無双と夢想編 その12、復活
今、天国のあちらこちらで爆発や悲鳴などが聞こえ、もはや地獄と化していた。
ア「・・・ひどい・・・」
そんな音を耳にしながら、アリアはセバスチャンと戦っていた。
セ「甘いですよ、アリア様」
セバスチャンはアリアの一瞬の隙を逃さず、槍を突く。
アリアは頬を掠めながらも直撃を避けた。
ア「くっ・・・やっぱり強い」
セ「当然であります。私とアリア様では経験が違います。さらに、力の差でも私が上です」
高「アリア、真の契約をしてない以上、こっちの勝ち目はなさそうだ。だから、逃げろ。体が手に入っただけでも十分だ」
ア「分かった」
セ「逃がしませんよ。これ以上、邪魔されては困ります。ここで死んでもらいます」
セバスチャンは瞬間でアリアの腕を掴み、拘束した。
ア「きゃっ!?」
セ「死になさい」
腕を掴まれ、回避する事が出来ない。
それを悟ったアリアはあえて攻撃に出た。
ア「たあっ!!」
セ「くっ!?」
セバスチャンは予想していなかったのか、咄嗟の判断で腕を斬られてしまった。
セ「調子に乗るのではありません!!」
セバスチャンも抵抗し、捕えていた腕を握り潰した。
ア「うあぁ!!」
高「アリア!!」
セバスチャンはアリアを投げ飛ばし、腕の再生を行った。
アリアは歯を食いしばって痛みをこらえ、再生を行った。
セ「やりますね、アリア様。正直、少し見直しましたよ」
ア「つぅ・・・あっそ。別に嬉しくも何ともないよ」
セ「ふふふ、そのような口が聞けるようになるとは、私も嫌われましたね」
ア「嫌われて当然だよ!!。色々な人をも巻き込んで行きたいセイクリッドって何!?」
セ「それは秘密でございます。聞いてしまわれると、きっとアリア様も行きたくなるでしょう。手段を選ばずに」
ア「そんな訳ない!!。周りを巻き込んで行こうとは思わない!!」
セ「そうですか。しかし、欲というものには誰も勝てません。欲に囚われたものは殺しをしようが、仲間を裏切ろうが欲を実現させる。セイクリッドはそんな欲の塊のようなものです」
?「嘘ですッ!!」
突然聞こえた声はアリアのポケットからだった。
そこから現れたのはさっきまで気絶していたフィーラの魂だった。
フ「セイクリッドはそんなバカげたものじゃないです」
セ「私の言葉は間違ってないはずです。あなたも少しは聞いたことがあるでしょう」
フ「・・・知らないです。あんなおとぎ話の世界なんて興味が無いです」
セ「ご冗談を。女王であるあなたがどうして知らないのですか?」
フ「うるさいです!!。知らないものは知らないです!!」
セ「そうですか。まあ、あなたが知っていましても、セイクリッドに行くのと関係ありませんが」
フ「このぉ!!」
フィーラは魂である事を忘れ、セバスチャンに突っ込んだ。
ア「待って、フィーラちゃん。挑発に乗せられちゃダメ!!」
アリアはギリギリでフィーラの魂を掴み、フィーラを止めた。
しかし、セバスチャンはその隙を狙っていた。
セ「頂きます」
ア「しまっ・・・」
セバスチャンはアリアの心臓目掛けて狙いを定めていた。
その距離は数メートルで外すことはない。
セ「今度こそ、お別れです。死んだ後に宝石もちゃんと壊して差し上げますよ」
セバスチャンは槍を突こうとした。
その瞬間だった。
?「あっ!!、UFO!!」
セ「!?」
突然聞こえた場違いな声。
セバスチャンはその声に反応し、首を向けてしまった。
決して、UFOを見たい訳ではない。
ア「隙あり!!」
チャンスと思ったアリアはすかさず剣を振るった。
セバスチャンは不意を突かれた為、大きく回避した為まだ隙があった。
しかし、アリアは攻撃に出ず、高雅の体を拾って逃げ始めた。
その際、声がした方を確認すると・・・
ア「なっ!?、あの人・・・」
高「あいつ・・・」
その人はアリアも高雅も知っている人だった。
そして、背を向けて親指を立て、かっこつけていた。
ア「まさか・・・」
高「だろうな」
アリアと高雅は悟り、それ以上考えずに逃走を始めた。
セバスチャンが体勢を立て直した時、既にアリア達は視界から消えていた。
その代わりに、別の人が目の前に立っていた。
セ「まさか、あなたがいるとは。Aさん」
A「ちょっと殺されてな。ところで、ここはどこ?」
セ「天国でございます」
A「うっそ~。こんな火の海が?」
セ「ええ、そうでございます」
A「俺の想像と全然違うじゃん」
セ「想像が絶対とは限りませんよ。それよりも・・・」
セバスチャンはさっきまでの優しい口調とは異なり、殺気を放ちながら恐ろしい声を出した。
セ「よくも邪魔しましたね?」
A「ひっ!?」
自分の知っているセバスチャンとは違い、どんな化け物よりも恐怖を感じさせるものとなっていた。
セ「可哀そうに。二度も死を味わうとは」
A「あの~、俺、天国で死んだらどうなっちゃいます?」
セ「消えます。Aという物が完全に消滅するでしょう」
A「あ~、そんなのメンゴ」
Aは回れ右をして逃走を始めた。
セ「いいでしょう。追いかけまわされる恐怖を味わいなさい」
A「ぎゃああああああああああああああ」
セバスチャンは簡単に追いつけるのに、あえてゆっくり追い続けた。
その間、Aはずっと恐怖していた。
Aのお陰で逃げ切ったアリアは開きっぱなしになっている現世への空間へ飛び込んでいた。
ア「A君・・・」
高「あいつの死を無駄にするなよ」
ア「分かってるよ」
アリアはAの事を惜しみながらも、そこを堪えて空間へ飛び込んだ。
間もなく、アリアは現世に突き、その光景に絶句した。
ア「な・・・何・・ここ・・・?」
高「何がどうすればこうなるんだ?」
荒れ果てた周りを見て、最初に目が入ったのは歩いている巨人だった。
高「・・・あれが原因か」
ア「だろうね」
高「周りにレオ達がいないって事は、まだ死んでないってこと・・・って、あれは?」
ア「?、どうしたの?」
ふと、目に入ったボールの様なものは高雅が一番知っているものだった。
高「あれ、俺の頭じゃん!!」
ア「え!!??、どこどこ!?」
アリアは首を回し、高雅のが言った頭を探しだす。
すると、すぐそこに素っ気なく転がっている頭を見つけた。
ア「あった!!。これでコウガが生き返る!!」
アリアはすぐに体と頭を合わせ、再生の力を使った。
そして、高雅の魂を取り出し、ゆっくりと高雅の体に魂を押し込んだ。
すると高雅はゆっくりと目を開け始めた。
ア「コウガ!?、大丈夫!?」
高「あ・・・ああ、どうやら成功したみたいだな」
ア「よかった・・・コウガ・・コウガぁ!!!」
高「うおっ!?、ちょ!?」
アリアは涙を流しながら高雅に抱きつき、高雅は戸惑いながらも受け止めた。
ア「ほんとに・・・ほんとに良かったよ・・・」
高「分かった。分かったから放せって」
高雅はアリアの背中を叩きながら放す様に求めるがアリアは一向に放そうとしない。
むしろ、もっと強く抱きしめ始めたのだ。
ア「よかった・・・ほんとに・・・」
高「分かったって。だから放せ!!」
高雅もしまいには髪の毛を引っ張り、キレ始めていた。
ア「いたたたた!?」
アリアも痛みでやっと気付き、高雅から離れた。
高「ったく。こんなことしている暇じゃねえだろ」
ア「ゴメン。でも、ほんとに嬉しくって・・」
高「・・・・そっか。心配かけて悪かったな」
ア「あっ・・・」
高雅はアリアの頭を撫で、落ち着かせてあげようとした。
高雅の思惑通り、アリアは落ち着いたと思ったが、今度は顔を赤くして俯きだした。
ア「・・・久しぶりに撫でられたなぁ」
高「そうだな。てか、大丈夫か?。顔赤いぞ」
ア(・・・コウガの所為だよ///)
アリアはボソッと呟きながら顔を逸らした。
高「取りあえず、こいつはどうなってんだ?」
そう言って指を刺したのは目を開けたまま死んでいるオリアだった。
ア「確かに・・・レオ君が倒したなんて感じじゃないし」
高「それもこれも、あのデカ物のとこに行けば分かるだろうよ」
ア「そうだね。一刻も早くレオ君達の無事を知りたいし」
高「それじゃ、あのデカ物を追うか」
ア「うん」
アリアは双剣になり、高雅は速度の力を使って謎の巨人の元へ急いだ。
その巨人の周りにはレオ達が懸命に足止めしようとしていた。
しかし、全く効いておらず、巨人の全身は止まらない。
レ「くっ、これ程までに動じないとは」
ロ「見た感じ、蹴っても殴っても斬ってもすぐに再生してるようだし。どうやら、俺っちの力が必要なようだな」
レ「出し惜しみせんで早くしてくれ」
ロ「ちぇ、せっかちだな。っと、あぶねえぞ、蓮田」
蓮「うわっと」
蓮田と巨人の足の影が重なり、蓮田は後ろに軽く跳んで避けた。
しかし、踏んだ時の風圧が大きく、蓮田はバランスを崩された。
蓮「いてっ」
レ「大丈夫か、蓮田殿?」
蓮「うん。お尻打っただけだから」
ロ「よくも蓮田の大切なお尻をぉぉぉ!!。こうなったら、再生のエキスパートが本気になってやるぜ!!」
蓮「そんな大した事じゃないよ」
ログナの過保護すぎる言葉に蓮田は困り果てていた。
レオはその光景に呆れてものが言えなかった。
ロ「さぁ、蓮田よ。今こそ究極の矢を解き放つのだぁ!!」
蓮「特に何にも変わってないけど・・・ま、いっか」
蓮田は普通に矢を放ち、矢は巨人に突き刺さった。
そると突然巨人の動きが止まった。
レ「?、何をしたのだ?」
ロ「あいつの再生を止めたのさ。再生さえ操ればダメージは通るはずだぜ」
レ「では、何故最初からしないのだ?」
ロ「それは・・・ほら、そうしたらつまらないだろ」
レ「戦いにつまらないもあるか!!」
ロ「いや~。やっぱ、とっておきはすぐには出さないだろうし~」
レ「・・・まあ、よい。これで、事が動きそうだ」
ロ「よぉ~し、そうとかかれば、すぐに攻撃再開だぜ!!」
蓮「おー」
レオと蓮田は再び攻撃に出た。
再生を失った巨人にダメージが通るので、足を集中的に攻撃し、動きを止めに掛かった。
だが、巨人もそれを悟って攻撃に出てきたのだ。
巨「ドゥォォォォォオオオオオオオオオオ!!!」
レ「ッ!?、何かを仕掛けるつもりだ!!。気をつけろ!!」
蓮「うん!!」
ロ「了解!!」
巨人はレオ達を見下し、巨大な口を開いた。
すると、口の周りに力が集中し、徐々に巨大な黒い塊となっていた。
レ「まずい。離れるぞ!!」
蓮「うん」
ロ「アイアイサー」
危険を察したレオ達は一旦巨人から距離を取った。
その瞬間、巨人の口にあった黒い塊が放たれた。
塊は巨人の足下へ落下したと思えば、地面ギリギリで急に停止し、レオ達の方へ曲がった。
レ「し・・しまった!?」
蓮「こっち来たよ!!」
ロ「やべぇ、避けられそうにないぜ」
巨大過ぎる塊は一瞬にして距離を詰めてきた。
もう、レオ達は避ける事は出来ない。
ロ「こうなったら、再生予約をしt「退いてろ!!」おっ?」
レ「この声は!!」
声がしたと同時にレオと蓮田の横を瞬速ですり抜ける人影があった。
その人物を見た瞬間、絶望が一気に希望に満ち溢れた。
蓮「こうが兄ちゃん!!」
蓮田は期待に満ち溢れた目でその名を呼んだ。
高雅は黒い塊に剣を突きさし、そのまま真上に投げ飛ばした。
塊は空へ飛んで行き、見えなくなった所で高雅が静寂の力を使って無力化した。
無力化した塊は巨人の頭上に落ち、木っ端みじんに砕けた。
高「これでよしっと。大丈夫か、レオ?」
レ「ああ、問題ない」
ロ「お~い、俺っち達は無視か~?」
高「悪い。お前らは後だ。あの巨人と戦っているんだろ?。先に戦っててくれ。後ですぐ行くから」
ロ「ちぇっ。早くしてくれよ。行くぜ、蓮田」
蓮「うん。じゃあ、また後でね」
蓮田は手を上げ、巨人の元へ行った。
高雅はそれを確認すると、第三者の名を呼んだ。
高「おい、エクス。状況はどうだ?」
エ「ずっと俺が空気だった。こいつはあのガキ達と喋りながら戦ってたからな。話す暇がなかった」
高「そうかい・・・レオ、ログナに不審な点はなかったか?」
レ「?、特になかったがどうしたのだ?」
高「いや・・・どー見ても矛盾してるよな・・・」
レ「コウガ殿?」
高雅の言葉にレオは疑問を抱いているが、全く理解できない。
いつも通りのログナだったのに、高雅はそれを怪しがっていた。
レオは聞き出そうとしたが、その前に高雅が喋り出した。
高「ま、まずはあの巨人を倒すのが先決か。アリア、真の契約するぞ」
ア「うん」
レ「おい、コウガ殿・・・」
高雅はレオを無視して真の契約を交わす。
それをし終えた後にようやく高雅が答えてくれた。
高「自分で考えろ。物忘れが酷くない限り、すぐ分かる。そんなことよりも、まずはあのデカ物を倒すぞ」
レ「あ・・ああ、分かった」
レオは納得がいってないが、それ以上追及するのを止め、高雅と共に巨人の元へ行った。