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金持ちパーティ 中編

大ホールにはギッシリと人が群れていた。

所々にテーブルがあり、豪華な食事が用意されていた。

ロ「うひょー、うまそー」

ログナは真っ先に料理に目が言った。

テーブルごとに違う料理を全て見渡していく。

高「まだ食うなよ。始まっていないからな」

周りの人たちは豪華な料理が当たり前なのか、目もくれずにただ会話していた。

すると、横から使用人が飲み物を持ってやってきた。

使「どうぞ」

高雅達はグラスに注がれている濃い紫色の飲み物を受け取る。

使「お酒ではありませんのでご安心を」

そう伝えて使用人は礼をして去っていった。

高「一応、俺らの情報はあるらしいな」

ア「まぁ、リンちゃんのお母さん直々(じきじき)から招待状をもらったからね」

高「それもそうか」

ロ「・・・っぷはー、うめー」

高「早速、飲むバカがどこにいるか!!」

ロ「はぁ!?。もらったら飲むだろ?」

高「おい、これはパーティだぞ。普通は乾杯をしてから飲むんだ」

ロ「へ~・・・・んじゃ、おかわりもらってくる~」

ログナは高雅達に手を振ってから、使用人が去っていった方へ走り出た。

高「あいつ、気楽だな」

高雅は情けなく思い、溜息を零す。

すると突然、照明が消え、暗闇に包まれる。

フ「あみゅ?、停電です?」

レ「どうやら違うようだ。演壇に人が現れたぞ」

暗闇の中、ステージに司会者らしき人物が場所に着く。

そして、その場所にだけ照明が照らされた。

司「皆さん、今宵は凛様と香凛様の誕生日パーティに足を運び、真にありがとうございます。それでは、凛様と香凛様のご登場です」

照明が再び消えると、今度はステージの真ん中に照明が照らされる。

そこには凛と香凛が立っていた。

ア「あっ、リンちゃんだよ」

高「みりゃ分かるって」

司「それでは皆様、グラスを上げてください」

全員はグラスを上げる。

司「凛様と香凛様の祝意を込めて、乾杯!!」

全「かんぱ~い!!!!」

全員で合唱し、一斉に飲む。

高雅達のは案の定、ぶどうジュースだった。

司「それでは、一流のシェフが作った料理を堪能しつつ、どうぞごゆるりとお過ごしください」

司会者はそう言って礼をし、ステージから離れた。

凛と香凛もステージから降りる。

高「・・・さて、まずは腹ごしらえでもするか。お前達も適当に過ごしてろ」

蓮「はーい」

ア「じゃ、私はリンちゃんに会ってくるよ」

龍「じゃ・・・私も・・・」

レ「我はテラスにでもいるか・・・」

フ「ボクもご飯を食べるです」

高雅達は一旦、解散してそれぞれ別の場所へと向かって行った。








乾杯が終わった凛と香凛はステージから降り、香凛は早速どこかへ行こうとした。

香「それじゃ、カリンは蓮田君のところに行ってくるの」

凛「そう。分かったわ」

ステージから降りた途端、香凛はそう告げてどこかへ行く。

凛は適当に答えて済ませていた。

一人だけになった凛はふと思う。

凛(・・・香凛は幸せそうね・・・)

嬉しそうに走っていく妹の姿を見て少しだけ羨ましくなる。

?「やぁ、凛」

凛「・・・・・・」

突然、同じ年くらいのイケメンが凛に話しかけてきた。

凛は挨拶されたが、無視してどこかへ行こうとする。

しかし、そのイケメンは肩を掴んで止める。

?「待ってくれよ、マイハニー」

凛「うるさいですわね。触らないでくださる」

?「いいではないか。君と僕のなかだろう?」

凛「いいですから、放しなさい・・・きゃあ!?」

いきなり、男は無理やり凛を抱き寄せる。

凛は必死にもがいて離れようとしていた。

?「どうしたんだい?。悩みがあるなら、この僕に話してごらん」

凛「いやですわ!!。放しなさい!!」

?「照れなくていい。僕に放せば気は楽になるよ」

凛「なりませんわ!!」

どんなに否定しても、イケメンは全く放す気配がない。

もはや、完全に変質者とも言える立場になっていた。

ア「こらーー!!。そこの犯罪者!!。リンちゃんから離れなさーーーい!!」

そこにアリアが痴漢を見つけたかのように大声を発する。

周りの人は自然とアリアに視線がいき、次に凛達に視線が向かう。

凛「あ・・アリアさん!?。それに、杉野さんも!?。どうしてここに!?」

ア「それよりも、そこの変態!!。リンちゃんに抱きついちゃだめ!!」

?「何だ、このブスは。どこの馬の糞だ?」

ア「ぶ・・ブスだってえええええええええええ!!??」

?「僕は君みたいな三流、いや四流貴族の娘は知らないな。話しかけないでくれるか」

ア「むかあああああああああ!!!!」

アリア、完全にキレました。

?「僕に興味があるからと言って、マイハニーを引き離そうとしても、僕らはもう結ばれるのは決まっているのさ」

龍「それって・・・許嫁・・・?」

ア「えっ!?・・・」

アリアはその言葉に驚き、戸惑う。

?「そうさ。だから、君達みたいな落ちこぼれ貴族は庶民とでも付き合えばいいのさ」

ア「こんのおおお!!。言いたい放題言ってえええええ!!」

高「うるせぇ!!!!!」


ドガッ!!


高雅の重い一撃がアリアの脳天に炸裂した。

ア「ッッッ~~~~~!!!???」

脳が揺れ、一瞬何が起こったか分からなくなっていた。

しかし、現状を理解するしてゆっくりと振り返ると、そこには鬼が立っていた。

ア「コ・・ガ・・」

高「さっきからうるさくて飯が呑気に食えねえじゃねえか!!。少しは黙ってろ」

ア「だって・・・・」

高「口答えするな。他の人に注目浴びっぱなしで嬉しいか?」

ア「それは・・・」

アリアは改めて周りを見る。

最初はここにいる全員を味方に付けてイケメンをどうにかしようと思っていたが、今では逆の立場となりつつあった。

高「分かったら、これでも食ってろ」

そう言って、適当にテーブルに合った料理をアリアに渡す。

高「龍子も、皆に見られて恥ずかしいだろ?」

龍「うん・・・・」

高「取りあえず、落ち着くまでテラスにでも言ってろ。レオがいい話相手になってくれる」

龍「・・・ありがとう・・・」

龍子はそう言うと、テラスの方へ向かいだした。

高「で?、そこの二人は何をしているんだ?」

首だけを凛達の方へ向けて問う。

?「僕が何をしてようが勝手さ」

高「そうだな。全く持ってその通りだ。んじゃ、行くぞ、アリア」

ア「えっ!?、コウガ!?」

高雅はアリアの手を掴み、この場を立ち去ろうとした。

その時だった。

凛「こ・・高雅さん!!」

凛の呼ぶ声に立ち止まるが、振り返りはしない。

それでも、凛は口を開いた。

凛「この人が放してと言っても放しません。ですから・・・手伝ってください!!」

その言葉を聞いた瞬間、高雅はニヤリと笑った。

高「―――っと、友達が言っているんだ。放れろ、カス貴族」

?「・・・君は誰を相手してると思ってるのかい?」

高「人の嫌がる事を平気でするカス貴族」

?「君は非常識みたいだから言っておくけど、僕の父上はSPの中でも地位が高いんだ。これがどういう意味だか分かるかい?」

高「僕のパパはかっこいいんだぞーってほざいてること」

?「・・・・君は僕を否定するんだね」

その言葉を聞いた途端、周りの人々はざわつき始める。

高「ああ、全否定だ」

?「死ね、哀れな貴族が」

そう言った途端、天井から黒い服とサングラスを見に付けた人が数人降りてきた。

着地した途端、腰に隠してあった銃を一斉に高雅に向ける。

凛は目を丸くして驚くが、何も言わない。

他の人々は一斉に逃げ始めた。

高「・・・・で?」

?「君は本当にバカだね。この状況でそんな余裕を見せられるなんてね」

高「まあ、普通の人間は、な・・・・」

そんな言葉を言った瞬間、高雅はいきなり暗い顔になった。

アリアはそんな姿を見て、少し同情していた。

ア「コウガ・・・」

高「・・・取りあえず、そんなこんなで、俺を普通の人間なんて思わない方がいい」

?「普通の人間でなかろうが心臓に穴が開けば死ぬだろう」

SPの人達が一斉に高雅の心臓に狙いを定める。

アリアは高雅の手を繋ぎ、いつ来てもいいように戦闘態勢に入った。

母「待ちなさい」

凛「!?、お母様!?」

張り詰めた空気の中、凛の母が現れた。

後ろには姫花家のSP達がぞろぞろとついて来ていた。

母「ここで暴れるなら、例え伊刈いかり家でも容赦しませんわよ。最も、娘達の誕生日パーティを壊した罪は償ってもらいますわよ」

伊「おやおや、お母様。伊刈に逆らうことは地球を相手にするのと同じ事ですよ。分かって言っていますか?」

母「あら、あなたのお父さんは有能でも、息子はキザで無能でしょう?」

伊「な・・何ですとおおおおおお!!??」

伊刈は内ポケットに隠してあった護身用の銃を取り出し、凛の母に向ける。

伊「どうやら、この家はクズな人の集まりでしたか。では、僕が新しい土地としてもらっておきますか。ここにいる、反逆者を殺してな!!!」

血相を変えて、引き金をゆっくりと引いた。

凛「や・・やめなさい!!」

凛が伊刈の腕を掴んで銃口を逸らした。

伊「なっ!?、放せ!!。はっ!?」

その瞬間、高雅が動き出した。

だが、アリアの手を放している。

動いたら殺すみたいなオーラを出していた伊刈のSPは固まって動いていなかった。

伊「くっ、どうしたお前達!?」

高「さあな。でも見てんだろ」

ア「・・・成程ね」

それだけで理解したアリアは軽く周りを見渡すと、フィーラと目があった。

フィーラはにっこりと笑い、手を振った。

ボーっと突っ立っているSPを潜り抜け、すぐに凛の許に到着した。

高「放れろ、勘違いカス貴族」


ドゴッ


高雅は伊刈の腹に重い一撃を打った。

伊刈は意識が朦朧もうろうとし、倒れて行った。

高「はぁ、偉そうに言ってたくせに呆気ねえ。凛、大丈夫か?」

凛「あ・・これくらい平気で・・・・・」

高「?」

いつもは強がっている凛だが、いつもと様子が違った。

すぐに気の強い言葉を放すはずだが、突然、言葉を取り消した。

凛「・・・ありがとう・・・///」

高「あり?、普通にお礼を言いやがったぞ?」

凛「わ・・悪いですの!?」

高「いんや、別に~」

高雅は口笛を吹きながら、明後日の方向を向いていた。

凛「何ですか、その態度は!?」

高「特に何も~」

完全にバカにしている態度だが、高雅はわざとしらを切り続けた。

母「ふふふ、やっと凛が元気を出したわ」

凛の母が笑いながらやってきた。

母「ほんと、高雅君は凛の王子さまね」

凛「お・・お母様!!///」

高「俺が王子な訳がないだろ。俺は化け物だよ」

母「ふふ、化け物じゃなくて超人ね」

高「五十歩百歩だ」

母「あらそう」

凛「そ・・そうですわ。どうして高雅さんが私達の誕生日パーティに来ていますの!?」

高「そりゃぁ、招待状をもらったからだろ」

凛「き・・聞いていませんわ!!」

高「あれ、普通にお前の母親からもらったけど?」

高雅と凛は首を動かして凛の母親の方を見る。

凛「お母様、聞いていませんわ!!」

母「ええ、言ってないもの。それに、サプライズは必要でしょ?。その様子だと大成功ね」

凛「わ・・私は驚いていませんわ!!」

母「こーら」

凛の母親が凛の頭を軽く小突いた。

軽くと言っても、じんわりと痛みが残る程度である。

母「素直になりなさいっていったでしょ?」

凛「私は素直ですわ!!」

母「だったら、高雅君に言う事があるでしょ?」

凛「そそ・・そんなこと・・・ありませんわ!!」

凛がしどろもどろになりながらも答える。

端から見れば完全に凛の母の方が優勢である。

ア「リンちゃん、可愛いね」

高「そうか?」

フ「それよりも、こいつらはどうするです?」

フィーラは今だ夢の中にいる伊刈のSP達に指を指す。

今は姫花家のSPに取り押さえられ、全員縛られていた。

高「後で今晩の記憶を消しておく。それまで夢でも見せてやってろ」

フ「分かったです」

母「あら、何を話しているの?」

高「こっちの事情です。というか、厄介な人を敵に回しのではありませんか?」

母「そうね~、伊刈家とは縁を切りたくなかったけど、この際しょうがないわね」

高「また何でそんな事を?」

母「そりゃあ、娘の将来の方が大事でしょ?」

凛「なっ・・どういう意味ですの!?」

母「あら、許嫁から解放されて、好きな人を好きになれるようになったのよ」

ア「あっ、それは良かったね」

凛「べ・・別に私は好きな人なんて・・・」

凛が否定しようとした瞬間、凛の母が睨みつける。

それを見た凛は喉まで出ている言葉をしまい込んだ。

母「それで、高雅君はプレゼントを用意した?」

高「ん?。ああ、ちょっと離れた所にあるから、パーティが終わってから渡そうとしてるけど」

母「そうなの。それで、プレゼントって?」

高「庶民的なショボイ奴ですよ。今からやってもいいですか?」

母「いいわよ。どうせパーティは中止みたいだし、凛を好きにしても」

高「それじゃ、香凛も一緒に・・・ってあれ?」

軽く見渡してみるも、香凛の姿は見えなかった。

高「避難したのか?」

母「香凛は彼氏さんと一緒にいるわ。だから、凛だけでも連れて行って上げて」

高「・・・しょうがないな。んじゃ、行くぞ」

ア「オッケー」

フ「了解です」

高雅達は外のテラスへと繋がる窓へ向かい始めた。

その間に、こっそりと伊刈達の記憶を消しておいた。

凛も分からないまま、高雅の後ろをついて行った。









テラスに着くと、レオと龍子が空を眺めていた。

足音に気付き、レオ達は高雅達の方に視線をやった。

レ「来たか」

高「ああ。んじゃ、行きますか」

レオが人間の姿から獣の姿になる。

凛「ちょ・・ちょっと待ってください!!」

高「ん?、何?」

凛「何じゃありません。一体、どこへ行くつもりですの!?」

高「着いてからのお楽しみだ」

それだけを伝え、凛にレオの背中に乗るように促す。

しかし、納得してない凛は中々レオの背中に乗ろうとしない。

龍「あの・・・姫花さん・・・」

凛「?、何ですか?」

龍「その・・・これ・・・」

龍子が取り出したのはリボンで閉じてある小さな袋である。

龍「お誕生日・・・おめでとう・・・」

凛「あ・・ありがとうございます。開けてもよろしいかしら?」

龍「うん・・・どうぞ・・」

凛はリボンを解き、袋の中にある物を取り出した。

それは、金持から見ればとても価値の低い、熊のキーホルダーだった。

しかし、凛にとって、何故か今までのプレゼントよりも心から感謝していた。

龍「姫花さんにとって・・・いらないと思うけど・・・」

凛「そんなことありませんわ。こうやって直接頂けて、とてもうれしいですわ」

龍「そう・・・良かった・・・」

龍子はホッと胸を撫で下ろした。

高「で、龍子はこれからどうするか?。パーティはちょっと野暮用で中止になったし」

龍「そうなんだ・・・それじゃ・・私はこれで・・・」

凛「そうですか。わざわざ足を運んで頂き、ありがとうございますわ」

龍「どういたし・・まして・・・」

凛が丁寧に礼をすると、龍子は慌てながらも頭を下げた。

龍「それじゃ・・・また明日」

高「おう。じゃあな」

ア「バイバイ、リュウコ」

凛「ごきげんよう、杉野さん」

龍子はもう一度、頭を下げた後に使用人に玄関まで案内されていった。

そして、見えなくなる直前に再び頭を下げてから、龍子は視界から消えた。

高「さて、俺達も行きたいのだが?」

凛「・・・分かりましたわ。ですが、仕様がなくですからね!!」

高「はいはい」

凛はレオの背中に跨った。

アリアはブレスレットになり、高雅も凛の後ろに跨った。

凛「なっ!?///」

そして、高雅が後ろから手を伸ばしてレオのたてがみを掴む。

高雅なりに落ちないように思いやりをしているのだが、体が密着している為、凛にとっては爆発寸前だった。

高「落ちるなよ。んじゃレオ、よろしく」

レ「任せておけ」

そう言って、レオは空中に創られた足場を駆け始めた。

空中からの夜景は絶景であったが、凛にとって、そんなものを見る余裕などなかった。


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