修学旅行編 その13、誰かのために
睨みあう二人と二人。
一番先に出たのは意外にも高雅だった。
それを見てから紫理奈と空も動き出し、Aは動かなかった。
高「でりゃ!!」
高雅は様子見も兼ねて、普通に斬りかかった。
しかし、詩智安がAにやっと時と同じように空と紫理奈と空は指一つで流し、瞬時に反撃に出ようとした。
高雅も様子見だったため、後ろに跳んで簡単に避ける。
そして、入れ替わりでAが空に突っ込んできた。
A「おらああああああああああああああああああああ」
空「ん・・・」
空は両手でAの斬撃を受け止めた。
足が床に少し埋まるも、空のダメージはゼロだった。
さらに、受け止めた腕も溶けていない。
A「ヒュ~、流石ロリだな。うん、強い強い」
などとバカな関心をしている。
空「本気・・・じゃないと・・・死ぬよ・・」
なめてかかったAを見て少しばかり怒りを見せる空。
A「悪いが本気になれない。俺はロリを斬るつもりはないのでな」
空「じゃあ・・・これは・・・」
空は今まさに受け止めている状況を説明させようとした。
ちなみに、決して峰打ちではない。
A「いや~、ロリを信じるものなら刃でも大丈夫かと」
空「・・・・あなた・・・なめてる・・・」
A「うおぉ!?」
空は瞬時に刀を持って後ろを向き、背負い投げをする。
Aは無様に宙を舞い、地面に叩きつけられる。
空は手を放し、追い打ちで目の前に倒れたAの腹を蹴り飛ばした。
A「ぶはっ!!」
高「何やってんだ、あいつ」
紫「よそ見はダメよぉ」
紫理奈は高雅に拳を連続でくり出す。
それも、秒速0.1秒の神速である。
高雅は避けつつ反撃の隙を狙っていた。
高(とんだドーピングだ。最早人間じゃないな)
などと思いつつも両手に活性を込める。
高「へ、少しは面白くしてやる」
高雅は紫理奈の拳を自分の拳で受け止めたのだ。
紫「へぇ、骨が無くなるわよぉ」
高「どっちがだ?」
次の瞬間、高雅と紫理奈の拳のぶつけ合いが始まった。
目に捉えられない早さで拳で拳を征していた。
どちらも一歩も引かず、戦いは停滞していた。
高(くそ、どんな手だよ。普通はバラバラだぞ)
高雅の活性が籠った拳と紫理奈の薬によりできた拳はほぼ同じだった。
そして、先に限界が見えてきたのは高雅の方だった。
高(ちくしょう、鈍くなってきやがった。痛みの所為か・・・)
流石に、いくら活性しているとはいえ、ダメージをゼロにすることは出来ない。
だが、相手の紫理奈はまだまだ衰えてはいなかった。
紫「ふふっ、甘いわよぉ」
高「ッ!?、やべっ!!」
ボゴッ!!
一瞬遅れた高雅の隙をついて紫理奈の拳が腹を捉えた。
瞬時に防御に専念したものの、高雅は絶大な痛みと苦しみに襲われ、怯んでしまった。
高「うぐっ!!」
紫「私のターンねぇ」
そう言って、紫理奈は神速の拳を高雅の全身に浴びせた。
最後の一撃の回し蹴りで高雅は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
ア(コウガ!!、大丈夫!?)
高「い・・・っつ・・・」
何とか動けるがダメージは計り知れないほどだ。
余裕を見せながら紫理奈はゆっくりと高雅に近づいた。
紫「どぉ?、こうさぁん?」
高「けっ、誰がするか」
紫「友達のよしみでぇ、降参するなら管理に入れて上げてもいいわよぉ」
高「いーや。そんな危険なチームに入るか」
紫「一緒に世界を見かえさないのぉ?」
高「世界なんて知るか。俺は今後の安眠の為に戦うだけだ」
ア(相変わらず、規模が小さなぁ・・・)
紫「そぉ、それじゃ仕方ないわねぇ」
紫理奈は急に加速し、高雅もそれを読んでいたのかすぐにその場から離れた。
高雅の元いた場所は紫理奈の拳によって粉々に砕かれていた。
紫「仕込み済みよぉ」
高「こっちもだ」
高雅がそう言った瞬間、紫理奈のいた場所が突然、爆発した。
そして、高雅の逃げた場所には空が迫っていた。
空「ごめんなさい・・・」
空は高雅の腹を殴り、そのまま壁に叩きつけた。
A「待てこらあああああああああああ」
傷だらけのAが空に向かって全力疾走していた。
空はAを見るとすぐに逃げ始めた。
Aは追わずに高雅の無事を確認していた。
A「おい、生きてるか?」
高「生憎この様だ。ったく、なんて奴らだ」
高雅は壁に埋まってある体を引き出し、服を叩いて汚れを落とす。
A「んで、このまま押されてゲームオーバーか?」
高「お前はそうだとして、俺は違う」
A「おいおい、これはチームだぜ。主人公が死んだら強制的にゲームオーバーだろ」
高「ゲームとリアルを一緒にするな。取りあえず、このまま負けるつもりはない」
A「だろうな。主人公は最初は負けていても最後は勝つからな!!」
高「けっ、ほんと主人公が好きだな」
A「当たり前よ!!。それが生きていく価値だからな」
高「価値なんて睡眠だけで十分だ・・・・・行くぞ」
A「あいよ」
高雅は双剣を構え、Aは空の後を追った。
紫理奈の方を見て、高雅は余裕を見せる。
高「来いよ。俺はまだまだやれるぜ」
紫「ふふふ、面白いわねぇ」
煙の中から紫理奈の姿が現れる。
高雅は挑発気味に人差し指をクイクイッと曲げる。
紫理奈はまた一瞬で高雅に近づいて腹を殴ろうとするも、高雅はそれを受け止める。
紫「爆弾を仕掛けるなんて不思議な事をするわねぇ」
高「俺は特殊だからな」
紫「ほんとぉ、面白いわねぇ」
高「余裕もそこまでだぜ」
高雅はまた爆破の力を溜め始めた。
一度喰らった技を見抜いているのか紫理奈はすぐに高雅から離れた。
しかし、高雅は紫理奈の腕を掴んで逃がさないようにした。
高「吹き飛ぶ覚悟はできたか?」
紫「道ずれするつもりかしらぁ?」
高「いや、どっちが消し飛ぶか持久戦といこうぜ」
高雅は床に剣を刺し、溜めていた爆破の力を発動した。
紫理奈は反射的に高雅の腕を掴み、爆風に耐える準備をした。
そして、高雅と紫理奈の間に巨大な爆発が起きた。
高「くっ・・・ぐぐ・・・」
紫「うぐ・・・・・・」
二人とも、巨大な爆風の中、吹き飛ばされないように必死に耐える。
お互い、高熱の爆風を浴び、体力は消耗していた。
だが、二人の体力よりも先に潰れてしまう物があった。
紫「こんなことしてぇ・・・このホテルはどうなるのぉ!?」
高「安心しろ。壊れることはない」
高雅は建物自体に活性を施してあり、この爆風で壊れる事はなかった。
しかし、高雅も自分の活性を超える力を出さなければ紫理奈に勝つことはできないと分かっていた。
紫「くっ・・・」
高「辛そうだな。俺はまだまだいけるけど」
紫「あなた・・・何か・・・したのかしらぁ?」
高「まぁな。純粋に勝てそうにないので弱らせてもらった」
実は、高雅はあの殴りあう所で常に静寂の力を送り込んでいたのだ。
その為、紫理奈の動きは鈍くなっており、体力も減少していた。
紫「小癪な真似をぉ・・・」
次第に紫理奈の握力が弱まって来ているのを高雅は感じていた。
紫「・・・くすっ、ここまでねぇ・・」
紫理奈はクスリと笑い、手を放そうとした。
しかし、高雅は突然、爆破の力を止めたのであった。
紫「え・・・」
高「もういい。命はとらねえよ」
高雅は手を放し、紫理奈を解放してあげた。
しかし、念のために静寂を解いてはいない。
紫「どういう・・つもりかしらぁ?」
高「どうもこうも、命を取る気はないだけだ。多分、あいつも空を生かしくるだろうな」
そう言って、Aが追いかけた方を見ると、Aが空を負ぶりながら手を振っていた。
どうやら、あちらもケリがついたようである。
A「いやぁ、俺の活躍シーンを見せてやりたいところだったぜ」
高「あっそ。取りあえず、そいつはそこに置いて次行くぞ」
A「あいよ・・・って、主人公に偉そうに命令するな!!」
高「ちょっと前に戦って勝ったのは俺の方だろ。だから、実力部門とやらは俺の勝ちだ」
A「へーん、それでも2対1で俺の勝ちだ!!」
高「あんなの認める訳にはいかねえ。特に、知識の部分は認めねえぞ!!」
A「負け犬の遠吠えか。カッコわr〈ボゴッ!!〉オフゥ!?」
高「調子に乗るなよ・・・テメェ」
高雅の怒りが頂点に達し、Aの顔面を殴った。
さすがにやり過ぎたのかと思ったのかAは少し後悔していた。
A「いや・・・そうだな、うん、再試験てと言う事で」
高「そんなことはどうでもいいんだよ。俺はテメェが偉そうにしているのに腹が立ってんだよ!!」
A「いやー、性格上、仕方ないよ」
高「ブチッ」
遂に、高雅の堪忍袋の緒が切れた。
何故か高雅とAの戦いが始まってしまったのである。
ア「何してるの二人とも!!。今はシチアちゃんを止めるのが先でしょ!!」
アリアの喝で喧嘩が一瞬で止まる。
高「・・・しゃーねぇ、これはお預けだ。後で叩きのめしてやる」
A「ふぅ、助かったぁ」
紫「・・・今のぉ、アリアの声かしらぁ」
高「・・・説明は後だ。取りあえず、お前らは後で警察にでも突き出してやる。詩智安を止めた後にな」
紫「そぉ、分かったわぁ。でもぉ、姉様はとても強いわよぉ」
高「同じ薬を飲んだ奴に負けるかよ。行くぞ、A」
A「おいおい、ログナはどうするんだ?」
高「ここに置いてろ。持って行ったって邪魔なだけだ」
A「ラジュゥ!!」
Aはビシッと敬礼し、高雅の後を追った。
その後ろ姿を見ながら、紫理奈は眠っている空の頭を撫でてやった。
紫「彼らなら・・・きっとお姉様を止められるかもぉ」
そう、呟いたのであった。
★おまけ★
Aが高雅と別れ、空の後を追った後の話。
A「待ちやがれえええええええええ」
懸命に空の後を追うA。
空はさっきいた場所からかなり離れた所でやっと止まったのだ。
Aも空の前で止まり、剣を構える。
A「このロリ野郎!!。お兄ちゃんで遊ぶんじゃねぇ!!」
空「・・・・きもち・・・悪い」
変に矛盾している言葉を言いつつ、かなり危ない言葉を並べるA。
空もさすがにドン引きしていた。
A「お前、少し大き過ぎる!!。もうちょい、ちっちゃかったら許してやるのによ」
空「うるさい・・・黙って・・・」
Aのロリコンの言葉にさぞかし気味が悪く、一気に接近した。
そして、黙らせようと顔面に殴りかかった。
しかし、Aは片手で受け止める。
A「こんな小さな手で人を殴るなんて、悲し過ぎる」
空「うるさい!!・・・お前に・・・何が分かる!!」
空がいきなり乱れ始め、声が上がっていた。
そして、乱暴に殴り続ける。
Aはそれをただただ受け止めていた。
空「認められない・・・どんなに頑張っても認められない!!。そんな経験・・・お前に分かるの!!」
A「・・・・・・・・・」
空「私は・・・そんな悲しい人を・・・・助けたかった・・・・」
次第に空の拳は弱く、遅くなっていった。
最後にAを捉えたかと思ったが、その時は既にパンチではなく、ただ手を置いただけだった。
空「あの人は・・・凄い才能を持っているのに・・・認められないで・・・ずっと一人で・・・」
A「・・・・その人の為にこんなことをしているのか?」
空「あの人・・・詩智安様は・・・私の・・・初めての友達・・・だから・・・」
A「友が間違っていたら、正して上げるのも友だろ。お前ら、間違っていると気付いていないのか?」
空「分かってるよ・・・ただ、それで認められるならいい・・・」
A「・・・・そうか。なら、どうして俺を倒さない?」
空「!?」
A「俺はその詩智安って奴を邪魔しに行くところだぞ。何で倒さない?」
空「・・・・・・・・・・」
A「止めて欲しいんだろ。自分の代わりに」
空「そんなこと・・・」
A「いいから黙って頷け。それがロリだろ」
Aはさり気なく、勝手に自分の理想のロリと一生にしようとしている。
それでも空は自然と頷こうとしていた。
空「・・・・いや・・・私は・・・詩智安さんの・・為に!!」
しかし、自分の迷った気持ちに邪魔され、頷けなかった。
A「強情だな。でも、迷いがあり過ぎるぜ」
ガッ!!
空「ッ!?・・・」
Aは空の後ろ首に一撃を喰らわし、気絶させた。
そして、空を背中に負ぶり、高雅達の所へと向かった。
A「・・・こんな少女に思い込ませるとは、詩智安って奴は許さねえな」
詩智安に対する怒りを燃やし、闘争心を上げる。
そして、負ぶっている時に、さり気なく空の尻の方に手を伸ばしていた。
タ「・・・・・・・・」
A「・・・・・・・・ごめん」
タイトの殺気を受けたAは何も言わずに謝った。