金持ちパーティ 後編
なんだか結果的に、あんまりパーティに触れなかったなぁ
空を駆け抜ける事数十分。
凛はずっと下を向いていたが、それは夜景を見る為ではなかった。
そして、着いた場所は殺風景な山の中だった。
高「ほい、到着。夜景はどうだったか?」
凛「・・・・・・・」
高「・・・おーい?」
高雅は凛の目の前で手を振る。
しかし、凛の目は上の空で全く反応を示さなかった。
高雅はチャンスだと思い、皆に指示を出す。
高「・・・・・・・おい、アレ」
フ「はいです」
レ「用意はいいぞ」
ア「はい、コウガの分」
アリアから渡されたのはキラキラ輝く円錐で頂点に紐が繋がれていた。
レオも人間状態になり、フィーラ達と一緒に構えている。
高雅達はそれを凛に向けていた。
高「はい、よ~っく狙えよ」
レ「だ・・大丈夫なのか?」
フ「ターゲット、ロックオンです」
ア「それじゃ、せ~の・・・」
完全に現実から離れている凛に向かって一斉に・・・
パパパーン!!!パーン!!!
凛「ひやっ!?」
クラッカーを鳴らした。
凛がびくりと肩を震わせる。
高達「誕生日、おめでとーーー(です)!!!!」
一斉に祝意の言葉を述べた。
お陰で現実から離れていた凛は一瞬で覚醒した。
凛「な・・何ですか!?」
高「やっと目覚めたか?」
凛「えっと・・・一体、ここはどこですか?」
凛が周りを見渡すも、町の明かりが薄く見えるだけで真っ暗だった。
高「次第に目が慣れるから、それまで待ってろ」
凛「は・・はぁ・・・」
ア「おーい、用意できたよ」
アリアが手を振って知らせる。
用意していたのは、ただその場で創ったシートだけである。
お譲さまと言うのを考慮しているのか、一応、上質な素材を使っている。
あと、暖房機能も働いている。
高「どうも。よっと・・・」
高雅はすぐに仰向けで横になる。
ア「コウガ、寝ちゃわないでよ」
高「分かってる・・・z・・・」
フ「コウガ様、一瞬寝たです」
ア「全く、コウガは・・・」
アリアはやれやれと首を振る。
そして、高雅と同様に横になる。
フィーラとレオもシートの上に寝っ転がった。
ア「ほら、リンちゃんも」
凛「い・・・一体何を?」
高「寝りゃ分かるって」
ア「でも、本当の意味で寝ちゃダメだよ」
アリアが念のために釘を刺しておく。
そして、凛も空いている場所に寝っ転がった。
凛「わぁ・・・」
その瞬間、目が入ったのは満天の星空だった。
先程まで明りで隠れていた星達が顔を出していたのだ。
凛「綺麗・・・ですわ」
高「だろ?。やっぱ、天体観測でよかったな」
ア「時期外れな気がするけど、悪くないね」
レ「秋の星もまた違った輝きを持っておるな」
フ「一つ一つが一生懸命輝いてるです」
皆、それぞれの感想を自然と喋っていた。
凛「まさか、これがプレゼントですの?」
高「ああ、そうだ。タダで金持ちには誰も思いつかねえのを選んだけど、どうだ?」
凛「・・・まぁ、杉野さんの次に素晴らしいですわ」
高「ちぇ、やっぱり物かよ」
凛「クスッ・・・」
ふてくされる高雅に凛は笑みを零した。
すると、凛が急に物想いに耽話しだした。
凛「・・・私は緑淵高校に通って良かったですわ」
高「凛?」
凛「実は、私は高校入試に失敗しました。その時はお父様にこっ酷く叱られましたわ」
ア「そうだったんだ」
凛「それで、私は滑り止めで受かった緑淵高校で一番になると心に決め、入学しました。しかし、入学早々のテストで2位という屈辱的な数字を出してしまいましたわ」
レ「それは気の毒だな」
凛「一体、どこの馬の骨が1位を奪ったと私はその人に会いに行こうとしました。けれども、その人は私が会おうと時にはいつも休んでいるか早退でしたわ」
ア「あっ!!、それって・・・」
アリアは手のひらを打って理解した。
フ「アリア様、し~、です」
ア「ふふ、分かってるよ」
フィーラは小声で鼻の前に人差し指を置いて、アリアに注意する。
アリアは微笑みながら親指と人差し指でOKサインを出していた。
凛「1年も会えないまま、さらに順位が3位に落ち、私はもう絶望しましたわ」
レ「何という、すれ違いだ」
凛「それで、生徒会の権限を使えば授業中に乱入できると思った私は―――」
高「ここで金持ちの非常識が出てきたぞ」
高雅が呆れて溜息を零す。
すると、凛が体を起こし、高雅の方を見つめながら続きの言葉を喋った。
凛「生徒会会長になり、やっと・・・あなたに会えましたわ」
高「お陰で、そん時は授業をサボる事が出来たけどな」
凛「そうですわね。でも、あの時あなたが私の近くにいなかったなら、私はあの強盗に何をされたか分かりませんわ」
ア「あの時かぁ・・・懐かしいね」
高「タライの素晴らしさを世に知らしめた時か」
ア「全然違うよ」
アリアが苦笑いしながら否定する。
凛「あの時から、私はおかしくなったと思いますわ。テスト毎にあなたに勝負を挑んだり、勉強を本気で頑張ったりと」
高「1年の時は本気じゃなかったのか?」
凛「本気でしたわ。ですが、あなたとの差が分かったときに、さらに念を入れ始めましたわ」
高「それでも勝てないって、情けねえな」
凛「うるさいですわね!!。いつかは勝ってみせますわ!!」
高「そうかい。ふああ~あ・・・」
高雅は適当に返事をして、大あくびをした。
凛はまた星空を見上げながら話を続けた。
凛「・・・でも、いつからかしら?。あなたの事が頭から離れなくなったのは・・・」
フ「みゅみゅみゅ!!、それはそれは!!??」
凛「ちょ・・フィーラさん、顔が近いですわ!!」
フィーラがさっきのセリフを聞いた途端に起き上がり、凛に顔を近づけて問う。
凛は焦りながらもフィーラの肩を掴んで離れさせる。
アリアも協力してフィーラを引き剥がした。
フ「それで、何です?」
凛「で・・ですから!!・・・・その・・・」
凛は恥ずかしがりながらドレスのすそを握って俯く。
あちこち目だけを移動させて心を落ち着けていた。
そして、目を瞑りながら高雅に自分の気持ちを伝えた。
凛「私は高雅さんの事が好きですわ!!!!///」
夜空に響く凛の声。
絶対に聞き逃す事の出来ない大きな声。
ア「・・・・・・」
アリアは少しだけ不安な気持ちに陥っていた。
そして、聞こえてくるのは規則正しい寝息。
凛「・・・高雅さん?」
凛が目を開けて高雅の方を見ると・・・
高「・・・Zzz・・」
高雅が爆睡していた。
それを見たアリアはズッコケていた。
凛「・・・・あなたって人は・・・・」
凛は握りこぶしを振るわせ、高雅に近づく。
バシンッ!!
高「いぃ!?」
夜空に響く凛のビンタ。
高雅は一瞬で目を覚ました。
凛「もうっ!!、私は高雅さん何か大っ嫌いですわ!!」
高「はぁ?。一体、何事?」
ア「あははは・・・」
状況がまったく掴めていない高雅にアリアは苦笑いしていた。
凛「うるさいですわ!!。さっさと私を家に帰しなさい!!」
高「え・あ・・ああ、分かった」
高雅は状況が分からず、取りあえず言われた通りに空間を開き、凛の家へ繋げた。
凛はそそくさに空間に入ろうとしたが寸前で立ち止まった。
そして、顔を向けずに喋りだした。
凛「・・・まぁ、わざわざこんなプレゼントを用意してくださいましたし、さっきの言葉は撤回して上げますわ」
高「えー・・あー・・そりゃ、どうも」
高雅は取りあえずお礼を言っておいた。
凛は空間に入って消える間近に頬笑みをこぼしていたのを高雅は知らない。
家に帰りついた凛はドレスのままベッドに突っ伏した。
首を回すと、そこには山積みになったプレゼントがあった。
しかし、凛はそんなものはどうでもよく思い、今日を思い返し始めた。
凛「・・・直接プレゼントだなんて、初めてでしたわ・・・」
いつもは、パーティが終われば部屋に詰まれているプレゼントであったが、今日は違う。
そんな、ありきたりなプレゼント何かよりも、龍子と高雅にもらったプレゼントの方が無性にうれしかった。
母「あら、帰ってたのね」
凛「お母様」
凛の母がノックもせずに凛の部屋に入り、ベッドに腰を掛けた。
母「どうだった?。高雅君のプレゼントは」
凛「つまらないものでしたわ」
母「あらそう。その割には口がニヤけているわよ」
凛「なっ!?・・・///」
凛は慌ててベッドの近くにある手鏡を取り出し、自分の顔を見た。
母「やっぱり、嬉しかったのね」
凛「お・・お母様!!。嘘吐きましたわね!?」
母「さぁー?。お母さんは知りませーん」
凛「もうっ!!」
凛は怒ったのか、布団を被って隠れた。
母「それで、どうだった?。今年のパーティは?」
凛「・・・一番・・・楽しかったですわ」
母「そう。それは良かったわ」
凛「あの、お母様」
母「何?」
凛「気持ちを込めてもらったものは例え価値が低くても凄くうれしいですのね」
母「当然よ。100円の物も気持ち一つで1億円の価値ぐらいになるものよ」
凛「そうですわね。今日でその言葉が良く分かりましたわ」
母「そう。それじゃ、もう寝なさい。明日も学校でしょ?」
凛「分かりましたわ。お休みなさい、お母様」
母「お休み」
凛の母は電気を消してから、凛の部屋を出た。
★おまけ★
ロ「お~い、蓮田~。どこだ~?」
パーティが終わったと聞き、ログナは目の前の料理を惜しみながらも大ホールを出たのだ。
しかし、あるはずの蓮田の姿が無く、ログナは屋敷をうろついていた。
ロ「はぁー、どこいったんだよ~・・・・ん?」
蓮「・・・あ・・・・・・・わわ・・・」
ロ「これって・・・蓮田の声で間違いないよな。よし、入ろう!!」
ログナが自分を探している事を知らずに、蓮田は香凛の部屋でお話しをしていた。
香「でね、凛姉ちゃんったら―――」
蓮「ははは、そうなんだ」
絶える事のない二人の笑み。
二人はベッドに座って仲良く会話していた。
しかし、蓮田がふと掛け時計を見ると、少しだけログナの事を心配した。
蓮「そう言えば、何だが静かだね。パーティは終わったのかな?」
香「そう言えばそうなの。ちょっと見て来るの」
香凛はそう言って、立ち上がろうとした時、足下に山積みのプレゼントからこぼれた箱がある事に気付かずに踏んでしまった。
香「きゃっ!?」
その時、香凛はバランスを崩し、倒れかけた。
蓮「あっ!!、危ない!!」
蓮田は咄嗟に腕を掴んで引き寄せようとした。
蓮「わわわっ!?」
しかし、思いのほか自分が引っ張られてしまい、香凛と向き合ったままベッドに倒れた。
香「あ・・・」
蓮「ご・・・ゴメン///」
香「い・・いいの///」
二人の顔の距離はわずか20センチ。
互いに見つめあったまま動けないでいた。
ロ「おーい!!、蓮田ーーーー・・・・・・」
そこに空気ブレイカーこと、ログナが侵入した。
ログナは二人の光景を見て冷静に判断する。
ベッドで抱き合って見つめあってる。
ロ「・・・・おおお・・俺っちより先に一線を踏み越えるなんて・・・うわああああああああああん」
蓮「え!?、ログナ!?」
ログナは情けなく大泣きして部屋を出て行った。
蓮「ご・・ゴメンね、かりんちゃん。よく分かんないけど、何だかログナが泣いてるから、もう帰るね」
香「は・・はいなの・・・」
蓮田は香凛に別れの挨拶をした後、すぐにログナの後を追いかけた。
結局、蓮田にとって訳の分からない事をログナは嘆き続けた。