命日と―――
長いです。
シリアス有りです。
非日常じゃありません。
・・・なんか逸れてるような・・・
今日は生憎の曇り空。
それでも、高雅にとっては大切な日である。
高雅は窓から空を眺めながら思いつめていた。
高「・・・・・・・・」
ア「どうしたの、コウガ?。元気ないよ」
高「別に・・・」
アリアの質問を適当に返す。
そして、小さく呟いた。
高「・・・・あれから7年か・・・」
ア「えっ!?、何か言った?」
高「何も言ってねえよ」
そう言って立ち上がり、部屋を出ようとする。
それにアリアも着いてくるが・・・
高「悪い。今日は家に居てくれ。500メートル以内で済むから」
ア「どうして?」
高雅はアリアと目を合わさず、外へ繋がる扉を開けながら答えた。
高「今日は大事な日だからだ」
そして、扉が閉まり、残されたアリアは一人たたずんでいた。
ア「・・・大事な日って何だろう?」
アリアは部屋に戻り、そのことばかり考えていた。
店「ありがとうございました~」
ある店から出て来た高雅はレジ袋を持っていた。
高「ざっと、こんなもんだろ。後は・・・」
高雅はまだ何か買うつもりらしく、別の店に向かった。
そして、着いた場所は酒屋だった。
高「・・・毎回ここに入るのは気が引けるな」
それでも、高雅は酒屋に入った。
数分後、酒瓶を一本買った高雅が出て来た。
高「買う時に何も疑わないとか。俺ってそんなに老けてるのかよ・・・まあ、お陰で呆気なく買えてるからいいけど」
高雅は半ば落込みながらも、手軽に酒を入手したことを喜んだ。
高「これで全部だな。それじゃ、ご対面と行きますか」
そのまま、高雅はある所に向かった。
今、高雅は道路で舗装された山道を進んでいる。
高「変わったな。毎年来てるが毎年変わってる」
高雅は今、歩いている道を前と照らし合わせながら進んでいる。
すると、高雅はあることを思った。
高「・・・変わる、か・・・今年は俺もだな・・・」
そう思いながら進んでいる内にまた土の道へと変わった。
それから道なき道を進むと目の前にフェンスが現れ、通行を妨げた。
高「あれ、道間違えたか?。まあ、いっか」
高雅は袋を高く投げ上げ、その間にフェンスをよじ登って向こうへ渡り、いいタイミングで落ちてきた袋をキャッチする。
高「にしては、道を間違えるとかボケてきたな。年ってやつか?」
若造が偉そうに言うな!!。
高「作者も若造だろ」
はい。そうですけど何か?
高「ムカつくな・・・」
はいはい、さっさと進む進む。
高「・・・覚えてろよ」
また歩きだした高雅は少し開けた場所に出た。
そこは花など一輪も咲いていない断崖絶壁で寂しい所だ。
しかし、緑淵町を一望できる秘密の場所だ。
高「・・・懐かしいな・・・」
高雅は目を閉じて過去に浸った。
所々笑ったりして、端から見れば危ない人である。
高「殺すぞ」
ありゃりゃ、聞こえてたか。
?「あれ・・・崎村君?・・」
高「!?、杉野!?」
突然、高雅の前に龍子が現れた。
・・・ホッ、殺されずに済んだ・・・
高「どうしてお前がここに!?」
龍「え・・・だって・・・ここ・・・私の・・・秘密の場所・・・」
高「どっからここに来たんだ?。フェンスで塞がれてるはずだぞ
龍「向こうの・・・フェンスに・・・穴が・・・ある・・・そこから・・・」
高「そうだったんだ。だけどよ、ここは俺の土地だぞ」
龍「えっ!?・・・そうだったの!?・・・」
龍子は突然の事実に驚く。
高「ここは崎村家の土地だ。知らなかったのかよ?」
龍「ごめんなさい・・・」
高「いや、謝らなくていい。気にいってくれたなら、また来ていいからな」
龍「いいの?・・・ありがとう・・・」
そう言って龍子は笑っていた。
高「それじゃ、俺はこの先に用があるから」
龍「一緒に・・・いい?・・・」
高雅は暫し考えた。
高「悪い。これから行く所は俺にとって神聖な場所なんだ」
龍「そう・・・分かった・・・」
高「じゃあな。雨降りそうだから早めに帰れよ」
高雅はまだ先の茂みの奥へ向かった。
高「やっと着いた」
着いた場所はさっきみたいに少し開けた場所だが、寂しい場所ではない。
むしろ逆だ。
一面には花が咲いてあり、池もあり、その水は透明で水が無いかのように感じてもおかしくないぐらい綺麗だった。
そこは、まるで天国を感じさせるような場所だった。
そして、その中央に屋根付きの墓石が建ってあった。
高「久しぶり、皆」
高雅は誰もいないのに一人喋り始めた。
今日は高雅にとって、家族・親戚全員の命日だった。
袋からタオルを取り出し、池で濡らして墓石を拭く。
高「全く、母さんか父さんか知らないけどさ、お陰でこっちは大変だぞ」
拭きながら高雅は語る。
誰もいないこの場所で。
高「アリアは何かトラブルメーカーだぞ。あいつのお陰で命が何度も亡くなりかけたことか」
拭き終わった高雅は次に花を挿し返る。
高「・・・だけど、そのお陰で俺の世界が変わった。ずっと拒絶していた人間をちょっとは受け入れるようになったし、人を思うようになってきたし、何より新鮮な楽しさを感じるようになった」
次に酒瓶を開け、コップに一杯注ぎ、墓石の目の前に酒瓶と一緒に置く。
高「これも皆のお陰だ。ありがとな」
最後に線香を立て、目を閉じて手を合わせる。
高「・・・・・・・・・やっぱ・・・」
高雅は目を開け、墓石を見る。
だけど、何も変わってない。
高「やっぱ・・・会って話てえよ・・・」
高雅が涙を流す。
それと同時に天も涙を流し始めた。
高「ぐす・・・ちくしょー・・・いっつも泣いてしまうな・・・」
袖で涙を拭うが懲りずに溢れだす。
高「どうしてさ・・・・俺だけが生きてんだよ・・・何で俺も死ななかったんだよ・・・」
これが高雅の一生の疑問。
解くことのできない疑問。
偶然もまた答え、必然もまた答え。
無限の中にあるたった一つの答えを高雅はずっと探し続けた。
高「なあ、教えてくれよ!!・・・どうして・・・俺だけが生きてんだよ!!」
高雅は墓石に縋りつき、答えを求める。
墓石が教えてくれる訳ない、そんなことは高雅も理解している。
だが、縋りつかずにはいられないのだ。
そんな様子を雨に打たれながら陰で一人覗いていた。
龍「・・・・・・・・」
すると、龍子は意を決して高雅に近づく。
一歩、また一歩、少しづつ近づく。
近づくにつれて高雅の涙声が大きくなる。
そして、距離が無くなった時・・・
ギュッ・・・
高「!?」
優しく抱きしめた。
高雅は突然感じた湿り気に驚いたが、退かそうとはしなかった。
そして、龍子が呟いた。
龍「答えは・・・分からなくても・・・いいと思う・・・」
高「え!?」
龍「無理して・・・知ろうとしないで・・・」
高「・・・・・・・・」
高雅は黙り込んで龍子の話を聞いた。
龍「答えは・・・きっとない・・・と思う・・・ないものを・・・探して・・・崎村君が・・・泣くと・・・皆困るから・・・友達も・・・家族も・・・」
高「っ!!」
高雅は気づいた。
自分は答えなんてどうでも良くて、ただ甘えて縋りついて、自分は答えを探してなんかいないってことを。
それは、ただ皆を困らせていただけだと。
高「悪い・・・皆・・・」
龍「・・・悪くない・・・崎村君は・・・甘えたかっただけ・・・」
高「・・・ありがとうな、杉野」
すると、高雅は立ち上がり、杉野と顔を合わせた。
高雅の顔は少し怒りに満ちていた。
高「ところでよ、何でお前がここにいるんだ?」
龍「え!?・・・それは・・・」
高「それは何だよ?」
龍「えっと・・・その・・・ごめんなさい!!」
龍子は正直に頭を下げた。
高「ったく、お前にそんな行動力があるとか思わなかったぜ。お陰で俺の羞恥が見られたじゃねえか」
龍「・・・・・・・」
龍子は何も言わずに頭をずっと下げている。
反省をしているだろうと高雅は思い下がっている龍子の頭を撫でてやった。
龍「えっ!?・・・」
高「まあ、反省してるようだし、お前のお陰で何か気づいたし、許してやるよ」
龍「・・・うん・・・///」
龍子は頭を下げたまま赤くなっていた。
高「んじゃ、帰ろうか・・・って雨だった」
龍「・・・そうだね・・・」
ここから家までそこまで遠くないがびしょ濡れになってしまうだろう。
高「・・・あっ、そうだ!!」
高雅は何かを思い出したように墓石の骨を収納する扉を開けた。
そこには骨の変わりに色々な物があった。
高「確か・・・おっ、あったあった」
高雅が取り出したのは傘だった。
龍「どうして・・・そこに・・・」
高「骨が無い代わりに皆の好きだった物を入れてんだよ」
高雅が傘を開いてみたが・・・
高「うわっ、これは・・・ちょ・・・」
傘にはでっかいハートが描かれていた。
高「これは母さんのやつだ。青春の思い出だっけ?」
龍「すごい・・・派手だね・・・」
高「母さんの学生時代は永遠に不明だな」
そう言いながら高雅は傘を龍子に渡そうとする。
龍「え!?・・・」
高「俺がこんなの使ったら恥ずかしいだろ」
龍「私も・・・恥ずかしい・・・」
高「御尤もな意見、ありがとう。だけど、濡れて帰る羽目になるぞ。お前の家は結構遠いだろ?」
龍「うん・・・じゃあ・・・」
龍子が傘を受け取り・・・
龍「崎村君も・・・一緒に・・・///」
顔を赤くしながら高雅に入るように促した。
高「なっ!?///」
高雅も異常に赤くなる。
そりゃ、普通の傘ならまだしも、ラブオーラ全開の傘ですから。
高「あのな・・・恋人みたいと間違われるぞ」
龍「それでも・・・いい・・・///」
高「お前が良くてもなぁー・・・って///」
龍子は高雅の手を握り、半ば無理やり傘の下に入れた。
龍「・・・ごめんなさい・・・」
高「そう思うなら行動するなよ。もういい、自棄だ」
高雅はどこかふっ切れて、龍子と一緒に帰路を辿っていった。
そんな光景を天国で誰かが笑っていただろう。
帰路の道はさっきと違う。
フェンスの出入り口がある道を辿っている。
その扉は鍵が掛かっているが土地所有者が鍵を持ってない訳がない。
高雅は鍵を開けて、その土地から出た。
そして、鍵を閉め終わった時にその鍵を龍子に渡した。
龍「えっ!?・・・これ・・・」
高「今日のお礼を含めてだ。ここ、好きなんだろ?」
龍「でも・・・崎村君の・・・」
高「俺はちゃんとスペアキーがあるって。だから、もらってくれ。この場所が好きな奴にもらってほしいから」
龍「うん・・・大切に・・・する・・・///」
龍子はその鍵を大事に仕舞い込んだ。
二人はどこかいい雰囲気を出しながら、再び帰路を帰路を辿った。
近いという理由でまずは高雅の家にやって来た。
玄関前にアリアが待ってくれていた。
高雅と龍子の様子を見たアリアはどこか負のオーラを出していた。
ア「どうしてコウガとリュウコが相合傘してるのかな?」
高「まあ、成り行きだな。多分・・・」
ア「どうしてかちゃんと説明してよ!!」
高「何でキレてんだよ!?」
ア「うるさい!!。いいから教えてよ!!」
高「何かゴタゴタになりそうだな。杉野は先に帰ってくれ」
龍「うん・・・分かった・・・」
龍子が帰ろうとしたが高雅がそれを止めた。
高「やっぱちょっと待て。思い出の物を持っていかれるのは嫌だな」
高雅は家に入り、5秒もしない内に別の傘を持って出て来た。
高「これ使え」
龍「うん・・・ありがとう・・・」
高雅は傘を交換した。
すると、龍子が聞いて来た。
龍「ねえ・・・崎村君・・・」
高「何だ?」
龍「・・・高雅君って・・・呼んでいい?・・・///」
龍子は顔を赤くしながらそう聞いた。
高「別にいいけど」
龍「ほんと!?・・・じゃあ・・・私を・・・下の名前で・・・呼んで・・・くれる?・・・」
高「ああ、いいぜ」
高雅は呆気なくOKを出した。
後ろで滅茶苦茶、負のオーラを出しているにも関わらず。
龍「それじゃあね・・・高雅君・・・」
そう言って龍子は笑顔で帰って行った。
ア「それで、今まで空気にしていた分をどう晴らしてくれるのかな?」
高「何でそんなにやべーオーラを出してんだよ!?」
ア「この、鈍感ツンデレコウガ!!」
そう言ってアリアは扉を思いっきり閉め、鍵を掛けた。
高「・・・何なんだ?」
高雅は意味が分からず、佇んでいた。
ちなみに、鍵を閉められたが、高雅はちゃんと家の鍵を持っていたので呆気なく入れた。