最悪の贈り物編 その3、狙われた命
連れ攫われた高雅は少女に手を引っ張られて暗闇を進んで行く。
高「おい!!。どこに連れて行く気だ!?」
?「もう少しでつくからぁ」
少女はさっきから、これしか言っていない。
ずっと手を引っ張り高雅を導くだけだ。
すると、光の兆しが見え始めた。
それを見つけた少女が喜んで走り出す。
その光に包まれた瞬間、あまりの輝きに高雅は手で目を覆う。
高「くっ・・・なっ!?」
目が慣れてゆき、辺りを見渡すとそこは先程の暗闇とは違い、木々に囲まれ、綺麗な川が流れてあり、太陽が照らしていた。
高雅は想像とは全く違い、ただ茫然と立ち尽くしていた。
?「えへへぇ、ついたぁ!!」
少女は高雅の手を放して嬉しそうに駆け回る。
高「で、お前の目的は何だ?」
目的地に到着したところで高雅が少女に話しかける。
?「二人っきりだしぃ、名前で呼んで欲しいよぉ」
高「・・・・・呼べば話すか?」
高雅がそう聞くと少女はにこやかに頷く。
高雅はしょうがないと溜息を零して名前を呼ぶ。
高「・・・・じゃあ、シリア。目的は何だ?」
彼女の名前が始めて出た所で軽い説明をしましょう。
シリアはルシフェルと名もない天使との間に生まれた子である。
しかし、ルシフェルはシリアが生まれた瞬間に名もない天使を殺し、一人で育てた。
力はアリア並みに全て使え、ルシフェルの力を備えてある。
以上、説明終わり。
シ「じゃあぁ、教えるよぉ。私の目的はお兄ちゃんを覚醒させること」
高「具体的に」
シ「えっとぉ・・・お父さんが言うにはぁ・・・一緒に生活しなさいってぇ」
高「ふ~ん」
全く持って具体的の欠片もないが、シリアに聞いたところで無駄だと思った高雅はそれ以上追及しなかった。
シ「取りあえずぅ、座ろぉ」
高「・・・それもそうだな」
立ち尽くすのも何だと思った高雅は適当に地面に座った。
シ「~♪」
高「お・・おい?」
シリアは高雅の足の上に座った。
高「退け」
シ「嫌ぁ♪」
高「退きなさい」
シ「嫌ぁ♪」
笑顔で答えるシリアに高雅も流石にウザさを感じていた。
高雅は無言でシリアの横腹を掴んだ。
高「・・・・そおい!!」
シ「わぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして痺れを切らしたのか、シリアを思いっきり空高く投げ上げた。
シリアは星となり、どこかへ消えてしまった。
高「はぁ・・・」
遂に一人になれた高雅は大きく背を伸ばして頭の後ろで手を組んで寝そべった。
ふと空を見ながら自分の置かれている状況を確認する。
高「俺って・・・攫われてんだよな」
特に縄で縛られている訳でもなく、一応閉じ込められているが空気は新鮮でむしろうまい方だ。
高「皆・・・俺の事、どう思ってんのかなぁ」
実は心配をされてみたいと思っている主人公。
意外と可愛い所があるんですよ、こいつも。
高「黙れ!!」
・・・取りあえず、高雅の機嫌も損ねさせたところで、他のところへ行きますか。
アリアは皆をリビングに集め、高雅が連れ攫われた事を話ていた。
ちなみに、龍子は出撃する前に家に帰るように言っていた。
ア「――――なんだけど・・・」
レ「それは・・・本当なのか!?」
アリアは重い頭を動かし、俯きながら頷く。
エ「殺されて無ければいいが・・・」
ア「え・・縁起でもない事を言わないでよ!!」
サ「・・・・・・・・・」
静まりかえる空間。
蓮「大丈夫だよ。こうがにいちゃんは平気だよ。だって、とっても頼りになるんだよ」
ア「・・ふふ、そうだね」
蓮田の無邪気な言葉で少しだけ明るさを取り戻した。
ロ「ふい~、偉い目にあったぜぇ・・・」
そんな時、台所の方からログナがやって来た。
今の今まで高雅に粉砕されていたのだ。
粉砕される寸前に
ロ「あれ、コウガっちは?」
蓮「ログナ、しぃー!!」
ロ「?」
蓮田がログナに空気読めよと静かにさせる。
しかし、ログナにとっては全く見当がつかない。
ピンポーン・・・
A「邪魔するぞー」
突然、Aが高雅の家にやって来た。
インターホンを押して家の中の人の返事も待たず、すぐに高雅の家に侵入した。
ア「A君!?、無事だったの!?」
A「高雅はいるか?。道端でやべぇ奴に会ってきたから、その報告を一応しに来た」
ア「そ・・それが・・・」
アリアは俯いて答える事が出来なかった。
A「訳ありの顔だな。まぁ、詮索はしないでおくぜ」
ア「・・・いや、この際、A君にも知ってもらいたいかも」
A「ほぉ。んじゃ、一体高雅はどうしたんだ?」
アリアはAに高雅がどうなったのかを説明した。
それを聞いた途端、Aの目が輝きだした。
A「仲間救出のフラグじゃん!!。てか、幼女に攫われるなんて情けねえな」
タ「その者に敗北したのは誰だ?、主よ」
A「何も言えません」
ア「A君もあの子と遭遇してたんだ」
A「まぁ、こっ酷くやられたけど。畜生・・・思い出しただけで悔しいぜ。絶対、服従させt「させて、どうするつもりか?」何でもありません」
フ「今、ドスケベな事を考えていた顔をしてたです」
タ「ほう・・・少し、表に出てもらうぞ、主よ」
A「ちょ!?、既に抜刀してるじゃん!?」
タイトが問答無用で斬りかかる。
もはや、外に出るまで待てないようだ。
ピンポーン・・・
すると、また誰かが訪れた。
ア(家主がいなけど、出た方がいいかな?)
アリアは取りあえず顔だけは出しておこうと思い、玄関へ行く。
ア「はい、どちら様ですか?」
玄関の扉を少し開けて顔だけを出す。
すると、そこには顔を隠した白いローブを被った者が3人ほどいた。
その者達はアリアを見ると何も言わずに接近してくる。
ア「?、あの、家主はいないんですけど・・・」
アリアの言葉を聞いても、なお近づいて来る。
そこには殺気も含まれており、アリアは何か恐怖を感じた。
?「ラギュラバル・アリアだな?」
ア「?、天界の方ですか?」
?「質問に答えよ。ラギュラバル・アリアか?」
ア「えっ?、あっ、h「逃げろ!!、アリア!!」ッ!?」
突然、大きな声が聞こえたと同時に、空から巨大なレーザーがアリアの目の前に落ちた。
ア「きゃぁ!?」
アリアは間一髪で当たらなかったが、目の前にいた白いローブを来た者は直撃した。
立ちこめる煙の中、白いローブの者は平然と立っていた。
?「邪魔をするな」
そう言って、白いローブの者達は後ろを振り返る。
そこには、文夫率いる天界監視官の方々である。
ア「えっ!?、文夫さん!?。生きてたんだ・・・」
文夫を見て、アリアは安堵の息を零した。
文「話は後だ!!。アリア、出来るだけ遠くに逃げろ!!」
?「そうはさせん!!」
白いローブの一人がアリアに向かって手をかざす。
勇「させねえよ!!」
勇人が飛び掛かり、さっき出したレーザーを撃った。
これは勇人が破壊・消失・虚無の力を使った完全に消滅させるやべぇレーザーである。
しかし、白いローブの物は散り散りに避ける。
その隙に紗奈恵はアリアのもとへ駆け寄った。
紗「さぁ、早く逃げるのよ」
ア「で・・でも!!」
紗「でももかしこも無いの。セイクリッドがあなたの命を狙ってるんだから」
ア「えぇ!?。何で!?」
紗「逃げながら説明してあげるから、この空間に逃げるのよ」
レ「待て、話は聞かせてもらった。我々も共に行くぞ!!」
騒ぎにかけつけてきたレオ達がアリアとの行動を志望する。
紗「ええ。仲間は多い方がいいからね」
そう言って、紗奈恵は皆に空間に入るように促す。
アリアを追い、次々と空間へ入る中、一人だけ空間に入らなかった。
それは、文夫達の戦いを見ているAだった。
紗「あなた、どうしたの?」
A「いや、あの戦ってる人達に聞けば、高雅の事が分かるかもって・・・」
紗「まぁ」
紗奈恵は口を押さえて驚いていた。
普通の人間はあの戦いを見ただけで足が震え、腰を抜かす程の殺気が溢れている。
それを抑えるべく、紗奈恵が打ち消してはいるが、それでも怯えるぐらいはするはずだ。
なのに、Aは全くそれを感じず、友である高雅の事を思っていたのだ。
紗「そうね。でも、あなたもこの空間に入ってもらうわ」
A「俺もあっちで戦って、高雅の居場所を知りたい」
紗「残念ながら、高雅の居場所は私達にも分からないわ」
A「・・・そっか」
紗「その代わり、あなたはアリアを守ってくれないかしら?。あなたなら、きっと守れるわ」
A「まっかせてくだせぇ!!。俺には補正が掛かり、絶対に負けませんから!!」
Aはそう言って空間の中へ入った。
紗奈恵は一度、文夫とアイコンタクトを取って空間の中に入り、空間を無くした。
勇「どうやら、逃げれたようだな」
?「貴様ら、我々を裏切るつもりか?」
文「お待ちください。我々は他の解決方法を見出したいんです!!」
?「だから貴様らに討伐を任せた。しかし、結果は取り逃がし、最悪にもマリア様の子を連れ攫われてしまった。もはや一刻の猶予もないのだ」
文「それは承知の上です!!。ですが、マリア様はそのようなやり方を望んではいないはずです!!」
?「言ったはずだ。一刻の猶予もないと」
勇「俺達、セイクリッドの者が殺しで物事を解決するなんて、醜いやり方だな」
?「何とでも言うがいい。お前達が何を言おうが変わりはない」
文「だから、力尽くでも止めさせてもらいます」
?「愚かな奴らだ」
勇「そっちが愚かだ。このド腐れ上司が」
文夫と勇人は自分を信じ、自分より上の者に立ち向かった。
紗奈恵が創りだした空間を抜けると、そこは何もない雲の上だった。
ア「?、ここはどこ?」
紗「私の空間よ」
A「雲の上って乗れるのか?」
Aがしゃがみ込んで指の関節で軽く叩きながら言う。
叩いた所からコンコンと音が鳴り、まるで地面の様に硬かった。
紗「あら、それは雲じゃなくて、イメージの塊よ」
A「へー、そうだったのかー」
ア「・・・そうだ。紗奈恵さん、私の命が狙われていることについて教えてください」
紗「そうね、どこから話そうかしら?」
レ「では、我から聞こう。1ヶ月前の南極では何があったのだ?」
紗「その時は、私達がルシフェルの子供、名前はシリアって言うけど、そのこと激戦の末に負けてしまったのよ。それに、彼女は口にしたものを吸収する能力があるわ。それを利用して、私達の脳を食べてあなた達の居場所をつきとめようとしたけど、間一髪で記憶を抹消したのよ」
レ「成程。だが、脳を食べられてしまえば再生は不可能ではないか?」
紗「そうね。素になる物が無ければ再生は使えないわね。だから、新しい脳を創ってもらったのよ」
フ「脳を創るです!?。それだと、記憶とかはどうするです!?」
紗「大丈夫よ。こうなることは想定内だから、前もって同じ脳を創っておいたのよ。後は誰かさんに体を再生してもらって、その脳を取り付けてもらったって訳」
ア「じゃあさ、私の命が狙われてるってのは?」
紗「簡単な事よ。あなたを殺せば高雅も死ぬからよ。契約は切られていないみたいだし、高雅なら虚無で切られるって訳でもないからね」
ア「そっか。『選別の飾り』があったね」
紗「上の者はそれであなたを殺そうとしたけど、私達は反対したのよ。マリア様がそれを望んでないから」
サ「では、今度は私が聞いてもいいかのぉ?」
ア「サミダレ?、もう大丈夫なの?」
サ「安心せよ。お主らのお陰でもう殆ど回復しておるのじゃ。それに、こうなった以上、いつまでも怯える訳にはいかないからのぉ。他人と話すことはできる」
ア「そっか。良かったぁ」
サミダレの回復に心から喜ぶアリア。
サミダレだけでなく、エクスも殆ど回復しきっていた。
紗「それで、話は何かしら?」
サ「そうじゃった。敵の目的は分かるのかのぉ?」
紗「ええ、分かっているわ。シリアは高雅のうちに潜むルシフェルの力を覚醒させ、高雅を闇に染まらせる事で天界を壊滅させる事よ」
ア「そんな!?。一刻も早く高雅を見つけて助けないと!!」
紗「それだけど、高雅の居場所の目星がついたわ」
ア「本当!?」
紗「本当よ。さっき天国に移動しようとしたのだけど行けないから、あえて私の空間を創ったのよ。これがどういう事か分かるかしら?」
ア「え・・えっと・・・」
紗「あなたと高雅の距離は常に500メートル以内。しかし、お互いが天界と現世の間ではそれが無効になる」
ア「そっか!!。私が天国に入れないなら、高雅との距離が500メートル以上って事か!!」
紗「そう。つまり、高雅は天国のどこかにいるのよ」
エ「成程な。いっきに探す範囲が縮まったな」
蓮「それじゃ、こうがにいちゃんは見つかるの!?」
ロ「それが、時間の問題って訳だぜ」
紗「・・・・・でも、こっちも時間の問題ね」
そう言って、紗奈恵が遠くを見ると、割れた空間の先に先程の白いローブの者達がいた。
紗「あなた達はとにかく逃げなさい。あいつらの相手は私がするわ。それから、A君、皆を守りなさい」
A「おう!!」
紗奈恵はそう言って腕をハンマーに変えて構え、逃げ道の空間を開いた。
Aは気前よく返事をし、皆を連れて空間の中へ入って行った。
紗「さて、時間稼ぎの時間よ!!」
紗奈恵は一人で上の者に立ち向かった。
自分のやっている事が間違っていないと信じ込みながら。




