最悪の贈り物編 その1、もう近くにいる贈り物
あの事件から一ヶ月が経過していた。
緑淵高校は終業式を終え、冬休みに突入していた。
だが、高雅に取って、ずっと家で待機しているので端から冬休みみたいなものである。
そんな余興に浸ることは出来てないが。
高「おーい、入るぞー」
高雅は扉をノックしてから開ける。
それもゆっくりと開けて刺激しないように。
手には飲み物とプリンを乗せた御盆を持っていた。
エ「おお・・・コウガ君か」
サ「ほっ・・・」
エクスとサミダレが高雅を確認すると安堵の息を零した。
この一ヶ月でようやく喋る事は出来たのだ。
しかし、義妹情報を聞き出そうとするも、思いだした瞬間に恐怖で暴れ出すため、義妹の事は禁句にしてある。
高「ほら、エクスにはホットココア、サミダレにはプリンだ」
エ「おぉ、ありがとう」
サ「す・・・すまんのぉ」
高「いいってことよ、別に。それよりも、精神的に落ち着いて来たか?」
エ「あ・・ああ、大分落ち着いて来たさ」
サ「すまんのぉ。いらぬ心配をかけてしもうて」
高「だから心配じゃねえって。ついでだ、ついで」
高雅は自分用に入れたコーヒーを飲みながら誤魔化す。
すると、扉をノックする音が聞こえた。
その音にエクスとサミダレが驚くが、しばらくしてから声がする。
ア「私、アリアだよ。入ってもいい?」
高「―――っと、言う事だけど、どうする?」
エ「ぼ・・僕は構わない」
サ「私も・・いいぞ」
高「おーい、やっぱダメだぞぉ」
ア「こらー、嘘ついても無駄だよ。ちゃんと聞こえてるよ」
アリアは問答無用と扉を開けて入って来る。
怒ってはいたが、ちゃんと二人を気遣っており、声量はかなり落としてある。
ア「全く・・・それより、二人の調子はどう?」
エ「ああ、大分、回復してるさ」
サ「わざわざ心配してくれて感謝してるぞ」
ア「当然だよ。だって、家族だもん」
高「じゃあ、家族じゃなければ心配しないんだな」
ア「え!?・・ちょっ!?、そう言う意味じゃないよ!!」
高「おい、声」
ア「あっ」
アリアは気付いた時にはエクスとサミダレが怯えていた。
ア「あははは、ゴメンね」
高「そんなんより、お前、何しに来たんだ?」
ア「まぁ、心配もあるけど、A君が来たよ。後、蓮田君達も」
高「追い返せ。会うのがダルイ」
ア「それg「いえーい!!、ノッてるかーーい?」ちょ!?、A君、しぃー」
Aがいきなり扉を蹴り開け、超ハイテンションで入って来た。
アリアは静かにするように促すが完全に無視している。
A「暗い人生なんて吹き飛ばせ!!。パァーっと明かr「ちょっと来い」ゑ?」
高雅がAの肩を掴んで部屋を出ていった。
しかし、物音は全くせず、少ししたら高雅だけが戻って来た。
高「人間ってさぁ、粗大ゴミか?」
ア「さ・・さぁ・・・?」
アリアは苦笑いしながら適当に相槌を打っておいた。
Aがどうなったのかは高雅のみが知る。
高「悪い。空気が読めない奴が入って来てしまった」
エ「あ・・・ああ、少し驚いたが、大丈夫だ」
高「肩に力が入ってるぞ。後、拳が出来てる」
エ「え?・・・ああ」
エクスは今気づいたようで、深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
サミダレも知らずに同じ事をしていることに気付き、自分も落ちつけていた。
高「完全回復はまだまだだな。まぁ、気楽に治せよ」
ア「相談だって乗るよ。何でも言ってね」
エ「ありがとう、二人とも」
サ「すまんのぉ」
高「サミダレ、謝り過ぎ。飲み終わったコップは外に出しててくれ」
ア「それじゃ、私達はリビングにいるから。また後で来るよ」
高雅とアリアは部屋を出た。
その瞬間、高雅はアリアを鬼の形相で睨みつけた。
高「うぉい・・・」
ア「ヒッ!?」
アリアは自然と体が震えていた。
高「何で俺の許可なしにAと蓮田とログナを入れたんだ?」
ア「あ・・いや・・・一応、知り合いだから・・・ねぇ?」
高「ねぇ、じゃねえぞ、おい」
ア「そ・・それより、会って来たら?」
アリアは誤魔化す様にリビングの方に指を指す。
高雅はアリアの頭を一発殴ってからリビングへ向かった。
フ「あ、コウガ様、二人はどうです?」
高「ん?、回復は好調だ」
フ「それは良かったです。ところで、何でアリア様は頭を抱えてるです?」
ア「いや・・・ちょっとね・・・あいたた」
高「んでさ、蓮田達はどこだ?」
レ「台所へ向かったぞ」
高「・・・・・・・・や~な予感」
高雅はすぐに台所へ向かう。
すると次第に何かを漁る物音が大きくなる。
そして、二人の会話も次第に大きくなった。
蓮「ログナ、悪い事だよ。止めようよ」
ロ「いいか、蓮田。人は自分の身に危険が迫ると悪者になるんだ。俺は今そこにいる!!」
蓮「意味が分からないよ。あっ、だから食べちゃダメだって!!。こうがにいちゃんが怒るよ」
ロ「大丈夫!!。コウガっちが来たって、貧しい俺っちに飯を恵んでくれるさ」
高「そんなにいい奴なのか、その高雅は?」
ロ「そりゃ、冷蔵庫の物を全部食い漁っても文句一つ言わない人だ・・・って!?」
高「どんなに御人好しでも、自分家の冷蔵庫を漁られると怒られるぞ。しかも、俺は人間じゃない」
ロ「それってどういu「お前は死んでもらう」おk把握」
ログナは窓から逃げ出そうとした。
しかし、いつの間にか体が動かなくなっていた。
目にも見えない速さでログナの首を絞めていた。
高「蓮田、悪い事はしちゃダメだからな」
蓮「は・・・はい」
高雅は優しい口調で言っているが、ログナの引きつった顔を見て怖がっていた。
高「分かったらリビングへ向かうように」
蓮「はい」
蓮田は恐怖を感じながらも返事だけを返し、固まった体を動かして台所から消えた。
その後、台所では悲鳴と絶叫が木霊し続けた。
A「どうしてこうなった?」
Aは財布を片手にスーパーで買い物をしていた。
さらに、今はタイムセールで主婦達が一日限りの大戦争を起こしていた。
その中にもAは存在する。
A「主婦、怖ぁ~」
取りあえず、食材をゲットするために最強主婦との戦いに挑んだ。
どうしてこうなったのかは台所の騒動の少し後である。
高「はぁ、食材が一気に無くなった・・・」
ログナを制裁した後、食材チェックをしたところ、生だろうが冷凍物だろうが殆ど食べつくされていた。
高「まぁ、あれらは再生できると言っても、結構減ってたからな。買い物に行かねえとな」
A「じゃあさ、創造すりゃ良くね?。〈ボリボリ〉」
高「・・・・・・・」
高雅の目の前に現れてたのはポテチを立ち食いしているAだった。
さっきフルボッコにしたはずなのに、もうケロッとしていた。
高「おい、A。買い物に行け」
A「何でだよ?。〈パリッ〉」
高「テメーも同罪だからだああああああああああ」
高雅はAが食べていたポテチを盗んで叫んだ。
もちろん、無許可で食べているポテチである。
高「人の物を勝手に食う奴がいるか!!。お前ら調子に乗るなよ!!」
ア「コウガ、あんまり大声だすと二人に聞こえるよ」
高「安心しろ。あっこは殆どの音を絶縁する部屋だ。扉の前ぐらいじゃないと音は聞こえん」
A「んで、喧嘩で決着をつけるのか?」
高「そんな喧嘩っ早いと主人公じゃねえぞ」
A「ッ!?」
Aは主人公と言う言葉に体が反応した。
それを見た高雅がニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
高「それに主人公なら、仲間の為に何かしてくれるんだろ?」
A「ああ、そうさ!!。主人公は仲間を大切にするからな!!」
高「じゃあ、―――」
こうして、Aはまんまと嵌められてしまった。
A「しょーがねーなー。タイト、一気に買い物を済ますぞ」
タ「承知」
Aは活性の力を使い、主婦との戦争に割り込んだ。
最初は軽い活性だったが、それだと主婦の方が上だったので、最終的には6割は出していた。
Aは買い物主婦の最強さを身を持って思い知った。
何とか高雅に頼まれた物を手に入れたAは高雅の家に向かっていた。
しかし、足取りは滅茶苦茶で今にも倒れそうだ。
A「あ~・・・畜生・・・以外に疲れた・・・」
タ「中々良い修行になりそうだ」
A「勘弁してくれ・・・・」
Aはトボトボと歩き、ひたすらに高雅の家に向かう。
その時、Aの髪の毛の一部がピンと立ち上がった。
A「お父さん、近くに幼女がいるよ!!」
タ「何を言っている、主よ?。近くに主の父上はいないぞ」
A「あ、いや、気にするな。それより、幼女だああああああああああ」
Aはさっきまでの疲れはどこに行ったのか、突然駆けだして行った。
右へ右へ左へ右へ、高速で曲がり角を曲がって行く。
そして100メートル走ったところでピタリと止まり、壁を伝ってゆっくり動き出した。
そして、曲がり角に差し掛かったときに頭だけを出して様子を窺った。
そこには不良が三人ほど誰かを囲っていた。
不1「よぉ、嬢ちゃん。お兄さん達と路地裏でいいことしようぜ」
不2「すっげぇ、気持ちいよぉ」
不3「お菓子もあるんだよ~」
明らかに危ない三人である。
それを端から見ていたAは腹を立てていた。
A「あの野郎共・・・んな事するから、ロリコンが危ないって言われるんだよ・・・」
タ「とにかく、早く助けるのだ」
A「分かってるわ!!。俺の怒りは有頂天に達しているぜ!!」
不1「誰だ!?」
堂々と大声を出していたので、呆気なくバレテしまった。
A「バレちゃぁしょうがない。キエエエエエエエエエエエエ」
何故か奇声を発しながら不良に立ち向かった。
Aは活性を使うまでもなく不良三人を秒殺する。
片手に買い物袋とハンデも付いていたが、Aにとっては楽勝であった。
不123「覚えてろよぉーー」
何とも悪役にありがちなセリフを吐き捨てて、不良は帰って行った。
A「主人公がザコキャラに負けるなんて言語道断。っと、それより・・・」
Aはしゃがみ込んで少女と目線を合わせる。
そして頭を撫でて優しい口調で話しかける。
A「もう大丈夫だから安心しな」
幼「う・・・うん・・ありがとう、お兄ちゃん」
A「はぅ!?」
少女は一礼して駆け足でどこかへ帰って行った。
A「うっはあああああああ、お兄ちゃんって言われたあああああ。生きてて良かったあああああああ」
Aは『お兄ちゃん』という言葉に自分を抱いて悶えていた。
完全に変態である。
自分の所為でロリコンの評判を落としているのを気付いていないバカでもある。
パチ・・パチ・・パチ・・
A「?」
突然聞こえる虚しい拍手。
視線を上げると、毛布で体を巻いている少女の姿があった。
A「幼女!!」
?「?、ようじょぉ?。何それぇ?」
タ「ッ!?」
A「いいか、幼女というものは清く美しい拝めるべき存在なのd「逃げろ!!、主よ!!」ふぇ?」
タイトの唐突なセリフに首を傾げるA。
A「何だ?。てか、一般人の前で喋るなって言っt「奴は一般人ではない!!」ふぅん」
?「誰と話してるのぉ?」
A「誰かさんと話してるんだよぉ」
タ「ったく、主は!!」
完全にデレデレのAに痺れを切らしたタイトは人間になってAの腕を掴んで逃げた。
反動で買い物袋を落としてしまったが、構わずに走った。
A「のわああああああああああ」
タ「主よ。奴は只者ではない!!。拙者らでは勝つことはできん!!」
A「いやいや、幼女だぜ?。勝てるだろ?」
タ「敵は外見で決めるでない!!。奴の強さは異常だ!!」
A「何で分かると?」
タ「殺気の量が半端でない。もし次に会えば確実に殺されるぞ!!」
A「マジッ!?。幼女こえぇ!!。けどなぁ・・・」
Aは自嘲気味に自分の足にしがみ付いている物を見せる。
そこには無邪気に笑っている少女の姿が。
?「わぁい、おもしろぉい」
A「クソッ、可愛いな、おい!!」
?「それよりさぁ・・・聞きたい事があるけどぉ。よいしょ・・」
少女がAの体をよじ登って顔に近づいて行く。
近づくにつれ、Aの頭が沸騰して行く。
タ「主から離れろ!!」
タイトは突然、Aを振り回し始めた。
A「んぎぇえええええええええええ、目が回るううううううう」
?「きゃはははははは」
少女は楽しそうに笑っていて全然放す気がない。
タ「こうなったら・・・」
タイトは刀を抜き、少女に狙って斬りかかった。
すると、少女は足を放して間合いを取った。
?「危ないなぁ。全くぅ・・・」
タ「黙れ、神の子よ!!。拙者らに何の用だ!?」
A「か・・神?。神といったら・・・僕は新世界の神となる!!」
タ「ふざけるな!!、主よ!!。気を引き締めろ!!。死ぬぞ!!」
A「え・・あ、はい」
Aはタイトを刀に変え、少女と向き合う。
?「あのねぇ、この辺りにあたしのお兄ちゃんがいるんだけどぉ、知らなぁい?」
タ「主よ、答えるな。問答無用で斬るぞ!!」
A「あ、はい。幼女を斬るのは申し訳ないが、タイトが言うなら仕方ないな」
?「戦うのぉ?」
少女は戦う意思を感じ取っているが、全く殺気を現さない。
最も、自然と溢れている殺気だけでタイトをここまで本気にさせているが。
タ「主よ。隙を確実に逃さず突くのだ。追い打ちは禁止だ」
A「はいよ」
?「久しぶりの戦いだぁ。お兄ちゃんに劣らないようにしないとぉ」
少女はかわいらしくグッと握り、軽く力む。
そしてどこからともなく銃を取り出した。
?「じゃあ・・・いくよ?」
少女はニヤリと薄く笑みを浮かべ、殺気を放出した。
その瞬間、少女を中心とする半径100メートルにクレーターが出来上がった。
その範囲内にはAもおり、軽く潰されてしまった。
?「どうしたの、早く掛かって来てよ」
少女の口調が変わり、完全に戦闘の体勢に入った。
A「おー、いてぇ。うん、やばいな」
殺気を感じ取り、初めて自分の身の危険を思い知った。
タ「だから言ったはずだ!!」
A「ったく、こんな危険な幼女はほっとく訳にはいかないな」
?「ふふ、長生きしてよ」
A「主人公の実力を思い知らせてやるさ」
Aの無謀な戦いが幕を開けた。
しかし、Aは知らなかった。
少女が2割の殺気と力しか出してない事を。