲が何かギクシャクになっていた。
高「う~ん、何かやる気でねえな・・・しゃーね」
高雅は勉強を投げ出し、ベットに寝ながらゲームを始めた。
おいおい、勉強を怠ってはダメだとレオに言われただろ。
高「やる気のねえ時に勉強しても効率が悪いからな」
それは、勉強したくない奴の言い訳にすぎないだろ。
高「気にするな。事実だから。さーて、何を狩ろうかなー」
高雅は完全にゲームモードに突入した。
リビングではアリアがソファーにうつ伏せで倒れていた。
ア「何よ、コウガのバカ・・・」
あれからずっと、同じ言葉の繰り返し。
ア「今日は大切な日だから待ってたのに、何でリュウコと一緒なのよ」
アリアはそう言いながらテーブルにある物を見る。
それはリボンで包まれた箱だ。
ア「・・・大切な日は大切な人と過ごしたいよね・・・」
そんな思いが込み上げてくると、自然と涙が出て来た。
ア「私は・・・コウガにとって大切じゃないのかな・・・」
アリアは顔をうつ伏して泣き始めた。
ここで、何故アリアがこんな状態に陥ったのかは、高雅が出掛けた後の話。
高雅が出掛けた後、アリアは暇潰しにセバスチャンと談笑していた。
ア(―――でね、それでコウガが―――)
セ(ほっほっほ、そうでございますか。それにしても、アリア様は変わりましたね)
ア(えっ!?、何処が?)
セ(随分と自分を見せているではありませんか)
ア(う~ん、意識するとそうかも。コウガに会った時もちょっと猫被ってたけど今じゃ本性を現してるし)
セ(わたくしでも完全にアリア様の本性を許してもらえなかったものをコウガ様が許されるとは。さすが、アリア様が好意を寄せるだけはあります)
ア(そんなこと言われたら恥ずかしいよ///)
アリアのそんな声を聞いたセバスチャンは軽い愛想笑いをした。
ア(後はね―――)
セ(すみません、アリア様。どうやら仕事が入ったようで)
ア(あ、そう。だったら仕事を優先していいよ)
セ(すみません。それでは、失礼します)
アリアはセバスチャンとの意思会話を断った。
ア「暇だな~」
ソファーに寝っ転がり、天井を見つめていた。
すると、不意に声を掛けられた。
レ「アリア殿。面白いものを見つけたぞ」
ア「面白いもの?」
アリアはそれが何かは全然見当がつかず、レオの方を見る。
レオは本のようなものを咥えていた。
アリアはそれを受け取り、中身を開いて確かめた。
ア「これ・・・コウガのアルバムだ」
アリアは興味本意で次々とページを捲っていく。
すると、あるページで手が止まった。
それは、高雅の生まれた間もない時の写真だ。
その下にメモが書かれていた。
ア「平成X年8月8日、午後2時47分。これはコウガの生まれた時かな?」
レ「アリア殿、8月8日は今日であるぞ」
ア「そう言えばそうだね。じゃあ、大切な日って自分の誕生日ってことかな?」
レ「まあ、大切な日と言うのであればそうであろう」
ア「でも、どうして出掛けて行ったのだろう?」
レ「分からないのか、アリア殿」
レオは、はぁーとため息を吐きながら呆れていた。
ア「な・・・何よ?」
その態度を見たアリアは少し膨れていた。
レ「アリア殿は誕生日などは大切な者と過ごしたいだろう」
ア「まあ、そうだけど・・・それじゃ、コウガは誰かに会いに行ったの?」
レ「その可能性もあるがもう一つの可能性もあるぞ」
ア「それは?」
レ「アリア殿がプレゼントを用意する時間を作るためでもある」
ア「そっかー。そう言えば、コウガの誕生日なんて知らなかったし」
レ「ならば、用意してはどうだ?。コウガ殿もきっと喜ばれるぞ」
ア「そうだね。それじゃ・・・」
アリアは再び意思会話を始めた。
相手はもちろんセバスチャンだ。
ア(セバスチャン、ちょっといい?)
セ(どうされましたか?)
ア(実はね―――)
アリアは事情を説明し、あるものを頼んだ。
ア(―――を送ってほしいの。机の3番目の引き出しにあるはずだから)
セ(わかりました。では、こちらでプレゼント用に包んでおきましょう。庭に陣を描いておられればすぐに届きます)
ア(わかった。ありがとう)
アリアは意思会話を断ち、庭へ向かった。
庭に着くとそこら辺に落ちてある木の枝で魔法陣のようなものを描き始めた。
それが書き終えると同時に陣が輝きだし、輝きが消えた時には小さな箱が置かれていた。
ア「コウガ、喜んでくれるといいな」
そう言って箱を持ち上げ、汚れがないかチャックする。
その時、頬に一粒の水滴が落ちてきた。
ア「あっ、雨だ」
一粒だった雨が倍々に増えていく。
ア「結構激しくなりそう・・・」
ここにいてはプレゼントが濡れてしまうと思い、アリアは一度家に入った。
そして、テーブルにプレゼントを置き、玄関ドア前の外に出た。
当然、高雅を出迎える為である。
ア「出掛ける時は傘を持ってなかったからすぐに帰ってくると思うけど・・・」
その数分後に高雅は帰って来た。
ア「あっ、コウ・・・」
アリアは最後まで言い切ることができなかった。
それは高雅が龍子と一緒だったから。
何より一番の理由は相合傘だった。
アリアは裏切られるような感覚に取り付かれた。
そして、怒りのような気持ちが溢れて来た。
ア「どうして・・・」
そして、あの場面になった。
ア「・・・ぐす・・・うぐ・・・」
アリアの涙は枯れることを知らず、次々と溢れだしていく。
高「・・・何で泣いてんだ?」
ア「!?」
気が付くと、傍には高雅がいた。
泣いていたためか、アリアは扉が開くのに気付かなかった。
そのため、高雅が傍にいることにも気付かなかった。
高「俺って・・・気づかずにお前を傷つけたか?」
ア「・・・そうだよ。責任とってよ」
アリアは高雅に冷たく当たる。
高雅は理由が分からず、頭を掻きながら困っていた。
高「えっと・・・悪い」
ア「・・・もういいよ。リュウコと楽しい時間を過ごしたのでしょ。それで十分でしょ?」
そう言ってアリアはテーブルのプレゼントを捨てようとする。
その時、高雅が納得がいかず、アリアの腕を掴んだ。
高「待てよ。楽しい時間って何だよ?。別に楽しかった訳じゃねえぞ」
ア「嘘を言わないでよ!!。今日は誕生日だからリュウコと一緒に過ごしたのでしょ!!」
高「誕生日?・・・あっ!!」
ア「あっ?。どうして驚いてるのよ?」
高雅は茫然とし、アリアの掴んでいる手を放した。
高「俺の・・・誕生日・・・」
ア「コウガ?」
アリアは不思議に思い、高雅の顔を覗き込んだ。
そこには、涙を含んだ高雅の目があった。
ア「コウガ、泣いてるの!?」
高「・・・そうだ。俺の誕生日・・・」
ア「どうしたの、一体?」
高「・・・今日は俺の誕生日だったんだ」
ア「えっ!?、コウガは大切な日って言ってたよね?。それって誕生日ってことじゃないの?」
高「違う・・・そっか、忘れてたな、俺」
高雅はきっぱりと否定し、忘れていた記憶を思い出した。
ア「じゃあ、コウガの大切な日って?」
高「今日は俺の一人になった日付だ」
ア「えっ!?・・・」
アリアは聞くんじゃなかったと薄く後悔してしまった。
ア「・・・ごめん」
高「別にいい。もう慣れてるからな」
ア「じゃあ、リュウコと一緒に帰っていたのは?」
高「あいつが墓の近くでお気に入りにした場所があってな。墓にあった傘を使って送ってやった訳」
ア「そうなの!?。じゃあ、別にリュウコと一日過ごした訳じゃないの!?」
高「まあ、偶然会って、軽く話しただけでそこまで一緒にいた訳じゃない」
ア「なーんだ。そうだったんだ・・・よかった」
アリアはほっと胸を撫で下ろした。
高「ん?、最後何て言った?」
ア「へ!?・・・べ・・別に何でもないよ///」
アリアは手を振り、懸命に否定する。
その時、手に持っているプレゼントに気づいた。
ア「あっ、コウガ」
アリアは両手でちゃんと持ち、高雅に差し出した。
ア「誕生日おめでとう」
祝いの言葉とともにプレゼントを贈った。
高「あっ・・・ありがとな」
高雅は恥ずかしながらもプレゼントを受け取る。
高「早速、開けてもいいか?」
ア「うん、いいよ」
高雅は開封の了承を得り、リボンを丁寧に解いていく。
リボンが解き終わり、箱の蓋を開ける。
その中には、小さな蒼い三日月が付いたネックレスだった。
高「へー、綺麗だな」
ア「私の持ってる中で一番のお気に入りだから大切にしてね」
高「つまり、天国から取り寄せたってことか。それはさぞかし値打ちが付くだろうな」
ア「まさか、売る気なの!?」
高「言ってみただけだ。そんな気は断じてない」
そう言いながら、高雅はネックレスを首に巻いて付けてみた。
そして鏡を見て確かめる。
高「・・・気に入った。ありがとな」
ア「どういたしまして」
高「それにしても、プレゼントなんて7年ぶりだな。でも、7年前は潰されたから正確には8年前だな」
ア「だったら、これから毎年私がプレゼントしてあげるよ」
高「いや、さすがに悪いだろ。これだけで十分だ」
ア「そう?・・・あっ、それとそのネックレスには御呪いがあるよ」
高「まじない?」
ア「うん。それはね・・・」
アリアはわざと一拍置いて、もったいぶらせた。
高「何だよ、一体?」
高雅が待ち切れず、聞いてきた所でアリアもそれを教えた。
ア「身に付けてる人を幸せにする御呪いだよ」
高「また、何ともベタな・・・だが、悪くないな」
ア「ベタでもいいのよ」
高「今は同感だ。本当にありがとな」
ア「ふぇ!?」
高雅はまたお礼を言い、アリアの頭を撫でた。
その時に発したアリアの奇声に高雅は少し驚いた。
高「ふぇって、情けねえ声出すなよ」
ア「ごご・・・ごめん」
アリアは俯いて高雅に赤くなった顔が見えないようにしていた。
高「それじゃ、飯作って、今日はこの思い出のまま寝るか」
高雅は台所に向かったが、アリアはまだ俯いているままだ。
ア(・・・私にとってもいい思い出かな)
アリアはこの気持ちを大事に胸の中に仕舞い込んだ。
アリアがいつの間にか消えた嫉妬の怒りに気づくことはなかった。




