文化祭 一日目 中編
アリア達がチラシの場所へ向かう道中、飾り付けがかなり合成になっている事に気が付く。
ア「何だか、この辺りは豪華だね」
レ「そうだな」
エ「おや、あの列は何だい?」
目の前には曲がり角で先頭が見えない列があった。
取りあえず、最後尾と書かれた看板を持っている執事姿の生徒に聞いてみた。
ア「あの、この列は何の列ですか」
生「この列は執事喫茶の列でございます。早く並ばなければ、終わってしまいますぞ、可愛いお譲様」
ア「ふ~ん、ここかぁ」
生徒の可愛いという言葉に反応せず、振り向いて皆を呼ぶ。
何の反応を見せないアリアの姿を見て、執事生徒は軽く落ち込んでいた。
ア「ここが、らしいよ」
フ「どこまで続いてるです?」
生「30分待ちでございます、妹様」
フ「ボクは妹じゃないです。顔洗って出直すです。気持ち悪いです。臭いです」
生「うわああああああああああああああああん!!」
ズッタボロにプライドが傷つけられ、生徒はどこかへ走って行った。
レ「フィーラよ。臭いは言い過ぎではないか?」
フ「あんな心も込めてない、決められたセリフを言われても耳障りなだけです」
エ「まぁ、適当な判断で妹と決めつけられていたようだし」
サ「その点ではコウガが上じゃのぉ」
ア「その点だけね」
そう言って、少しだけふてくされる。
まだ、あの事を根に持っていたのだ。
フ「それにしても、長いし永いです。ボク、別の所に行って来るです」
ア「あ、うん、いいよ。皆も退屈なら色んな所に行ってもいいよ。私だけでも並んでおくから」
レ「わr〈ゴスッ!!〉ッ!!・・ぼ・・僕はフィーラについて行きます」
フ「じゃ、さっさと行くです」
フィーラはアリア達と別行動し、レオはおぼつかない足取りでフィーラの後ろを追った。
ア「痛そ~」
エ「脛に鋭い蹴りを下したからな」
サ「目尻が潤んでたのぉ。可哀そうに」
レオの哀れな姿に同情する三人。
ア「二人はどこか行かないの?」
エ「得に欲しい物はないからな。それに、アリアを一人で待たせるのは心許ない」
サ「そう言う事じゃ」
ア「そっか、ありがとう」
エ「まぁ、軽く会話でもしながら待とうじゃないか」
そう言って、三人はフィーラ達が戻って来るまで、待ち続けた。
フ「今度はこっちです!!。早くするです!!」
フィーラは限りある時間を有効に使うために急いで回っていた。
レ「少しは待ってくれ」
フィーラが一人で突っ走り、それを追い続けるレオの姿は全く変わってなかった。
フ「鈍いです。早く来いd〈ドンッ〉あみゅ!?」
レ「?」
フィーラが曲がり角に差し掛かって見えなくなった途端、尻もちを突いて再び視界に入った。
次に見えたのは顔つきの悪い人だ。
私服を着ている為、生徒ではないが、見る限り喧嘩腰である不良だ。
不「何だガキ?。この俺にぶつかっておいて謝りもしないのか、あぁ!?」
フ「みゅ?。キモイ奴です」
不「んだと!?」
フィーラは完全に謝る態度なんて無く、逆に侮辱していた。
不良の怒りは完全に沸点に達した。
レ「待て!!」
不「ああん!?。誰だ貴様ぁ!?」
レ「その子の付き添いの者だ」
不「保護者って訳か。だったら、テメェが殴られろや!!」
不良が容赦なくレオに殴りかかる。
しかし、レオは片手で受け止める。
レ「待つのだ。ここで戦うのはまずい」
不「関係ねぇよ!!」
レ「しかし、貴様の命が危ない。このまま引いてはくれ。謝罪はする」
不「知るか!!。謝って許される事じゃねえ!!」
不良は空いている片手を振り上げる。
しかし、誰かに振り上げた腕を掴まれ、下ろす事が出来なかった。
不「ぁあ!?」
気になって後ろを振り返る。
高「・・・・・・・」
そこには、高雅が無言で腕を掴んでいた。
不「邪魔すんじゃねえ!!。こr「少し黙れ」はぁ?」
高「聞こえないのか?。少し黙れって言ってんだよ。その耳は飾りか?」
不「糞ガキが!!。そんな、ひょろっちぃ腕で俺を抑えることなど・・・ふぬぬぬぬ・・・」
不良は腕に力を入れて振り払おうとした。
しかし、高雅の手はもちろん、レオの手すら振り払う事が出来なかった。
不「何っ!?」
高「オーケーオーケー。日本語が分からない猿と判明しました。猿は学校に来る資格などありません」
不「ッ!?」
突然、不良に浮遊感が襲った。
高「ろっしょい♪」
そう言って、片手で背負い投げをする。
高「あ♪」
わざとらしく言いながら手がすっぽ抜けた。
この事は計画済みなので、投げた所に人は一人もいない。
不良は壁にぶつかるまでまっすぐ飛んで行った。
不「げふっ!!」
不良はずるずると壁を伝ってゆっくりと落ちてゆく。
だが、落ちてゆく途中で高雅に首を掴まれ、落下が止まる。
高「おい猿。子供の戯言にムキになるんじゃねえよ。分かったか・・・って、分からねえよな。猿だから」
不「あ・・がぁ・・・ぐ・・」
高「猿、今すぐに逃げろよ」
高雅が手を放すと、不良は尻もちを突き、這いつくばって逃げだした。
高雅は周りに目をやると、ギャラリー達はそそくさにどこかに行き始めた。
高「全く、人間は見るしかできない連中が多い事だな」
レ「そう言うでない。力が無い者が出たとしても、足手まといになるだけだ。それを弁えているのだろう」
フ「そうです。それに、コウガ兄様はあの不良より怖いです」
高「それ、軽く傷つくぞ。ところで、アリア達は?」
レ「アリア達は人気の喫茶店の列に並んでおる。時間が掛かるそうだから、僕達は時間まで別行動しているのだ」
高「成程な。てか、僕って・・・・ぶっwww」
いつもと違う呼び方に、高雅はつい吹いてしまった。
レ「わ・・笑うな!!///」
高「だっははははは、いつも我我言ってる奴が僕って・・・あははははは」
レ「笑い過ぎだ!!」
レオが注意するも、高雅は腹を抱えて笑っていた。
フ「それより、コウガ兄様はどうしてここにいるです?」
高「俺の少ない自由時間だ。まぁ、やることなんて飯食うだけしかないが」
フ「だったら、今からアリア姉様がいる場所に行くです」
レ「そうだな。ふと見ると、そろそろ時間だ。コウガも一緒にどうか?」
高「ん~・・・そうだな、話に乗るとしよう」
フ「それじゃ、さっさと行くです。こっちです」
そう言って、フィーラは再び一人で突っ走り始めた。
高「あいつ、学習能力が無いのか?」
レ「そう、伝えてくれ」
高「だるい」
レオは溜息を零し、高雅は頑張れと声を掛けてフィーラの後ろをついて行った。
レオも落ち込みながらも足を運んで行った。
その頃、アリア達は既に順番が回って来ていた。
生「次のお客様、どうぞこちらへ」
結局、レオ達が戻ってくる前に自分達の番となった。
ア(も~、レオ君達戻って来ないで順番が来ちゃったよ・・・)
生「お譲様?、どうかなさいましたか?」
ア「へっ?、あっ、いえ・・・あれ、あなたはチラシを配ってた人・・」
X「おお、覚えてもらって光栄です、美しいお譲様。では、席へ案内します」
ア「あっ・・・」
Xはアリアの手を取って席へ案内する。
エ「僕らは無視かい?」
サ「差別じゃのぉ」
文句を言いつつも、取りあえずアリアの後ろをついて行く二人。
X「こちらの席となります。では、ごゆるりと」
Xは最後にアリアの手の甲にキスをしようとした。
ア「ッ、止めて」
それを悟ったアリアは、すかさず手を引っ込めた。
X「・・これは、すみませんお譲様」
Xは少しも悪気が無いような素振りをして、裏へと向かって行った。
ア「いきなりキスするなんて、失礼過ぎるね」
エ「まぁ、他の客はそれに満更でもない反応を示しているようだよ」
周りの客を見てみると殆どが女子たちで皆Xの方を見つめていた。
サ「あ奴は好かれているようじゃ。他の奴らもかなりの顔だな」
見渡す限り、この執事喫茶はイケメンしか揃っていない。
偵察に来たであろう少ない男子生徒は嫉妬の炎を燃やしていた。
レ「アリア、すまぬ。遅れてしまった」
そこに遅れたレオ達がアリア達と合流した。
ア「あ、レオ君、遅い・・・って、コウガ!?」
高「何だよ、俺がいたら悪いか?」
ア「そんなことはないよ。ただ、自分から付き合うなって言ってたのに・・・」
高「既に情報が漏れてるんだよ。今さら隠したって遅いって訳だ」
ア「そっか」
高雅は席につき、メニューを見始める。
しかし、たった3秒見ただけで近くにあったベルを鳴らす。
それを聞いた執事の生徒がすぐさま駆けつけた。
生「お呼びでしょうか?」
高「オムライス一つ。お前らは?」
フ「プリン一つです!!」
サ「私もそれを頂くかのぉ」
レ「僕はコーヒーだ。あの苦みとコクが気に入った」
エ「僕もコーヒーで」
ア「私は・・・私もプリンで」
生「かしこまりました。今しばらくお待ちを」
生徒は一礼をして席をはずす。
高「よくトラウマにならなかったな」
ア「ちゃ・・茶化さないでよ。思い出しただけで・・・うーー」
アリアは味を思い出したのか、お冷を少しだけ飲んだ。
?「あっ!!、崎村じゃねえか!!」
高「うわぁ、会いたくねえ奴が来たよ」
その人物はまっすぐに高雅のもとへ駆けつけ、勝手に席に座る。
高「何しに来た、A」
A「偵察に決まってんだろ。お前もそうか・・・って、んな訳ねえよな」
高「ったりめえだ。純粋に飯を食いに来ただけだ」
A「ふ~ん。んで、何か新しいキャラが見えるんだけど」
ア「そっか。A君はエクスとサミダレを知らないんだ」
エ「これは失礼。僕はエクス。よろしく」
サ「私はサミダレじゃ。よろしくのぉ」
A「俺はAっていいます。今後ともよろしくお願いします」
そう言って、握手をする。
エ「A君は天の使いを持ってるみたいだな」
A「えっ!?、どうして分かった!?」
エ「これでも、僕はえd「こんな所でそんな話をするな」おっと、すまない」
A「何だよ、いいじゃねえかよ、こうg<ガンッ>はうっ!?」
高「黙ってろ」
高雅はAの脛を思いっきり蹴った。
しかし、Aは思いのほか一瞬驚いただけで特に変化はなかった。
生「お待たせしました、どうぞごゆっくり」
そこに生徒が注文したメニューを持って来た。
品物を一人一人丁寧に置いて行き、一礼して去っていった。
それをAは怪しい目で見ていた。
A「・・・なぁ、崎村。今のどう思う?」
高「素晴らしいんじゃねえか。俺らより遥かに」
A「だよなぁ。素晴らしいよな」
高「味も美味いぞ」
A「・・・そりゃ、勝てない訳だな」
ただ、相手を称賛しているにしか見えない会話だが、高雅とAの言葉にどこか意味有りな感じだった。
それを悟ったアリアは高雅に聞いてみた。
ア「どうしたの?」
高「相手がヤバいって訳だ」
ア「つまり?」
A「ここで一つ情報を教えておくと、Xは金持ち」
ア「・・・・それで?」
高「あの執事共は本物の執事だ」
ア「ええっ!?」
アリアは驚いて声を上げてしまう。
周りの人達はすぐにアリアの方に注目してしまう。
ア「あ・・すみません」
アリアはペコリと頭を下げて謝る。
ア「それって本当?。見る限り普通の青年にしか見えないけど」
A「Xのメイク技術を持ってすれば、可能だろう。きっと、料理も超一流の人が作ってんだろう」
レ「それは卑怯ではないか?」
高「どんな悪い事も、ばれなかったら悪くないんだよ」
A「どうするよ、崎村。きっとメイドの方も何かしてるぜ、Xなら」
高「知るか。んな、どうでもいい勝負なんて関係ない」
エ「コウガ君、一つ言っておくが、どうでもいい勝負なんて無いんだよ」
高「変な名言出すな」
高雅はオムライスを食べ終え、席を立った。
高「そろそろ交代の時間だから、俺は先に行くぞ」
ア「うん」
A「ほ~い」
高「テメーも時間だろうが!!。さっさと来い!!」
A「ちょ!?、俺まだ何も食ってないって!!」
高「飢え死にしたらグラウンドに埋めてやる。だからさっさと来い」
高雅はAの襟を掴み、引きずって行った。
A「ひでぇ!!・・・っと、それじゃ、ばいば~い」
Aは最後にアリア達に手を振って見えなくなった。
そんな滑稽な光景を周りの人たちはクスクスと笑っていた。
フ「・・・何だか、あのAって人、前より遥かに強くなってる気がするです」
レ「そうだな。以前よりも殺気を感じた」
エ「なかなか興味がある人だね」
サ「それに、面白い奴じゃのぉ」
Aが見違えている事にフィーラが気付き、レオも内心驚いていた。
エクスとサミダレもそれなりに興味を示していた。
ア「さて、早く食べて色んな所を回ろうよ」
アリアがそう言うと、皆は飲食を再開しだした。
数分で飲食を終えた五人は再び、出し物巡りへと旅立った。