天獄戦争編 その9、間違い
気がつけば既に夜になっていた。
月が照らすまでもなく、炎の明かりは商店街全てを照らしていた。
その先にはドラゴンもいる。
高「・・・・あれ、なんか変じゃね?」
ア「どこが?」
高「頭にいる変人が」
アリアの父親は頭を抱え、もがき苦しんでいた。
父「ぐうううううおおおおおおおおお」
高「なんで辛そうなんだ?」
ア「分からないけど、チャンスだよ」
高「じゃ、容赦無しに行くぜ」
高雅は両方の剣先をドラゴンに向けた。
高「虚無+波動の力!!」
剣先から細く、鋭い波動が放たれる。
キ「ブオオオオオオ」
ドラゴンが危険を察し、盾を創造した。
高「虚無に力で挑むなど無意味だ!!」
波動は呆気なく盾を貫き、ドラゴンをも貫いた。
キ「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・」
悲痛の叫びを上げたドラゴンは消滅した。
高「あれ、虚無ってここまで強いのか!?」
ア「・・・・もしかしたら、ドラゴン自体も創造の力だから消えたんじゃないの?」
高「ああ、成程な」
父「うわあああああああああああ」
足場が無くなったアリアの父親は無抵抗に落下していく。
父「ぐふっ・・・」
着地もせずに、腹から地面に落下した。
高雅はアリアの父親に近づいた。
父「うがあああああああああああ」
高「こいつ、地面に叩きつけられた痛みに対して嘆いてないぞ」
ア「どういうこと!?」
高「分からない。ディバイトが関係してるかもな。取りあえず、この殺人狂を直すか」
高雅はアリアの父親に触れた。
高「虚無の力」
父「ああああああ・ああ・あああ・・・・あ・・・」
アリアの父親はゆっくりと意識を失った。
高「何かの力で暴走していたんなら、これで直った筈だ」
ア「・・・最後は呆気ないものね」
高「それより、これから天国はどうするんだろうな。兵は殆ど焼け死んだし、もう戦う士気も無いし」
ア「天国の負けかな」
デ「そう、天国の負けだ」
高「!?」
振りかえるとそこにはディバイトが悠々と立っていた。
デ「久しぶりだな、小僧」
高「やっと会えたぜ。おい、戦争を止めろ」
デ「単刀直入に言ったな。では、戦争を止めたら貴様は死ぬと約束できるならやってやろう」
高「話した俺がバカだった。力づくできかせてやる」
高雅は双剣をディバイトに向けた。
デ「我を倒したところで戦争が終わると思っているのか。哀れだな」
高「何故だ?。総司令官が死ねば士気が殆ど消え失せるだろ。そしたら終わったの同然だ」
デ「我が総司令官だと誰が決めた?」
高「テメーの仲間がテメーを見て総司令官だとほざいたんだ。間違いないはずだ」
デ「それは本当に我の仲間か?」
高「当たり前だろ。地獄の使いだぞ。仲間以外に何がある!?」
デ「・・・・・そうか・・・・小僧、貴様は間違いをしているぞ」
高「何処がだよ!!。百点満点だろうが!!」
デ「貴様が殺したのは天国の使いだ」
高「何だって!?」
デ「貴様が殺してきたものは全て天国の使いだ。お前はそれに気づいていなかった。実に哀れな者だ」
高「そんな訳ねえ。そんな訳・・・・ねえ・・・」
デ「では、そこの使いにでも聞いてみるといい」
高「おいアリア。今の話は本当なのかよ!?」
ア「・・・・・本当よ」
高「な!?・・・」
高雅はその答えを疑った。
すると、アリアは人間の姿になって高雅の前に立った
高「な・・・・なんで嘘をついていたんだよ!?」
ア「私の本当の目的は・・・・・親を殺すことだったの・・・・・ごめんね・・・黙ってて。本当のことを言ったらコウガが協力してくれそうになかったから」
高「じゃ・・・・じゃあ、なんで他の使いを殺す必要があった!?」
ア「私達が殺してきた使いは全て父に慕っていた。それらも殺す必要があったから・・・」
高「そんな・・・」
デ「もう一度問う。我が総司令官だと誰が言った?」
高「・・・・・・」
デ「小僧、もっと疑え。全てのことを疑え。本物が欲しければ一人で全てを抱え込み、疑う続けるといい」
高「一人・・・・そうか・・最初の状態が正しかったのか・・・」
ア「コウガ、私はもう一人で大丈夫。今までありがとう。そしてごめんなさい。その償いに私を殺して。宝石を壊せば私は償われるから」
高「・・・・・・・・」
ア「宝石はこのポケットの中にあるから。コウガが全てにケリをつけて」
高「・・・・・・」
ア「コウガ!!、返事をしてよ!!。コウガ!!」
アリアは人間の姿に戻り高雅を揺すっていた。
コウガの目は焦点があってなく、まるで目を開けたまま眠っているようだ。
ア「どうしたの!?。返事をしてよ!!・・・・・きゃ!?」
突然、高雅の手がアリアのポケットに入りこんだ。
ア「な・・・・何をするの!?。まさか・・・・」
アリアは察して高雅の手を抑える。
ア「ダメ。私の宝石を取らないで・・・・・きゃ!!」
アリアの力も虚しく、高雅はアリアの命である宝石を取った。
高「ケリを・・・・・・つける」
ア「コウガ!!。目を覚まして!!。コウガーーーーーーーーーーーーー!!!」
高「お前は罪深き奴だったな」
ア「そうだね。色々と悪いことばっかりしてた。だから、それを壊して私を償わせて」
デ「ふふふふ・・・」
ディバイトは気づかれない内に何処からとなく現れた黒い炎に呑みこまれて消えた。
高「そうえば、これ壊したら俺も消えるな」
ア「天国で家族と再会させてあげる。手伝ってくれたお礼だよ」
高「これは・・・・お前の復讐物語だったのか・・・つまらねえ人生を送らされたもんだ」
ア「分かった?。人に甘えるようなことはダメなことだって。一人で生きていたコウガはよく甘えたいと考えていたんだよ。だから教えてあげたの。これが本当の人生の見直しよ」
高「ふん・・・もう人生なんて懲り懲りだ」
高雅は拳を構えた。
ア「やめて、コウガ!!。壊さないでよ!!」
アリアは必死に高雅にしがみつき、抵抗している。
ア「わかってるの!?。それを壊したらコウガだって消えちゃうことを!?」
高「・・・・・一人・・・・・」
ア「え!?・・・」
高「一人・・・・・間違いではない・・・これが・・・・・正しい」
ア「一人は間違いよ!!。人は一人では生きられないのよ」
高「疑う・・・・・全てを・・疑う・・・」
ア「それもダメ!!。信頼できる人ができなくなっちゃうよ。さっきから何を言っているの!?。コウガ、目を覚ましてよ!!!!」
高「・・・・おい、静寂の力を使うなよ。上手く壊せねえじゃねえか」
ア「ゴメン。やっぱり死にたくないって気持ちが抑えきれない。でも、それを破って。私の為に」
高「勝手な使いだな・・・ふん!!」
高雅は本気で力を入れ始めた。
ア「・・・さよなら、哀れな人間よ」
ア「だ・・・・ダメだ・・・・・・・抑えきれない」
アリアの力も既に限界を超えようとしていた。
ア「嫌だ・・・死にたくないよ・・・まだ・・・生きていたいよ」
諦めていたその時だった。
レ「アリア殿!!、コウガ殿!!」
ア「その声・・・レオ君!?。どうしてここに!?」
レ「君付けのことを言いたいが、それよりアリア殿。すぐにコウガ殿の精神を再生させるのだ!!」
ア「ど・・・どういうこと!?」
レ「コウガ殿は精神を破壊され、夢幻の力で幻覚を見ている。精神さえ回復すればきっと声が届くはずだ」
ア「わ・・・わかった。やってみる」
アリアは契約の力を発動し、高雅の精神を再生させた。
レ「後はコウガ殿次第だ。コウガ殿が幻覚に気づけば・・・」
ア「コウガ!!、聞こえる!?。コウガ!!」
レ「しっかりするのだ、コウガ殿!!」
ア「コウガは一人じゃない。私やレオ君やリュウコやリンちゃんや一応購買部の人達だっているよ」
レ「一応は酷くないか、アリア殿?」
レオの疑問を無視してアリアは言い続けた。
ア「皆コウガのことを思ってるよ。だから目を覚まして。一人で抱え込まないで!!」
ア「・・・・が・・・・・・こ・・・が・・」
高「ん、なんか言ったか、アリア?」
ア「何も言ってないよ。だから早く壊して。何時までもこんな責任を持っておきたくないよ」
高「だけど、さっきからずっと喋ってるじゃねえか。けど、この声はなんか違うって言うか・・・・」
ア「もう、早く壊してよ!!。親に会いたいでしょ!?」
高「少し黙ってろ。お前より、こっちの方が聞こえがいいんだよ」
高雅は耳を傾けた。
高「・・・これ・・・アリアの声だよな。んで、なんか呼んでるような・・・」
ア「さっさと壊せよ!!!!」
高「なっ!?」
アリアは片手を剣に変え、高雅に襲い掛かって来た。
高「こいつ、偽物か!?。だとしたら、ここは幻覚の世界か!?」
ア「気づいたか。ならば、殺すまで」
アリアが勢いをつけて高雅に突っ込む。
高「おもしれえ」
高雅はそれを避けようとしない。
ア「怖気づいたか!!」
ザシュッ!!
一つの首が宙を舞う。
それは、アリアのものだった。
高雅は瞬間でアリアの剣を持ち、そのまま首を斬った。
高「甘いな。これでも最強なもんでね。後・・・」
高雅は一息つけてから言った。
高「心配してくれる奴がいるなら負けられないしな」
デ「ならば、学校へ来るがよい。そこで待っておる」
高「ディバイト!?。何処だ・・・うお!?」
その瞬間、高雅が光に包まれた。
ア「コウガ!!、コウガ!!!!」
高「・・・うるせーな。鼓膜が破れるだろうが」
ア「こ・・・コウガなの!?。本当にコウガなの!?」
高「俺以外に何があるんだよ」
ア「よ・・・よかった・・・本当に良かった・・・」
アリアは落ち着きの安堵に涙を流した。
高「おい!?、泣くことか!?」
レ「コウガ殿、アリア殿は本気で心配してくれていたのだぞ」
高「れ・・・レオ!?。なんでここにいるんだよ!?」
レ「王の力が見えたものでな。心配になって来てみたのだ」
高「ちっこいのによくここまで来たな・・・ってうお!?、アリア!?」
突然、アリアが高雅の胸に飛び込んで来た。
ア「少し・・・このままでいさせて」
高「おい、涙で服が濡れr「コウガ殿、アリア殿は頑張ったのだ。少しぐらい甘えさせてあげてもいいだろう」・・・」
レ「それに、我が来るまでアリア殿は一人で頑張ったのだ。好きにさせてあげたらどうだ?」
高「・・・わーったよ」
高雅はアリアの頭を撫でた。
その時、手に持っているものに気づいた。
高「・・・ん、そうえば、なんで俺って宝石持ってんだ?」
ア「あ、それ私の。コウガが幻覚を見てる時に私から奪ったの」
高「俺って、現実のアリアまで殺そうとしてたのか・・・」
ア「殺すって・・・幻覚で私を殺そうとしてたの!?」
高「まあね」
ア「まあねって、そんな気軽に言わないでよ!!。私に対してどういう意味なの!?」
高「さあね」
ア「同じような言葉を並べて誤魔化さないでよ!!」
高「おいおい、さっきまで泣いてたのは何なんだよ?」
ア「それとこれとは別よ!!。いいから教えてよ!!」
高「やだね」
ア「拒否権を使っちゃダメ!!」
レ「ゴホン!!」
高・ア「あっ」
レオの咳払いで高雅とアリアのやりとりは中止になった。
レ「今はじゃれあっている暇がある時ではないと思うが」
高「そうだな。よし、学校へ行くぞ」
ア「どうして?」
高「そこでディバイトが待ってる。幻覚内であいつが言ってたからな」
レ「ならば、やることは一つしかないな」
高「ディバイトをぶっ倒して戦争を終わらせる」
ア「それじゃ、学校へ行こう」
アリアは双剣になり、レオは高雅の頭の上に乗った。
高「あっ、この王はどうする?」
ふと思い出したように気絶している王に指を指した。
ア「ほっといても大丈夫よ。多分」
レ「心配無い。見る限りではここら一体に力は見えない。しかし、ある所に集結している」
高「おそらく、学校だろうな。それじゃあ、行きますか」
高雅は速度の力で来た時同様に学校へ戻った。