絆編 その12、蘇る敵軍
高雅は指を鳴らし、Aは肩を回しながらゆっくりと歩いて力の具現体に近づいていた。
A「で、どうでるよ?」
高「好きにしろ。ただ、早急に倒さないとこの世もあの世も全てが無くなるぞ」
A「マジすか!?」
高雅の言葉に驚きを隠せないA。
しかし、高雅は冗談を言ってはいなかった。
高「マジもなにもマジだ。こうやって空間がいたるところに繋がってやがる。アリアの外に出たから力の干渉が強くなったんだろうな」
A「へー、でさ、どうやってアリアの中から力を出した訳だ?」
高「ん?。ちょいと協力してもらっただけ」
A「じゃあさ、俺達の救いの方法は無意味だった訳?」
高「なんだ、助ける方法しってたのか。まあ、今となっては無意味だな」
A「ログナ涙ワロタ」
高「じゃあ、そろそろ行くぞ」
文「まあ、待てよ二人とも」
今にも動き出そうとしたところで文夫に止められた。
高雅は邪魔されたことに少々機嫌を損ねていた。
高「おいおい、今さら手伝うのか?。散々、敵視していたくせに」
紗「もう解放されたから仲間よ。共にアリアを救うね」
高「どういうことだ?」
勇「セイクリッド壊滅、とでも言えば分かるか?」
高「・・・なーる」
A「は?、どういうこと!?」
高雅は理解できたがAは全く理解できてなかった。
Aは高雅と紗奈恵達を交互に見るが、全く教えてもらえなかった。
高「取りあえず、頼む。俺よりは戦えるだろ」
文「おいおい、ルシフェルの力を持っている奴が何をいう」
A「え、高雅って力持ってるの?」
高「お前はいい加減黙ってろ」
A「ふぁ~い」
高「・・・確かに持っているが、それでも全体的に見てお前らが上だ。だから、主力になるなり援護するなり好きにしてくれ」
勇「じゃあ、好きにする。それで問題ないだろ?」
紗「そうね。それじゃあなた、お願いするわ」
紗奈恵はハンマーになり、文夫の得物となる。
文夫は煙草を取り出して火をつけ、口に咥える。
高「最後の一服ってか」
文「最後じゃないぞ。この先も吸い続けるに決まってる」
高「本気出さねーと一瞬で死ぬぞ」
文「本気を出すために煙草が必要なんだ。ガキには分からねーよ」
高「・・・まいっか」
もうどうにでもなれと思った高雅はそれ以上追及しなかった。
すると、Aが指先で高雅の肩を突っついた。
A「来るぞ」
高雅が振り向くとAは親指を差しながら手短に済ませた。
それだけ、どういう状況かを一瞬で把握できた。
力の具現体がゆっくりとこちらに近づいて来ていた。
高「さあ、手早くやるぞ」
A「俺も!!」
真っ先に動き出したのは高雅とAだった。
Aの方が活性で速く、前に出た。
A「おりゃああ!!」
バカ正直に真っ直ぐ刀を突きだす。
力の具現体は簡単に避け、手のひらに力を溜め始めた。
A「わっほう」
それを感じ取ったAはすぐに高く跳び上がった。
だが、読まれていたのか力の具現体はしっかりとAを追っていた。
A「マジ!?」
高「落ちてろ!!」
遅れた高雅が後ろから見ており、飛んだAの上に乗った。
そして、Aを思いっきり落として自分は高く跳んだ。
それと同時に力の具現体が波動を放った。
高雅はそのまま力の具現体の後ろに回るように着地しようとしているが、力の具現体は再び力を溜めていた。
A「隙やりぃ!!」
力「ッ!?」
高雅に踏み落とされたAは着地してすぐに攻撃に入っていた。
力の具現体は高雅に注意を向いており、Aの斬撃をまともに喰らった。
A「ちっ、浅いなぁ!!」
Aは一瞬で与えた斬撃を見極めた。
Aは溜息を零しながら
高「じゃあ、今度は深く斬れ!!」
力の具現体が怯んだ所に、既に着地していた高雅が後ろから蹴り飛ばした。
丁度、Aの前に倒れるように。
A「最初からそのつもりだぜ!!」
Aが居合いの構えを取る。
高雅に背中を蹴られた力の具現体はバランスを崩してAの前にやって来ていた。
A「ふっ!!」
Aが一瞬で力の具現体の横を通り過ぎた。
そして、いつの間にかAは剣を振り切っていた。
A「またつまらぬ物をきってええええええええええええええええ」
高「まあ、なると思った」
居合いで斬ったはずの力の具現体は無傷。
そして、Aは刀を落とし、手が痙攣していた。
A「硬ッ!!、いや硬ッ!!」
高「否定になってない」
力「・・・ッ!!」
高・A「!?」
力の具現体がこちらの方を向いた。
それも、手に力を溜めながらである。
二人はすぐに気付き、振り向きにあわせてそれぞれ跳んだ。
力の具現体が溜めた波動を外れた隙に、今度は文夫が近づいていた。
文「全く、ガキはやんちゃなこと・・・」
振り向いた事で既に力の具現体の視界から文夫は消えていた。
そして、文夫はハンマーを立てに振った。
力の具現体は頭からハンマーを受け止めたが、全く動じてなかった。
文「軽く見ていたが、本当に丈夫だな」
勇「だったら、これでどうだ!!」
勇人が横からブーメランを投げた。
ハンマーを受け止めていいる力の具現体は動けなかったが動こうともしなかった。
そして、ブーメランは力の具現体の体で弾かれた。
勇「ちっ」
文「お前じゃ無理だ」
勇「んだと!!」
高「喧嘩する暇があるなら戦え」
発展しそうな二人に高雅が横から告げ口する。
すると、今度は力の具現体が動き出した。
力「ッ!!」
文「うおっ!?」
力の具現体がハンマーを押し返す。
そして、その場から消え、気付けば勇人の目の前にいた。
勇「何!?」
力「ッ!!」
力の具現体は勇人を思いっきり蹴り飛ばした。
勇人は寸前の所でブーメランを使ってガードした。
しかし、その破壊力を完璧に防げず、ブーメランは木っ端微塵に砕け散った。
高「防ぐな!!、避けろ!!」
高雅がそう叫ぶと同時に、今度は文夫の方に一瞬で近づく。
文夫は咄嗟に力の具現体の攻撃を避け、高雅とAがすぐに助けに向かう。
高「急にやる気を出すな!!」
高雅が跳びかかるように殴ろうとする。
力の具現体は高雅の方を向かずに、波動の壁で攻撃を防ぐ。
高「なっ!?」
A「まだ俺がいたのさ!!」
高雅の攻撃が失敗に終わり、今度はAが刀を振るう。
しかし案の定、Aの攻撃も波動の壁に負けてしまう。
A「くそっ!!」
二人の攻撃を防いでいる内に、力の具現体は文夫の腹を殴った。
文「かはっ!?」
文夫は血を吐き、その場に崩れ落ちる。
休む間も与えずに力の具現体は次のターゲットへと顔を向ける。
A「今度は俺ってか・・・やってやらあああああああああ」
Aは真っ向から勝負を挑んだ。
力の具現体が殴ると同時に、Aも殴りかかった。
高「バカ!!、死ぬ気かお前!?」
A「活性の限界を超えた俺の拳を受けてみろおおおおおおおおお」
最早、高雅の声など届いてなかった。
Aは今までにない程、活性を溜め、全力で殴った。
そして、Aと力の具現体の拳が当たった。
A「・・・・・・・・・・・・・」
力「・・・・・・・・・・・・・」
A「・・・・・・・・・・・つぅ」
Aの拳からいやな音が響いた。
そして、力の具現体の拳は形が崩れ、光へとなった。
力の具現体は怯んで後ずさりし、Aはその場で拳を抱えて蹲った。
A「ってええええええええええええええええええ」
そして、堪えていた激痛に声を上げた。
高「力で勝ったぞ、こいつ・・・」
A「っへっへっへ、活性には自信ありだからな」
高「イカれた活性だな。けど・・・」
高雅が力の具現体の方を向くと、既に腕は再生されていた。
高「無意味っぽいな」
A「おいおい・・・あれだけ全力で殴って無意味かよ・・・」
高「取りあえず、ログナに再生してもらえ。その間、俺が引き受ける」
高雅がルシフェルの力を込めて力の具現体を睨みつける。
Aは立ち上がって戦線から離脱した。
高「・・・・ほぉ、再生するために少しは力が減ってるみたいだな」
高雅は殺気から力が微妙に減っているのを感じ取った。
高「自爆は延期になったな。少し猶予をくれたAに感謝でもするか」
力「・・・・ッ!!」
力の具現体は高雅の話を聞かずに襲い掛かって来た。
しかし、高雅は何もしてない訳でなく、身軽な動きで脇をすり抜けた。
高「おらぁ!!」
そのまま脇をすり抜けると同時に腹を殴った。
力の具現体を吹き飛ばし、追撃に向かう高雅。
高「んっ?」
殺気を感じ取った瞬間に立ち止まり、目の前に矢が通り過ぎた。
あのまま気付かなければ高雅に刺さっていただろう。
高「あの矢・・・どこかで」
高雅は飛んで来た矢に見覚えがあった。
そして、近づく殺気に首を向けると、そこには・・・
?「久しぶりね」
高「えっと・・・誰だっけ?」
ラ「忘れるなんて酷いわね。ラビリンスよ」
高「あ~、思い出した」
昔倒した敵のラビリンスの姿があった。
さらに、次々と殺気が増え始め、高雅は周りを見回した。
高「そうか・・・ここは消滅した奴が集まる場所ってことは・・・」
高雅が悟った時、既に全方位に昔倒した敵が無数に取り囲んでいた。
デ「久しぶりだな、小僧」
ジ「テメー、命よこせや!!」
イ「おっす、小僧。元気そうじゃねえか」
エ「アソボー・・・アソボー・・・」
ウ「ほぉ、ここで会うとは思ってもみなかったのぉ」
ア「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
マ「おぉ、また決着がつけれるなぁ」
セ「まさか、再びお会いできるとは思いませんでしたよ」
ディバイト、ジゴクエー、インジ、エガル、ウルザス、アルテマ、マック、セバスチャンetc。
高雅がこれまで倒した敵がずらりと並んでいた。
高「そうだよな。消滅してるからここにいてもおかしくないよなぁ」
高雅は項垂れながら呟いた。
そして、次に首を上げた時には尋常じゃない殺気を放った。
それだけで過半数は減った。
しかし、言ってしまえば残った過半数はそれなりに強い奴らである。
高「時間がねえのに・・・ったく」
セ「殺気が強くなっていますね。しかし、この数では勝てないでしょう」
デ「面白い程成長してるな」
ウ「殺気でわしを倒せる訳ないじゃろ」
マ「おぉー、こえぇこえぇ」
強者だけが残り、徐々に戦闘態勢になる。
そんな時、空からある男がやって来た。
A「ローリング飛来だぜ!!」
Aが豪快にクルクル回りながら空中を駆け、綺麗に高雅の前で着地した。
A「実にピンチだな」
高「そう思うならどうにかしてくれ」
A「おk」
そう言って、高雅はAの上に跳ぶとAが両手を上げて、その上に高雅が着地する。
そのまま思いっきり高雅を投げ飛ばした。
狙いは当然、力の具現体が飛んで行った方に向けて。
A「よぉし、これでおkだな。さてと・・・」
Aは刀を構え、活性を込める。
A「どいつから死ぬか?」
Aは殺気を知らないが、自然と殺気を解放していた。
しかし、相手達もまたAの殺気で怯えたりはしなかった。