絆編 その10、再会
高雅は異空間に入った瞬間、棒立ちになっていた。
目の前にはアリアがノートに何か書いている時であった。
すると、アリアは書いている途中に高雅に気付いたのか、手を止めて高雅を見ていた。
珍しそうな目で見ているアリアの最初の言葉がこうだった。
ア「・・・だれ?」
高「・・・・・・・・」
高雅の心が一瞬痛んだ。
既に高雅の記憶が消えていた。
高雅は表情を変えずにゆっくりとアリアに近づいた。
高「俺はお前を殴りに来た」
ア「え・・・なんで?」
高「お前が自分勝手だからだ」
ア「もしかして・・・知り合い?」
高「ちぃ!!」
ア「ひっ!?」
高雅は怒り、拳を振り上げた。
それをみたアリアが震えながら手で顔を隠していた。
だが、高雅は落ちついたのか拳をゆっくりと下ろして溜息を零した。
高「自分が悪いことが分からないのに、殴っても仕方ねえな」
ア「?」
高「それは何だ?」
高雅はノートに指を差して尋ねる。
ア「あ・・こr「ちょっと貸せ」あ・・」
アリアに聞いたところで分かる訳が無いと思った高雅は勝手にノートを拾い上げた。
高雅はパラパラとめくり、10秒でノートを閉じた。
高「・・・・ざけんな・・・」
ア「?」
高「訳も分からないのに謝ってんじゃねえ!!」
ア「ビクッ!?」
高雅がいきなり怒鳴り、アリアは再び震えだした。
高雅はアリアの頭を鷲掴みし、顔を近づけた。
高「いいか!!。謝るってことは反省してからするものだ!!。それなのに、何も分かってないのにごめんなさいだ!?。ふざけるな!!」
ア「は・・はい!・・」
アリアは怯えながら返事をしていた。
目尻に涙を浮かべながら、一生懸命に聞いていた。
高「意味を持たない気持ちほど、腹が立つものはない。その頭に叩きこんどけ!!」
ア「はいいい!!」
高雅は本当に分かったか数秒睨みつけた後、手を放した。
高「ったく、ほんとお前はムカつくことばかりさせるな」
ア「ご・・ごめんなさい・・・」
高「どうして謝った?」
ア「わたしが・・・コウガに迷惑を掛けたから・・・」
高「そうだ。これからはちゃんと理解してから謝罪しろ」
ア「ごめんね・・・コウガ・・・コウガ・・・コウガ?」
ふとその言葉を繰り返し、目を丸くする。
そして、高雅の方を振り向くと高雅はダルそうに寝っ転がっていた。
ア「コウガ・・・サキムラコウガ・・・」
高「ん?、今さら名前を呼んで何になるんだ?」
ア「コウガ・・・・忘れたくなかったのに・・・また・・」
高「・・・・・・・」
アリアは肩を震わし、静かに涙を流し始めた。
高雅は見るに耐えれず、アリアから目を逸らした。
ア「どうして・・・」
高「?」
ア「どうして・・来たのよ・・・」
高「は?」
ア「嫌だったのに・・・コウガにみられるのが嫌だったのに・・・どうして!!」
アリアは立ち上がろうとしたが足に力が入らず、そのまま倒れた。
高雅はただ黙ってその姿を見ていた。
ア「こんな・・・酷い姿を見られるなんて・・・私・・・」
高「・・・・・・・・・・・」
ア「せめて・・・記憶だけでも・・綺麗でいたかったのに・・・」
高「・・・そんだけの理由で・・」
ア「え?」
高「そんだけの理由で俺との契約を切ったのか!?」
高雅はアリアを怒鳴り、殺気を出して睨みつけた。
高「お前、分かってんのか!!。お前のその勝手な行動で、皆が迷惑掛かっていることを!!」
ア「みんな・・・?」
高「レオやフィーラ、エクスにサミダレ、そしてシリア。他にもAやタイトだって来てるんだ。全員お前の為によ!!」
ア「え・・どうして?」
高「皆、お前が消えて欲しくないからだ!!」
ア「・・・・こんな私が?」
高「・・あのなぁ」
高雅は座り込んでアリアと目線を合わせる。
高「こんなとか言うけどな、皆気にしないって」
ア「でも・・絶対に迷惑かけちゃうよ」
高「おい、散々トラブル運んできた奴がそんなことを気にするのかよ」
ア「でも・・・すぐに死んじゃうよ」
高「・・・そんなことはさせねえ」
ア「無理だよ・・・そんなの・・・」
?「可能よ、一応ね」
高・ア「!?」
突然聞こえた声に反応する二人。
振り向いた先にはいるはずもない人物がいた。
高「え・・か・・母さん!?」
マ「また会えるなんてね、思ってなかったよ」
いたのはマリアだった。
さらに後ろには見慣れない人が立っていた。
高「何でいるの!?。完全に消滅したはずじゃ・・・てか、後ろ誰だよ」
マ「ここは消滅した者が辿り着く場所よ。それと、この人はルシフェルよ」
高「は!?」
ル「またお前と顔を合わせる事になるとは・・・」
ふと前に出てきたのはどことなく高雅の面影があるルシフェルだった。
これが元々の姿のであったのだろう。
マ「所で、アリアちゃんを助けたくないの?」
高「そ・・そうだ!!。アリアを助けたい!!。どうやったら助けられるんだ!?」
高雅が必死に聞いて来る。
すると、マリアはアリアの頭に優しく手を置いた。
マ「アリアちゃんが壊される前に、中にある力を取り出す。それだけよ」
高「そんなことができるのか?」
マ「私を誰だと思っているの?。だてに1000年前から存在しないわよ」
高「いや、普通にはよ消えろよ」
マ「ひどい言いようね。高雅も同じ1000年生きるものでしょ」
高「まあ・・・ってか、できるなら早くしてくれ!!!」
マ「分かったわよ。けど、一つだけ忠告」
高「?」
高雅が首を傾げた瞬間、マリアはアリアの頭で何かを掴み、グッと引っ張った。
マ「必ず、アリアちゃんを守りなさい」
マリアがそれを引き抜いた瞬間、空間が揺れた。
紗「ッ!?」
レ「?、どうした?」
紗奈恵が突然驚き、焦り始める。
その様子をレオは見落とさなかった。
紗「空間が・・・乱れた!?」
A「ななななな、どゆこと?」
紗「つまり、入れないのよ。アリアと高雅がいる空間に」
A「なんですとおおおおおおおおおお!?」
Aが絶叫の叫びをあげる。
その場に聞いていた全員が焦っていた。
レ「一体、何故だ!?」
紗「考えられるのは一つ。空間の中で何かがあったからよ」
レ「まさか・・・アリア殿が!?」
紗「それは考えられない。力が出て来るタイミングは狂ってないはず。なのにどうして・・・」
A「まあ、あいつが何をやってもおかしくないだろ。今は時が来るまで落ちつくとするか」
紗「え!?」
レ「な!?」
さっきまで絶叫していた本人が急に落ち着きを取り戻した。
その変わりようについて行けない二人は唖然とAを見ていた。
レ「よ・・良く落ちついていられるな」
A「ん~、あいつの事だし、どうにかしてくれるって。俺達が必要なら、どうにか俺達を使う。あいつはそう言う奴だ」
紗「よくそんなことが言えるわね」
A「あいつとは一回マジでやりあったんだ。お陰で、かなり理解できたつもりだ。取りあえず、事が来る前に皆を回復させないとな」
そう言ってAは周りを見る。
皆傷ついた状態であり、体力は全快ではなかった。
さらに、この場にいない者も何人かいるのである。
ロ「おっ、再生の出番か?俺っちなら余裕だぜ」
紗「じゃあ、ここにいる皆の回復をお願い。もうサミちゃん達の静寂も解いてるから。私は勇人と文夫を連れて来るわ」
それぞれが時が来るまでやるべきことを始めた。
Aは壁に寄り掛かって座り、ふとタイトに話しかけた。
A「・・・タイト」
タ「どうした主よ。珍しく震えているではないか」
A「へっ、バレてたか・・・そうだな。なんか怖いぜ。皆がやられるBAD ENDを思ってしまってな」
タ「主らしくもない」
A「自分でもそう思ってるよ。まぁ、そんなバカな俺について来てくれてありがとな」
タ「拙者は主を信じておる。例え過酷な道であろうと、常に主の得物となりその身を守ろう」
A「よせよ。フラグになっちまう・・・やる時はとことんやろうぜ!!」
タ「承知した!!」
二人は強く絆を確かめ合った。
一方でレオは虚空を眺めるように窓の外を見つめていた。
気付けば夕焼け色に空が染まっていた。
エ「どうしたんだい?」
そこにエクスが話しかけてきた。
静寂が解かれたのであろうか、普通に動けていた。
レ「いや・・・何でもない」
エ「さては怖いのだろう?」
レ「・・・実はそうだ」
エ「皆同じさ、急に恐怖を感じてる。僕も怖いさ」
レ「だが、これだけは分かる。コウガ殿はこの恐怖に直面しておる」
エ「不思議だね、僕もそう思っていた。だからこそ、この恐怖には打ち勝たなければならない」
レ「我はコウガ殿に会い、窮屈な籠の外に出られた。だからこそ、今度は我が閉じ込められたコウガ殿を救いたい!!」
エ「一人で抱え込まない方がいい。後ろを見てみなよ」
エクスに言われ、レオは後ろを向くとそこにはフィーラ達が立っていた。
どうやら、ログナのお陰で回復したようである。
フ「状況はログナから聞いたです。ボクだってコウガ様の役に立ちたいです」
サ「私ももう少し働きたいのぉ」
シ「あたしも頑張りたぁい」
エ「皆の気持ちは一緒みたいだな」
レ「そのようだ」
ロ「おーい、ふと思ったんだけどさ・・・」
ログナが横から乱入してくる。
皆はログナの方に視線を向け、話を窺った。
ロ「誰かさ、コウガっちにアリアを救う方法教えた?」
レ「?、ログナ殿が教えていないのか?」
ロ「え!?、あ・・・いやさ、話す前に流されたって言うかその・・・」
フ「つまり言ってないということです。使えない奴です」
ロ「どうせ俺っちは役立たずですよーだ・・・」
ログナはいじけて座り込んだ。
蓮田はログナの頭を撫でてなぐさめて上げた。
フ「それにしても、この妙な感覚は何です?」
サ「確かに、少しばかりか恐怖を感じるのぉ」
シ「・・・お兄ちゃぁん・・・」
レ「分からない。急に感じ始めたのだ」
エ「考えても仕方がないさ。僕らはコウガ君を信じて待とう」
レ「そうだな。取りあえず今は待とう。コウガ殿が必要としてくれるまで」
エクスとレオはその場に座り、事が起きるまで待ち始めた。
フィーラ達もそれを見て悟り、何も言わずにその場に座って待機を始めた。
高「何だ・・・これは・・!?」
マリアが何かを引き抜いた瞬間、空間が歪み始めていた。
そして、目の前には圧倒的な力を放つ人の姿があった。
本当に姿だけであり、目や鼻などは全くない。
マ「あれがアリアちゃんが持っていた力本体よ。今は人の形をしているけど、早くしないと暴走して皆が消滅されるわよ」
高「・・・こいつを倒せば事が終わるのか?」
マ「そうね。記憶や姿は誰かに再生してもらえば済むはずよ。ただし、アリアちゃんはもう使いじゃなくて普通の人間になるけど」
高「・・・それでもいい。アリアだけは・・・失いたくない!!」
マ「そう・・・あの力が及ぼす影響で空間が歪んでいるの。つまり、倒すまで逃げられないってことよ」
高「誰が逃げるか。あいつは絶対にぶっ倒す」
マ「ルシフェル、高雅に力を貸して上げて」
ル「分かった。どの道、このまま放っておいても私達が死ぬだけだ」
ルシフェルは自分の力を全て高雅に託した。
高「け、最後に父親らしい事をしやがって」
ル「お前が勝たなければ私が殺されるのだ。ここで消滅すれば、一体どこに逝くとなるか・・・」
高「さあな。なってから気付けばいい」
高雅は握り拳にルシフェルの力を宿す。
体が覚えているか確かめてるためだ。
高「・・・バッチリだ」
分かったところで力の具現体を見る。
表情は分からないが堂々と待ち構えていた。
高「・・・アリア」
ア「?、何?」
高「・・・何でもねえよ」
ア「?、??、???」
ふいにアリアを呼んだが、特に何もないと言って会話を終わらせた。
アリアは全く意味が分からずに首を傾げていた。
高「さあて、本気でお前をぶっ倒してやる!!」
高雅は力の具現体に向かって指を差し、宣告した。