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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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ルークの助け

音楽が止み、次の曲へと切り替わる僅かな隙を逃すことなくルークはライラを連れて踊るスペースから抜け出した。

会場の中心がダンスホールと化した今、他の貴族たちも思い思いに踊っている。最初のダンスを披露した後は他の貴族たちもパートナーと一緒に踊り始めた。複数のペアが混在すると、ルークたちがいなくなっても誰も気にしない。

「よかった」

ほっとしたようにライラが呟く。

足を踏まなくてよかったという意味のようだが、何度か怪しい時はあった。それをルークがカバーして最後まで踊りきることができた。周りから見てもそれほど違和感はなかっただろう。

「楽しかったか?」

「どうかしら、結構必死だったからよくわからないわ」

視線が足元に行きそうになることもあった。その時は名前を囁いて視線を合わせるようにしていた。楽しそうに微笑んで踊れば、みなが2人の仲が良いと思ったはずだ。

「少し休みたいわ」

「飲み物を取ってくる」

「外の空気が吸いたいから庭に出るわ」

会場の大きな窓は数か所解放されていて、そのまま庭へと出ることができる。所々にベンチを用意しておいたので休憩することも可能だ。

体を動かしたので冷たい飲み物がいいだろうと、ルークは近くにいた給仕に飲み物を頼んだ。

その間にライラが1人で庭へと出て行ってしまった。

グラスを持って後を追いかけるつもりでいたのだが、飲み物を待っている間に声をかけられる。

「公爵様。本日はおめでとうございます」

最初の挨拶の時にまだ会場に来ていなかったのだろう。親族の貴族ではなく、近隣から招待した男爵

家の当主がにこやかな笑顔を向けて話しかけてきた。その後ろに20歳くらいの女性を伴っている。顔立ちがどことなく似ていることから娘のようだ。

それだけで男爵が声をかけてきた理由はわかった。

「今年20歳になった娘です。当主様にぜひご挨拶をと思いまして」

娘が挨拶をするが、ルークは給仕が持ってくるグラスに意識が向いていた。

男爵が何かを話しているがその内容が耳に入らない。

話を遮断してはいけないと無言で差し出されたグラスを2つ受け取ると、ルークはすぐにその場を離れた。

「男爵。話はまた今度」

それだけ言って立ち去る。相手にされなかったことでぽかんとしていた2人だが、背を向けたルークはその後冷ややかに周りから見られることになる2人には気が付かなかった。

グラスを持って庭へと出ると、そこにライラの姿はなかった。

落ち着いて休むために少し奥へと向かったのかもしれない。勝手知ったる庭だ。庭に明かりはなく、会場から漏れる光だけが頼りの薄暗い場所ではあるが、ライラは不自由することなく進んでいったはずだ。

いつもは置かれていないベンチは今日のために用意されている。その位置もルークは把握していた。どこにいるのか大体の予想を付けて奥へと歩き出した。

「離してください」

グラスを持って歩いていると、突然そんな声が聞こえてきた。それもライラの声だ。

はっとしたルークは声のした方へと走り出した。

少し奥まったところにバラの生垣で覆われた東屋がある。これはもともとあるのだが、ライラはそこで休んでいたようだ。バラで覆われていて東屋を見通すことができない構造になっている。唯一の出入り口になっている場所から入り込むと、東屋の中で2人の男がライラを挟んで揉めているのが見えた。

男の1人が彼女の腕を掴んで引っ張ろうとしている。それを必死に踏ん張って抵抗しようとするライラ。だがもう1人が背後から両肩を掴んでくると、驚いたようにライラが振り返る。それと同時にバランスを崩して腕を引いている男へと倒れ込んだ。

その顔色が真っ青になる。

それを見た瞬間、頭が真っ白になった。

持っていたグラスを手放して、ルークは東屋へと飛び込んだ。自分でもあまり考えずに行動していた。

気が付いた時にはルークは男達2人を東屋から追い出して地面に倒していた。

「ルーク」

ライラが床に座り込んでこちらを見上げている。その顔色はとても悪い。

「大丈夫か」

膝をついて確認するとどこかを怪我しているようには見えなかった。

「大丈夫。ちょっと驚いただけ」

気丈に振舞っているが、肩が小刻みに震えているのがわかった。

「何事ですか」

肩に触れて落ち着かせようとする、バラの生垣から声が聞こえてきた。

振り返ればアスルが東屋へと駆けてくるところだった。パーティーでは騎士たちは会場には入れない。その周辺を警備することになっていて、庭にも数名が配置されていた。ライラの声を聞きつけたのか、ルークが男たちを倒した音に気が付いたのかはわからないが、何かを察知して様子を見に来たようだった。

「ルーク様。これは・・・」

地面に倒れこんでいる男たちはどこかを痛めているのか意識はあるようだが動けない様子だ。蹲っている2人を見下ろして、東屋へと視線を向けたアスルは困惑した様子だ。

「クリスタラーゼに仇なす者たちだ。すぐに捕らえろ」

「はい」

床に座り込んでいるライラを見て、何が起こったのか察したのだろう。アスルはすぐに他の騎士たちを呼び寄せて男たちを縛り上げて連れて行こうとした。その際にルークは男たちがどうしてこんなことをしたのか聞きだすように言っておいた。見たところどこかの貴族の子息のようだ。

ライラがクリスタラーゼの一員であるということはパーティー会場で示したはずだが、それでも手を出そうとしてきたことが気になった。

「もしかすると、誰かの指示があった可能性がある」

父親か母親が一緒に来ているのだろう。親の指示だったのか、それとももっと身分の高い者が小間使いとして命令したのかもしれない。

どちらにしても公爵家への不敬となる。それなりの報いは受けてもらうことになるだろう。

男たちが引きずられるように連れて行かれると、残されたルークは未だに立ち上がらないライラの様子を伺った。

「当主様」

入れ違うように今度は騎士団長が姿を見せる。報告を受けて駆け付けたようだ。

「ライラ様もご無事ですか」

「私は大丈夫です」

先ほどより顔色が良くなったようにも思えるが、薄暗い中なのではっきりとしたことが言えない。声に張りがあるし、肩の震えは収まっているようだった。だが、このまま放置することはできない。

「クリフ。奴らの尋問は任せる。俺はライラを部屋に送り届ける」

このまま会場に戻ることはできないと判断して、ルークはライラの許可を取るよりも先に彼女を抱きかかえた。先ほどから立つ様子がないので、腰を抜かしている可能性があった。

「わかりました。侍女たちにもすぐに伝えます」

クリフはすぐに去っていき、抱えられたライラはルークが歩き出しても無言でいた。

「ライラ。何があったのか話せるか?」

歩きながらそう問いかけると、彼女は無言で頷いた。だがすぐに話そうとしない。この状態で話したくないのかもしれない。

「わかった。部屋に戻ったら話を聞かせてくれ」

ルークもそれだけ言うとあとは部屋に辿り着くまで無言を通すことになった。


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