猫と高雅の大決戦
タイトルのわりに、そんなに激しくありません。
高雅はいつものように学校で授業を受けていた。
とは言っても、9割は寝ているが。
先「えー、次の問題は・・・」
高「Zzz・・・」
先生は爆睡している高雅に狙いを定める。
指の隙間にはそれぞれ四本のチョークが挟まれていた。
先「シュッ!!」
ズガガガ・・・
高「んが!?」
高雅の額に全発ヒット。
周りの生徒達は歓声を上げていた。
先「はい、この問題w「解なし」・・・正・・解・・」
高「はん、解が無くったって解はある」
先「く、難しい言葉を」
高「それじゃ、お休み・・・」
先「そうはさせません!!」
今度は両手で計8本のチョークを高雅に投げる。
しかし、今度は高雅に当たらずに、どこかに逸れて行った。
先「何・・だと・・・!?」
先生は再びチョークを投げ続ける。
ただ、何度投げても全く当たらない。
高雅が目には見えない微量にセイクリッドの力で弾いているのだ。
本人はセイクリッドの力に慣れるついででいる。
先「はぁ・・はぁ・・あれっ?」
黒板の溝に手を伸ばすも、空を掴むだけ。
チョーク入れの中を見ても空っぽ。
先「どこか・・・どこか弾は?」
B「弾はねーよ、先生」
教壇の下や黒板の上など、変な所を探し続ける。
全員は呆れて先生を見ていた。
ガラ・・・
高「?」
すると、入口がほんの少しだけ開いた。
高雅のクラスは全員出席している為、遅刻している者ではない。
第一、人が通れるほど開いてない。
だから、自然と目が入口に行くも、扉を開けた本人は見えない。
不思議に思うも、目を下げるとそこには・・・
猫「ニャー・・・」
高雅の足下に黒猫が擦り寄っていた。
高「何だ、こいつ?」
猫「ニャ~・・・ニャー」
高「ったく、この学校は不法侵入し放題だな」
そう言いながら、猫の頭に手を伸ばす。
しつこく擦り寄って来るので軽く頭を撫でたいという衝動を受けたのだ。
猫「・・・ニヤリ」
猫はそれを待っていたと怪しく微笑を零した。
猫「ニャーーーー!!」
高「うわっ!?」
突然、猫が高雅に飛び掛かって来た。
高雅は驚いてのけぞるも、イスから転げ落ちることはなかった。
高「何だよ・・・いきなり襲うかよ・・・」
猫はテトテト帰っていく。
いきなり嫌われた理由が全く分からないまま。
ア(コウガーーーー!!)
高(何だよ?。叫ぶなよ)
ア(ジッと見てないで助けてよーーーー)
高(・・・はぁ!?)
高雅は意味が分からず、自分の腕を見る。
しかし、そこにあるはずのブレスレットが姿を消していた。
まさかと思い、猫を見ると、ブレスレットを咥えてこっちを見下していた。
そして、挑発するように尻尾を振り、どこかへ走って行った。
高「あのぬこ!!。俺のあり・・・ブレスレット返せやああああ」
高雅は唖然としている皆をほっとき、瞬く間にクラスから居なくなった。
一方、変わって別のクラスで・・・
先「えー、ドップラー効果は観測者や音源が運動していると、音源が出す振動数と観測者が観測する振動数が異なって―――」
ここでは物理の授業が行われていた。
そんなクラスにあの猫が・・・
ガラ・・・
やってきた。
先「?」
先生と生徒の視線が自然と扉に向かう。
しかし、既に猫はクラスの中心まで侵入していた。
誰一人として猫には気付いていない。
ガララ・・バンッ!!
高「ぬこは何処だーーーー!!!」
そこに高雅が扉を容赦なく開けてやってきた。
先「だ・・誰かね、君は!?」
凛「こ・・・高雅さん!?」
高「凛?。それよりも、ぬこは何処だ!?」
凛「ぬ・・・・ぬこ?」
ア(コウガーーー、リンちゃんの机の下だよーーー)
高「おk」
先「き・・君!!」
高雅は先生が呼ぼうと完全無視して凛のところへ駆ける。
最も、目的は凛の机の下にいる猫の為であるが。
凛「へ!?」
高「凛、下のぬこを捕まえろーーーー」
凛「ぬ・・ぬこって何ですか!?」
高「下にいる生物だ!!」
凛「へ・・ん?」
凛が高雅に気を取られているうちに、猫が凛の膝の上に飛び乗った。
あろうことか、追われている身なのに眠り始めた。
高「もらったあああああ」
高雅が猫に向かってダイブする。
ただ、端から見れば凛に飛びつく変態である。
猫「ニャニャ・・・」
高「何!?」
猫が「ばーか」とでも言いたそうな顔をして凛の膝から飛び退いた。
ダイブしている高雅は止まる事は出来ない。
高「ちょ!?、凛!!、退け!!」
凛「ええええ!?」
もちろん、凛がそんなに反射神経がいい訳でもない為・・・
ドンガラガシャン!!
豪快に凛に飛びつき、机やイスを押し倒した。
高「いっつつつ・・・わりぃ、凛」
凛「・・・え・・あ・・・」
ア(コウガ!!。早く助けてよーーー)
高「あっと、のんびりしてる暇はない。そんじゃ、お邪魔しましたー」
高雅はただ凛に飛びついて帰っただけである。
その為、凛のクラスからの視線は痛い目になっていた。
生「えっと・・・凛、大丈夫?」
凛の友達が気を使って手を差し伸べる。
凛「ああ・・・ありがとう」
生「それにしても、さっきの誰?」
凛「さ・・さぁ、知りませんわ。授業に乱入する非常な人は知りませんわ」
生「でも、凛の事知ってるみたいだし、第一、あんたも名前を呼んでなかった?」
凛「よ・・呼んでいませんわ!!」
生「そ・・・そう」
凛があまりにも強く言うので、生徒はつい肯定してしまった。
先「えー・・・続けてもいいかね?」
凛「あっ・・はい、すみません」
凛は冷静になって席に着く。
凛(・・・一体、高雅さんは何をしに・・・)
先「姫花さん、聞いてますかね?」
凛「え・・あ・・・はい!!」
結局、この時間は凛は集中することはできなかった。
猫を追いかけ、はや三十年。
高「それは無い!!」
っと、冗談で、校舎の中庭まで猫は逃げて、それを追っていた。
猫一匹捕まえるのにかなり苦労しているセイクリッドの子です。
高「っるっさい。人間もセイクリッドも関係あるか!?」
猫「ニャ~・・・」
いつの間にか、猫がフェンスの上に移動していた。
そして、未だかと猫が鳴いている。
高雅がキッと睨みつけると猫は逃げるようにフェンスの向こう側に飛び降りた。
高「ここまで来て逃がすかよ」
高雅は思いっきり跳躍して、2メートル強あるフェンスを飛び越える。
着地して辺りを見渡すと、猫の下半身が交差点を曲がッているのが見えた。
高「今度こそ捕まえてやる」
高雅は猫の後を追う。
そして、高雅が交差点を曲がったその時、とんでもない光景を目にした。
高「いっ!?」
猫が車が行き交う道路に飛び出していた。
丁度、大型トラックが接近している時にだ。
トラックが急ブレーキを掛けた音に猫は驚いて膠着してしまう。
猫は覚悟を決めて、目を強く閉じた。
しかし、猫が感じたのは強い衝撃ではなく、優しい温もりだった。
猫が目を開けると、そこには寸前で止まったトラックと自分を抱いている高雅の姿が見えた。
高「ふぅ~、間一髪だったな」
そう言って、高雅は緊張の糸を切る。
猫の口にはブレスレットは無く、既に高雅の腕に巻かれていた。
ア「ねえ、コウガ」
高「ん?」
ア「車を止めるときに、活性の力を使ったよね。何を活性したの?」
高雅は静寂の力や破壊の力を使わずに、トラックを止めたのだ。
それを不思議に思ったアリアは高雅に質問してみた。
高「ああ、タイヤとの摩擦力だよ。さっき、乱入したクラスで物理してたから、物理っぽい方法で止めただけ」
ア「ふーん、納得」
運「ゴラッ!!。何飛び出してきてんだ?、ああ!?」
トラックの中からかなり厳ついオヤジが降りて来る。
高「は?」
高雅が同じように睨みかえすと、運転手のオヤジは一瞬怯える。
そこに、すかさず高雅は言いよる。
高「ここの規定速度は40キロのはずですが、あなたは軽く60キロオーバーはしてましたよね。なのに、そんな態度は間違っていませんか?」
あくまで優しく、そして殺気は死なない程度に出し続ける。
遂にオヤジは腰を落として、完全に負けていた。
高「今すぐ、警察に通報されたくなければ、時速40キロ以内で失せてください」
運「ひやああああああ」
オヤジは疾風の如く車に乗り、トラックを180度回転させて帰って行った。
高「・・・はぁ。今時、規定速度を超えたって警察が動くなんて思わないけど・・・」
ア「まぁ、あの人の場合は十中八九コウガの所為だと思うよ」
高「だろうな。それにしても、アリア」
ア「何?」
高「人気が無い所はいくらでもあったぞ。なのに何で人間状態などに戻って逃げなかった?」
ア「ああ。それは、攫われるヒロインを演じてみたかったのよ」
高「ふざけんな!!。そんな、下らない事を考えやがって!!。人がどれだけ心配したと思ってんだ!!」
ア「え!?・・・コウガ、心配してくれたと?」
高「心配なんてしてねえ!!」
ア「ちょ!?。言ってる事が滅茶苦茶だよ!!」
高「知るか!!。もう、帰るぞ!!」
ア「学校は?」
高「知らん!!」
結局、高雅は不機嫌のまま、荷物を取りに行かずに家に帰って行った。
道中、車の少ない所で猫は逃がしてあげました。