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絆編 その11、絆が呼ぶ希望

まず最初に仕掛けたのは高雅の方だった。

力の具現体は待ち構える事もなく、ただ茫然と浮いていた。

高雅は思いっきり跳躍して、いっきに力の具現体に近づいた。

高「ふん!!」

力の具現体の頭に本気で殴った。

触れた感触は人間のようだったが、見た目でダメージがあるか分からなかった。

具「・・・・・・・・・」

高「何とかいいやがれ!!」

今度は蹴りを入れようとした。

しかし、頭に当たる寸前で力の具現体が動いた。

力の具現体は高雅の足を掴んだ。

高「なっ!?」

具「・・・・・!!」


グキャ!!


高「がっ!?」

力の具現体は高雅の足を握り潰し、問答無用で放り捨てた。

相当な勢いで投げられた高雅は体勢を立て直せず、叩きつけられた。

ア「コウガ!!」

アリアが今にも飛び出そうとしたが、力が入らずに動けなかった。

マリアがアリアの肩に優しく手を置いて落ちつかせた。

高「つう・・・ってぇ・・」

足の骨が握りつぶされ、激痛に耐えていた。

すると、空中から力の具現体が高雅に向けて手をかざしていた。

具「・・・・・!!」

高「このっ!!」

力の具現体が何かをしかける前に、高雅がルシフェルの力を前に放った。

すると、ルシフェルの力が何かを打ち消し、高雅の周りに巨大な波動が撃たれた。

高「あぶねえ・・・」

普通に握られて骨が潰されるレベル。

その波動の力が直撃していたら、木っ端微塵になっていただろう。

それを思うと高雅は冷や汗を流した。

しかし、力の具現体が高雅に向かって急降下し、高雅は身を翻して避けた。

高雅は片足だけで立ち上がり、再び向き合う。

高「どうやら、完全に敵として見始めたな」

具「・・・・・・・・・・」

今度はお互いしかけずにジッと待ち続けた。

すると、力の具現体は動きを見せない高雅からアリアの方へ視線を向けた。

高「ッ!!、止めろ!!」

それを見た高雅がすぐに動き出した。

高雅の動きに気付いた力の具現体はすぐに高雅の方を向いた。

高雅はそのままの勢いでパンチを繰り出すも、力の具現体は簡単に避ける。

具「・・・・・・・・!!」

高「ッ!!、またか!!」

力の具現体は高雅に向けて手をかざした。

殺気を読みとった高雅はそれが先程の攻撃と読み、咄嗟に腕を掴んだ。

その腕を利用して、高雅は後ろに回って攻撃をやり過ごした。

高「仕返しだ」

隙だらけの力の具現体の背後にルシフェルの力を込めて思いっきり殴った。

さらに両手を組んで叩き落とし、床につく寸前に先回りし、今度は蹴り飛ばす。

そしてトドメに思いっきり踏みつぶし、数メートル引きずった。

高「ラストォ!!」

踏んでいる足に一瞬、力を込め、思いっきり潰した。

高雅は一旦離れて様子を窺った。

高「・・・殺気はないが・・まあ、無生物だから殺気もよく分からんが」

事前に力を感じて何をするのかは分かるが、思考があるわけでもなく、正確には動きや考えまでは読んでない。

しかし、力の具現体は完全に動きが止まり、再び動き出す様子はない。

高「う~ん・・今のうちに潰すのもありだが・・・変に倒して爆発されても困るしな」

取りあえず、様子見をすることにした。

高雅はただ立っているのも暇な為、取りあえずアリア達の場所へ向かった。

高「あのまま放置していいか?」

マ「動きはないみたいね。でも、まだ油断できないから」

ア「コウガ・・・大丈夫?」

アリアが高雅の足を見ながら問う。

高「どう見ても、この足は大丈夫じゃないだろ」

そう言って高雅は握りつぶされた足を見せびらかす。

高雅はもう慣れた顔をしているが、激痛は引いてなかった。

ア「えっと・・・」

高「別に気に掛けた言葉なんて期待してない」

ア「そっか・・・」

高「何かはっきりしないな。まるで龍子だな」

ア「?」

高「・・・何でもない。さて、あいつをどうするか・・・」

高雅は再び力の具現体を見るが、未だに起き上がってない。

殺気もなく、何もないことが変に不気味だった。

マ「特に動きは見えないね・・・でも、空間が歪んだままよ」

高「確かに。まだ動けるって事だろうな・・・」

ル「歪みは落ちついて来ているが、まだ油断はできないぞ」

三人が力の具現体から目を放さない。

すると、アリアが高雅の手を握りだした。

高「?」

ア「あ・・・いや・・なんでも・・・」

不意に感じた感触に、高雅はアリアに視線を向ける。

しかし、アリアは自分で掴んでおきながら何か言いたそうにしていただけだった。

まあ、高雅に取ってそれだけで十分理解できるが。

高「・・・成程ねぇ・・・」

ア「?」

高「何でもない。安心しな」

ア「あ・・・」

高雅はアリアの頭を撫でて落ちつかせる。

アリアはキョトンとしながらも抵抗せずに撫でられていた。

マ「・・・ッ!!、動いたよ!!」

高・ア「!!」

マリアの声に反応する二人。

すぐに力の具現体の方に視線を向け、警戒する。

力の具現体は手も使わずに浮きながら起き上がった。

高「まだ動けるか。まあ、当然だな」

高雅はルシフェルの力を用意し、いつでも動けるようにしていた。

力の具現体は起き上がるとまた空中へ浮かんで行った。

高「また飛ぶか。だったら落とす!!」

高雅は跳び上がり、力の具現体へ一気に近づいた。

すると、力の具現体は高雅の目の前から消えた。

高「ッ!?」

一瞬焦ってしまうが、殺気を使って居場所を突き止める。

高「・・・ッやべ!!」

どこにいるか分かった途端に動き出す高雅。

力の具現体が現れた場所は、他でもなくアリアの目の前だった。

ア「ッ!!」

いきなり目の前に現れ、アリアは驚く。

すると、力の具現体はアリアに手を伸ばした。

高「させるか!!」

高雅が横から力の具現体の手を掴み、そのまま背負い投げをした。

そして、追い打ちで倒れた所に腹を殴った。

高「どう・・・だ?」

また動かなくなった所を見て、高雅は様子を見る。

すると、力の具現体は震えだした。

高「?」

力「――――ッ!!、―――ッ!!」

高「い!?」

突然、空間の歪みが酷くなった。

それと同時に力の具現体から強大な殺気を感じた。

高「なんだ!?」

高雅は一旦距離を取って様子を見る。

強大な殺気に歪んだ空間は力の具現体の仕業であることは分かっていた。

さらに、一部の場所では空間が裂けていた。

マ「まずい、時間が無い!!」

ル「まだ脱出できないのか!?」

高「あいつらが来ないってことはまだ繋がらないってことだろ」

焦る三人。

だが、刻一刻と状況はよくならない。

高「取りあえず、あいつを黙らせる!!」

高雅は再び力の具現体へ近づく。

しかし、力の具現体は高雅に気付いた瞬間、力の具現体の方も接近して来た。

高「やる気か!?」

力「―――ッ!!」

力の具現体はまっすぐに殴って来た。

それを避けるのは容易で、高雅は横に避けた。

そして、がら空きの背中を蹴ろうとした。

高「いっ!?」

しかし、突然の激痛が高雅の足を襲った。

先程握りつぶされた足の方からだ。

今の今まで激痛はしていたものの、今度は耐えれられないほどの痛みだった。

高雅の蹴りは弱体し、吹き飛ばすことすらできなかった。

高「やべ・・・」

高雅がそう思ったと同時に、力の具現体は高雅の足を掴んだ。

マ「まずい!!」

ル「両方やられたら勝ち目がねえぞ」

タダでさえ片足だけでも不利だが、両方持って行かれると勝ち目はなくなるだろう。

それは、高雅だって考えていた。

高「この野郎!!」

高雅は握りつぶされる前に抜け出そうと顔面を殴った。

しかし、力の具現体は手を放さなかった。


グキャッ!!


高「うぁ!!」

そして、両足を潰された。

力の具現体はそのまま投げ飛ばさずに高雅の首を掴んだ。

高「ぁ・・・」

力の具現体は終わらせるつもりだった。

激痛に苦しむ高雅に成す術などなかった。

高(終わったか・・・畜生・・・)

完全に諦めた高雅。

どうやっても、この状況を打破する方法を思いつかなかった。

高(・・・このまま死ぬのか・・・ん?)

高雅の目線には割れた空間があった。

しかし、その空間の先にはどこかに繋がっていた。

はっきりとは分からないが、別の場所であることは確かだった。

高「・・・いや・・まだチャンスがある!!」

高雅は咄嗟に『選別の飾り』を取り出し、力の具現体に押し付けた。

力「ッ!!」

高「お前は力そのものだからな、これは効くだろう」

高雅の言うとおり、力の具現体は全く動けないでいた。

しかし、莫大な量を『選別の飾り』が受け止めていたため、罅が入り始めた。

これも長くは持たないようだ。

高「ちっ・・・間に合え・・・」

罅がどんどん大きくなり、それにつれて掴まれている手の力が上がって行く。

そして、『選別の飾り』は耐えられなくなり、砕け散った。

高「くっ・・・」

高雅は覚悟を決め、目を閉じた。

しかし、いつまで経っても首が潰れる感触はなかった。

高雅は目を開くと、そこには待ち続けていた存在があった。

A「何ビビってんだよ、主人公」

レ「待っていたぞ、コウガ殿」

エ「どうやら、ギリギリだったようだ」

フ「もう少し遅かったら危なかったです」

シ「わぁい、お兄ちゃぁん!!」

サ「まあ、結果的には無事みたいじゃ」

紗「そうね」

文「情けねえ姿だけどな」

勇「ざまぁねえな」

蓮「ログナ、こうが兄ちゃんの足が怪我してるから治して」

ロ「ラジュっ!!」

高「ったく・・遅いんだよ」

A達が全員で力の具現体を抑え込んでいた。

そして、ログナが高雅の足を治してあげた。

A「よぉし、一旦離れろ」

Aがそう言うと、皆は力の具現体から離れた。

それを見計らって、Aが活性全開で力の具現体を殴り飛ばした。

皆は一旦アリア達がいる所へと向かった。

A「ふぅ、ちょろいちょろい」

高「あれだけで倒せてるなら、俺がとうの昔に倒してる」

ア「え・・・えっと・・・」

レ「アリア殿、無事だったか・・・よかった」

フ「アリア様、ボク達を覚えてないかもしれないです・・・」

エ「事情が事情だから、仕方ないさ」

サ「しかし、あれはなんだったのじゃ?」

サミダレが力の具現体の事を聞いて来る。

高雅はそれを皆に手短に話した。

すると、Aがニヤリと笑った。

A「な~る。つまりあいつを倒せばハッピーエンドだな」

高「まあ、倒さないと強制的にバットエンドだ」

A「んじゃあ、軽くやりますか」

高「本気出せ。さもないと死ぬぞ」

そんなことを話しながらも、二人は余裕だった。

一方、紗奈恵達はマリアとルシフェルと話していた。

紗「まさか・・・マリア様がこんな所に」

マ「あら、現セイクリッドのものかな?。今はどんな感じなの?」

文「はっ、現在は我々3人と数が少なく、持続が難しいものかと」

マ「そ。じゃあセイクリッドは解散しよ」

勇「は?」

マリアの言葉に素っ頓狂な言葉を上げる勇人。

マ「だから、止めるのよ。もう正義の味方ごっこはお終い」

紗「え・・それはどういう・・・」

マ「天界を守ってよりよくするために、私はセイクリッドを作った。けど、それが今じゃ一人を閉じ込めたりしている・・・」

紗「それは・・・天界を守るためであって・・」

マ「そう。だから、そんなものは止めちゃうのよ。これからは自分で何を守るか決めていいよ」

文「つまり・・・」

マ「分かったら、早く高雅を助けて上げて」

紗「・・・分かりました」

紗奈恵達は立ち上がり、高雅の方へと向かった。

それは、自分で決めた事でもあった。

ル「お前、そんな滅茶苦茶なこと言っていいのか?」

マ「いいのよ。ずっと昔の私にまだ縛られてたら、今が勿体無いのよ」

ル「そうか」

マ「だから、これからは彼らに任せるの。私達はもう必要ないから」

ル「では、見届けるか。その彼らがこれからどうするかを」

マ「そうね」

マリアとルシフェルは高雅達を見守った。

どこか寂しげに、それでも背中を押してあげるように。

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