絆編 その2、隔離
リビングに集合して策を考えていたが、誰もアイデアが思いつかなかった。
全員、頭をフル回転させるも全く閃かない。
ロ「ああ~、寿司食いて~〈ボグォ!!〉うっ!?」
真剣な空気を和ませようとしたのか、ログナが変なことを言いだした。
が、結果は高雅の腹パンを喰らうだけであった。
フ「・・・思いついたです!!」
フィーラが高らかに手を上げて主張する。
全員の項垂れていた顔が一気にフィーラを注目した。
フ「コウガ様の持っている『選別の飾り』をアリア様が使うです」
高「それは思いついて既にやっている」
フ「ええ!?」
高「どうやら、アリア自身が力を作るため、これを使っても無駄だった」
そう言って、自分の首から『選別の飾り』を取りだす。
希望を無くすかのように虚しく揺れていた。
フ「そんな・・・これはキタと思ったのにです・・・」
レ「そうか、それを使っても無理だったのか・・・」
エ「楽園の賜物が通用しないとなると、生半可な考えではダメか・・・」
蓮「ねえ、こうがにいちゃん」
高「ん?」
蓮「どこかで調べることはできないのかな。その・・・アリアねえちゃんの助ける方法」
高「調べるねぇ・・・お」
蓮田にそう言われ、アリアを救うために調べる事を出来るのか考えた。
すると、一つだけ思いついた。
高「確か、ずっと前にセバスチャンがお前の真の契約の方法を本で調べたよな」
ア「へ?」
高「って、その時はこっちが勝手に会話してたな。取りあえず、天国の宮殿に調べる場所があるはずだ」
ア「でも、一回崩壊してるし、もう無くなってる可能性も・・・」
高「じゃあ、見てくりゃいいじゃねえか。なぁ?」
ロ「・・・・・・・は?」
高雅がログナの方を見ながら聞いて来る。
ログナは意味が分からず首を傾げるが、すぐに理解した。
ロ「・・・いやいやいや。俺っち、あの宮殿なんてそう簡単に行けないって!!」
高「どうにか潜入してくれ。これも人助けなんだ」
ロ「くぅぅぅ・・・流石の俺っちも、これは・・・」
蓮「ぼくからもお願い、ログナ」
ロ「わ・・・・分かったぜよ」
こうして、ログナの潜入捜査が始まろうとしていた。
ロ「こちら、ログナ。正門に着いた。これよりミッションを開始する」
ログナが正門の前まで来ていた。
取りあえず、大きめの段ボールを被ってばれないようにしていた。
そして、段ボールを被ったまま宮殿内へ潜入しようとした。
兵「誰だ、こんな所に段ボールを捨てたのは?」
しかし、運が悪いと言うか何と言うか兵士に見つかってしまった。
兵士は段ボールを持ち上げてしまった。
ロ「!」
兵「!?、誰だきさm「強行突破ぁ!!」ぐはぁ!?」
もうふざけてられないと思ったログナは兵士を殴りとばして宮殿へ駆けこんだ。
しかし、兵士の伝達は迅速で、一瞬にして宮殿内全域にログナの侵入がバレてしまった。
宮殿内はどこもかしこも兵士だらけでログナは碌な捜索が出来てなかった。
ロ「ちくしょ~、コウガっちめ~。報酬は飯1年分だぞこれ」
そう言って、愚痴を零しながらも影に隠れながら探す。
慎重になるログナであったが、背後から忍び寄る手に気付かなかった。
トン・・・
ロ「のわあああああああああ、許してええええええええええ」
フ「うるさいです」
ロ「・・・へ?」
エ「やあ、ログナ君」
ログナの肩を叩いたのはエクスだった。
振り返るとエクスとフィーラが堂々と立っていた。
すると、一人の兵士がログナを見つけた。
兵「見つけたぞ、侵入者・・・っと、これはエクス様とフィーラ様」
エクスとフィーラをみた瞬間に敬礼し、背筋を伸ばした。
エ「彼は僕らが処分する。君等はもう持ち場についていい」
兵「し・・しかs「楽園の王の命令が聞けないとは・・・命知らずな」し・・失礼しました!!」
兵士はエクスの言葉を聞いた瞬間に急いでこの場を立ち去った。
ログナはこの様子を見て、どうも怪しいと思ったことがあった。
ロ「なぁ、最初からお前ら二人がいけば良かったんじゃね?」
フ「そんなこと、コウガ様は最初から気付いてたです」
エ「まぁ、気付いていてもさせるのがコウガ君だな」
ロ「くそぉ・・・」
フ「今さらです。とにかく、図書館でも資料室でも見つけてアリア様を助ける方法を探すです」
すると、今度は別の兵士が通りかかった。
ログナを見た瞬間に身構えたが、エクスとフィーラが目に入った時に真っ先に敬礼した。
エ「そうだ。君、資料室はどこにあるのかい?」
兵「はい、あのつきあたりの階段を上り、4階まで上って真っ直ぐ行き、3番目の曲がり角を右に曲がって5番目の右の扉です」
フ「え・・・えっと・・」
エ「うん、分かった」
フィーラは途中で訳が分からなくなったがエクスはしっかりと理解した。
兵「ところで、そこで何を?」
エ「この不届き者に勉強を少し」
ロ「おまっ!?」
兵「成程。では、そのバカにバカな真似はさせないようにしっかりとお願いします」
そう言って兵士は礼をしてこの場を去った。
ロ「おい!!、不届き者ってなんだ、おい!!」
エ「これも場所を聞き出すため、コウガ君が考えていた事だ」
ロ「コウガっちめ・・・抜け目がねーなー」
フ「それより、早く行くです」
改めて、高雅の考えに呆れるログナ。
取りあえず、ログナを連行する形でエクスとフィーラは資料室を目指した。
一方、家で待機している高雅達は容態が変化したアリアを看病していた。
アリアは再び高雅のベットで寝込んでいた。
全員が高雅の部屋に入るのも邪魔な為、部屋にいるのはサミダレと高雅だけである。
サ「それにしても、急よのぉ」
高「そうだな・・・」
アリアが落ち着いて眠っている間に会話する二人。
高「こいつが死ぬなんて考えられねえっての。またどうせ、ケロッと治ってトラブル持ってくる人生の逆戻りだ」
サ「ほっほっほ、私は皆とプリンを食べたいのぉ」
高「フィーラと食ってろ」
サ「そうじゃ、三個入りのプリンを買うのを止めてくれぬか」
高「どうして?」
サ「最後の一個で喧嘩になるからじゃ」
高「俺の分という考えはないのか!!」
自分たちの分しか考えていないサミダレに対し、怒りの声を上げる。
ついカッとなって大声を出してしまい、咄嗟にアリアの方を向いた。
すると、アリアは目を開けて高雅の方を見ていた。
高「あ、わりぃ。起こしたか?」
ア「ううん、実を言うと最初から起きてた」
サ「何じゃ、眠っていなかったのか?」
ア「正直・・・眠るのが怖いから」
高「あれか、寝たら一生起きないと思っているのか?」
ア「良く分かるね?」
高「ベタだからな・・・」
ア「?、??、???」
高「何でもない。容態は?」
ア「大丈夫。ありがとう」
高「んじゃ、待機組に報告してくる。ついでに飯でも食うか」
帰って来てから落ち着きが無く、昼ご飯も食べてなかった高雅は空腹だった。
それを悟ったアリアは申し訳なさそうな顔をした。
ア「ごめんね」
高「謝ったって空腹が解消される訳じゃない。サミダレ、看病よろ」
サ「分かったのじゃ。たらふく食ってくるといいのじゃ。それと、プリンを持ってきてくれるとありがたいのぉ」
高「やだ」
そう言って、高雅は部屋を出た。
サ「全く、素直じゃないのぉ」
ア「十分過ぎるくらい素直だよ」
サ「そうかのぉ・・・」
ア「そうだよ。すぐにプリンを持ってくるよ」
アリアがそう言った途端、ドアが少し開き、隙間からプリンが投げられた。
遅れてスプーンも投げ出され、全てサミダレに向かって真っすぐに飛んでいた。
そして、何も言わずにドアは閉められた。
ア「ほらね」
サ「アリア殿は良く見ているのぉ」
ア「そりゃぁ、いつも一緒だからね」
サ「ほっほっほ、そうじゃのぉ」
二人は笑い、場を和ませていた。
サ「まぁ、元気そうでなによりじゃ」
ア「私は大丈夫だよ。今度は本当に眠るからリビングで皆と喋ってきたら?」
サ「そうじゃのぉ・・・すまんがそうさせてもらうかのぉ」
ア「コウガには、私は平気って伝えてて」
サ「分かった」
サミダレも立ってドアを開けた瞬間、入れ替わりで高雅が入って来た。
サミダレは驚きつつも、高雅が「リビングに行け」と言って向かわせた。
ちなみに、高雅の手にはお湯の入ったカップラーメンと箸を持っていた。
そして、寝ているアリアの隣に座った。
ア「・・・・・・・・」
高「・・・・・・・・」
ア「・・・・・・・・ねぇ?」
高「ん?」
ア「もしかして、分かってた?」
高「バレバレ」
ア「・・・・はぁ」
高雅は完全に見破っていた。
まだ、アリアが苦しんでいることを。
無理して笑顔を作っていたことを。
ア「やっぱり、コウガにはバレちゃうか」
高「ま、俺に隠し事は無理だ。諦めろ」
ア「は~い」
アリアは残念そうに返事をする。
高雅はカップラーメンのふたを開けて昼食を摂り始めた。
そんな光景をアリアはマジマジを見ていた。
高「・・・なんだよ?」
食べづらくなったのか、高雅が手を止めて話しかけてきた。
ア「いや・・・美味しいのかなって」
高「食うか?」
ア「いや、いいよ。私が食べても意味ないし」
高「そうか」
そう言うと高雅は再び手を動かした。
しかし、アリアはマジマジと見るのをやめなかった。
高「・・・・食うか?」
ア「違うよ。高雅は人間じゃないのに、人間と同じ周期で空腹を感じるんだねっと今更ながら思っちゃって・・・」
高「そういやそうだな。まぁ、ログナも一緒だろ」
ア「そっか。じゃあ、私が変わってるのかな?」
高「俺はタイトが飯を食っている様子を見たことがない」
ア「そう言えば・・・」
高「まぁ、個人個人のことだ。深く考えるな」
ア「うん、そうするよ」
会話が終わり、高雅はまたまた手を動かし始める。
アリアも疑問が解けたのか天井を見つめていた。
数分間、何も喋らずに高雅は食事を終えていた。
高「それにしても、あいつら遅いな」
ア「?」
高「侵入に向かわせた奴らだよ」
ア「ああ、ゴメン。ボケてた」
高「しっかりしろよ。自分の事だろうが」
ア「ゴメン・・・」
高「・・・・はぁ、何か面白くないなー」
ア「情報が見つかるまで暇だもんね。しょうがないよ」
高「有力な情報が手に入るまで動けないとは、暇で暇でつまらね」
退屈に飽きて溜息を零していると、玄関が開く音が聞こえた。
すると、リビングに向かうかと思いきや真っ先にこちらに足音が近づいていた。
ドアが開き、入ってきたのは想像していたのとは違う人物だった。
紗「また来たわよ」
高「今度は何の用だよ?」
やってきたのは紗奈恵一人である。
紗「アリアを預かりに来たわ」
高「・・・・・は?」
ア「え?」
高雅もアリアも全く訳が分からなかった。
紗「こちらも全力で救い出す方法を探したわ。けど、その時に恐ろしい事実が分かったのよ」
高「今さら、死より恐ろしいことがあるのか?」
紗「これはアリアの事じゃないのよ。あなた達に被害が出るのよ」
ア「!?」
高「もっと意味が分からん」
紗「じゃあ、仮の話をするわ。アリアが消えてしまったとするわよ」
高雅は仮の話でもアリアが消えることに怒りを覚えていた。
しかし、アリアがそぉっと手を乗せて落ちつかせた。
紗「アリアの中にあった無数の力は共に消滅せず、抑えきれなくなって暴走してしまい、最後には・・・」
高「・・・何だよ?」
紗「軽く、この世を壊すわ」
高「い!?」
ア「この世を・・・壊す?」
紗「だから、この世でもあの世でもない異空間に隔離してもらうわ。大丈夫よ、私達が管理するから」
驚く二人を差し置いて紗奈恵は話を進める。
紗「それから、高雅は何をしでかすか分からないから、今後一切アリアと会うのを禁止するわ。もちろん、契約も破棄して、アリアに関する情報も与えないわ」
高「ふざけるな!!。勝手に決めるんじゃねえ!!」
紗「それと、アリア自身もこれから影響が出始めるわよ。記憶があいまいになったり、体が動かなくなったり・・・」
ア「え!?」
高「それが何だってんだよ!!。大体、アリアが死ぬわけねえだろうが!!」
ア「・・・・・・・・・・」
紗「高雅。アリアの体は崩壊を始めているわ。今は目に見えないけど、思い当ることがあるでしょ?」
高「それは・・・」
確かにあった。
先程、アリアはエクス達が資料を探しに行っている事を忘れていた。
単なるボケだと高雅は信じたいが、先程の話を聞いて疑心暗鬼になっていた。
ア「あの・・・私、行きます。異空間に」
高雅が迷っている隙に、アリアが勝手に決めだした。
高「お・・・おい、何勝手に決めてんだよ!!」
ア「ゴメン・・・けど、私は―――」
アリアは何かを言いかけたが何も言わずに目線を逸らした。
そして、契約の紐を出し、高雅の前で断ち切ろうとした。
高「おい、止めr〈ガッ!!〉ぐっ!?」
高雅はすぐに止めさせようとするも、紗奈恵に取り押さえられた。
その隙に、アリアは紐を思いっきり引き千切った。
ベットから立ちあがり、アリアは紗奈恵にあることを言った。
ア「サナエさん、コウガを気絶させてください」
高「テメェッ!!」
紗「・・・分かったわ」
そう言って、紗奈恵は高雅の腹を殴り、壁に突き飛ばした。
容赦をすれば気絶しない程、高雅は頑丈の為、全く容赦しなかった。
その為、高雅は声を上げるまでもなく気絶した。
紗「・・・これでいいのね?」
ア「はい・・・」
紗奈恵は目の前で空間を開き、アリアを連れていく。
アリアは空間の入口で振り返り、高雅を見つめた。
ア「・・・さよなら」
雫を零しながらも、アリアは別れの言葉を掛けて、空間へ入った。
そして、高雅の部屋には寂しさを語る静寂が訪れた。