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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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アスルの想い

アスル=ビウレットはルークが10歳で王都の学園に行くことになったのをきっかけに専属の護衛騎士となった。

冷静でどこか諦めたような表情を時々見せる子供ではあったが、次期当主として勉強も剣術も教養もどんどん吸収していく姿は年下とはいえ尊敬できるほどだった。

学園内では数人の友人もいて穏やかに生活しているように見えたが、長期休暇でクリスタラーゼに戻った時はどこか憂鬱そうに見えたのは気のせいではないだろう。

その原因は義母であることも察しがついていた。

ルミラ=クリスタラーゼはクリスタラーゼ公爵の後妻として公爵夫人の座についた。

貧乏貴族の出身らしく、クリスタラーゼで侍女として働く機会があったのだが、他の侍女と比べても明らかに美人であった。それが公爵の目に留まり、早い期間で公爵夫人の座を手に入れた女性なのだ。

夫人として城に住むようになると、公爵の実の息子であるルークに対してあからさまな嫌悪の態度を示してくるようになった。前妻の子供ということが気に入らなかったのだろう。

暴力的なことは何もしてこなかったが、発言や行動がルークを蔑んでいた。

「あれで公爵夫人を名乗るなんて」

護衛騎士として側にいたアスルはずっと見てきていた。

元使用人のくせにと心の中で思いながらも堪える日々を送っていたのだ。公爵夫人になった以上、騎士であるアスルより立場が上になるのだ。

学園での生活が始まると、クリスタラーゼの話がほとんど出てくることなく、忘れた頃に領地にいる騎士仲間から手紙が来るのを読む程度となった。

その内容は公爵夫人が贅沢な生活をしているという内容だった。

貧乏貴族だったためか、目の前にお金が積み上げられると、夫人は好きに使えるのだと高い買い物をし始めて、それがどれほど財政をひっ迫させているのかも理解していない様子だ。

「公爵様はどうして止めないんだ」

手紙の内容に文句が漏れてしまった。

夫である公爵が諫めなければいけないはずなのに、買い物をして喜ぶ夫人に心酔しているのか、傍観するだけのようだった。

そんな手紙が送られてくるようになって、アスルの中では後妻夫人は嫌悪の対象でしかなくなっていた。そして、そこに付随するように連れ子であるライラも同じ枠組みに入れていた。

手紙にはライラのことはほとんど書かれていなかった。

それは手紙を送ってくる騎士がライラを敵視することなく受け入れていたからなのだが、何も知らないアスルは同じように贅沢をしている娘なのだと勘違いをしたのだ。

公爵と夫人が火事に巻き込まれたことで、突然クリスタラーゼに戻ることになった。

ルークはまだ学生であったが成人していることを理由に当主の座につくことになり、クリスタラーゼ公爵位を手にした。クリスタラーゼはこれで揺らぐことはない。

「どうしてあんな女の子供がまだ城にいるんだ」

そんな中、ライラの立場が気になっていた。公爵家と血の繋がらないライラはクリスタラーゼを名乗れる立場ではなくなってもいいのだ。だがルークは今のところ追い出す素振りを見せない。

使用人たちもライラを丁寧に扱っているのが窺える。

怪我人なのだから仕方がないのかもしれないが、アスルにとっては悪でしかない。

「早く追い出す方法を見つけないと」

彼女の憔悴ぶりは見たがいつまでも城に残るための演技なのではと疑ってしまう。

火事の詳細を聞き出せばいつでも追い出せるように彼女の行動はしっかり監視する必要があるだろう。

勝手な使命感を抱いたアスルは、ルークの護衛をしつつライラの動きにも注視する日々がしばらく続くことになった。


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