修学旅行編 その18、帰宅
次の日の朝。
緑淵の(高雅を除く)生徒達はロビーに集められ、最後のオリエンテーションが行われていた。
校「え~、色々とありましたが誰一人掛けることなく、最後まで存分に―――」
校長の変わらない長く苦痛な話が始まる。
流石に貴重な時間を潰したくないためか、生徒全員が猛反発し、話は途中で終わった。
生徒達は順番にスキー・スノーボード用具を取りに行き、そのままゲレンデへと進んで行った。
待っている生徒達はまだかまだかとただ焦っているばかりであった。
たった、一人を除いて。
B「どうした、A。やる気がなさそうだな」
A「ふぁ~。俺は昨日、働き過ぎて疲れてるんだよ~」
高雅並みにダルそうに欠伸をするA。
目を擦りながらも必死に目を開けている状態だ。
B「大変だな」
A「お前、他人事のように・・・」
C「他人だろ」
A「友達と他人は物凄く違うぞ、バカヤロー」
D「け、レギュラーになった途端に上から目線か」
A「おま・・・話し聞いてたか、バカヤロー」
E「ほら、さっさと行くぞ、糞野郎」
A「性質、悪ッ!!」
色々と話している内にA達の番になり、素早く準備を済ませてゲレンデへと出た。
最後の日の予定は自由に滑る事である。
生徒全員が自由に行動し、時間一杯まで好きなように滑る事が出来る。
しかし、先生達はそこまで練習が出来てないためちゃんと滑れるか不安があった。
不安に駆られながらも生徒全員を見守るように傍を滑ることにした。
意外なことに、生徒の殆どが滑れるようになっており、先生達の不安は解消された。
B「イエー、ハッハー」
C「YAHHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」
D「ぶるああああああああああああああああああああああ」
E「・・・なぁに、気にする事はないさ」
購買部組もいつものテンションで滑っていた。
しかし、最もテンションが高いはずのAが物静かに滑っていたのは意外だった。
A「スイー」
B「おりゃぁ!!」
A「おぶっ!?」
Bのスキー板がAの後頭部を殴り、Aは顔面から雪へ埋まった。
B「テンション上げやがれえええええええええええ」
A「悪い。本当に疲れてんだ・・・休ませてくれ」
Aは雪に顔を埋めながら喋っている為、殆どBの耳に聞こえてなかった。
BはAの足を掴んで引っ張りだすと、そのままリフトへ持って行った。
中腹まで上り、AとBの他に既に到着していたC~Eまでいた。
C「よぉし、もう一度行くぞおおおおおおおおお」
B「うっしゃあああ・・・ぉん?」
いざ滑ろうとした瞬間、Bが何かに気付いたようだ。
それに伴ってC~E達もBの様子に気付いた。
D「どったの?」
B「・・・なぁ、あっこに可愛い子がいるぜ」
E「あんな厚着で良く分かったな」
B「俺は美女と野獣の区別は出来るのさ」
C「そりゃ、出来なかったら視覚障害だろ」
当たり前な事をCが言う。
すると、Bは彼女のもとへ向かい始めた。
それに続いてC~EもBについて行った。
タ「主よ、体の具合はどうだ?」
誰もいなくなった所でタイトが話しかけてきた。
普段、無口なタイトでもAの事を心配しているのだ。
A「はは、心配するな。ぐっすり眠れば治るさ」
タ「では、何故睡眠を取らぬのだ。体に毒だ」
A「いやいや、皆に余計な心配を掛けさせたくないだろ。まぁ、今頃、高雅は爆睡してるだろうけど・・・」
高雅は元々の性格のお陰で勝手な行動をしても何も思われない。
しかし、Aはそう言う訳にはいかない。
Aが自分勝手な行動をすると流石に不審に思われるため、心配かけさせないようにしているのだ。
A「お前の活性があれば今日ぐらいは乗り切れるって」
タ「拙者の活性も昨日の事で弱くなっておるのだ。あまり期待はできん」
A「大丈夫。俺は・・・どうにか・・・」
既に睡魔に負けそうな状態である。
首がコクコクと勝手に頷き、瞼がいつもより数倍重かった。
高「よくもまぁ、スノボーする気になるな」
すると、後ろから高雅が話しかけてきた。
しかし、高雅の姿は普段着で厚着もしていない。
さらにAの感覚で偽物の高雅と気付くのはさほど時間が掛からなかった。
A「どった?」
高「昨日はよく頑張ったから、これやる」
高雅が差し出したのは茶色いビンに入った飲み物だ。
A「オロナミ○Cですね、分かります」
高「いいから飲め」
A「おぶ!?」
高雅はビンごとAの口に放り込んだ。
Aは口の中で器用に液体だけ飲んでビンを吐きだした。
A「・・・・・・お?」
高「俺が作った活性の元気ドリンクだ。今日限り元気は出る」
A「おいおい、お前も疲れてんだろ?」
高「気付いていると思うが俺は偽物だ。本物は寝てる」
A「いいよなぁ。お前はそんなことができるから」
高「普段の行いがいいからな」
A「ねーだろ」
高「まぁ、俺の役目は終了だ。そんじゃ」
高雅は片手を上げた瞬間、雪に化した。
A「・・・よっしゃあああああああ、滑るぞおおおおおおおおおおおお」
いつものテンションに戻ったAは一人、楽しく滑り始めた。
そのバカ騒ぎを見たB達はナンパを止め、Aの所へと向かった。
一方、部屋で爆睡している高雅はふと目が覚めていた。
高「ふぁ~、良く寝た」
ア「おはよう」
既に起きていたアリアが挨拶をする。
高雅は時計を見ると丁度午後前だった。
スキーが終わる丁度1時間前である。
高「さぁて、顔洗って帰る準備でもするか」
ア「スノボーは楽しまないの?」
高「俺は寝る方が楽しいんだ」
ア「全く・・・」
高「―――っと、その前に聞きたいことがある」
ア「ん?」
高「勝手に真の契約をして何をした?」
ア(ば・・バレてる!?)
アリアは正直に高雅に話した。
数時間前の事だった。
偶然、窓の外を見ると辛そうにしているAの姿があった。
その為、協力しようと思ったアリアは勝手に真の契約をして活性で作った元気ドリンクを作り、創造の高雅に渡させたのであった。
それを聞いた高雅は『このお節介が』と言うだけで何もしなかった。
アリアは心の中でホッとし、高雅は顔を洗いに向かった。
高雅が顔を洗っている内にアリアは少しだけ片づけの準備を手伝った。
そんな時、一枚の紙を見つけた。
ア「あれ、何だろう、これ?」
広げて見ると文字が書かれており、それが手紙だと気付くのは容易だった。
ア「・・・・・!!、コウガ!!」
アリアはざっと見た後、すぐに高雅を呼んだ。
高雅はうるさそうに思いながらもやって来た。
高「うるせぇな。何だよ?」
ア「これ見て」
アリアが手紙を高雅に渡す。
高雅は一秒だけで見終わって中身を理解した。
高「・・・わざわざ手紙まで書いておくとは」
差出人は紫理奈と空のものだった。
手紙には感謝の気持ちが綴られており、高雅は呆れていた。
高「何度もお礼を言いやがって・・・」
ア「でも、文を見る限り本当に感謝してるみたい」
高「さっきも言っただろ。こういうのはお節介だ」
ア「本当は嬉しいくせに」
高「何かいったか?」
ア「いや、全然」
実際は聞こえていたが、わざわざ反応するのも面倒の為、簡単に終わらせた。
高雅は再び準備に取り掛かった。
高「あれ、タオルが一枚足りないぞ?」
ロ「それなら俺っちが持ってるぞ」
高「ほい、どうも」
ログナが持っていたタオルを受け取り、何事もなかったかのように片づけを始める。
何も反応しない高雅に対し、ログナは少しだけ眉をひくつかせていた。
ロ「・・・・・・・それだけ?」
高「それだけ」
ロ「ふざけるなああああああああああああああ」
ログナが激怒し、高雅の首を掴み上げる。
ロ「正直に言え、忘れてただろ!!。俺っちのこと、忘れてただろ!!」
高「ああ、忘れてた。昨日は色々あったからな」
ロ「お陰で変な濃い青色の制服を着た正義感たっぷりな人達に連れて行かれそうになったわい!!」
高「知るか。いつまでも寝てるお前が悪い」
ロ「無茶言うなよ!!。あんな状況で気絶したのをすぐに起きろなんて無理だろ!!」
高「戦場で寝る奴は真っ先に死ぬ。よく覚えておけ」
ロ「なに、教官染みたことを言ってんだよ!!」
ア「まぁまぁ、落ち着いてよ」
ロ「アリアっちも忘れてただろ!!」
ア「え・・・ああ・・・・うん」
ロ「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお」
アリアにすら忘れられ、さらに叫び出すログナ。
はっきり言って高雅に取っては耳障りしかなかった。
高「そういや、あえて聞かなかったが蓮田はどうした?」
ロ「・・・・・・・・・ア゛!!。昨日から会ってない!!!!」
ログナの顔が一気に青ざめ、凍えているかのように体を震わせた。
ロ「やべぇよ・・・滅茶苦茶心配してるよ、きっと・・・俺っち、大罪を犯しちまったよ・・・」
高「今すぐにでも会いに行ってやれ」
ロ「レンタああああああああああああああああああああああああああ」
ログナは叫びつつ真っ先に飛び出して行った。
高雅は思い通りとニヤリと微笑を零した。
片づけの準備に戻ろうとしたが、既にアリアが準備を終わらせていた。
視線に気付いたアリアがニコリと笑った。
高「ご苦労」
ア「どういたしまして。それにしても、ログナって何時でも現れるけど、ちゃんと近くにレンタ君はいるのかな?」
高「さぁ?。もしかしたら、常時、真の契約してるのかもな」
なんて冗談を言いつつ高雅は鞄を持ち、アリアはブレスレットになった。
そして、ロビーに着いた頃には既に他の生徒達が並んで出発式が行われていた。
それに混じって高雅も列に入った。
先生達は高雅の事を睨んでいたが何も言わずに話を進めた。
先「・・・それでは、バスに乗ります。最後にホテルとインストラクターの方々にお礼の挨拶を述べましょう」
生徒達は生徒会長である凛の号令で一斉にお礼を述べた。
そして、順番にバスに乗り込んだ。
来た時と逆でバスに乗った後は新幹線に乗り、一気に緑淵まで向かった。
高雅はバスの間も新幹線の間も死んだように眠り続けていた。
行く時とは違い、何も事件に関わることはなかった。
無事に緑淵駅に着いた緑淵高校の皆は駅で解散し、それぞれの帰路へと向かった。
高雅も同じように帰路についていた。
龍「こ・・高雅君」
不意に声を掛けられ、高雅は立ち止まって振り返る。
そこには心配そうに高雅を見つめる龍子の姿があった。
高「何だよ?」
龍「その・・・今回の騒動・・・高雅君が・・・終わらせたの・・・?」
高「・・・まぁ、5割当たってる」
龍「怪我・・・しなかった・・・?」
高「・・・したが治した。俺だったら簡単な事だ」
龍「そう・・・解決してくれて・・・ありがとう・・・・でも・・無理・・・しないで」
高「俺がずっと寝ていたら騒動はどうなっていた?」
龍「それは・・・」
龍子は答えることができなかった。
高雅がいなければ警察がいる。
しかし、そんな当たり前な事が通用するような騒動じゃなかったのは龍子も理解していた。
高「俺だって無理はしていない。安心しろ」
高雅はそう言って龍子を残し、去って行く。
龍子は遠くなる高雅の背中を見つめ、夢に声を掛けられてふと我に帰り、夢と共に帰路に立った。
高「ただいま~」
ア「ただいまー」
遂に到着した我が家。
帰った途端に全員が玄関に出迎えた。
レ「無事か!?」
フ「変な奴に遭遇してないです!?」
エ「何か、妙なことが起こらなかったかい?」
サ「犠牲はなかろうのぉ?」
シ「楽しかったぁ?」
高「一斉に喋るな!!」
ア「ははは、皆も元気してた?」
高雅は耳を塞ぎながら叫んでいた。
アリアはブレスレットから人間の姿になり、久しぶりの再開を喜んでいた。
その後、お互いに起こった事を話し合った。
高「やっぱり、そっちも何か来たか」
レ「やはりということは、分かっていたのか?」
高「まあな。大した事はなかっただろ?」
フ「余裕です」
エ「確かに、歯ごたえはなかった」
ア「楽勝って感じだね」
高「感じじゃなくてそうなんだろ」
サ「そうじゃな」
高雅の言葉にアリア以外の全員が頷く。
取りあえず、お互いに襲われたりもしたが無事に顔を合わせることができ、よしとした。
レ「奴らは何回かに分けて襲って来たものの、そのつど撃退をした」
フ「今頃、諦めて天国の隅で丸まってるです」
高「ざまぁwwとでも、言っておくか」
ア「ちょっと可哀そうかな・・・」
高「勘違いで人殺しをする連中が?」
ア「・・・・ゴメン、やっぱり同情しない」
高「それが正しい」
高雅に言われ、すぐさま訂正するアリア。
天使達涙目である。
高「取りあえず、俺は寝る。休日も全部寝る」
フ「それは寝過ぎです」
ア「そうだよ」
高「うるさい」
高雅は問答無用で自分の部屋へ向かう。
アリアはやれやれと思いつつも、大人しく行かせて上げた。
ア「それじゃ、寝るにはまだ速いし、何しよっか?」
フ「スマXです!!」
エ「フィーラ君は最近、それにハマっていて・・・」
レ「我々じゃ手に負えないのだ」
フ「どんどん掛かって来いです!!。リンチされても負けないです!!」
ア「強気だね、フィーラちゃん。それじゃ、やってみようかな」
シ「あたしもするぅ!!」
アリア達はゲームで時間を潰すことにした。
こうして、高雅達の修学旅行は無事に終わり、また皆と笑いあう日々に戻ったのだった。
修学旅行編 終
★おまけ★
これ読んでいるころ、私達は既にどこかに消えているはずです。
・・・文を書くと、少し丁寧になるわね。
ゴホン、私達は組織から落とされ、三人で仲良く研究していました。
それでも、私は気付いたのです。
これは間違った研究をしているのではないかと。
でも、姉様は薬を作っている時が一番幸せそうだったから、私は止められなかった。
空も一緒だったみたいね。
姉様の研究が上の者に利用されているなんて事を言えなかったからね。
でも、あなたのお陰で全てが水に流された。
これはいい意味で言ってるのよ。
姉様の犠牲は大きいかったものの、最後まで姉様は尊敬する立派な人だった。
私もそれに負けないようにどこかでひっそりと頑張るつもりよ。
もちろん、空と一緒にね。
だから、私達は再スタートをできたわ。
本当に感謝しているわ。
ありがとう。ありがとう。
紫理奈&空より
最後のありがとうは筆記の形が微妙に違い、二人が別々に書かれたものと思われる。
正直言います。
自分、途中でどう終わらせるか完全に迷いました。
そして、この結果。
情けなすぎる・・・
後、もう少ししたらこの小説は終わると思います。
実際、夏ぐらい終わるかと思いきや、意外と伸びていつになるのか分かりませんが1年はないはず。
作者は気まぐれ過ぎて自分でも分かりません。
取りあえず、投げ出すことは絶対にしません。
ので、温かい目で見守るなり、ザックリ切り捨てるなどしてください




